88 めざせリア充村3
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― 現実・実験室 ―
[高い音が耳鳴りのように聞こえて、 むずがるように小さな声をあげて目を開いた。
固い地面の上じゃない。 冷たい寝台の上でもない。 硝煙とも煤とも違う匂いのする、狭い空間が目に入る。
夢なのか現実なのか。 ただ頭が重くて、もう一度目を閉じた。 誰かの懐かしい声が聞こえるまで。]
(4) 緋灯 2013/07/06(Sat) 03時頃
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[名前を呼ぶ声。>>6 そう遠くない前、最後に聞いた時は、 もっと苦しそうで、悲しそうで。
そして死にたい、と願っていた声。
目を開くと、微笑しているライジの顔が視界に入った。]
……ゆめ?
[瞬きをして、きょとんと。 さっきまでの「現実」が悪夢なら、 今度は神様に願った幸せな夢の続きだろうか。
長くあちらに浸かっていた頭は、 まだ現実と夢の狭間をゆらゆらと。]
(7) 緋灯 2013/07/06(Sat) 03時半頃
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……夢。
[あの崩れる肉の感覚も、 手の中で動きを止めた鼓動も、 植えられた記憶はまだ残っている。
それでも抱き起こしてくれるライジの胸に、 あの時開けた穴はない。
支えるを得るように当てた自分の左手には、 長い丈の手袋が嵌まっていて。
ライジの体越しに、他の人の姿が見えれば。 立って、息をして。
生きているのを、見て。]
(9) 緋灯 2013/07/06(Sat) 04時頃
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ふ、ぇ……
[ぼろぼろと、涙を零す。]
(10) 緋灯 2013/07/06(Sat) 04時頃
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[聞こえた鼓動は確かなもの。 ちゃんとひとつひとつ刻んでいる。
その音に、涙は更に溢れて。
謝罪の言葉に首を横に振ると、 目元を擦って少し笑った。]
(13) 緋灯 2013/07/06(Sat) 05時頃
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[手を取られ、涙を拭われれば、 瞬きをして最後の一粒を落とす。]
…………。
[少しずつ覚醒する頭で、 あれが実験であったことを理解した。 科学者達の荒唐無稽な妄想ではなくて、 十分にありえるひとつの未来の道筋であることも。]
けど、今はみんな一緒……なんだよね。
[この場所がいつまでも穏やかに暮らしていける 安息の場ではないと知ってしまったけれど。 あれが決められた絶対でないのなら、 他の未来を選ぶことだってできるはず。]
(18) 緋灯 2013/07/06(Sat) 14時半頃
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[「今」は一緒。 だけど、明日は、明後日は。 そう考えれば不安にもなるけれど。]
うん。行ってくる。 ……あとで、またね。
[当たり前と思っていた幸せが、 一番尊くて有り難いものだと知れたのは、 あの悪夢の中で得られた数少ないもの。
笑ってくれるライジに、 できるだけ、眠りにつく前と同じ笑みを返して。 少しだけ強く手を握る。
カプセルを出れば、電子音の先へ。 夢の中で最後まで一緒にいた彼と、 その目覚めを待っている、着物姿の少女のところへと。*]
(22) 緋灯 2013/07/06(Sat) 16時半頃
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― チアキのカプセル前にて ―
[チアキのが目を覚ますのを待つ 志乃の近くへと。
向けられる微笑が一瞬夢の中と被って、 だけど肩に添えられる手は、 あの時は近づけず、触れられなかったもの。]
……おはよ、しーちゃん。
[あの時できなかった分も補うように、 ぎゅう、と抱きついて。 その温かさを確認する。]
(26) 緋灯 2013/07/06(Sat) 20時頃
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[チアキが起きれば身を離して、 数歩下がってやり取りを聞きながら。]
ただいま。
[研究室に入ってきた ミナカタとポプラ>>20へと帰還の挨拶を。 腕に抱かれたままのポプラを撫でに、 そちらに歩み寄るか。]
(27) 緋灯 2013/07/06(Sat) 20時頃
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[ポプラに撫でられる>>35のを、 少しくすぐったく受ける。
ライジが近寄ってきたタイミングで ミナカタが下へポプラを下ろそうとしたので>>41、 引き継ぐ形で抱き上げて。 特に追い払われなければ、 そのまま二人を会話を聞いていただろう。
恨む、という暗い言葉に、 ポプラの髪に顔を半分埋めて所在なさげに立ちながら。
鳴った頭突きの鈍い音>>47に、 思わずポプラの頭を押さえた。音だけで痛そう。]
(49) 緋灯 2013/07/07(Sun) 02時頃
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[ライジが出ていくのを見送って、 ポプラを一度撫でてから床に降ろした。
チアキはたくさん忘れてしまっているようだったけど、 少しだけ、覚えていてくれることもあるようで。>>87
最後に見たチアキはとても苦しそうだったから、 その時と違う笑みが見れれば、 悲しいけど、少しほっとしたような。
くるりと視線を回して。 モニカやオスカーと視線が合えば、近寄っていく。]
えーと…ひさし、ぶり?
[実際そんな認識はないのだけれど、 自分がどれくらい眠っていたかわからないので。]
(98) 緋灯 2013/07/07(Sun) 22時頃
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そうなんだ? なら、おはよう……あと、ただいま。
[モニカ達と最後に会ってからの時間は 随分と長く感じたが、 夢の中でもそれくらいだったかもしれない。 二人に向けて改めて挨拶をして。
いつのまにかオスカーの近くに、 見知らぬ小さな子がいた。 一瞬だけ、目が合った。]
…………きらわれた?
[初対面なのに。まだ紹介もされてないのに。 全力で逃げる後ろ姿を見送って、 オスカーへ恐々と。]
(103) 緋灯 2013/07/07(Sun) 22時頃
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[初対面で全力で逃げられるとへこむ。
けど、曰く嫌われてるわけではないようで。 オスカーが呼べば、 小さな子はそろそろと近づいてはくれた。
真っ白な瞳に目線を合わせるように、 その場にしゃがみこんで。 こてりと首を傾げる仕草が可愛い。]
ソフィアだよ。よろしくね。
[能力が怖いようなので、 手は後ろに組んでのご挨拶。]
(110) 緋灯 2013/07/07(Sun) 22時半頃
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[どうやら誠意は伝わったようだった。 笑顔のコミュニケーションは大事だね!
まだおそるおそるという様子ではあるものの、 抱きついてきてくれるキィに、 嫌がられなければ頭を撫でただろう。]
かわいいねー……オスカーの弟?
[さすがにこども、とは聞かなかった。]
(123) 緋灯 2013/07/07(Sun) 23時頃
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[あ、うん。ですよねー。
ぱっと離れたキィに苦笑しながら手を隠せば、 また寄ってきてくれるのでよしとしよう。
30分……とオスカーの言葉に少し考えて、]
オスカーの弟みたいなものって 思っておけば問題ない?
[細かいことは聞かず気にしないことにした。]
(131) 緋灯 2013/07/07(Sun) 23時頃
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― →厨房 ―
[手が使えないのでうりうりとキィに頬擦りをして、 ひとしきり遊んだら立ち上がる。]
………。 みんなに可愛がられてるのはわかった。
[オスカーの10秒説明に頷いた。
その場の他の人とも再会の挨拶をしてから、 少し前にここを出ていった人を探しに外に出る。 きょろきょろしながら廊下を進む。
行き場について心当たりはなかったけれど、 食堂の方へ行けば少し苦くて、甘い匂いがした。>>89]
(134) 緋灯 2013/07/07(Sun) 23時半頃
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― 食堂 ―
[入口から顔を出せば、 カウンター越しに厨房で動く姿が見えた。
何を作っているのだろうと思いながら近づけば、 ちょうどできあがっていたところのようで。
渡されたカップの中は、湯気の立つ茶色の飲み物。 甘い、いい匂いがする。]
飲んでいいの?
[首を傾げて。 許可を得れば、椅子に座って口をつける。]
(141) 緋灯 2013/07/07(Sun) 23時半頃
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[記憶にない味は夢の中には出てこなかった。 約束を覚えていてくれたことも、 戻って最初に飲むものが約束した飲み物なのも嬉しくて。]
おいしい……ありがと。
[少し吹き冷ましてから、カップを傾け、 やわらかな甘みに表情を緩ませた。
二口目を飲もうとしたところで、 話を切り出されたのでカップは一度膝の上に戻す。
続けられた言葉に反射的に反論しかけ、 更に続いた言葉に数秒固まった。
やがて深呼吸の後、カップを机に置いて、]
(152) 緋灯 2013/07/08(Mon) 00時頃
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― 食堂 ―
[甘い匂いに釣られるようにふらふらと。 誰だろう、何だろう、と様子を窺えば、 紺のエプロンをつけて作業をしているリッキィがいた。
近づいて尋ねれば、少し照れたような声で返事が。 台の上に乗るふわふわのケーキを、 おいしそう……と見つめながら。
今度作るね、と言っていたのを思い出して。 それからリッキィと今、二人きりなのに気づいて。]
あ、のね。リッキィ。 あたしがライジのこと好きって言ったら……いや?
[恐る恐る、聞いてみたかったことを。]
(193) 緋灯 2013/07/09(Tue) 00時半頃
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[ケーキに送る熱視線に、 リッキィが切り分けてお皿に乗せてくれた>>196。 手際よく、ほぼ同時に紅茶も出される。 ずいぶんと贅沢な毒見の用意。
自分の前にも置いたケーキに 手をつけようとしていた リッキィのフォークが止まったのを見て。
自分の方のフォークはまだ机の上。]
あ、はは。 うん、いきなりごめん。
[嫌、と言われたらライジと離れる、とか。 そういうつもりは最初からなかったけれど。 それでも言われたらどうしようという不安はあって。]
(202) 緋灯 2013/07/09(Tue) 01時頃
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[嫌じゃない、と返ってこればほっと息を吐く。 複雑そうな表情に、申し訳ない気分にはなるけれど。 二人がお互いをとても大切にしているのは、 研究所で一緒に過ごしていればわかることだ。]
…ん。変わらないとは思うけど。 ライジ、リッキィのこと大好きだし。
[二人を見ていていいなぁ…と思うのは、 嫉妬というより憧れのようなもの。
そこからライジを取るんじゃなくて、 自分を少し、一緒に加えてほしいなぁという希望は、 なかなか言い出せないのです。]
(204) 緋灯 2013/07/09(Tue) 01時頃
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ー女子会にてー
[リッキィともう少し、何か話せただろうか。 ようやく紅茶に口をつけ始めたところで、 ひらりと揺れる志乃の着物を見つけた。>>214
話のいくらかは聞こえていたかもしれないし、 何も聞こえていなかったかもしれない。
志乃が加わる様子ならば、 ケーキはリッキィの手製だと告げて。
リッキィが誰のために気まぐれを起こしたのかは 察しのいい志乃なら気付くかも。]
(229) 緋灯 2013/07/09(Tue) 18時頃
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― 食堂・ちょっと前 ―
……なのかなぁ?
[なるのだろうか。なれるのだろうか。 リッキィと一緒に思考を飛ばして首を傾げ。]
う、 ………うん。
[改まって聞かれるとなんだか恥ずかしくなって、 ついでにさっき首を傾げていたことを 我にかえって考えてみたら 二重に恥ずかしくなった。
小さく首肯して、紅茶のカップを手に取る。 志乃がきたのはそのすぐあとくらいか。]
(244) 緋灯 2013/07/09(Tue) 20時頃
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[志乃の疑問>>236には、 謎の恥ずかしさの余韻もあって珍しく何も答えず。
ケーキをつついていたら、 そのうちチアキもやってきただろうか。>>239]
こんにちは。 チアキもケーキの匂いに釣られてきたの?
[無邪気な挨拶に同じ言葉を返して。 あれ以来、たまに挨拶をしたりする程度。 夢の中で最期まで一緒にいたチアキはどこにもいなくて、 それがほっとしたような、羨ましいような、悲しいような。 最終的に行き着いたのは、前と同じに接するだったけれど。]
(247) 緋灯 2013/07/09(Tue) 20時半頃
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― お茶会にて ―
[チアキの口から無邪気に語られるお茶会の内容は、 まるであの夢の世界をなぞるよう。
あの時開いた最後のお茶会。 二人だけだった空席だらけのティパーティー。 ケーキと紅茶……あの時はコーヒーだったのだっけ?
ふわふわのケーキを切ろうとする手は止まったまま、 ぐるぐるぐるぐると。
志乃の制止の声でチアキの声が止まれば、 少し長く息を吐いて。 リッキィや志乃の様子を見ている。]
(268) 緋灯 2013/07/09(Tue) 22時頃
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― 半年+更に半年後 ―
[お別れの挨拶は前日に済ませて、 部屋から気持ちだけ見送った日は雪が降っていた。
その相手が死亡したという報を聞いたのは翌日。 知らせを聞いて驚くでも泣くでもなく 俯いて無言のまま部屋に引き返す姿に、 周りは何を考えただろうか。
それから更に半年が経って、 その頃には研究所の顔ぶれはいくらか変わった頃。 拷問趣味の貴族様という、随分と悪趣味な 買い手がついたようだった。]
(301) 緋灯 2013/07/09(Tue) 23時頃
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[研究所を離れる日はひどく蒸し暑い曇り日で、 短く切った手袋でも脱ぎ捨てたいくらいだった。 馬車に乗せられて雇い主のところへガタゴトと。]
……約束、したもんね。
[一人押し込められた馬車の中、 頬杖をついて呟いた独り言は雪の降る前夜に対して。]
(303) 緋灯 2013/07/09(Tue) 23時頃
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― お茶会にて ―
[リッキィがカップを割る音にはっとする。 ここは夢で、お茶会の最中で。
チアキがリッキィの手伝いをして、 空気は少しだけ元に戻った。
チアキは美味しそうにケーキを食べていただろうか。]
……ケーキなくなっちゃったね。
[和やかな空気に戻ったお茶会の終わり。 お皿は空っぽになってしまっていただろう。
もう一度作ろうか、と言い出してみて。 各々が持ち帰ったケーキは、 さてどういう成果だっただろうか。*]
(307) 緋灯 2013/07/09(Tue) 23時頃
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― 道中・そして再会 ―
[車輪の音が急に止まったのは、 轟いた一筋の雷鳴故。
曇天ではあったけれど、 こんな街道に雷が落ちるなんてこと 自然ではありえない。 そわ、と胸がざわめく。
嘶く馬が立ち上がって馬車が大きく揺れるが、 そんなことはお構いなしに外に出て。
馬に引きずられるように空になった馬車はどこかへと。 御者は一緒に連れられていったか、 それとも雷の衝撃で気絶しているか。
それよりも、と別の姿を探す。 雷を生み出した「誰か」を。]
(323) 緋灯 2013/07/09(Tue) 23時半頃
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[最後に見た時と、 姿は変わっていたかもしれない。 フードで顔がよく見えなかったかもしれない。
それでも、名前を呼ばれればすぐに誰かわかっただろう。]
……ライジ。
[また会えた。]
(324) 緋灯 2013/07/09(Tue) 23時半頃
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[差し出された手を笑顔で掴む。 今度はもう、離さないというように。]
今度はずっと、一緒だよ。
[悪夢に至る道もまた。 だけどできれば、共に幸いの道を。*]
(343) 緋灯 2013/07/10(Wed) 00時頃
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