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[ 奇妙な夢を見ていた気がした。]
[ 悪夢のようでいて、
そう悪くなかったような気もする。
感触ばかりが残っていて、
どんな夢だっけ。と礼一郎はぼんやり思う。]
──帰還──
[ ひどく体が強張っていて、
礼一郎はゆっくりと体を起こした。
自室。勉強机に向かっていた。
広げっぱなしの参考書がよれている。
体調を崩してはいけないから、
仮眠だってこんな場所じゃ取らないし、
意識をなくすほど疲れてただろうか。
やや違和感を覚えながら、
新着通知の出ているスマホを手に取った。
画面をスライドさせてアプリを起動する。]
[ ────夢じゃなかった。]
[ 椅子をひっくり返しそうになりながら、
礼一郎はガタンと慌てて立ち上がった。
適当な上着を引っ掴んで、
財布とスマホをポケットに突っ込む。
行かなきゃ。
気が急いて、めちゃくちゃな勢いでドアを開く。
ガン、と何かにぶつかる音がして、
それでも懸命に扉を押し開けて廊下に出た。]
[ ……それは礼一郎の足元に転がっている。]
[ 勢いよく扉を開けた際に、
扉にどっか打ち付けたらしい。
痛みを堪えるようにうずくまりながら、
「 ごめんなさい 」とそれは言う。
いつものように、謝罪を繰り返している。]
[ 礼一郎は気分が悪かった。]
「 ほんと、なんで生きてんの? 」
[ 夢の中の夢。
あるいは、異世界で見た夢。
それをなぞるように、
ゆっくりとそれの傍らにしゃがみ込む。
礼一郎は、じいっとそれを見ている。
見ているだけで胸がムカムカした。
なんで生きてんだろうって、
とっとといなくなんねえかなって、
頭の中でぐるぐると渦巻いている。]
[ 礼一郎は本当に、妹のことが嫌いだ。]
[ なあ。って礼一郎は言う。
うつむいたまんまの妹の髪を、
傷んだ不揃いな髪を一束掴んで、
強引に自分のほうを向かせた。]
どれがいい。
ケーサツ呼ぶのと、
先にどっか遠くに逃げるのと。
それか、ずうっとこのまんま。
[ ……声は震えていた。]
[ ガラス玉みたいな、
何もうつさないがらんどうの瞳が、
礼一郎にじいっと向けられている。
気持ちが悪い。叫びそうになったとき、
妹のひびわれた唇がゆっくりと開かれた。]
声に出してしまったからには、
礼一郎はちゃんとその言葉を背負うべきだ。
嘘をつくのは良くないし、
自分の発言は簡単に放り投げたりできないからね。
…………わかってる?
…………わかった。
[ 言って、乱暴にその髪を離せば、
妹の痩せた体は簡単にバランスを崩した。
待てともあとでとも言わないで、
礼一郎はさっさと立ち上がり、
大急ぎで玄関を飛び出し、夜の道を駆ける。
妹なんかよりずっと、ずっと、
会いたい友人がいるはずの場所へ。**]
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[ ――――がくんっ! ごん! ]
うわあっ!
―― 現在:自室 ――
[ 頬杖していた手から、頬が落下した。
その拍子に足で勉強机を蹴り上げて、
つま先がじんじんする中、誠香は目を覚ました。
机の上に広げられた参考書に、ぼんやり目を落とす ]
そうだ、僕……。
[ 受験生らしく受験勉強をしていたのだった。
ノートパソコンを見たくない現実逃避ともいう。
中3の頃からまるで進歩していない。
参考書によだれはついていなかった。セーフ! ]
……夢? じゃあ、ないような、気がする。
[ あんな夢が見れるほど、想像力豊かだったら、
作家になれていたんじゃないだろうか。
というか、あの死に方って。
うわああ、と呻きながら頭を抱えた ]
[ 夢じゃなければ、原稿用紙に埋もれて死んでいる誠香を
誰かが発見するのだろう。
あれは、誠香の恥だ。恥が具現化したものだ。
思った通りだ。ろくな死に方じゃなかった。
考えただけで恥ずかしくて死にたくなる。
というか、白紙の原稿用紙見られた時点でアウトです。
死にたい。
……死? ]
……そうじゃん!
[ がば、と顔を上げる。
誠香は恥ずかしくていたたまれなくて死にたいけれど、
そもそもあの世界に誠香を招いた主は、
多分、もうすでに死を選んでいる。
あのメールがそう言っている。
慌てて誠香はスマートフォンを手に取った。
圏外じゃない。メールが複数届いている。
夏美からのもの。
そして、送信者がバグっていない、遺書メール ]
……しおちゃん。
[ 送信者名に表示されているのは、紫織の名だった ]
[ 身支度を整えて、誠香はリビングへと出ていく。
まさに寝室に向かおうとしていた様子の両親は、
誠香を見て驚いた顔をした ]
クラスメイトが自殺を図ったって連絡が来て……。
今、病院にいるって。
僕行かないと。
[ 誠香の言葉に両親は顔を見合わせて、
それから父が、車のキーを手に取った。
病院まで送ってくれるという ]
ありがとう、父さん。
母さん、行ってきます。
[ 車の中でメッセージを打った。
あの校舎で一緒だった、メンバー全員に宛てて ]
From:せーか
To:みんな
――――――
ただいま。
今病院向かってます。
――――――
[ ほどなくして、車は病院に到着する。
車を降りようとして、誠香は少し静止した。
それから、運転席の父に「父さん」と呼びかけた ]
……あのさ、あの……
僕、父さんと母さんに、
言わなきゃいけないことがあるんだ。
……おにーちゃんのこと。
今度、話すね。うん、ありがとう。
行ってきます。
[ 真っ白なコートにラベンダー色のマフラー。
夜に溶けない装いで、
誠香は病院前に降り立った** ]
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──現在・病院前──
[ 正直、このおにぎりを購入した時の空腹は、
消え去っている、というかそれどころじゃなくて
あんまり食べる気はしなかったから、
あげてもよかったんだけどなあ。
ひらひらと風に靡くビニール袋の中に、
おず、と黒い三角形を仕舞うことにした。 ]
ありがとう、じゃあこれは私が食べちゃうね
[ 食いしん坊って、訳じゃないよ。
食べる量は人並みだし、食い意地貼ってるでもない。
素直に、感謝した。
……みんなで、おにぎり食べたいな
[ すごい食欲旺盛です!
みたいな発言しちゃったけど、そうじゃなくて。
しおりちゃんの手作りをみんなで囲んで
ピクニックでもして食べたいってことです。まる。 ]
[ ふふ、と笑みが零れた。
ちーちゃんと顔が合えば、また笑ってたかも。
喜多仲くん、いつも通りだなって、安心する。
そして、あたたかいおしるこを握りしめて、
珈琲を買うちーちゃんを眺めていた。
一口くらい、駄目かなって思ったりするけど、
ここはあの世界とは違う場所だから、
間違いがあっちゃいけないもんね。
まなちゃんとちーちゃんのやり取りには気づけなくて
私は、先にいってるねと告げて、
喜多仲くんと病院の中へ踏み込んでいた。
ねえ、喜多仲くん。
変なこと、聞くかもしれないんだけど
……ここに来る前、変な夢、みなかった?
[ もしかしたら、触れない方がいい話題だったかも。
でも、ただ静かに待っているのは落ち着かなくて
しゃべっていたい、から。そう問いかけた。
彼のマネキンを直接目にはしていない。
……夢から醒める直前の自分を思えば、
喜多仲くんにも、何かあったのかもって。
だた、共有したかったから話を振っていた。
いつも笑顔でハイテンションな彼なら、
どことなく、ゆるしてくれそうな気がしたから** ]
── 病院内 ──
[ 病院の中に踏み込む。明るい。暖かい。
心乃の後ろをついて行って、
0.5人分開けたその隣に座る。……静かだ。 ]
え?あぁ……変な夢、見たよ。
チョー見た。みんなで学校に行って…、
すげー雪降っててさぁ、閉じ込められて。
みんな元気で、それで…………。
[ 心乃が夢の話をするので、
郁斗は夢のことを思い出した。
終わり方。っていうのを思い出せば
あまりいい夢ではなかったかもしれない。
手首をさすりながら、ぼんやりと言う。 ]
……変な夢だった!
心乃ちゃんも見たの?変な夢〜。
[ 病院の人工的な明かりが二人を照らす。
大雪が降っていた校舎の中よりは
いくらか明るく感じていた。
見たのかもしれない。と郁斗は思った。
なにせ集まっているのはみんな、
あの世界にいた友達ばかりだった。 ]**
メモを貼った。
[ 帰ってきてほしいと祈るべきなのか、
嘘つき! と言ってやりたいのか、
礼一郎にはもうよくわからなかったけど、
近くで待ちたいとは、確かに思った。]
──現在/病院前──
[ 夜の病院。
こちら品行方正な健康優良児。
まるで縁のない場所の前に立ち、
はあはあと肩で息をしている。
そういえば、何も言わずに家を出てきた。
礼一郎には家族に送ってもらう発想はなく、
別にそれは不仲だから、とかじゃない。
心配してるかな。
とごく当たり前に礼一郎は思い、
スマホで父親にメッセージを送った。]
[ 友人が危険な状態であること。
他の友人たちと病院に駆けつけること。
家を勝手に出てきてしまったこと。
このメールに気づいたら返事がほしいこと。
眠っていたはずの父だったから、
返事など来ないかと思っていたが、
案外間を置かずスマホが震えた。
そういう事情なら仕方がないが、
一言声をかけるべきだった。という指摘と、
迎えに行くから帰りは連絡するように。
入り混じる礼一郎と友人を案じる言葉。]
[ あー、気づいてたんだなって礼一郎は思う。
まあ、出がけにバタバタしていたし、
目が覚めたって不思議じゃないよな。
礼一郎は起こしちゃって悪いなと思い、
病院に入る前、もう一通返事を送る。
心配かけてごめん、ありがとう。
また連絡します。みたいなね。
そういうふつうのやり取りをする。
ふつうに、やり取りが成立する。]
[ 礼一郎は、ふつうにそこそこ両親が好きだ。
ちょっと口うるさかったりもするけど、
つきとおせない嘘ついてんじゃねえよって、
呆れ果てちゃったこともあるけれど、
でも、礼一郎のことを息子として大切にしてくれる。
塾から遅く帰っても温かい食事を出してくれたり、
おまえは父さんより賢いからなあ、
できるだけ良い大学に行けよって、
自分のことみたいに嬉しそうにする人たちが、
礼一郎はふつうに家族として好きだよ。
何やってんの、って呆れ果てても、
家族に対して、いなくなれなんて思わない。]
[ ほんとやってらんないよね。]
[ とにかく、そんな連絡を終えて、
いざ病院に入ろうかってときに、
礼一郎はふとそこに立つ人影に気づく。
……気づくのが遅れたのが不思議なくらい、
鮮やかな、存在を主張するような白をまとって。
福住だ。そういえばさっきメールが来てた。
4回目のチャイムのときまではいたはずで、
じゃあ、同じタイミングだったのかなって思う。]
[ 礼一郎は軽く手を振って、ちょっとだけ遠慮がちに、
こんばんは、という感じに何歩か近寄った。]
……葉野、だったんだな。
[ はじめてその名前を声に出したとき、
礼一郎はなんだか無性に悲しくなる。
話が違うじゃん。とも思うし、
なんで? って疑問も渦巻いている。
あんまり悲しいので、
はあって大きく息を吐いてから、
いまだに潜れずにいる入り口を見てた。]
死にたかったとか、全然ないって、
……言ってたんだけどなあ、葉野、あいつ。
[ 礼一郎はじっと入り口の方を見てる。
なにかの間違いでもいいから、
今すぐ葉野が元気に歩いて出てこないかなって、
現実に起こり得ないことを考えたりもする。]
[ それから、やっぱりあの世界で人形になるのは、
帰ってくる、と同義だったんだなって思って、]
……福住もさ、人形になったんだろ。
大丈夫だった? その……痛いとか怖いとか。
[ 福住の人形を礼一郎は見ていないけれど、
友人のああいう姿、見るたびに思ってて、
深い理由もなく、心配げに聞いてしまう。
ぶるりと身震いをした。ここは寒いな。
病院の中に入らなくては。入って……、
入ったって、待つしかないんだなって思う。
帰ってきてほしい。また会いたいなって、
礼一郎はやっぱり当たり前にそう思っている。**]
メモを貼った。
メモを貼った。
―― 現在:病院前 ――
[ 車から降りたら途端に冷気が襲ってきた。
雪は降っていなくても、寒いものは寒い。
温かいものを買おうと自動販売機を眺めていた。
飲む用とカイロ用。今日も買うのは2本。
がこん、と音を立てて落ちてきた飲み物を、
取り出して顔を上げた誠香の視界に、
意外な、とても意外な人物の姿が飛び込んできて
誠香はぱちぱちと目を瞬いた ]
え? あれ?
[ 手を振る姿に釣られたように、
ジャスミンティーのペットボトルを持った手を上げて、
それでも誠香はまだぽかんとした顔をしていた ]
阿東、帰ってたんだ?
[ マネキンと代わったクラスメイト達に、
きっと会えると思っていた。
けれど誠香の記憶している限り、
阿東は校舎にまだいたはずだ。
もしかして同じタイミングだったのかな、と誠香は思う ]
……うん。
[ 葉野、と阿東が名前を口にした。
わかってはいたけれど、
自分以外の人がその名前を口にすると、
改めてその事実がのしかかってくるようだ ]
[ 死にたかったとか、全然ない。
紫織が言っていたという言葉を考える。
あの校舎での本心だったのか、
それとも嘘をついていたのか、誠香にはわからない。
わからないけれども ]
すごーく今更の話なんだけどさ。
昨日の夜、あ、校舎の話な、保健室で寝る前に、
しおちゃんと話してて。
元の世界に帰ったら、千夏ちゃんに
みんなでメイクを教えてもらおうって話、
してたんだけど。
その時、しおちゃん言ったんだ。
「いいなぁ」って。
……今思えば、なんかその返事って、他人事っぽい。
その場に、しおちゃんはいないみたいだ。
……ほんと、今更だけど。
[ じっと入口の方を見ている阿東をちらりと見て、
また誠香はペットボトルに視線を戻した ]
……う。うん。なった、んだろうな。
なった記憶はないけど。
[ 人形になった。
誠香にその記憶はないけれど、
意識が途切れた後に、きっと代わったのだろう。
あまり考えたくないけど ]
怖い……はあった。痛い……はそれほどでも。
でも、それよりなにより……恥ずかしかった。
[ あれは誠香の悩みで、恥だ。
恥の具現化に襲われたようなものだ。
考えただけで恥ずかしい。
あれが見られたとか、消えたくなる。
頭を抱えてうわーっとか叫びたくなる。やらないけど ]
阿東は?
[ ぶるりと身震いをする姿に、
あまり引き留めてはいけない気がしたのに、
聞かずにはいられなかった。
真夜中の病院前は、なんだかまだ非日常にいるように
錯覚する。
寒そうに立っている阿東は、当たり前だけど
年相応の男子高校生の姿をしていて、
勝手に苦手意識を抱いていたというのに、
どういうわけか兄に似ているようには見えなかった** ]
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──現在・病院内──
うん、私も見たよ。変な夢
閉じ込められて、最後には……
[ 手首を摩るのを見れば、心乃は自らの胸元を撫でる。
……痛くも痒くもない、なあ。 ]
[ もしも、もしもだよ。
あの夢がこっちとリンクしてるなら。 ]
あの世界で、死んじゃえばさ、
こっちに帰って来れるってことなのかな
……だったら、向こうに戻って、
[ 戻って、しおりちゃん、のこと。
──と、言いかけて、口噤む。
もう、なにかを与えられると思っていない。
そもそも、向こうに戻れるかすら怪しい。
物騒なお話はやめにしたいと思うのに、
無機質な白い光が照らす中では、
心はざわついたままだった。** ]
──現在/病院前──
ああ。
愛宮と綿津見が帰って──、
たぶん、そのあとかな。
最後に時計見たの、8時50分前だったし。
……タイミング的に、
福住もそうだったのかなって。
[ 物わかりのいい子の顔して、
礼一郎は投げられた問いにうなずく。
あのとき、順番が来たのだと思って、
それは今も感覚として変わらない。
残れなかったなあ。残してきちゃった。
そういう気持ちがないわけではないが、
どこか、仕方ないような気もして。]
……いいなぁ、か。
気づいてたのかな、あいつ。
自分が死にかけてるって。
気付いてんならさ、
教えてほしかったな。
……こっちのわがままだけどさ。
[ 礼一郎にだって、
そいつの何が嘘で本当かなんて、
察しようもないから、寂しいなって。
ぼんやりと口にしてから、
ふと、福住のほうに視線を向けた。]
今さら、つったってさ、
そのとき気づけなくたって、
そんなの仕方ねえよ、だから、
……あんま気に病むなよな。
俺なんか、ソーマにまでさ、
葉野は違うらしいぞーとか言っちゃった。
[ 礼一郎はちょっと後悔している。
あれもまた、無責任な発言だったね。
今からでも訂正できないかなって、
念じてみたって届かないし、
ここからできるのなんて祈るくらいだ。]
……恥ずかしい、か。
なんかさ、みんなの人形、
痛そうだし、怖かったじゃん。
そうじゃないといいなって、
……思ってたんだけど、
恥ずかしいのもいやだな。
[ 想像してみる。相当いやだな。
いやだけど、無事戻って来れたのはせめての救い?
避けられてんのかなあとか思ってたのが嘘みたいに、
礼一郎の口からはすらすらと言葉が出てくる。]
……どうなったか知らねえし、
別に、聞きだすつもりもないけど。
大変だったなあ、お疲れ様。
そんな思いしたならなおさら、
ちゃんと帰ってこれてよかったわ。
[ しみじみというけど、
礼一郎の言葉はちょっと他人事みたいだな。]
[ でも事実、礼一郎の幕引きはあんなだったし、
同じように聞き返されて、うーんとうなる。
なんていうかなあ、首をかしげて苦笑した。]
俺は……なんだろ。
思ったよりあっけなかったわ。
[ あっけなかったし、とっくに知ってた。
わかりきってて見ないふりしてんのに、
目の前に突き付けられてるようで、]
ま、いい気分にはならなかったけど。
[ そんな感じですかねって笑って、
まあ、細かい話は先約があるからさ、
先に伝えなきゃいけないやつがいまして。
また視線を入り口の方に戻して、
言葉だけを福住に向かって投げていた。]
中入んねえの? 風邪ひくよ。**
メモを貼った。
メモを貼った。
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―― 現在:病院前 ――
ああ、それなら僕と一緒だ。
[ 心乃とまなが帰って、その後。翌朝。
自分がマネキンと代わるのも、
誰かがマネキンと代わったのを発見するのも嫌だった。
けれど、誠香に選択の余地なんかなかった。
退場は強制だった。
舞台からはけるにしても、強引な展開過ぎない? と
物申したいところだ ]
ということは、今残ってるのって……4人?
[ それって、もう、紫織の世界が、
それだけの人数を留めるので精一杯なんじゃないか。
そんな想像が頭に浮かんだ。
言葉にしそうになって、飲み込む。
精一杯の理由が、紫織の容態のせいだったら。
そんなことを考えてしまうととても口には出せなかった ]
……わからないなあ。
気づいてたのかもしれないし、無意識だったのかも。
[ 購買で、手を濡らして、
手術前の医師のようなポーズをしていた
紫織の姿を思い出す。
そんな大きな秘密を抱えているようには見えなかった。
紫織はいつも通りに見えた。
演技が上手だったのか、本当に気づいていなかったのか、
誠香にはわからない。
あの「いいなあ」が、気づいていて言った言葉なのか、
紫織も気づいていない無意識が言わせたのかは
わからない。
どちらだったとしても、知ってしまった今となっては、
寂しい言葉だったと思う ]
……さっすが、委員長。
[ フォローを忘れない阿東に、
誠香はちょっと笑ってしまう ]
ありがとう。阿東もな。
死ぬつもりないって本人が言ってたんならさ、
信じない理由なんてないし、
信じたいって思っちゃうのも当たり前だし、
だから、気に病むなよな。
[ 同じ言葉を返して、できるだけ明るい声を出した ]
それに、もう、4人だろ。
そこまで容疑者が絞られたら、
さすがにもうわかるんじゃないかな。
しおちゃんが気づいていなかったとしても、
気づく頃じゃないかな。
[ 希望的観測だけれども。今はそう願うしかない。
あの校舎で、マネキンに代わったクラスメイト達は、
きっと帰ったのだと願ったみたいに ]
……恥ずかしいのも、すんごい嫌だったよ。
[ 自分の死因はあまり思い出したくない。
怖かった。苦しかった。痛み……はあまり覚えていない ]
4人があれ見たかもしれないと思うと、
どんな顔して会えばいいのかわからなくなる。
[ 少なくとも怜は見たんだろうなあ、と思う。
絶対探すって言ってたし。
マフラーほしいなんてお願いしちゃったけど、
悪いこと言っちゃったなあ。
きっと怜は約束守ってくれると思うけど、
あそこから誠香を発掘するのは大変だろう。
……だめだ、考えただけで羞恥心で悶えそうになる ]
うん。聞くな。言いたくない。
[ 聞き出すつもりはない。その言葉に食い気味に返事した。
言質はとった。絶対言わない ]
阿東も。お疲れ様。
……阿東ってさあ、委員長だからってさ、
責任感強いよな。
なんかさ、結局あそこはしおちゃんの頭の中の世界でさ、
学校だったのは見た目だけだったのに、
すっかり学校気分でさ、そのせいで、
阿東もいつも通り委員長しなくちゃ
いけなかったかなって。
[ 労いの言葉にそう返す。
阿東はあんな所でも委員長だったなって ]
色々仕切ってもらったり助かったけど、
悪かったかなーとかもちょっと思ったりして。
ありがとな。
[ 8組はいいクラスだと思う。
文化祭だってみんな協力して、
高い評価をもらった。
そして、そんなクラスの雰囲気に貢献しているのは、
間違いなく委員長と副委員長の存在だと、
誠香はそう思っている ]
[ 阿東のあちらの世界でのおしまいは
“あっけなかった”らしい ]
そっか。
[ 誠香は突っ込んでは聞かなかった。
自分が突っ込まれたくないというのもあるし、
なにより、人それぞれ形はどうあれ死にざまだ。
あまり愉快であるはずがない ]
ま、お互い無事に帰れてよかったってことで。
あとは、残ったみんなの健闘を祈るしかないなあ。
[ 入らないのかと聞かれて、入るよ、と答える。
右手にジャスミンティーのペットボトルを持ったまま、
左手のブラックの缶コーヒーを
コートのポケットに入れて、
ゆっくり、病院の入り口に向かって歩き出した* ]
メモを貼った。
──現在/病院前──
……やっぱり。
また誰かいなくなんのかなって、
ヒヤヒヤしてたら自分の番なんてさ。
一瞬、訳わかんなかったわ。
[ 選択権、ほしかったですよね。
それともあの退場も実は、
無意識下に自分の意思が反映されてたり?
今となってはわからないけれど、
強引すぎるってのは同感です。
福住が残り人数を数え始めて、
礼一郎も試しに指折り数えてみる。]
[ 人混みが苦手、という人は、結構いると思う。
好きな人の方が珍しい?そうかも。
蒸し蒸しするとか、においがだめとか、
多分理由は色々あるし、あたし自身もわかるところで、
ただ、ほんとのほんとなあたしの場合……、
なん、だろうな。 ]
[ 二人ずつ消えているとして、
礼一郎と福住が消えたら、4人。]
たぶん、そう。4人。
あの校舎に4人ぽっちか。
さみしそうだな。
[ ひとりになったらもっとさみしい。
あんな歪に膨らんでっちゃってさ。
礼一郎も、縁起でもないことを考えていた。
さみしいだろうからさあ、帰ってこいよ。]
……笑うとこじゃねえし。
[ 真面目に言ったつもりが、
笑いが返ってきたから複雑である。
でも、続いた言葉は明るく、
礼一郎を励ますようである。
そのまま自分に跳ね返ってきた言葉に、
礼一郎は一言、言い訳みたいに言う。]
……嘘には思えなくてさあ。
ありがとな、福住。
[ さすがにもう世界の主の正体に、
みんな気づくころじゃないかと福住は言う。
なるほどな、と礼一郎は思って、
同意するようにひとつうなずきを返す。]
確かに。あと4人だもんな。
昨日、ソーマと話しててさ、
あいつ、結構みんなと話して、
世界の主が誰かって、すげえ考えてたし……、
福住のことも言ってたよ。
なんだっけ、レイと二人で話ついてる?
……仲良しか。マジ仲良いよな、おまえら。
[ あのときは結構真面目に話してて、
ソーマも無邪気だったので水差せませんでした。]
[ 埋もれそうとか、溶けそう、とか、まぎれそう、とか。
そういう感じなんだろうな、って 思う。 ]
……うん。
[ どんな顔して会えばいいのかって、
福住は本心から言っているようで、
礼一郎にはその気持ちもわからなくない。
わからなくないけど、
礼一郎は思ったよりも受け入れていて、
それは人形のあり方のせいかもしれないし、
単純に礼一郎の心境の変化かも。あるいは、]
合わせる顔がないって思うのもわかるし、
思っちゃうのはどうしようもないけど、
たぶんあいつら、福住の人形がどんなだって、
単純に、おまえのこと心配したんじゃないかな。
[ 礼一郎だって、
友人を模した人形を見るとただ胸が痛くて、
無事でありますようにって思うだけだった。]
……だから、うーん、
気にしすぎんなっつーのも、
無理な話だと思うけどさ。
[ それに、あんまりそういうこと言うと、
友だちなめんなって話になりかねない。
これは単純に、礼一郎の経験則ですが。]
ンな強く言われなくても、
聞かねーっつってんじゃん。
[ 思ったよりも返事の勢いがよくて、
礼一郎は一瞬たじろいで反論する。
聞かねえよ。ってもう一度言って、
それから、こそばゆい言葉に耳を傾ける。
あんまりそういうこと言われると、
それこそどんな顔すりゃいいかわからないだろ。]
委員長する、か。
ほんとにできてたかなー、
俺、ビビり散らかしてたしな。
[ 自虐に逃げる。逃げようとして、
向けられた「 ありがとう 」に目を細めた。
でも、もしできてたとして、
俺がそうしたくてやってたんだから、
全然、悪くなんかねえよ。……ありがとな。
[ 副委員長にはね、
礼一郎もお礼を言おうと思います。
けど、礼一郎に関しては、
ほんとにやりたくてやってんだから、
気にしないでねって、それは本心だよ。]
[ そっか。とあっさりした相槌。
うん。と礼一郎はうなずいて、
福住がそうしてくれたことに安堵する。]
だな。
あとは、葉野と残ったやつらのこと、
信じて待ってるしかねえよ。
[ 礼一郎もそう言って、
福住のあとから、病院の中へと向かった。*]
[ ちなつちゃん、と、呼んでしまったあの時、
あたしはあのこに、
涼しい場所だよって日陰を示したけれど、
あの場所、ほんとは
ひとのいないところでもあったんだよなあって。
他人の人生、あまり口出しするものじゃあないし、
あたしはどんな人生であれみんながすきだけれど。
……みんなもみんなで生きづらいんだろうなって、
当たり前のことを思った気がする。
差し出したカイロを見て、ふと。
[ 手元の缶は、いつかの飲み物と違って、熱すぎるほど。 ]
メモを貼った。
*
[ あたしは立ちっぱなしでマフラーに埋もれている。
病院の入り口から足音がしているから、多分、
帰ってきた人が段々増えてきているんだ。
あたしみたいに。
夢のなっちゃんは落ちて、砕けて、"死んでいた"。
現実のなっちゃんはここで祈っている。
夢から覚めたみんなは、きっと、
そのひとの色をうつすマネキンと、
入れ違いになるんだろうな、って、
あたしは ぼんやり考えていた。 ]
[ 帰ったときのこと、実を言うと覚えていない。
あたしの夢を見ていた"あたし"と出会って、
夢が終わるのを自覚すればあっという間だ。 ]
[ もういられないのなら、
息苦しい現実に帰ろう、ただそれだけだよ。
あたしに何かがあるとするならば。 ]
[ マネキンだって、傷ひとつついてないのだろうって、
よく分からないけど、確信がある。
"人波"に紛れて蒸発してないかとまで思うけれど、
どうかなあ。多分無理かなあ。
まあ、なんでも、
残る人が怖くならないものだといいや。
それだけならだいじょぶ。きっとね。 ]
[ そこそこ整えてあるあたしの爪が、
缶のプルタブを引っ掻いている。 ]*
-- 現在/駐輪場 --
[ 探し物はなんでしょう。
毎日のように乗っていた自転車の鍵。
修学旅行で買ったキーホルダーがついたやつ。
どこにあるのかなあって、愛車をみるけど、
鍵穴には鍵はさされてなくて。
結局さっき鍵しめたんだっけ、と曖昧な記憶を探る。
……うーん。わかんない。 ]
落ちてるのかな。
[ どうかなあ、と千夏はため息をついて、
スマホの明かりを頼りに地面を照らす。
びゅうと風が吹いて寒さに震える。
こういうときに、あったかいカイロは心強い。* ]
メモを貼った。
── 現在:病院内 ──
[ 最後には。
自分から聞く気にはなれそうになかった。
恐らく、夏美が一番初めに目覚めたことや
自分がその次辺りに目覚めたことを考えれば
目覚める条件というものは分かりやすい。
たぶんみんな死んで帰ってきた。のかな。
みんなあーちゃんに殺された、
……ってことはないだろうけれど。
落ち着かない指先が組み合えば、
無機質な光に当たり前に影を落として
なんてことなくそれを眺めている。 ]
[ ただひたすらに、ここが現実。
っていう事実だけを見続けてる。 ]
向こうに戻って……って、
どーやってすんの…?
[ 声が震える。
なにかを与えられるとは思ってない。
でも手を伸ばして届くならと思ってしまう。
あの時伸ばして届くことのなかった手が
もし、友達に、届く可能性がまだあるなら。 ]
眠ればいい?
……死にかければいい?
どーやったら、ちゃんと、また、
紫織さんに会えんのかなぁ。
あの世界に戻れんのかなぁ。
[ 静かな病院が憎い。
馬鹿みたいな音量でロックでもかけてほしい。
へたくそなギターでいい。全然かまわない。 ]
フツーに。マジびびったけどさ、
分かってたら逃げねーから…。
間に合わない?かな?
説明なしとかずりーし!
もー一回チャンスくれてもいいじゃん?
[ 組む手の先が冷たい。死んでるみたいだった。
いっそこのまま死にかけたら、
都合が良いのかもしれない。 ]
紫織さんを殺すのだって
分かってたらおれ、やったよ。
それでこっち戻ってくれるっていうなら
別にいーよ…マジで。
[ 口を噤んだその先を続けた。
本当に。この現実に比べてしまえば本当に。
夢の世界で友達を殺す方がマシだ。
断言する声はやけに平坦になる。 ]
[ どうやったらあの世界に戻れるのか。
友達が死ぬのを防ぐとこが出来るのか。
ぐるぐると、永遠に同じことを考える。
だれかおれから正気を奪ってほしい。
って、郁斗は切実に思う。
言ってることはすでに支離滅裂でも。 ]
……おれさあ、何も出来なかった。
[ とめどなく流れ落ちた言葉は
それを最後に一旦止まる。
せっかく自分を呼んでくれた友達に
喜多仲郁斗は手を伸ばせなかった。 ]*
メモを貼った。
―― 現在:病院前 ――
僕は油断しきってたな……。
[ ヒヤヒヤしていたという阿東はやはり委員長だと思う。
誠香はというと、寝起きですっかり油断していた。
油断していなかったら、入った教室の扉は、
閉めなかったと思う。
それで回避できたかというと甚だ疑問だけれども ]
そうだよなあ。
人はどんどん減ってくのに、
校舎はどんどん増築してたし。
あれからまた増えたのかな。
[ 寂しそう、という感想に同意した。
残っているのは紫織意外だと怜と辰美と連城。
冗談で思い浮かべた逆ハーレム、
ほんとに実現しちゃったよ、なんて誠香は思う。
男子3人に囲まれて説得される紫織。
いじめてるように見えないか少し絵面が心配ですね ]
褒めてんのに。
[ 笑ってしまったら、なんだか阿東は不本意そうだった。
委員長はこんな時でも委員長なんだなあ、と
感心と安心とちょっとおかしかったのと。
茶化したつもりはなかったので
素直に褒め言葉と受け取ってほしい ]
クラスメイトのこと、いちいち嘘ついてるんじゃないか
なんて疑うやつの方がやだよ。
仕方ないって。
……そもそも、無自覚だったんなら、
しおちゃんだって嘘ついたつもりなんて
なかったのかもしれないし。
[ 紫織が嘘をつく癖があることを
誠香はよくわかっていない。
なにしろいまだに辰美と紫織が付き合っていたと
信じているくらいですので ]
[ 連城の名前がでて、ああ、と誠香は頷いた ]
僕も連城とそういう話したよ。
その時に、あー、連城は違うなーって思った。
[ 夏美に似たマネキンの前で、確かそんな話をした。
遠い昔みたいに感じる。
確かあの時、辰美が夏美にかける布を
取りに行ってくれて……なんて思い返していたところ、
突然怜の名前が出てきて、
ちょっと不意打ちを食らってしまう ]
あー、氷室ともそういう話したんだよ。
お互い、あんな殊勝な遺書は書かないな、で
意見が一致してさ。
仲はいいよ。今絶賛喧嘩中だけどな!
[ 無駄に胸を張っておいた ]
[ 胸を張ってはみたものの、
きっと心配したと言われてしまっては、
ちょっとしおしおとしてしまう。
正論だ。ドのつく正論だ。
誠香だって見つけるたびに心配したし落ち込んだ ]
……そうだよなあ。
あっちにいる間は、マネキンに代わったらどうなるか、
誰もわからなかったんだし。
帰れるっていうのも希望的観測だったし。
心配、させたよな。きっと。
[ 先に帰られたら「抜け駆けした」って
苦情を言ってもいい。
辰美とそんな約束もしたんだった。
ジュース賭けようって言わなくてよかった ]
うん。そーする。
[ 気にしすぎない。
できるかどうかはわからないけど、努力はします ]
[ 食い気味で念を押したのは念のためです。
少しくすぐったそうな顔に見える阿東に、
してたよ、と誠香は言葉を重ねた ]
そりゃびびるよ。わけわかんなかったし。
でも、寝る場所の段取りとかさ、
ごはんをここのんが作ってくれたりさ、
なんとなくまとまりみたいなのが出たのって、
阿東とここのんがいてくれたからだと思うし。
やりたくてやったことでも、
やってもらった方はお礼を言うもんなの!
助かった!
……あと、実をいうと
今までちょっとだけ阿東のこと苦手だった。ごめん!
[ どさくさで謝りました。
あの校舎で最後に謝りまくったので、
ちょっとハードルが下がっていたのかもしれません ]
[ でもやっぱり少し、決まりが悪かったので ]
辰美が頼りになりそう。
連城は情に訴えるかなあ。
氷室は……なんかちょっと心配。
[ 阿東と目を合わさずにそんな予想をしつつ、
病院に足を踏み入れ……ようとして。
ふと、振り返った。
まだ、帰ってこないのかな。
頭をよぎったのはそんなこと ]
阿東、先行ってていいよ。
僕、少しだけここで待ってる。
[ あの校舎で3日目の朝を迎えたのに、
こちらでは大した時間はたっていなかったようだった。
それなら、4人がもうすぐ帰ってきたり
しないだろうか。
そんなことを思ったので* ]
メモを貼った。
メモを貼った。
──現在/病院前──
……福住って意外と肝座ってんな。
[ 礼一郎はずっと怖かったよ!
誰かがあんな人形になるのもいやで、
だけど、現実に帰れないのもやだった。
駄々っ子みたいにあれもいやこれもいやって、
ぶるぶる震えながら過ごしていたもんで……、
いや、これは大げさな言い方だった。]
また増えてんのかなあ。
俺、全部は全然見れてなくて、
最後に部室棟? が増えてんの気づいて、
見に行けなかったなあって思った気がする。
[ 男子3人に囲まれる葉野紫織。
いやあ、あいつらデカいからな。
氷室はさておき、他ふたり。
デカいから囲まれたら迫力あるだろうな。
可哀相に、礼一郎や福住を追い出すからだ。]
褒められてる気がしねえ。
……そうだよな。
ほんとに、忘れてたのかもしんないし。
[ 礼一郎も、葉野の悪癖なんて知らない。
冗談のセンスがないってことは知ってるけど、
常習的なものなんて知らずに、同調する。]
うん、俺と話したときも、
ソーマ、自分は大丈夫だって言ってた。
[ 礼一郎はそれがうれしかったんだよね。
少しだけ気分が浮上する話。
続く言葉も、礼一郎にとってはそう。
……へえ。
言われてみりゃ、確かになあ。
俺、全然そんなこと言ってやれなかった。
レイは、おまえは違うって言ってくれたのにさ。
……福住、ほんとよく見てるよな。
だからあいつが一緒にいるんだろうけど。
[ 寄ってくる女は俺の顔しか見てない! なんて、
あたりまえのように言ってた氷室を知ってるから、
礼一郎はなんだかちょっとうれしい。微笑む。が、]
……て、は? 喧嘩してんの?
ンなことで胸張んな。マジかよ。
そのテンションで言えるんなら、
ハイハイ当事者でがんばれ。
……って感じはするけど。
[ 心配の種が増えたって、
礼一郎はちょっと苦い顔をしている。
あいつ、あいつなあ……って、
氷室のほうの過去の所業を思い出して呻いた。
もちろん悪いやつじゃないけど、
すげえ良い友だちだと思ってるけど、
見ててハラハラするとこあるよね、氷室って。]
ま、友だちだからな。
だから、福住が無事に帰ってるだけでさ、
あいつらよかったーって言うよ、たぶん。
[ そりゃ心配はするでしょう。って、
礼一郎は責めるんでもなく微笑んでいた。
飯、うまかったよなあ。
[ って、礼一郎はそっと話を逸らす。
照れるじゃないですか。というか、
ほんとに礼一郎、あんまり仕事してないです(笑)
とはいえ、過ぎる謙遜は鬱陶しいよな。
それなら、「 どーいたしまして 」って言って、
言ったんだけど、カミングアウトが急すぎる。
……あーーー、
もしかしたらそうなのかなって、
ちょっとだけ、ちょっとだけど思ってた。
でも、人の好き嫌いなんてさ、
誰にでもあるもんだし、謝んなよ。
つーか、俺が気づかないうちに、
なんかしてたのかなって……、
[ そうならごめんなって、
礼一郎は先回りするように謝って、
それから、穏やかな口調で尋ねる。]
それもさ、
詳しくは聞かないほうがいい話?
[ 別に、無理強いするわけじゃないからねって、
流れてく話題にはしっかりと乗っかった。
ユキもソーマもレイも、
友達思いの良いやつだし、
やさしいし、頭がいいし、大丈夫。
……だと思うけど、
まあ、レイが心配なのはわかる。
[ 同調するようにうなずきながら、
礼一郎はいつしか福住を追い抜いていた。]
そ? わかった。
冷えねえうちに中入れよ。
[ 体調崩すと元も子もないぞ。
……とは、さすがに言わなかったけど。
ひらりと手を振って、ひとり足を進めた。*]
メモを貼った。
──現在/病院──
[ 明るい。
外から見ていたのより、
ずっと明るい建物の中に足を進める。
履きなれたスニーカーは、
別に足音をうるさく立てるでもないけど、
そこがあまりにしんと静かな空間だから、
礼一郎の歩みは少し、慎重になってしまう。]
[ 明るい空間に、何名かの友人がいる。
礼一郎はそれをちらりと見ながら、
椅子に座るのはなんだか気が引けて、
邪魔にならない場所に立つことを選ぶ。
立っている友人のもとへ、
静かな歩調で歩み寄っていって、]
……綿津見は座んなくていいの?
[ とっさに適切な挨拶が見つからず、
こんばんはも何もなく、礼一郎は声をかけた。
こんばんはおかえりただいま。
どれもなんかちょっとしっくりこなくてさ。
なんでもないことのように尋ねて、
「 もう結構待ってる? 」って、
友人の状況を気にするようにさらに質問を重ねた。*]
メモを貼った。
―― 現在:病院前 ――
寝起きだったからだよ!
[ 肝座ってんな。
褒められたけど、実情はそんなものじゃない。
そういうことにしておけばいいのに、正直に白状した。
緊張しながら朝ごはん食べるなんて美味しくないし。
その結果一口かじっただけで朝ごはん終了したけど ]
僕は6階までと、あと地下は見たけど、
体育館が増えたらしいっていうのは見てないな。
[ 見に行った方がよかったのかなあ、と誠香は思う。
天井や壁のインクの意味が分からなくて、
ただ閉口しただけだったけれど、
そういえば、紫織はCG研だった。
チラシのデザイン、アドバイス貰ったじゃないか。
インクと縁のあるのは、紫織だった ]
褒めてるって!
ナチュラルにフォローとか
気遣いの言葉が出るってこと。
委員長だなって思っただけだよ。
[ 褒められてる気がしなかったらしいので、
解説を添えた。
誠香はこんな嘘はつかない。
もっと取り返しのつかない嘘はついてるけど。
そんな誠香に、紫織を嘘つきと責めたりなんて
できるわけもない ]
連城はほんといいやつだよなー……。
[ 自分は大丈夫だと言ってた、という連城の話に、
誠香はそんな感想をこぼす。
そう、連城は情に厚くて健全な空気が出ていて、
だから誠香だってさらっと聞けたのだった ]
[ 怜との関係を褒められるのは、
なんだか妙にむずむずする。
なんというか、阿東に裏がなく、
純粋に褒めてくれている感じがするのが分かるから、
余計に。
そんな大層なものじゃないのになあ、と思うわけで ]
んー……氷室は、向こうから僕に聞いてきたんだよ。
校舎の様子がおかしいってなって、割とすぐくらいに。
氷室は結構最初の頃から、あのメールの送り主を
探そうとしてたから。
別にそんな大層なことしてないよ。
ふつーに友達付き合いしてるだけ。
友達なんだから当たり前じゃん。
[ 謙遜でもなんでもなく誠香はそう言ったけど、
続く言葉で阿東の顔を曇らせてしまった。
ごめんなさい。とは正直思ってない ]
大丈夫。悪いのは氷室だから。
帰ってきたらがっつり罵倒して
説教するって決めてるから。
[ 堂々と言い放った。
なにしろこっちには辰美という強い味方がいるので、
負ける気がしない。
しかし、喧嘩の件と誠香が心配をかけたって話は
別の話なので、そこは申し訳ないなと思う ]
他人事みたいに言ってるけど、阿東もだからな?
きっと阿東のことも心配してるよ。
[ まさか泣かせてしまったとまでは想像してないですが。
お互い罪作りですね ]
[ 絶妙のタイミングで
さりげなくカミングアウトしたつもりだったけれど、
やっぱりさらっと流れるなんてことはなかった。
しかも気づかれていた。
誠香はとてもばつが悪い ]
あー……気づいてたんだ。
いや、好き嫌いとかそういう問題じゃないし、
阿東に落ち度は全くないんだ、ほんとに。
[ 詳しく聞かない方がいいか、と気遣われて、
少し躊躇って、けれど結局首を横に振った ]
……僕さ、おにーちゃんがいたんだよ。
うん、いたんだ。過去形な。
すっごく仲良くてさ。
でも、3年前に、……事故、でさ。
なんとなく、阿東と雰囲気が似てたんだ。
そんな気がしたんだ。
だからさ……思い出しちゃうから、苦手だった。
けど、勘違いだったかも!
なんか今日は、あんまり似てる気がしないし!
[ ちゃんと話せた。
兄の話はずっとクラスメイトの前では封印してたけど、
ちゃんと話せた ]
[ とっとと話題を変えようと、少々強引に変えた流れにも
阿東はちゃんと乗ってくれた。
そして、同意されてしまった ]
……だよな……。
時々強引で馬鹿だから心配だよ……。
[ 校舎内時間で昨夜から、友人への暴言が止まらない。
信じているけど。
そんなことを考えたから、振り返ったのかもしれない ]
ありがと。大丈夫だよ。
[ 冷えないうちに、という言葉に頷いて、
一足先に中に入っていく阿東に手を振った* ]
メモを貼った。
[ 開けたいのか開けたくないのか、
多分どっちでも良いのかも。
ぼんやりしてたり、夢中になったりすると、
手元の食べ物食べられなかったりするよね。
かりかり、かるーく、
数度引っ掻いた後に、
─── いいんちょ、
[ あっ、って感じで、すがたを見上げた。
こんばんはおかえりただいま。
の、どれを言うのが良いのかな。
いっそおはようとかが一番良い?どうかな。
どれもちょっと、呑気だったりしますかね。
でも、うん、おはよういいんちょ。
お互い血まみれなんてことがなくて何よりです。
足跡も無くて、
足音だってべたつくものじゃない、現実世界。 ]
……なんだろ、待ちきれない、って言うのも、
ちょっとおかしかったりするけど……。
そんな感じ、かも?落ち着かない、みたいな。
[ ……失礼な言い方をしてしまえば、
結末をいち早く知りたいような、そんな感じだ。
座ってたって変わらないけれど、あたしは、
すきなみんなのこと、
きっと、落ち着いて待っていられない。 ]
[ なっちゃんと、喜多仲君の後に来たよ。
ちかちゃんはおんなじぐらい。
なんて足してみるけれど、どれくらいなんだろ?
時間見て来たわけじゃないから、ちょっと曖昧。
夢の中と違って、
こっちはちゃんと一分一秒進むのにね。 ]
[ 座るのは、いいかな。
いいんちょは座らない?って、
あたしからも聞いてみよう。
なっちゃん……の、マネキン発見のときには、
大変苦労をかけました。あたしはなんとか元気です。
両手があいたら、もしかしたら、
ばっちりダブルピースきめたかも。
……冗談です。でも写真映えする自信はあるよ。
閑話休題。
手を塞いでる ぬくい缶を撫でつつ、
─── そういえばさ、なんて、呟きひとつ。
問いかけに重ねるみたいに。 ]
いいんちょも、
最後までいられないひと、だったんだね。
[ ちょっとだけ上にある、いいんちょの顔を見ている。 ]
……あ、えっと、否定じゃないよ。
単純に、終わりになった映画館には
いられなくなるとか、
座席が足りなくなるみたいな感じ……って、
しおりちゃんとそんな話、あっちでしてたの。
それで……あたし、なんとなく、
いいんちょはずっといるんじゃないかって、
どこかで思ってた。から。
[ いいんちょのイメージは、"委員長"だし?
なんとなく、ほら、
こういう時どうしたって任せたくなるって、
フツーのイメージがあるわけで。
多分、そういうのが良くないのかもしれないけど。
例えば、もし、エンドロールの一番最後まで、
残ったひとたちに理由があるとするなら、きっと、 ]
……あたしは、自殺したってひと相手にして、
多分、連れ戻すとかできないしさあ。
[ いいんちょは、できたと思う?なんて。 ]**
メモを貼った。
──病院前──
それにしたって、
十分肝座ってるわ。
[ これは、語尾に(笑)がつくやつです。
寝起きだったか、そっかそっか。
なんて平和なやり取りだろうな。
インクを葉野に結び付けられなかったのは、
礼一郎ももちろん同じだった。
世界の主の正体が分かった今も、
どうしてあそこまで。って思っている。
全部見に行ってたら、何か違ったかな。
今さら考えたって、どうしようもないけどさ。]
……あーあー、
ありがと。照れるからそのへんで。
[ 続けられた解説に、
ストップ、と手を突き出して制止をかける。
嘘じゃないのはわかってるよ。
わかってるから、それ以上言うなよ。
礼一郎が調子に乗るだろ。なんてね。
別の友人に話題が移ろったことを、
これ幸いと、大きくうなずいておいた。
本当に連城はいいやつだよ。ほんとに。]
[ 福住がむずかゆかろうが、
礼一郎の知ったことではない。
当たり前じゃん。と福住が言い切るそれが、
あいつにとってはそうじゃないって、
礼一郎は知ってる。付き合い長い特権でね。]
福住にとってはあたりまえでも、
あいつにとってどうかはさ、
本人に聞かなきゃわかんねえだろ。
[ それ以上は、
礼一郎の口から言うことでもないなって、
いきり立つ福住を応援するだけに留めておく。]
言ってやれ言ってやれ。
……泣かさない程度にな。
……何があったか知らねえけど、
あいつ、計算づくです〜って顔して、
勢い任せだし、強情っぱりだし、
……たまに大事なとこ抜けてるし。
一回がつんと言ってやってくれ。
……屍を拾う覚悟はしておく。
[ 捨て身特攻そろそろやめてくれません?
って礼一郎は思ったりしてるんだけど、どうかな。
あ、もう泣かせちゃった? お互い罪深いね。
他人事じゃないことくらいわかってるって、
礼一郎は「 わかってるよ 」って静かに笑った。]
[ 福住は打って変わって、
ばつの悪そうな顔をする。
おにーちゃん。という言葉が流れてきて、
今度は礼一郎がなんともいえない気分だ。]
……そっか。
辛いこと思い出させてごめんな。
仲良かったきょうだいに似てるってのは、
なんかちょっと褒め言葉な気もするけど。
……良いお兄さんだったんだな。
[ そっか。って礼一郎はつぶやいたけど、
似てた。なんて、気のせいじゃないかなあ。
あるいは、もしかすると、]
ま、勘違いかもしれねえし、
……似てなくなったのかもな?
[ はは。礼一郎は笑った。いろいろあってね。
なんのことかなんてわからなくていいです。]
わはは、よくわかってらっしゃる。
ついでに友達思いで後先考えない。
[ 流れるようなけなし文句である。
リズミカルにいくつか付け足して、
礼一郎はひらりと手を振ってその場を去った。*]
―― 現在:病院前 ――
[ ペットボトルのふたを開けて、
ジャスミンティーを飲んだ。
ほうっと白い息を吐きだす ]
……しおちゃん。
[ 届くわけないってわかってるけど、
それでも誠香は呟いた。
見上げた空に雪はなく、冬の星座が瞬いている ]
僕さ、あの校舎であんな死に方してさ、
正直、恥ずかしくて恥ずかしくて、
思い出すだけで死んじゃいたくなるくらいなんだけど、
なんでかな。一回死んだからかな。
前、向かなきゃって、思えたんだよ。
[ 未来のことを考えるたびに、
そこに自分がいてはいけない気がした。
兄のいない未来で、
笑っているかもしれない自分が許せなかった。
けれど今は、
いつまでも過去にしがみついていては
いけないような気がする。
兄のいない現実に、真正面から向き合わなくては
いけないような、そんな気がしている ]
……しおちゃんが抱えてるものがなんなのか、
僕は知らないし、安請け合いなんてできないけど。
でも、一回死んだ気になったら、
案外生きてけるんじゃないかな。
どうかな?
[ 帰っておいでよ、って。
テレパシー、飛ばしてみた。ぴぴぴ* ]
──現在・病院内
もう一回、チャンスほしいよね
私も、わかってたなら、しおりちゃんと
のんびりお話なんてしてなかったよ
ごはん、作るとか、それよりも先に…
……ううん。それよりももっと早く
しおりちゃんが思い詰める前に、
この手を伸ばしたかったなって思うよ
[ ねえ、神様。私たちにもう一度、
彼女を助ける機会を与えてはくれませんか?
何かを与えられなくとも、
そう、この指先が少しでも掠められたなら、
未来は少しでも変わっていた? ]
[ ただ、なにもできなかったと言う彼と
愛宮心乃は同じことを思っていた。
自分のことでいっぱいで、
他人のことを考えられないなんて
敬愛するマザーが聞いたら、呆れてしまう。
でも、たぶん、きっと、
これは私の単なる妄想に過ぎないお話だけど、 ]
しおりちゃんは、与えてくれた
自分を見つめ直す機会を
[ 言葉が悪いかもしれないけれど、
しおりちゃんが先にやっていなければ、
私自身が、あの立場にいたかもしれない。
……と、心乃は思っていた。
しおりちゃんが、行動を持って示してくれたのだ。
きっと、そうなんだ、って思いたい。
命≠フ大切さを見失っていたのだ、私は。
ただ、マザーのように悪意ある自分と
熱い抱擁を交わす日はまだ遠いかもしれないけれど。
生かされているという事実を鑑みて、
私は、私らしく℃v考してみていた。 ]
私にできて、喜多仲くんにできないこと
喜多仲くんにできて、私にできないこと
……きっと、なにもできてないことないよ
[ おしるこ缶を、ぎゅと握る。
すこしぬるくなり始めていた。 ]
まだ帰って来てない人たちもいる
私たちにできて、彼らにできることと
彼らにできて、私たちにできないこと
きっと、あるよ。まだ間に合うよ
[ 信じていたい、と思う。
私たちができることは、待つこと。
彼女が戻って来れた時に、
生≠共に喜び合う準備だろう。
喜多仲くんに言い聞かせるというよりかは、
自らに言い聞かせるようなものだった。 ]
ねえ、喜多仲くんだったらどう?
死の淵から帰ってきたら、
ともだちに、どうやって迎えてもらいたい?
[ なんて、愛宮心乃は微笑みを浮かべた。** ]
メモを貼った。
──現在/病院──
[ 見上げられて、目が合う。
礼一郎はおつかれさまも考えたよ。
結局どれもこの空気に馴染む気がせず、
単純に名前を呼んだりしたけどさ。
手持無沙汰みたいにいじられてる、
手の中の缶に気が付いて、
ロビーは飲食大丈夫なのかなとか、
何か買ってきたらよかったとか、
礼一郎はそういうことを考えたので、
呑気でも生きられていいですね、現実世界。]
……落ち着かねえよなあ、そりゃ。
[ ごくふつうの同意を返した。
ちらりと時計を見る。
もう夜はとっくに更けていて、
良い子の出歩く時間じゃないのにな。]
俺もいいかなあ。
落ち着かねえし、
なんか気兼ねしちゃって。
[ 同じように問い返されて、
礼一郎の返す答えも、
そんなにおもしろくはないでしょうが。]
[ あちら側ではいろいろありまして、
なんかもうほんとにいろいろあってさ、
あんなの苦労とか全然思ってないから、
気にしなくっていいんですよ。とは、
スマホの電波が回復したって、
礼一郎にアンテナが備え付けられてないから、
こちら側でも一向に伝わらないですね。
ま、重要な話ってわけでもないから大丈夫です。]
[ 非難の意図のない言葉を、
礼一郎は黙って、最後までお利口に聞いている。]
……ま、俺。
自分のことで手一杯だしなあ。
[ いいんちょはそんな大した人間じゃないですよ。
というか、人間じゃない説も浮上してたっけ。
なんでもないことのように礼一郎は言う。
責められてるって、
もっとちゃんとやんなきゃって、
ちょっと前なら思ったかもしれないけどさ、
今、こうして現実に立っていること。
が、答えなんだよね、たぶん。]
自分のことと──、
あと、ほんのちょっとくらい?
そんくらいしか抱えきれないの、
向こうもわかってたんじゃねえかな。
……ふつうに余裕のない人間なもんで。
[ 向こうって誰だか知らないけどさ。
冗談めかして、礼一郎は言う。
残らせてはもらえませんでしたね。
でも、礼一郎は正しい選択だと思う。
連れ戻すとかできない、と言う綿津見に、
礼一郎は「 俺だって無理だよ 」と笑った。]
……つーか、
そんなのできる人なんて、
実際いないんじゃねえかな。
葉野が帰ってこない、とかじゃなくて。
[ 伝わる? って礼一郎は首を傾げたけど、
たぶん、これじゃ無理ですね。さて。
うーん、と唸りながら礼一郎は言葉を捻りだす。]
無理やり連れ戻したってさ、
ハッピーエンドにはならねえし、
かといって、人の考え方とか行動とか、
他人が変えようと思って、
どうこうできるようなもんでもないしさ。
結局、こっちの勝手な思いをぶつけて、
あとは本人を信じるしかないじゃん。
[ 全部、礼一郎の憶測であり持論だけどね。
綿津見の隣に並んで、じっと前を向いている。
それこそ、信じて待つしかできないからさ。]
……綿津見も、
言いたいこととか、
聞いてほしい話くらいはあるだろ。
[ 礼一郎は結構たくさんある。
葉野と綿津見。
礼一郎よりよっぽど仲良しに見えます。
ほら、女子同士だし。……また偏見。
だから少しくらい……と言わず、
何かしらあるだろうってあたりまえに思って。
今度こそ言えたらいいよなって、
ぽつり、つぶやきをひとつ落とした。**]
―― 少し前:病院前 ――
[ 2回目の「肝座ってる」は褒めてなかった。
そう言われてしまってはもう反論できない。
肝の座った女の称号、いただきました。
探索しきれなかった校舎、全部見に行っていたら
どうなっていただろう。
なにしろ誠香は迷探偵なので真相に近づけたかどうか。
心乃のお掃除の手間を
増やしてしまっただけかもしれない ]
納得したならいいよ。
[ 褒め言葉の解説は制止されてしまった。
ご理解いただけたならやぶさかではありません。
そういえば辰美にも、褒めすぎと照れられた。
案外誠香は人を褒める才能があるのかもしれない。
調子に乗ったっていいのに。
委員長という責任のせめてもの報酬みたいなものです ]
[ ふつーに友達付き合いしてるだけで
評価されてしまうのは、
やっぱりよくわからない。
わからないので、ふつーに、
喧嘩も罵倒も説教もする予定。
しかし、悪いのは怜! と言い切った
誠香が言うことではないが、
阿東にまでこんなに応援されてしまうと、
こちらの層が厚すぎて少々怜が不憫になる。
と同時に、愛されてんなー、とも思う ]
ほんと、馬鹿なやつだなあ。
[ 思い出すのは、怜が書くと言った遺書のこと。
なーにが“みんな見た目で判断する”だよ。
こんなにみんなに愛されちゃってるじゃん。
馬鹿だなあ、と誠香は思う ]
うん、まあ、色々と思い知らせてやる予定。
[ 迎え撃つ気力は十分です ]
[ 辛いことを思い出させてごめん、と
謝られてしまった。
それに、誠香は首を横に振る ]
阿東は悪くないし。
それに、おにーちゃん思い出して辛い、って
薄情な妹だろ。
……うん、いいおにーちゃんだった。
穏やかで、なんかほっとする空気出してて。
そういうとこ、阿東に似てる気がしてた。
[ 勘違いだったのか、阿東が変わったのか、
誠香にはよくわからない。
もしかしたら、どちらでもないのかもしれない ]
僕がさ、こだわりすぎててさ、
勝手に重ねてたのかも。
[ 容赦ない誠香の評価に、
重ねられる評価も割と容赦がなかった
それな!
[ そう声をかけて見送った** ]
メモを貼った。
メモを貼った。
-- 現在/駐輪場→病院前 --
[ 何処かなあ、と地面を照らしていれば、
光るものを発見。千夏の自転車の鍵です。
見つかった鍵を指にかけて、くるりと回す。
愛車に乗れなくなったら、通学もできない!
(別にそんなことはないです)
外気に晒された指先はつめたくって、
ポケットにいれたカイロがとてもありがたい。
探し物を見つけた千夏は来た道を戻る。
カイロを握って、ふらふらと。 ]
[ あ。誠香ちゃん、と千夏は思った。
現代人の必須アイテム、スマホ。
に送られたメールは確認していなかった。
精神世界の校舎、で見た格好とは、ほとんど一緒。
首許に巻かれているもの以外。
なんて声かけたらいいのか、思いつかなくて。 ]
それ、おいしい?
[ 誠香の手許にあるペットボトルを指差してみたり。
缶コーヒーは、熱いとかいいながら、
すぐに飲み終えてしまっていた。ので。
新しい飲みものでも買おうかなあ。
と千夏は自販機を眺める。** ]
メモを貼った。
―― 現在:病院前 ――
[ 足音を聞いた気がして顔を上げて、
誠香は大きく目を見開いた ]
千夏ちゃん。
[ メールではただいまと打ったものの、
いざこうして実際に顔を合わせると、
なんて挨拶したらいいのかわからない。
ただいま、はメールでもう言ったし、
こんばんは? ……変だ ]
あ、うん。
僕は好き。
[ 手元のペットボトルを指差されて、
釣られたように誠香も視線を落とす。
自分の着ているコートも目に入って、
ああ、そういえばこのコート、
一度は千夏にあげたんだった、なんて思った ]
……千夏ちゃん、風邪、引いてない?
[ ぽつりとそんな言葉が口をついて出た。
あれは紫織の作った世界で、現実ではなくて、
だから、そんな心配をするのはおかしいのかも
しれないけれども ]
最後に見た千夏ちゃん、ちょっと寒そうだったから。
風邪ひいてないかなって、ちょっと心配だったよ。*
メモを貼った。
メモを貼った。
-- 現在/病院前 --
[ 名前を呼ばれれば、呼び返す。
社会に組み込まれているとより認識できて、
いいよなあ、と千夏は思う。
相変わらず顔色はよくないけど、
千夏はほわ、と笑った。 ]
誠香ちゃん。
誠香ちゃんが好きなそれにしよーっと。
[ なんてない飲み物の決め方。
自販機に小銭をぴったりいれて、
ジャスミンティーを代わりに手に入れた。 ]
[ 手に入れたペットボトルをつまみあげる。
質問が飛んできて、首を傾ぐ。
あ、やっぱり私も、
夏美ちゃんみたいになってたんだ?
雪の上にダイブインしてたでしょー。
[ そっか、そっかと千夏は頷いた。 ]
最初は、自分があの世界を創ったと思ってたから、
自分のマネキン?が他の人に見られるなんて、
ちょっぴり予想外だったな。
[ マネキン、と語尾は上がる。
うんうん、と千夏は一人で頷いて。 ]
心配ありがとう。
風邪ひかないようには気を付ける。
なんたって受験生だし、
ここちゃんにも無駄な心配かけちゃいそうだし。
[ 中に入ろうかな、と千夏は付け足す。
誠香ちゃんも風邪ひかないように、と言って、
一緒に行きませんかとはお誘いをば。* ]
―― 現在:病院前 ――
[ ジャスミンティーを手にした千夏は、
これでも遠回しに言った、つもりだった誠香の問いに、
なんてことないように直球で返事をくれた。
雪の上にダイブイン。
ちょっとだけ決まり悪くて誠香はうん、と
頷いたけれど、
続いた千夏の話にそんなものは吹き飛んだ ]
千夏ちゃん、あの世界作ったの自分だと思ってたの?
[ つまりそれは、あんなメールを送る
心当たりがあったということだ。
誠香はなんとも言えない気持ちになる ]
……そっかあ。
[ 一緒にクレープを食べた夜のことを思い出す。
あの夜、千夏ははしゃいでいて、
いつもよりテンションが高く見えた。
あれは、自分が世界の主だと思っていたからだった? ]
[ でも、千夏は風邪ひかないように気を付けると言った。
受験生だから、とも。
それはつまり、少なくとも今は、
生きていくつもりがあるってことじゃないかな。
誠香はそんな風に思った ]
ううん。そうだね、受験生だもんね。
お互い頑張ろうね。
……あ、でもね、まなっちと話してたんだ。
こっちの世界に帰ってきたら、みんなで千夏ちゃんから
メイク教えてもらいたいね、って。
[ 受験勉強も大事だけど、
メイクの勉強もよろしくお願いします、先生。
そんなお願いをしてみる ]
[ 一緒に行きませんかと誘ってもらったけれど、
ありがとう、でも、もうちょっと待ってる、と
誠香は首を横に振った ]
しおちゃんが帰ってくるかどうかって、
しおちゃんが生きたいと願うかどうかじゃないかなって
そんな気がしてて。
そのために、きっと、あっちに残ったみんなが
頑張ってくれてると思うからさ、
僕はもうちょっとここで待ってみるよ。
[ 風邪ひく前に入るから大丈夫。
またあとでね、と笑った** ]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
[ いいんちょが、委員長じゃなかったら、
あたしはどういう目で、
あとうくん、を見てたのかなあ。
礼儀正しいいいひと?どうかな。
その時にならないとわからないから、
きっとわからない。
人生のルートは一度きりです。
あたしのよくある会話に返ってくるお返事は、
ふと、そう思う程度にはよくあるお話。
[ にんげんもにんげんもどきも、
スマホが使えたところで脳内電波は圏外だから、
いいんちょの考えてることは、きっと届かないまま。
お利口さんです、フツーにね。 ]
[ いいんちょが、たとえば、
イメージ通りにいい人で、
イメージ通りに他人の手を引けるような、
そんな風だったら、あたしはすんなり頷くだろうし。
イメージと違って、申告通りに、
─── 冗談なのか、ほんとなのか、
自分のことと、
ちょっとぐらいしか抱えられないひとであっても、
あたしはきっと、いいんちょがすきだなって。
……そう思うのは良いことなんでしょうかね。
やっぱり届かないあたしの思考回路。 ]
……そういうもの?
[ 反対方向に首を傾げる。
連れ戻す、ことが正解であるならば。
残っている人たちはそういう意味で選ばれているって、
展開的なものを考えてしまうあたしは思うわけです。
いつだって呑気だ。 ]
[ 思いをぶつけたかもしれない、残った人は、
それを分かっている上で、
しおりちゃんの手を掴むのかな。
……ちょっとエゴっぽいの、
こどもだからできることなのかもね。
あたしたちは大人と子供の境目の、
きっと、 ぎりぎり、子供のところにいる。 ]
……いいんちょ、あたしも 思うんだけど、
こっち戻ってきても、しんどいよなー、って。
死にたいぐらいに逃げたかったのを、連れ戻すの、
本とかなら綺麗な話だけど、
綺麗なだけじゃ、ないじゃん?
[ 白紙が全部綺麗に塗られるような、
そんな ハッピーエンドなんて、
ちょっとあたしには想像つかないな。
……そこも含めて、
信じるしか、ないんだろうけど。 ]
死ぬ勇気があったひと、を。
寂しいなって思っても、
怒ることは、あたし、できない。
[ 褒めることじゃないって、わかってても。
きっとこれだってあたしのエゴ。
いいんちょの方へ向いていた目線は離れて、
マフラーに顔半分埋めながら、じっと前を向いている。
いいんちょの真似です。 ]
言いたいことかー。
あたし、案外ないよー。
しおりちゃんってわかんなかったときに、
「つまんない話します!」って、
黒板に書いてきちゃったんだけど。
……需要あるものかなあ。
[ ハクジョー、じゃないと、いい。
単純に、距離感が難しくて、
あんまりなかったの、寧ろ悲しい。
自然消滅した元彼という微妙なネタが、
そこそこ平和に話せる時がくるのかはさておいて。
多分、こういう時は、
"これから増やせば良いのかな"って
落ち着くのだけれど、 ]
[ そういうお話しができれば、
しおりちゃんもあたしも、
エンドロールの先が変わっていたのかなあ、って。
思った、思ってしまった から、 ]
……深いお話しできるひとって、貴重だよ。
あたし、ちょっといいんちょと辰美君が羨ましい。
[ 仲が良いって聞いてるからさ。
マフラーの下からもごもご言うわけです。
ほら、あたしも偏見みたいなもの? ]*
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
── 現在:病院内 ──
[ もう一度、の話をする。
チャンスが与えられたところで
それを生かせるのかは分からない。
それでも夢想の話をしている方が
まだ自分が無関係な存在ではないと
思い込むことができる気がした。
無関係なんだって割り切ってしまえば
その途端、紫織と自分の繋がりや
紫織の意識と現実の繋がりすら
切れてしまう気すらしていた。 ]
……ほんと、ひでぇよ。
自分でやった後におれたち呼んで、
だったら…やる前に教えて欲しかった。
そしたら何でも聞いてやれたのにさ、
こんなんじゃ……なんもできねーし。
[ 何かを与えることはできなくても、
指先を掠めることすらできなくても、
何か届けることが出来たかもしれない。 ]
[ 喜多仲郁斗は、ずるい。と思っていた。
言いたいことだけ言って、
あの世界に逃げ込んだくせに
自分たちを連れ込んで、追い出した。
紫織と、そんなことを思う自分がずるい。 ]
おれにできたこと…?
[ そんなこと、あっただろうか。
心乃の言葉を聞いて、思い返してみる。
ただのくだらない世間話。
何があったかの報告会をしよう。と言って
結局守れずに眠って、……目が覚めた。 ]
[ それに一体何の意味があるのだろうか。
紫織にとっては、意味があったのか。
無い。気がして、爪を立てる。
組んだ手は、祈るというには不格好だ。
けれど、信じるような心乃の言葉で
郁斗は深く息を吐けるようになって
きつく込めた力を緩めた。 ]
[ まだ、帰ってきていない人がいる。
現実に戻ってから見ていない顔を思って
自分より頑固そう。って考えた。 ]
……そう、かな。
いいなぁ。そーだったら…。
[ 彼らにはできなくて、自分にはできること。
現実のこと。こっちの世界のこと。
心乃の言いたいことが分かって
その優しさに、郁斗は泣きたくなる。 ]
おれは……目が覚めたら、
いつも通り、おはようって言ってほしい。
女の子には手を振ってさ、
ヤローにはどついてふざけたりして、
みんな怒ったり笑ったりするんだけど。
ちゃんとおはようって、返してくれるから。
それだけでケッコー、幸せだよ。
[ ああ、そうか。って、喜多仲郁斗は思った。
紫織がもし目覚めるのならば、
彼女もまた自分と同じように
友人が死んだ夢から目覚めることになる。
ならきっと、これは間違いではない。
そう思うと安心して、すこし笑えた。 ]*
メモを貼った。
──現在/病院──
俺にとっては。
[ そういうもの? って音とともに、
綿津見の首が傾いてった。
それは礼一郎にとっての答えでしかないので、
そういうものかはわかりません。
あの世界の目的も、仕組みも、
正解が存在するとしたら、
あの世界の主の主観に基づくことになるでしょ。
そりゃあ礼一郎にはわかんないよね。
なかなか意見の合わない相手だったよ、あいつ。]
……だろうな。
だから最後はさ、
本人が決めるしかないんじゃん。
[ 帰ってきたら万事解決とはいかない。
礼一郎もそう思う。
礼一郎もつくづく思うんだけどさ、
死ぬのにはある種の勇気がいる。]
死ぬのに勇気がいるんだから、
一回、その一線を越えちゃったのに、
もう一度こっちに戻るのにも、
同じくらい勇気がいるんじゃねえかな。
だから、本人を信じるしかない。
……って、俺は思うけど。
……別にいいんじゃない?
怒るのも、さみしがるのも、
個人の感じ方にまで正解はない。
……らしいよ。たぶんさ。
[ 礼一郎は、遺書にクレームをつけたけど、
この状況がどちらに転んだとしたって、
怒る、に行き着くことにない気がするし。]
……もし帰ってきてくれるなら、
うれしいよって、笑って迎えたい、けど。
[ どうなるかなんて、その瞬間の感情なんて、
そのときが訪れるまで自分にもわかんないな。]
じゃ、それを聞いてみれば?
……いざ。
また本人と話せます! ってなったらさ、
案外ないってことも、
ないんじゃないかと思うけど。
[ 礼一郎はそう思います。
そればっかりなんだけどね(笑)
友だちでしょ? なら、あるはず。って、
自分の友だち観みたいなものに則ってしか、
口をきけないんだから許してほしい。]
[ 突然、ぽんと出てきた名前に、
礼一郎は一瞬驚いてそっちを見た。
大騒ぎしといてなんだけど、
お互い秘密って話だったんだけどなー。
もしや何かご存じ? って内心思いつつ、
礼一郎はもう一度前を向いて、小さく微笑む。]
……まーね。
[ 付き合い、長いんです。良い友だちでね。
……とは言わないけど、
礼一郎はその友人の存在が誇らしい。]
[ でもね、礼一郎の視界には、
綿津見のまわりにだって、
たくさんの友だちがいるように見えてたよ。
そう、例えば──、]
そういえばさ、
黒板のアレ、書き換えたの綿津見だろ。
[ いろんなひとが書き足してって、
最終的に辰美が写真に撮ってたアレね。
並んでいた文言を思い出しながら言う。]
「 まなっちと映画館に行きたいです 」
…………だって。
綿津見いなくなったあとも、
残ったやつらで好き勝手書いててさあ……
ほら、たぶん。ああ書くほうがさ、
ちゃんと帰ったんだって信じられるから。
……ありがとな。あれ、残してくれて。
[ 福住も帰ってきてるよって、礼一郎は言った。*]
メモを貼った。
―― 現在:病院前 ――
[ 病院の中に入る千夏を見送って、
誠香はまたジャスミンティーをこくりと飲んだ。
だいぶぬるくなっちゃったなあ、なんて思う。
ポケットに片手を入れて、缶コーヒーで指先を温める ]
……もしも、さぁ、
[ ぽつりと誠香は独り言を言った ]
あの世界に行ったみんなが、
ほんとに死にたいくらいの悩みを抱えてる人ばっかり
だったとして。
あの世界の主が、しおちゃんじゃなかったとして、
[ ぼんやりと、誠香はそんな想像をしてみる ]
[ きっと、世界の主が誰だったとしても、
みんな一生懸命
みんなで帰ろうとしたんじゃないだろうか。
死にたいくらいの悩みを、
受け止めようとしたんじゃないだろうか。
誠香はそんなことを考える ]
……だとしたら、
案外、人生って悪いものじゃ、ないのかも。
なーんて。
[ 楽観的過ぎるかなあ、と誠香は思う。
でも、そうだったらいいなあ、と思う。
まだ問題は山積みだけど。
受験だって立ちはだかってるけど ]
[ 結局誠香は、紫織の悩みを知らないままで、
帰ってきてしまって、
もう、待つことしかできないでいる。
けれども ]
帰っておいでよ、って思った分くらいは、
しおちゃんの力になれるように頑張るからさ。
帰っておいで。
[ 白い息を吐きだしながら、呟いた* ]
-- 現在/病院前 --
[ 誠香の反応を観察する。
あれ。可笑しなこと言ったかな。
と千夏は思ったけど、言葉をごく普通に続けた。
そして飛んできた質問にも、うん、と小さく頷く。
毎日しんじゃいたいし、しんじゃえって、思ってるよ。
────……って、言ったら、
誠香はどんな反応をするんだろう。
好奇心はあれど、
現実世界で間違いがあってはいけないから。
千夏はただ頷くだけに留める。
目指せ、現役志望校合格だよ〜。
ん、わかった!
一緒になりたい自分に近づきに行こう。
メイクすると、本当に感動するから、ね。
[ わかりました、と依頼を請け負う。
ぐ、と拳を握って、にこにこと千夏は笑った。 ]
そっかあ。
首許から風が入り込まないようにするんだよ。
[ 頑張ってるみんなのために待つという誠香に、
千夏は首を傾げて。
マフラーをきゅ、とするエア動作をする。
そうして、暖かな空気が満ちる病院内へと。* ]
-- 現在/病院内 --
[ クラスメート達の姿が見える。
どこにいこうかなあと千夏は考えて。
一人ぽつんと立っている夏美の傍へと寄る。 ]
怖くなかった?
[ なにが、と書いてある夏美の顔に千夏は苦笑。
主語が抜けていると認識を改め。
持っているジャスミンティーを転がしながら、
正しい主語を導き出そうと千夏は考える。 ]
[ たとえば、あたしが白紙をびりびりに破いて、
"向こう"に行っちゃったとして。
"こっち"に戻ってくるのに、
確かに勇気はいるのだろうなって。
ちょっと、想像してみる。
あたしは多分、帰りたくない。色々な意味で。
……だから、ほんとね。信じるしか無いんだろうな。
それに、帰ってきてくれたとしたら、あたし、
嬉しいことには変わりないの、それはほんとう。 ]
一番最初に帰ってきて、色々解らなかったと思う。
メールとか、電話とか、してくれてありがとう。
何もわからなくて怖かったと思うけど、
行動してくれたことが、
私にはとてもありがたかった、よ。
[ なにそれぇと泣き出しそうな夏美の姿をみて、
千夏は、ほんとうにありがとう、とまた繰り返した。 ]
紫織ちゃん、帰ってくるかなあ。
[ 帰ってきてほしいな。
千夏はそう思っている。
文化祭の打ち上げも、できたらしたいし。
……卒業祝い、の打ち上げも兼ねられたらいいな。
早未千夏は願っている。* ]
[ あたしはみんながだいすき。
変わりないの、それもほんとう。
あの世界の主が誰であろうと。 ]
……つまらないものですが……って、
お約束的なノリでいけばいけるかな?
[ そういう問題じゃないって?(笑)
こんな風に言えてしまうのだから、多分、あたし、
戻らなくても仕方ないそぶりしておいて、
やっぱり、戻ってきてしまうことを
期待してるんだろうな。
ともだち観、っていうもの、
あたし、ちょっと曖昧なので。
ちゃんと話すようになったときの展開までは、
想像、ふんわりしていたりして。
それでもマフラーの下で、笑ってたんじゃないかな。 ]
[ あ、ふたりのこと。
噂以上のことは聞いてないよ。
それか、いいおともだちだってことは、
あたし ずっとみんなを見てたから、
なんとなくわかる……と、いいな。
テレパシーじゃない。たぶん、
動物の群れを眺めてる、
まっさらないきものみたいな風。
肯定をいただいたのなら、そっか。って。
やっぱり、笑って返すだけ。 ]
……辰美君、なんかさ、
たまに生きづらそうだなーって思うから、
いいんちょ、見てあげてね。
[ 手がやばかった……とまでは言わなかったけれど、
( そもそもその後、
会ってるとも思ってなかったけれど、 )
ちょっとあたしと似てるなあと思ったのは、
異文化コミュニケーションのたまものかな。
廊下のすれ違いは、夢に入ったばかりのあの話は、
生きづらい二人の会話だったと思う、から。
"紳士" にも、
手を引いてあげる誰かがいれば良い、とは、
やっぱり、観客たるあたしの エゴです。 ]
[ だから、かな?
緊張とか、それこそ やばい、とか。
そういう感覚がちょっとだけ消えたように、
いいんちょを見てた時、
ん? って、声が出た。
─── あ、あれね、そう。
ちかちゃんと喜多仲君が帰ったあとに、
どう書いたら良い?って、
せいかちゃんが言ってたから……。
[ あれも元々しおりちゃんと話してて、なんて。
あたしの夢の話が膨らみかけた。
あれってあの後どうなったのかな?
帰ってしまったあたしはわからないことだけれど、 ]
……えいがかん。
[ 鸚鵡返し。
……ちょっとびっくりした。
あたしの目、びっくりで、
そりゃあ丸くなってたと思います。
せいかちゃんが書いてくれたんだ、とか、
あたし、書かれてたんだ、とか。
あれ、誰かがまた書き足してくれたんだなあ、とか。
エンドロールの続きを祈るようなあれが、
なんだか、届いたような気がして、 ]
……うわー。
あたし、なんか、すごいことしたみたいだね?
[ 他人事みたいに言っちゃうの。
しょうがないんですよ。
ちょっとどきどきしてるんです。
あたし、あがり症なんだって。
顔がちょっと熱いの、
おしるこのせいじゃないでしょ。 ]
……あたし、そしたら、いいんちょとは、
えーと、そうだなー。
格ゲーやろうよ。Smitchの。四人対戦できるやつ。
イカになって陣地塗りまくるやつでもいいよ。
っていうかいいんちょゲームやるのかな?やろ?
せいかちゃんも……
しおりちゃんも、みんな誘ってさ。
それでポップコーン食べるの。
どっかスペース借りるとかする?
[ 生憎書き記す黒板はないけれど、
あたしたち、現実を振り返れば受験生だけれど、
"帰ってきたあと"、のこと、
それくらい語ってもいい?って、わらった。
ほら、打ち上げと、お帰りと。そういう名目。
何度やっても、いいよね?
[ テレパシー、ぴぴぴ。拝啓、せいかちゃん。
おとこのこたちには負けないように、
がんばりましょー。 ]*
―― 少し前:病院前 ――
[ うん、と小さく頷いた千夏に
そっかあ、僕も死にたかったよ、なんて、
もちろん言えるわけもないけれど、
いつか、千夏には謝らなければいけないと思っている ]
あのね、あの本にサインするべき人は、
僕じゃなかったんだ。ごめんなさい。
[ まだ言えないその言葉をきちんと伝えるためにも、
誠香は生きなければいけない。
メイクの先生を引き受けてもらえたら、
楽しみ! と誠香も笑った ]
あの舞台のみんなのメイク、すごかったし。
千夏ちゃんのメイクの腕は折り紙付きだからね。
……きっと、しおちゃんも一緒に。
[ ちらりと病院の方を見て、誠香は頷く。
マフラーへのアドバイスに、はあいと素直に返事して、
きゅっとマフラーを結び直した* ]
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