76 ─いつか、薔薇の木の下で。
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僕に触らなくていいよ。
君が本当に求めている人を知っている。
[それは本当。
薔薇の意識の中で感じていた。]
ね、僕はこの身体に相応しく、
ここにあるべき。
[失ってしまったひとときの夢。
そのあとには燃えかすしか残らないような]
ヤニクのこと?
あぁ、薔薇はそんなことまで晒すんだ。
[触らないでいいといわれても
手は彼を離したりはせず]
お前がここに相応しいなんて思わない。
…ごめんな。痛かったと思う。
[自分が彼を抱いたことは知っている。
薄ぼんやりと戻る薔薇の記憶]
ロシェもエリアス先輩も。
皆、痛かった、かな。
そうだよ。
僕は薔薇であって、薔薇でなくなった抜け殻。
ここで起こるだろうことを知って止めなかった。
[痛いには首を振って。]
いいや、とても幸せだった
痛いのは君じゃない?
好きでもない人を抱いて、操られて
…幸せ?本当に?
泣いていたのに。
[さっきの泣いていた子はまだその涙の後を留めるか
つと、手はその頬にすべり]
でも、痛くなかったならよかった。
俺は…痛かった、けど。
ブレンダや…エリアス先輩に比べれば。
痛くない。
[ヤニクを傷つけたくない、汚したくないとだけ願っていたのだから。
エゴの為に抱いた薔薇やエリアスに顔向けができないのは自分の方で
ヤニクが持っただろう痛みが、今はただ苦しい]
俺は、可哀想じゃないよ。
[傷つけた人たちを思えば]
そう、優しいんだね。
[目を眩しげに細めて。
細い手首の先、指は、その髪を摘んだ。]
でも、その優しさは、
君の好きな人には残酷なんじゃないかな。
……ヤニクには嫌われたかな。
仕方ないよ。どうすればいいのか、わからなさすぎた。
ずっと、甘えてただけだったから。
[髪に触れる手に目を閉じる。
泣きそうな顔はうつむくようにして彼には見せない]
だから、もう、いいんだ。
嫌われたの?
ああ、それは、
やっぱりサイラス、かわいそうに…。
[嫌われたと聞けば、やっと、髪を愛おしそうに撫でた。
枯葉色の眸は、澱んだままだけど、
俯く人の背も撫でて]
俺の薔薇、多分、ヤニクにいっちまったからさ。
俺が何をしてたか、気づくよ、きっと。
[好きで、大事で、汚したくなかったのに。
どうしていいかわからなくて。
だから、傷つけないようにと思った結果だ。
頼るだけで無知だった一匹の猫、自嘲は重い。]
…いいよ。他の人と幸せになってくれンならさ。
俺もブレンダを可哀想って思ったんだよ。同じ。
[肩も震わせず、ただぽつり、水滴がひとつだけ]
――……本当に、そう思うの?
[自嘲をこぼす人に、
乾燥した肌、皺を寄せて口元をあげ。]
本当に、そう思う?
もし、それを知っても彼がいいって言ったら?
君はきっと、彼の元にいくよね。
僕のことで、泣いちゃ駄目だよ。
そう、僕は、もう、
これでいいんだ。
[心内、
サイラスは許されることを知っている。
そう、その触り心地のいい金糸が、
男らしい、骨格が、
空や、海の青さを連想させる眸が・・・・・・。]
君は愛されるよ。
大丈夫。君は許される。愛される。
保証するよ。
[羨ましさに。目を細めた。]
[ブレンダの言葉に、僅か苦笑いを浮かべ。
彼をぎゅ、と抱き寄せた。
薔薇を愛せて幸せ、といったのは、嘘ではなかったから]
やさしいのはブレンダもだよ。
うん、ヤニクが許してくれるなら、許されたい。
…薔薇は。いつ咲くんだろう?
咲いたら、時間はまた元に戻るのか
[抱き寄せた腕に、困ったように。
目を伏せて、そっと、胸を押す。]
――・・・・・・君は許されるよ。
それは確かだけど・・・。
でも、本当に、ヤニク先輩…を大事に思っているなら。
僕をこうやって抱き寄せるのは、やめたほうがいい。
[押しても、自分の力では離せないけれど。]
きっと、
彼は、君にそれを望まないから…。
[それはわかるのだと。]
[自分が渡した薔薇の残り香、
ぴくりとその感覚が微か伝わる。
ヤニクに根付いた薔薇が、色を求めてることを]
……。そうだ、ね。
[ブレンダを抱き寄せた手がゆるりと落ちる。
体はゆっくり離れて、力が抜けたようにへたれてしまう]
本当に…そう、だ。
[大事な人が誰かに触れる。
感じるのは嫉妬と悲しさ。
自分はなんてものを彼に味あわせてしまったのだろうと。
今は自分の罪深さを思いながら耐えるだけ]
大丈夫だよ。
それでも君は許される。
[離れた腕、うなだれる様子に、手は伸ばさない。
自身で言ったことを守るように。]
きっと、君には幸せが待ってる。
それは確かなことだよ。
[そして、言葉には出さず、口の形だけは、羨ましい…と。]
ヤニク……ごめん……
ごめ……ごめ、ん……。
[死にたい。初めてそんな風に思う。
彼に触れる人への嫉妬と
自分への嫌悪と、彼へのどうしようもない恋しさと。
会いたいと思っても、どんなに求めても、
どんな顔をすればいいかもう分からない
それでも彼を愛していることに変わりはない。
どうすればいいか、わからないだけで]
お前のいう幸せって……何………
[こんな思いを相手にさせてまで手にする幸せとはなんなんだろう。
こんな思いをさせてまで咲こうとする薔薇を、
それでも憎むことはできなくて*]、
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春になれば…… 夢は解ける?みんな、目を覚ます?
[冷静に考えれば、それはとても気の遠くなる話。 静かな廊下に響く高い音も、それを鳴らしたであろう人のこともぼんやりとしか頭に浮かばない。 その笑みから、逃れられない。
残像が揺らめく脳裏に、中庭で重なる影が浮かんで、消えた]
(16) 2013/03/29(Fri) 22時半頃
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そうすれば、皆目覚める ……そうだよな?
[常ならば、頭を撫でたり戯れにでも抱き上げたり、そういう子ども扱いとも思えることは全力で拒否していたのに。 今は大人しく、逃げ出した中庭へ。
そうすればもう、薔薇の香りに、頭の片隅ですら自由にはならない]
……うん、 あげるよ
(20) 2013/03/29(Fri) 23時半頃
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ああ、だから君は許される。
[嘆くサイラスに、枯葉色の眸は、じっと思慕を。]
幸せとは、
愛されることじゃないかな。
[薔薇ではないけれど、
もう、咲かない枝のような自らの手を見た。]
幸せで……。
[音が聞こえる。自分が伝えた薔薇から情事の音。
聞こえる声は自分も一度、腕の中に抱いた彼]
……う……、っ、……
[吐き気すらこみ上げてきそうだ。
夢の中で吐くものなんてないのに。
生生しさに酷くえづいてしまって
苦しさに顔をゆがめながら小さく願う。
何も聞きたくない。逃げたい。目覚めたくない。
もう、きっとヤニクも自分を軽蔑している筈]
愛される、幸せ……。
[薔薇が咲いても、ヤニクがまだ想ってくていれたら
自分は目覚めることを望むだろうか。
ただ彼から愛されないなら、もう目覚めたくない、と*]
可哀想なサイラス。でも
誰よりも幸せなサイラス……。
[呪文のように、そうつぶやく。
そう、薔薇のときにみている、彼らの深く激しい恋情を。]
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[彼の、薔薇の欲に抗うことはできない。 ただ流されるまま暴かれ、高められた。 慣れない行為に息はあがり、やがて導かれた先へと、ただ熱を帯びた瞳で頷いて]
ごめん、な
[掠れた声で呟いて、あとはもう、熱に浮かされるまま]
(25) 2013/03/30(Sat) 00時頃
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ああ、僕もあんなだったら……。
[嫉妬と憧憬と……やはり、持ってしまったほのかな恋情を。
ため息とともに押し隠す。]
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[揺れ動く紅い瞳は蠱惑的に煌めく。 胸に残された傷痕に吸い寄せられるよう唇を押しあてて。
薔薇は喜んでいる? ヴェスパタインは?
嗚呼、この香りに心まで塗り替えられそうで]
ヴェ、ス……!
[薔薇の名前は知らぬから、目の前にいる彼の名を呼び、薔薇の糧になるよう、熱を吐き出した。 縋るよう絡めていた腕に力を込めて、今はただ、全ては薔薇の為に]
(27) 2013/03/30(Sat) 00時半頃
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[離れようとする彼に手を伸ばす。自らを傷つけようとするその手を止めようと]
駄目だよ、ヴェス もう止まらないよ
……ほら
[綻び始めた蕾に向ける瞳は恍惚に揺れる]
咲かなきゃ…… もう、目覚めない
(29) 2013/03/30(Sat) 01時頃
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やめろ、ヴェス
[視界に入る、薔薇ではない赤。 虚ろに潤んでいた瞳に束の間光が戻る]
そんな赤、いらない そんな言葉もいらない
[腕をひけば、生気の吸われた彼の手は、瞼から離れるだろうか。先よりは強引にひいて]
俺を責めればいい ……止められなかった、俺を
[細い腕で精一杯包み込めば、触れあう、まだ熱の残る肌。再び理性は薔薇に飲まれ、紅い涙へと唇を*寄せる*]
(32) 2013/03/30(Sat) 01時半頃
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