272 【R18RP】十一月と、蝶が奏でる前奏曲
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[こころかな、って思ったけど 撫でられている方向と声がする方向が同じで
――いま、私の頭を撫でてくれているのは 大和だって気がついたら 胸がぎゅうとなって、涙腺はさらに緩んでしまった。
当たり前だって言ってくれる大和は>>163 明日何が起きるのかを知らないから そう言ってくれるんだろうけど。
昨日までの大和はきっと そんなことしてくれなかったから。]
うん…うん、うん。そうだね。
[私たちにはなかった未来を並べてくれる大和に 私はくぐもった声でそう返すばかりだった。]
(166) 2019/11/05(Tue) 22時半頃
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[大丈夫だよ。 何があっても一緒にいるんだからね。 菜摘を悲しませたりなんかしないから。
私の手を握って繰り返してくれる こころが、あなた自身が居なくなっちゃうって とてもそんなことは言えなくて。
ただただ縋るように、こころの小さな手を握れば 大和だってちゃんと一緒にいるわよって こころも、そう言うの。]
(167) 2019/11/05(Tue) 22時半頃
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[ ……じゃあ、どうして大和は私を避けたの。 どうして県外の学校に行っちゃったの。 どうしてメールを返してくれなくて どうして距離をとったの
どうして。ねえ、どうして。 ]
(168) 2019/11/05(Tue) 22時半頃
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[ぐるぐるぐずぐず考え続けても 堂々巡りでどこにも答えはないままだし 私にやさしく触れてくれている二人の体温が 本当の答えだってことはわかっちゃうの。]
……だいじょうぶ、だよ。 ごめんね、二人とも。
[顔を上げたら今度はもう少し上手く笑えたけど 自分でもわかるぐらい下手くそだった。 涙は何とか出さずに済んだけど こころにはぎゅうっと横から抱き着かれる。]
(169) 2019/11/05(Tue) 22時半頃
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[ちょっと離れたところから勢い付けて さらに体重も乗せられたから ドスギュッってほうが近いけど。]
わわっ、大丈夫だって。 って、ちょ、こころ、わ――!
[ぐいぐい体重をかけるのをやめなかったから 私の体勢は崩れて横に倒れる。
隣には大和がいたけど、受け止めてくれたかな。 誰もいなかったらこころと仲良く床の上。*]
(170) 2019/11/05(Tue) 22時半頃
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[こころが床に体をぶつけないように 彼女をかばうのが精いっぱいだった。
だから私が倒れる先については ぜんぜんノーマークのまま 覚悟してた衝撃はこなくて 潰れたカエルみたいな声が聞こえ>>179 大和を下敷きにしてたことに気がつく。]
わ、ごめんね!? 大丈夫? 頭打ってない?
[上半身はほとんど大和の上に乗っかっちゃってて でも私の下半身にはこころが乗っているから すぐに動くこともできない。]
(182) 2019/11/05(Tue) 23時半頃
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[大和は黙ったまま顔を手で覆ってしまい>>181 どこか痛いのかなって心配になる。]
ほんとにごめんね? 重かったよね、頭打ってない?
[手を伸ばして頭を撫でようとすれば 顔がもう少し近づいて 手の間から見えた大和の耳は赤かった。]
……? 大和、なんか赤くない?
[もしかして熱があるのかな。 額に触れようとするとどうしても体が密着して ちょっと触りにくかったので こころがどいてくれたから、私も体を起こす。]
(183) 2019/11/05(Tue) 23時半頃
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[座りなおしてもまだ大和が倒れたままなら 近くまで寄っていって顔を覗き込むけど 大きなたんこぶはなさそう。
その後はこころがモールの情報を教えてくれて 知らないお店がたくさんあったりとか 抹茶専門店があるとか この辺で初出店のハンバーガーショップとか そんな話をわいわいしながら
隣にいた大和をちらちら見ていたけれど ちゃんと笑っていてくれた。
もし変な様子があったらちょっとは気にするけど 話しかけてくれるのなら、大丈夫だよね。 こころが途中で部屋を出て二人になっても 食事の時のような緊張はなかったよ。]
(184) 2019/11/05(Tue) 23時半頃
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[三人で楽しく話すと時間はあっという間に過ぎて こころが、ふゎーあと欠伸をする。
私も小さな欠伸を噛み殺してれば 寝る〜といってベッドの上にあがっちゃった。]
こころ、歯磨き! えっ、さっき出ていった間にした? いつの間に……。
[寝るというなら私たちも寝ようと寝支度をして 私も洗面所を借りて部屋に戻ろうとする。
そのまま部屋に戻ってもよかったのだけど 寝ちゃったら奇跡の「今日」はなくなるのかなって そんなことを考えてしまって つい、廊下に佇んでしまった。*]
(185) 2019/11/05(Tue) 23時半頃
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[もう一度買いたいものを聞かれて>>195 やっぱりなんにも思いつかなくて。
でもきっとそんな答えは求められてないと思い 大和の指しているお店をみれば 隣に女性用の服のお店の名前があった。]
私もアウター欲しいな。 寒くなるし……。
[2日間って言われたので 今日と、明日。 私がここにいるのはきっとその2日間だけ。 だからこの二人と冬を迎えることはないのだろうけど。
ないのだろうけど。 そう思えば苦しくなってしまって 自分の身勝手さにびっくりしちゃったよ。]
(251) 2019/11/06(Wed) 15時半頃
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[こころの部屋に入る前に廊下に佇んでいると コップを片付けてくれた大和が>>197 心配したのか声をかけてくれる。
やっぱり七年前の大和で きっと本来の大和はこういう人で 事件の後は、色々あったから ——でも、どうして、ああなっちゃったの。]
……寒くはないけど
[部屋に戻ったら全部消えちゃうかもしれないとか そうでなくとも明日で全部終わりだしとか そんなことは言えなかったけど。
聞きたいことは上手く言えないままだけど ここで大和と離れたくなかったから 私は手を伸ばして彼の服の裾を掴む。]
(252) 2019/11/06(Wed) 15時半頃
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[リビングはもう電気が消えていたから 誰にも聞かれることはないよね。]
リビング、いいかな。 飲み物はいらないから。
[大和がつき合ってくれるなら こころがいない間に、一つ頼みもあったの。]
(253) 2019/11/06(Wed) 15時半頃
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——リビング——
[並んでソファーに座るように促して、深く腰掛ける。 直接視線が合わない位置になるのは 今の私には都合が良かった。
何から話せばいいか悩んだんだけど 全くの作り話なんて思いつけなかったから 私はちょっとの嘘を交えたほんとうのことを言う。]
夢でね、夢で、こころが遠くに行っちゃったの。 とても辛くて、悲しかったんだけど。
[大和はどんな反応をしたかな。 聞かれても、遠くへ行っちゃったのって 私はそうとしか答えられないけど。]
(254) 2019/11/06(Wed) 15時半頃
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……こころは、しょうがなかったけど 大和まで離れていっちゃったの。
[居なくなっちゃったのはこころだけだったのに 大和が意図的に距離をとったんだ。 私が何かしたのかなって思ったけど ずっと考えても心当たりはなくて。]
夢の中の、大和のことだから 今の大和に言ったって意味がないけど
[私はもう子供じゃなかったから そんなことを彼に言ったりはしなかった。>>0:20 けれど今の大和をみていたら 比べちゃって、どうしてって、思っちゃうの。]
(255) 2019/11/06(Wed) 15時半頃
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[困っちゃったかな。困っちゃったよね。 夢の中の(本当は未来だけど)自分の話とか ここにいる大和には関係のないことだもん。
それでも言いかけた言葉は止まらなくて 抱えていられなくて 私はぽろりと零してしまった。]
……さびしかったよ。
[——本当は、あのとき>>0:230 あなたにそう言いたかったの。**]
(256) 2019/11/06(Wed) 15時半頃
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[やっと互いの顔が見えるかどうかぐらいの 薄暗い中の方が今はありがたかった。
だから避けてた? って聞かれたときは>>296 こころに言われたことも思い出して>>78 顔色を変えていたんだけど、気がつかなかったはず。]
避けてた、というか どう接すればいいかわかんなくて。 大和が悪いんじゃないの。 私が大和のこと、わかってなかったなって。
[私から離れていってしまって どう声をかければいいかわからなくて 接し方までわからなくなって困ってたのは 十五歳の大和に対してじゃないんだけど。]
(307) 2019/11/06(Wed) 23時頃
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[つい零してしまった言葉を なかったことにすることはできなくて。 大和が嫌な思いしてないかなと 探るために顔を見るのもできなくて。
でもだいじょうぶ、って言おうとしたら さっき私が繋げなかった手から ぎゅっと握られた。>>297]
(308) 2019/11/06(Wed) 23時頃
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[今日ずっと握っていた、こころとは違う 私より大きくて皮膚もちょっと硬い手。 最後に大和が手を握ってくれたのいつかな やだな 全然思い出せないな。
ほんとは全部夢じゃなくて これからくる未来のことなんだけど いまの大和がここに居てくれるのは 本当にほんとうに、嬉しいんだよ。]
うん、……うん、 わかった、いわない。
[十五歳の、まだ何も知らない大和の言葉は だからこそ彼の本音なんだろうなと思えて 七年間私の中にあったもやもやを さあっと払っていってくれた。]
(309) 2019/11/06(Wed) 23時頃
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[ふふ、なんかおかしいね。 大和は小さい頃から私より年下で 私が護ってあげなきゃいけないと思ってて
今の私は本当は二十四歳で 大和よりずっとずっと年上なのに。
大和の一言でこんなに楽になっちゃったよ。]
(310) 2019/11/06(Wed) 23時頃
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[今度こそちゃんと笑顔で ありがとうねって言おうと思ったのに 手を掴んだまま言われた大和の言葉に>>299 びっくりして彼の方を見てしまう。
こちらを見ていれば至近距離で視線が合うし そうじゃなかったら近くにある横顔を見つめた。
こころにからかわれたり笑っているときは まだまだ小さい頃の大和の顔だと思ってたけど。 薄明りの中で見る彼は 葬儀場でいた大人の人の顔に近くて。
急にドキドキしてきちゃって 握られた手が恥ずかしくなってくる。]
(311) 2019/11/06(Wed) 23時頃
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[夢じゃないよね。ううん、夢かもしれないけど。 ちゃんとここに、大和はいるよね。]
……いわない。嫌なんて言わないよ。 絶対言わないから、
[ドキドキが頭の方にまであがってきて 口を開いたら音が聞こえちゃわないかな。 触れてる手から伝わっちゃわないかな。
大和の手、大きいなあ。]
(312) 2019/11/06(Wed) 23時頃
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[私は大和の手をぎゅっと握り返す。]
ずっと、そばにいてね。
[居て欲しいの。*]
(313) 2019/11/06(Wed) 23時頃
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[私の一言は、振り返ればとてもずるかった。>>313
大和は私を心配してくれているのに 私の一方的な感情で 大和に「ずっと」を願っちゃいけないのに。
なのに、握っていた手が引かれて 私の体は大和の腕の中に閉じ込められる。>>324
何が起きたかわからなかったのは一瞬で 状態を理解したらじわじわ顔に熱がのぼっていった。 まって。話しちゃだめ。 ドキドキがうるさすぎて良く聞こえない。]
(326) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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[抵抗しようなんてちっとも思えなくて 額を大和の首のあたりに押し付ける。 大和の心臓の音もも聞こえる気がしたけど 自分のを聞いちゃってるだけなのかな。
私の耳にそっとささやかれた言葉に 耳がざわざわして、変な声が出ちゃいそう。
思わずぎゅっと唇を噛んだから 何にも返事はできなかったし すぐに体は離れていってしまった。>>325]
あっ……うん、うん。 そうだね。寝よう、ね。おやすみ。
[さっさとたちあがって出ていった大和は いつの間にあんなドキドキさせること できるようになっちゃったの。
……天然の女たらしなのかな……。]
(327) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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――こころの部屋――
[こころの部屋に戻って 私用に用意してもらっている毛布にくるまって 空けてくれているベッドの端に腰かける。
さっきまでのことを思いだせば まだ抱きしめられた感触は残っている気がして 胸がぎゅっとなってドキドキして ボボッと顔に熱が集まった。
さすがに知らない振りをするのは無理で 恥ずかしさが限界突破して私は頭から毛布をかぶる。]
(328) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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[なんで 大和にときめいてるの!!]
(329) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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[いやいやいやいや。 大和だよ。弟みたいなものだし。 何よりまだ中学生だし 中学生だし!!
これは犯罪、いや今の私は十七だからいいのかな……? ときめいてるだけなら無罪かな?
っていうかなんでいまさら! ずーっと一緒だったじゃん! 弟枠だったのに! かわいーって思ってたのに!
だってあんな、真剣な顔で あんなこと言われちゃったら かっこいいなって、思っちゃうじゃん……!]
(330) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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[抱きしめられた腕の力は強くて 囁かれた声は低くて、
私の後ろをついてきていた泣き虫の子が 本当はもう大人の入り口にたとうとしてる 一人の男の子なんだなって
実感しちゃったじゃん! あんなのドキドキしちゃうじゃん!]
(331) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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[うわぁあああ。とじたじたしても 眠りが深いこころが起きなかったのは幸いだった。
いま色々聞かれたらむり。 なんにもごまかせない。むり。 そもそも明日起きて 何もなかった顔ができる気もしない。むり。
今日とは全く違う理由で 明日の大和を避けてしまいそうだけど さっきはちょっと怒ってるみたいだったし また嫌な思いをさせちゃうかな‥…。
でも!ちょっと!無理な気がするよ!]
(332) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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[しばらくごろごろしてから ベッドの空いたスペースに丸まれば 背中にこころの体温を感じる。
……こころを護りたくて私は戻ってきたの。 だから明日は絶対に失敗できない。
大和にこころを護ってねって そう頼もうと思ってたんだけど 今日はとても顔を合わせられないから 明日言うことにしよう。
大丈夫、明日はきっとくる。]
おやすみ、こころ。
[後ろにいる親友にそう呟いて、 私はようやく目を閉じた。**]
(333) 2019/11/07(Thu) 00時頃
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