人狼議事


270 「  」に至る病

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視点:


【人】 公証人 セイルズ


( ”――――約束を果たして” )

( ”……約束を” )

[――……]

(7) さねきち 2019/10/14(Mon) 15時頃

【人】 公証人 セイルズ

[つきん、と頭が痛んで目が覚めた。
そろりと目を開ける。精と汗、甘い血の匂いがして
くらくらと眩暈がする。

少し呻きながらセイルズは時計を確認し
朝餉を作るより前の時間であることを悟ると
抱きしめていたミルフィからそっと体を離し

少し迷って、その頬を 軽く抓った。]

 …………ミルフィ。
 起きなさい。
 ミルフィ。

[今日が休日であれ平日であれ
はやめに風呂に入っておかねばならない

……ベッドを見下ろしてそう思う。]

(8) さねきち 2019/10/14(Mon) 15時頃

【人】 公証人 セイルズ

[セイルズは何度か、彼女に呼びかけたが
疲れのせいか、それとも起こし方が下手なのか
ミルフィの目は開かないまま

呼吸をしていることはわかっていたので
セイルズは少し眉を顰めて
彼女の寝顔に顔を近づけた。]

 起きないと………

[唇と唇が触れ合いそうな距離で呟く。
そのまま彼女がおきてくれるなら、
おや、と片眉をあげて意地悪そうに笑うだろうし



起きなければ、その形のいい鼻が抓まれるだけだ**]

(9) さねきち 2019/10/14(Mon) 15時頃

【人】 公証人 セイルズ

[ふる、と震える瞼が、開く。

紅茶色の瞳に亜麻色の髪。
唇は春の色めいて赤く

そこにいるのは、確かに”娘”であるはずなのに
浮かべようとした笑みが違和感に消えうせる。]

 ……、君、は……

[誰だ、というかすれた声はカーテンの揺れる音に消えた。
朝を迎えて間もない薄暗い部屋の中。
一人の女を見下ろす男の表情は、固まっている。]

(34) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 …………
 ……………どうして、

[窓に結露が張り付く時のような肌寒さに
セイルズはぶるりと背を震わせた。

狂ってしまった娘が生み出した二人目の人格か、
それとも本当に――本当に、”彼女”なのか、

冷静に分析しようとする頭が追いつかない。
ただ、聞き覚えのある甘い声、見覚えのある妖艶な微笑みに
激しく痛む心臓を押さえ、拳を握る。]

(35) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 (僕が君を呼び戻してしまったのか?
  ――今更化けて出るならどうして死んだんだ、
  ……違う、……どうしてこんな、
  おかしいとは思っていた、思っていたんだ、けれど

  ――…………嗚呼、)
 

(36) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
  僕を…………

  …………許さないでくれ、クラリッサ。
 

(37) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ

[震える男の手指が、小さな女の指を掴んだ。
繋ぎとめておきたいのはどちらか。
――わからないまま、ただ祈りと恐怖に身を震わせて、]
 

(38) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 
[――…………、]


 …………5分といって15分は経ったよ。ミルフィ。

[結局、風呂にも行かず、
さりとて彼女の体を抱きしめて寝なおすこともできず
ただ体液でべたついた体でベッドサイドに座った男は
少しげっそりした表情でミルフィを一瞥した。

ああ、良かった。元に戻った。

そう思ってしまう自分が憎らしかった。
かつて愛した妻が戻ってくるのを素直に喜ばず
愛しい娘が娘のままでいる様子にほっとする。]

(39) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ

[――……それでも、不気味に思う気持ちはあったが
首元の噛み跡を確認して、>>23
まるで子犬のように飛びついてくる>>24娘を見て
何もかもが吹き飛んでしまった。

ぺたり、と合わせる肌の感触が心地よく
はあ、とため息をついて、その頭を少々雑に撫でる。

それから、たどたどしい口調でおねだりする娘の
その表情を覗き込んで]

 まったく、遊びのように言う。
 僕からすれば大変なことだったんだが?

[つん、と額を人差し指で押してから、
肩を竦めて笑った。
……愛らしい子。そう思いながら]

(40) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ


 ……また、今度、な。

 …………さて、
 レディなんだから、ちゃんと体は綺麗にしないと。

[そのまま形のいい唇にキスをすると、
娘が抱きついてきているのをいいことに、
そのまま抱き上げて風呂に向かう。]

(41) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ

[その最中。]

 ミルフィ。
 ……さっき、寝ぼけて起きてなかったかい?

[セイルズはじっとミルフィの顔を見つめて
ぽそりと問いかけた。*]

(42) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃

【人】 公証人 セイルズ


 …………、ばかな事を聞くんじゃない。
 …………………気持ちよかったよ。

[頭を撫で見下ろす娘は、
いつもどおり子供らしい彼女なのに

その小さく愛らしい唇から情事の事がこぼれ出るので
セイルズは100年ほど感じていなかった照れを思い出し
少し顔を背け、ぼそりと答えた。>>46

昨日は――
ちらつく妻の影を振り払って思い出してみれば
相当獣のような振る舞いをしたはずで

その記憶を娘に賞味される前に
恥をかくすように彼女を抱き上げた。
ミルフィの乱れる姿はしっかり思い出しながら。]

(50) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃

【人】 公証人 セイルズ

 ……おはよう、クラリッサ。

[問いかけても「何の話?」と問われるので
セイルズは「なんでもない」と返す。

ママ、と挨拶したミルフィの視線の先を一瞥し、
クラリッサの写真と目が合って、
セイルズは一瞬、表情を翳らせたが]

 ああ、一緒に入ろう。
 服を着なおして入れ替わりで入るのは
 きっと無理だろうしね……

[全く、無茶をしたものだと昨日の自分に思う。

せめて風呂に入ってから事に及べば
無駄に服にまで汗が染みなかっただろうに、と。

どうせシーツも服も洗濯するのはセイルズ自身なのに
馬鹿なことをした、と。]

(51) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[じめじめした思考は
上機嫌なミルフィの表情で消し飛んでしまう。
風呂場の入り口に彼女を下ろすと、
扉をあけて、「おいで」と手を引き彼女を導いた。]

 さすがに大人二人は狭いね。

 ……ほら。背中、きれいきれいしますよ。
 

(52) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[けだるげに呼びかける。
投げかけるのは、彼女が六歳だった頃
たまに親子感で交わされた幼児語であった。

何の事はない。
伴侶として共に風呂に入るのが気恥ずかしいので
相手を子ども扱いしているだけである。

あの頃よりきっと増えた洗顔料や、
シャンプーの類を見下ろして
結局昔から使っている洗剤を手に取ると
娘用のボディスポンジを泡たてて、彼女の背中を流した。]

(53) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 …………、

[首裏や背中をひとしきり洗ったところで
セイルズは彼女の体を見下ろして何かを言いかけ
――……口を閉ざし、咳払いを1つ。]

 ……前とか、足の間は、ちゃんと自分で洗うんだよ。
 見てない。見てないから。

[はい、とボディスポンジを手渡して目をそらす。]

(54) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃

【人】 公証人 セイルズ

―― 朝餉 ――

 …………近いうちに、ママの命日が来るんだ。

[そういう話を切り出したのは、
きっと風呂から出て、
休日である事を確認してから洗濯機を回して
昨日冷蔵庫にしまったパスタを温めていた頃合だった。

”いつもどおり”きっちりと服を着込んだセイルズは
娘を前に獣に成り果てた男とは遠く

紅茶を淹れながらおもむろにその話題を切り出して
娘をちらりと一瞥し、再びカップに視線を戻した。]
 
 例年通り僕は会いにいってくるから
 帰りは夕方になるけど――……

[君も来るか、と言いかけて、口を噤む。
静寂が食卓に落ちた**]

(60) さねきち 2019/10/17(Thu) 00時頃

【人】 公証人 セイルズ

―― 朝餉 ――

 そう…………

[落ちた呟きを拾って>>61
セイルズはこくりと頷いた。
自分自身のコップに珈琲を淹れようとして
娘から出た言葉に、少しだけ手の動きを止める。]

 ……かまわないよ。

[数秒の沈黙を挟んでから、再び頷いた。
半ば望んでいたことなのに、
彼女の口から行きたい、と切り出されると
少しだけ不安になってくる。]

(64) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[――――二人を混同しないであげて。と
白い眷属に言われたことを思い出す。

妻と娘にとって自分はどう映るのだろう。
二人目の眷属を迎えたことは。
……妻はきっと怨んでいるだろう。

そんな事を考えながら、セイルズは食卓についた。]

 優しい子だね、君は。
 彼女を……家族だと思ってくれるなら、
 祈ってあげてほしい。

[微笑みながら、そうしてほしいと添える。

食前の祈りは相変わらず捧げない。
捧げどころを失った想いだけが燻っている。*]

(65) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃

【人】 公証人 セイルズ

―― 命日 ――

 ……けっこう古い墓地でね。
 彼女が眠るのは、新しく敷地が増やされた場所だが

[十字架の墓が立ち並ぶ墓地へ
娘を伴って出かけたのは、それから少し経った日の事だった。

蒼い草原の上にいくつも灰色の十字架が立っている。
誰かが誰かの墓に花を供えているのが見える。

セイルズは墓地の入り口から少し歩いた場所
立ち並んだ墓の一角へ向かうと]

(66) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 会いに来たよ、クラリッサ。

[本来悼まれるべき家族に悼まれず
一人の男に添って、100年を生きた女性の名を呼ぶ。]

 今日は娘も一緒なんだ……
 ずいぶんと、君に会わせていなかったけれど

[呼びかける間も、十字を切ることはなく
乾いた風が、墓地を駆け抜ける**]

(67) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃

【人】 公証人 セイルズ

――命日――

 ……ありがとう。

[乾いた指先を、娘の小さな頭に伸ばした。
そのままいくらか撫でて
白い薔薇と墓石に目を落とし思考をめぐらせる。

生まれた年と、死んだ年。
それから名前だけを刻んだ小さな墓がそこにある。

クラリッサ・ローズブレイド。
きっと順風満帆な人生を送っていれば
一人の令嬢として生を終え、
もっと”家族”に囲まれて弔われていたはずの女。

殺したのは、他ならぬセイルズだ。
愛を言い訳にして何度も何度も毒を盛り
気を狂わせて殺してしまった。]

(79) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[かわいそうに。という嘆きと、
いまだ燻る「あいしている」のやり場がないまま
ここに祈ることもなく通って約三十年。

愚かにもセイルズは同じ轍を踏もうとしている。

長年添い遂げた妻の後を追うこともできずに
ただ生を長らえて
幼い少女を生かすといいながら
自由に生きる尊厳を奪った。 

…………いとし子には
反抗期も成長に伴う別離も存在しなかった。
彼女の意思が芽生える前に殺したようなものだ。]

(80) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[二人も殺したセイルズに、よもや祈る神などなかった。
残り100年か200年の命を抱えて
きっと行くなら地獄だ。

――――けれども、その前に]

(81) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 馬鹿な僕の独り言として聞いてほしいんだが…
 
 ……1つだけ、聞きたいことがあったんだ。
 ここに君を連れてきたときに。

[優しく呼びかける声は、
父が娘に呼びかけるようであり
あるいは夫が妻に呼びかけるようでもあった。

セイルズは亜麻色の髪から手を離す。
”彼女”から視線をそらし、
灰色の空を見上げた。]

(82) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 初めての夜にね。
 目覚めた君を起こそうとして
 君は、いつもどおり起きなかった。
 あと5分、って…………いつもどおりに。

 けれどその時の君は目を開けて、
 僕を夫のように呼んだんだ。
 『――呼んで、』って、……30年前みたいに。
 

(83) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[視線を落とす。
紅茶色の目を見た。

風にさらさらと流れる髪も、揺れる瞳も
なにもかもが似ていて見分けがつかなくなりそうになる。

吐息ばかりの笑いがこぼれた。
惑いながら、
きっと知らなくてもいいことを知ろうとしているのに
伸ばす手をやめられないのは職業柄か]

 僕が言っていることがわからないならいいんだ。
 いいんだが……
 

(84) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 …………君は一体誰なんだ。
 ミルフィ? それとも、クラリッサ?
 

(85) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[問いかけながら、セイルズはどこかで
「何をいっているの」と笑う娘の声を求めている。

その都合のよさを内心でせせら笑う間にも、
墓地には湿気た風が吹き込んだ。*]

(86) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃

【人】 公証人 セイルズ


[色の失せた枯れ草を、風が撫でていった。]

(117) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

[振り向いた彼女は、
セイルズが見たこともない表情を浮かべていた。

大人びた妖艶な微笑に一瞬見蕩れ、
それから、不穏に震える心臓を押さえ込むよう、
ぎゅ、と己の手を握り締める。]

 どちらでいてほしい……?

[瞬き、鸚鵡返しに呟く間にも、
彼女は自分の可能性について語る。
曰く、二重人格。曰く、幽霊。

持ち札に触れてから「どちらでもいい」とカードを捨てて
セイルズに近づき、その唇を奪ってみせた。]

(118) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 ……、っ、――――、

[セイルズは或る名を呼ぼうとしてそれを留め、
諾々と接吻を受け入れた。
意図しないのに慣れたように体温を上げさせられるのが
少しばかり恐ろしく、軽く肩を掴んだが

銀糸が伝う。荒い呼吸を吐き出す。
二人の間にまた風が入り込む頃には
セイルズは少し紅くなった己の頬を煩わしそうに拭い
「彼女」が語ることを、やはり黙して聞いていた。>>104]

(119) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

[彼女は自分を病の具現化だ、と語る。
お前が血を啜る度に
私はこの娘の表面に出てくるのだ、と。

そして”どこで見たのか”、”誰かに似た”微笑を浮かべて
セイルズをじっと見据える。

セイルズはそこでやっと、
少し皮肉げに、……寂しげに笑った。]

(120) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ


 ……そうか。
 よかった。

 信じてもいない神がいたら
 ……。妻を追い出す羽目になったら
 どうしてくれようかと思ったが

[目を伏せる。それから腕を伸ばし――]

 待ちなさい。

[「さよならね」と告げた「女」の腕を掴んだ。
そうして身近に引き寄せる。
紅茶色の瞳を覗き込んだ。]

(121) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 どちら、と聞くなら答えを聞いていけ。
 君は、怯えた、ただの女の子だ。

 ひとりになる事を怖れて
 愛されるものに擬態して
 それでも足りなくて怖いから狂っていく

 ……たったひとり、僕の娘だ。

[あたし、もう、ひとりでいなくていいの?>>0:200

思い出の中の少女が不安そうに首を傾げて
抱きついてくる姿を思い出しながら
セイルズはそう語る。

愛しているわ、といいながら愛して、と強請る姿は
依存症末期の患者にもよく似ているが
どちらかといえば、一人ぼっちの頃の娘に似ていた。]

(122) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

[……馬鹿な子。内心でひとりごち
もっと馬鹿なのは僕か、と自嘲する。
いまだ神の国は遠く死者を蘇らせはしない。
わかっていた。わかっている。

終わってしまった物語の続きを
夢見ることは望んでいないのに
その可能性を考えた自分を、嫌悪しながら
繋ぎとめるのはあくまで「娘」の方だ。]

(123) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ


 この考えが間違っていてもいいさ

 ……君がその通り「病の具現化」だというなら
 僕は君ごと―― ミルフィ、君ごと
 全て受け止め、愛して……償うまで。

 君がその通り、「病の具現化」だというなら……
 本当に昔を知っているなら
 僕を死で縛れないのは知っているはず
 
 繋ぎとめておけ。ちゃんと。
 ……僕が君を愛せるように。
 

(124) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

[セイルズはそこまで言うと、
彼女の頬に触れ強引に上を向かせた。

こんなものはただのあがきであって
何の救いにもならないことはよく知っている。

それでも、衝動は体を突き動かし


――――――彼女の呼吸を奪う。深く。熱く。]


 [   ――……暗転。  ]

(125) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 …………。
 なんでもないよ、ミルフィ。

[呼びかけられ、セイルズは穏やかに微笑み、
彼女の頭を撫でた。]

 雨が降りそうだね。
 今日はもう帰ろうか。
 
 また、来年ここにくればいい。

[そういいながらも、白い薔薇を一瞥する。
揺れる花弁に目を細め
そこに妻の姿を幻視し、苦笑した。]

(126) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
( …………馬鹿だよなあ、
   笑ってくれ。クラリッサ。

   君の代わりも、彼女の代わりも、
   どちらも居はしないのに   )
 

(127) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

[踵を返し歩きだす。
湿った風が墓地を吹きぬけた。
灰色の空からはそろそろ雨の気配がしてくる。

セイルズは空を仰いで、
そこにありもしない天国を見ると
そっと、娘の手をとった。]

 ……ミルフィ。
 また今度天気のいい日に、一緒に出かけようか。
 随分一緒に買い物してないだろう?

 「君」が好きなものを、教えてほしいんだ。
 

(128) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
( 君ごと愛して全て背負おう。
  僕は吸血鬼である前に、君の父親なのだから ) **

(129) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃

【人】 公証人 セイルズ


 そうだね。

[灰色の空を見上げてセイルズは小さく頷いた。

季節は巡り、望まないのに
はじまりと終わりを連れてくる。

自分の生に自分で幕を下ろせたなら、
きっとこの手を握ることもなかっただろう。
そう思えばこそ、
セイルズはミルフィの手を握ったまま歩く。]

(143) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃

【人】 公証人 セイルズ


 ……ははは。
 遊園地に水族館に、動物園か。
 ああ、全部行こう。

[彼女が挙げた場所のなんと子供らしく愛らしいことか。
洒落たレストランでも美しい場所でもなく
家族の思い出がつきものの場所に行きたがる。

そのことにセイルズはどこか安堵して
笑い声をあげた。

それから唇に触れた感触に瞬き、
……片眉をあげて照れたように頭を掻くが]

(144) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃

【人】 公証人 セイルズ


 残念だが知っている。だからパパ以外で。

[意地悪をするようにそんな事を尋ねる。

――そうはいっても、
彼女は明け渡してはくれないかもしれないが。

少し考えてから、ため息をつき、再び口を開いた。]

 ミルフィが好きなもの……
 好きなこと、あるいは嫌いなもの。

 ……食べ物の好き嫌いは知ってるし
 僕の授業に来ると眠そうだから
 歴史が好きじゃないのも知ってる。

 そういう
 ママの真似じゃないところ……
 

(145) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 僕は、やはり好きだと思ったから
 

(146) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃

【人】 公証人 セイルズ

[誰かの代わりだと思わせて、
彼女の心を殺した回数よりも多く
彼女のことを知りたいと思う。

指先を伸ばすと、
セイルズは指の背でミルフィの頬をつついた。]

 墓参りで確認したかったんだ。
 最近あんまり似てきたから……
 ……でも、

 ママはママで、君は君だ
 君は、ママじゃない。

 ……だけども君はやっぱり、何があっても僕の家族だ。

[何か吹っ切れたようにセイルズは微笑み
ミルフィの手を握る。――留めるように強く]

(147) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃

【人】 公証人 セイルズ


 ……愛しているよ、ミルフィ。
 

(148) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃

【人】 公証人 セイルズ

(例えば君が狂気に負けたとしても
 小さな祈りも届かないとしても
 君の最期まで全てを

 ……いずれ地獄に落ちるまで )**

(149) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃

【人】 公証人 セイルズ


 ああ、全部……全部だよ。

[彼女の手を繋ぎなおす。
思うことを打ち明けて
黙ってしまった娘と、家に向かって歩いていく。

こつりこつりと革靴の底が地面を叩く。

頬につめたい感触が走った。
見上げれば、きら、と
糸がきらめくように雨が降ってくる。]

(178) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

 ……そうだね。
 傘がないから、急いで帰ろうか。

 体が冷えてしまう前に。

[雨に降られながらセイルズは手を伸ばす。
ミルフィの頭をそっとなでて、
彼女の目じりから頬までを一度だけ、
指の背でなぞった。

"泣かないで”と言おうとして
何も出ない、不器用な父親めいて。

頭に、顔に、広い背に、雨は降りしきる。]

(179) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


"I'm so happy to be your daddy, my love."

[浮かべるのは穏やかな微笑。
返した言葉は、いつもの決まり文句。

それ以上を語らずに二人だけの帰路を歩く。
大切に娘の手を握ったまま*]

(180) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

―― 独白 ――

[永遠のようで一瞬な
愛しい年月の中で、日に日に、娘を病が蝕んだ。
二重人格、あるいは依存症そのものが
ミルフィを支配し、彼女の生活を塗り替えていく。

妻と同じ年嵩で見た目の年齢が止まり
大学の研究を手伝うようになって
いつも、隣にいてくれるミルフィ。

僕は何をしてやれるだろう。
父親として、家族として、
そしてこんな僕の生に巻き込んでしまった償いとして
どうしてあげられるだろう。

……考えて考えて、考えたあげくに、
僕はやはり、最初に出した結論しか選べなかった。]

(181) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


[起こる全てを、彼女の全てとして受け入れ、愛すること。]
 

(182) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[蠱惑的に誘って、「愛して」と両手を広げてくる>>162
そんな彼女――依存症を愛しながら思う。
依存症に乗っ取られている時の娘は、
妻に似た表情を浮かべながら、いつも寂しそうにしている。

"You'll never ever, never ever,
never be happy without me."

そういう言葉が彼女の口からこぼれるたびに、
「もちろん」と笑ってその唇を塞いだ。
彼女の望むまま愛して、血を啜った。
それは例えるなら、死ぬ前の晩餐に似ていた。

気を失うまで抱いて愛しているうちに、時々、
僕は自分が誰を愛して抱いているのか解らなくなってくる。
そういう時必ず、「ミルフィ」と彼女の名を呼んで、
頭を優しく撫でた。

僕自身が誰のためにそう在るのか、
そうすれば思い出せたから。]

(183) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 ……ミルフィ。

[気絶してしまった彼女の髪を撫で梳いていると
時折、依存症が抜けた娘が目を覚ますことがあった。
そんなとき決まって、彼女は『あたしも』>>163
僕にすがり付いてきた。]

 ミルフィ。おかえり。
 ……しょうがない子だ。

[僕は彼女を抱きしめて、その肌に鼻筋を寄せた。
心が少し入れ替わってしまっているだけで
同じ彼女。同じ体なのに
僕はそんなとき決まって、「おかえり」と口にする]

(184) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[恋しさと苦さ、娘を失いたくないと叫ぶ心を
「しょうがない子だ」と
彼女を受け入れるふりをして誤魔化して、
怖がる娘に微笑みかける。

そういう時の僕がうまく笑えていたか、自信がない。

たぶん、読み聞かせするときのように
声を穏やかに繕っていても
彼女を抱きしめる腕の震えと強引さは、
誤魔化せなかっただろうが。]

(185) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


[カレンダーについた赤い丸を見る。
季節は巡る。今年も、あの日がやってくる。]
 

(186) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

―― 夢 ――

[最近、頻繁に夢を見る。

僕と君は、手を繋いで歩いている。
灰色の空の下を。

君の体には随分と噛み痕が増えて
君を彩る服も化粧も、随分君が好まないものになった。
『ママ』に寄せた格好で、ぎこちなく笑っている。

もう何日も、君は君ではなかったから
久々の外出になる。]

(187) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 今日は、好きなところに連れて行ってあげる。

[僕は笑ってそういう。――動物園、水族館、遊園地。
研究ばかりしていては息が詰まるから
史跡や図書館、博物館以外の場所を
どこでもいいよ、と選択肢を示して
君の興味がある場所へ赴く。

少し大きくなりすぎた君を抱き上げることだって
甘いデザートがある店にも行って
弱ってきた胃腸に鞭を打つことだってする。]

 沢山遊んだなあ、ミルフィ。

[そうしていくつも思い出を積み上げた後に、
夕暮れを見上げて帰路につく。
僕が作った夕食に、甘すぎる君のデザートを添えて
二人で食卓を囲んだら、
月が窓から覗く頃、僕らは眠る準備をする。]

(188) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[夢の中の僕は、まだ君を抱かない。

ただ古びたアルバムを持ち出して
全てがデジタル化されたこの時代に
わざわざ現像して、色の褪せた古い写真を――
半透明のページに綴じられたそれらを、
君と一緒にたどっていく。
あんな事があったね。こんな事もあった。

そうしてアルバムが最後のページに差し掛かる頃
僕は君の服に手をかけて]

[初めての時のように愛して、]




[――首筋に、深く牙をつきたてた。]

(189) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[真っ白だったシーツが真っ赤に染まっていく。
僕は止めずに尚君を腹に収める。

君の血。君の涙。君の全てを。
君が君でなくなってしまう前に。

君の体はどんどん冷たくなっていく。
かつて抱きかかえて町を歩いた体が
弛緩して、重くなっていく。

僕はずっと君の名前を呼んでいる。
口の中に広がる幸せの味に嗚咽しながら
君を最後まで食べつくして

その瞳を、優しく閉じてあげる。
その髪や頭を撫でてあげる。

愛している、と言いながら。
――――……………君が狂う前に、]

(190) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 『お目出度い人ね。
  ――そんな夢物語、あるわけないじゃない』

(191) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[声が降る。

ざあざあと雨が降っている。
妻が死んだ日と同じ服を着て、
僕は夜のリンディンに立っている。

目の前には、白い幽霊が居る。
真っ白な顔をした妻が僕を見つめ、
妖艶に、そして恨めしげに微笑んでいる。
化けて出て尚、美しくも恐ろしい、白薔薇に似た僕の妻。

降る長雨の中、シャツが体に張り付く。髪が体に張り付く。
……体が冷えていく。

彼女は雨に打たれながら僕を見据えると、
すっと暗闇の中に姿を消した。
僕は思わず手を伸ばして、一歩、二歩と石畳を踏む。]

(192) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[雨が降っている。

濡れた革靴が黒い水溜りを踏んだ。

雨が降っている。

遠く、サイレンの音を聞いた。

雨が降っている。

散らばり、ひしゃげた、――の体を覗き込んだ。]

(193) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

[膝をついて君の名を呼ぶ。
答えは返らない。誰も応えない。
ただ、雨の音だけが聞こえている。

僕はただただ首を横に振って、
眠り姫のように目を瞑る君の赤くなった髪を撫でる。]

 …………ねぼすけな子だなあ……

[白く冷たい頬に手を伸ばす。
目覚めのキスになんかならなくとも
笑いながら泣いて君の体を抱き上げた。]

(194) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 解って、いるよ。
 許されないことだと。
 救いなどないほうが自然だと。

 けれど、どうあっても……
 僕は、この子の最期までを

 …………すまない

[妻か、君か、誰に謝りたいのかわからなかった。
解らないまま、もう息をしない君の唇を塞ぐ。

――――甘い匂いが鼻をついて、]

(195) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


  "... I'm so happy to be your ... ."
 

(196) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ

―― ある誕生日に ――

[――――……]

[今日は仕事がない日だからと、
ベッドに埋もれて惰眠を貪っていると
隣で起き上がる気配がして、少しだけ手を伸ばした。

さらり、流れる髪の柔らかさだけを感じてまた眠る。

なんだか酷い夢>>187をみて再び目を覚ます頃合には、
甘い匂いが階下から立ち込めていて、
僕は例年、行われたそれにひどく安堵しながら、
一定のリズムで階段を降りていった。

投げかけられる言葉に僕は目を見開いて>>169

笑顔を咲かせた愛しい娘と、
精一杯の努力の証が見えるケーキを見て
本当に嬉しくなってしまって、微笑む。]

(197) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 お祝いしてくれるのかい?
 はは……ありがとう、僕の可愛い娘。

[神に感謝など捧げないが、
いつもどおりの砂糖の多いケーキを
僕は大層喜んで

共に過ごした年だけ増えたロウソクが
ケーキを埋め尽くしていくのを
圧巻だな、と思い見つめていた。

覚悟を決めてブラック珈琲を淹れる。
それから、切り分けられたケーキを食べる前に
彼女の名を呼んだ。

顎に指先を添えて、
唇を寄せるのは首元……ではなく、頬。
ついたクリームを思わず舐めたのは
さっき見た酷い夢のせいだろう。]

(198) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 クリームがついているから間違えたよ。
 
[笑って冗談を吐き肩をすくめた。
それから食卓につく。]

 ……ミルフィ。
 今回は砂糖をどれくらい使ったんだい?

[僕は律儀にそんな事を聞く。
もちろん、その後の言葉に繋げるために。]

 食べ終わったら、買出しに行こう。
 君の紅茶にいれる砂糖がないだろう?

[言いながらちらりと窓の外を見た。
蒼い空。きらきらと差し込む朝日に目を細める。]

(199) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


[いずれ終わりがくるとしても
いずれ地獄に落ちるとしても……

君がいるなら、きっといつまでも僕は幸せだ。

だから――どうか、
限りある生で、君の命がはじまりから終わりまで
「しあわせでした」と言えますように。

最早祈る神も何もないけれど
それだけを願って、甘すぎるケーキを咀嚼した。**]
 

(200) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃

【人】 公証人 セイルズ


 ……ははは

[肩を竦めて笑った。>>229
仕方のない人ね、と言われてほっとした。

いつもどおり君は
砂糖を全部使ってしまったというから>>230
僕は先んじて買出しに行くことを提案する。

使い古したデートプランだが、
君は喜んでくれるようだ。

無邪気に苺も買おう、という様子に目を細めて
それから2人だけで誕生日を祝う。

もう何回目かもわからない誕生日に
君のケーキを食べられる事を喜びながら
珈琲片手に、君の話を聞いていた。]

(259) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


 ああ、そうだね。
 行こうか。

 おいで、ミルフィ。

[僕はそういって彼女に呼びかけると
昔のようにとはいかないが、
彼女の手をとって歩き出した。

風にさやさやと街路樹の葉が揺れて
石畳には蒼い影が落ちている。
晴れ渡った空の下、僕と君は歩いていく。]

(260) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

―― 遠い日の思い出 ――

 ……ミルフィ、疲れちゃったのかい?

[僕は買い物袋を片手に下げて、
とぼとぼと歩みが遅くなってきた君を見下ろした。

無理もない。
積まれた食材を見ただけで目を輝かせはしゃいだし
嬉しそうに砂糖や苺を買い物カゴにつんでは
「あたしが!」と一生懸命お手伝いをしていたから
体力も持たなかったんだろう。]

(261) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

[君が買い物カゴを持っていた関係で
あんまり重くない買い物袋を
僕は、手から肘に吊り下げる形にして
「おいで」と君に声をかけた。

君の体を抱き上げれば
暮れた空をカラスが飛んでいく。
ぎゅ、と力がこもるのを感じて
胸いっぱい広がる愛しさに、僕は笑った。]

 ……帰ろう、ミルフィ。
 僕らの家へ。

 ………………眠ってしまったのかい?
 

(262) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

[穏やかな笑い声が聞こえなくなって
君の体温がぽかぽかと暖かくなった頃
僕は静かに、そう尋ねた。

返る答えは、沈黙のYes。

僕はくすくすと笑って、君を抱えたまま家に戻る。
鍵をあけるのに苦労しながら君を落とさないように
寝室のベッドまで運ぶと
その丸い額をなでて、口づけた。]

 おやすみ、可愛い子。
 

(263) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

―― 夕 ――

[ベッドに寝かせた君の髪をなでて、
夕食の用意のために
自室から出ようとしていた頃のことだった。]

 ……おかえり、ミルフィ。

[僕はうまく笑えていただろうか。

泣きながら抱きついてくる君を
優しく抱きしめ返す。]

(264) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


 いいんだ、……いいんだよ。
 君がケーキを作ってお祝いしてくれた。
 僕には、それだけでも十分。

[ぽん、ぽん、と背中をなでた。
どうにか泣き止んでおくれ、と優しく呼びかけた。

君は夢の内容を話す。
遠い遠い昔の、六歳の頃の夢を見た、と。

――……ああ、それは、もしかしたら
僕らが、……もしかしたらだけれど
一番幸せな時期の、思い出かもしれないな。

壁にかけられた古い似顔絵を見て
僕はそう思って苦い味を飲み込むのだけれど>>243
次の瞬間には、君の呼びかけに呼び戻されている。]

(265) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


 ミルフィ。
 ……僕も、僕もね
 君が僕の娘で、とても幸せだ。

 だから……………

[繋ぎとめて、と言われて僕は少しだけ言いよどむ。
セックスをして、吸血してしまえば
きっとまた君の病は進行する。

君を失うのが恐ろしくて、
僕は「駄目だ」といいそうになる。
「どこにもいかせたくないんだ」と縋りそうになる。]

(266) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


[……でも、君はそれを望んでいないから。]

(267) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


 …………

[僕は君の体を強く抱きしめる。
そうして優しくベッドに押し倒した。]

 ……繋ぎとめるよ。

 君がもしも……もしも……
 ”あの子”に負けて消えてしまいそうになったら

 その前に、パパのお腹に隠してあげる。
 大丈夫だよ、ミルフィ。泣かないでおくれ。
 

(268) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

[僕は、ちゃんといつもどおり笑えていたかい?
……そうだね、やっぱり、自信がないな。

唇の震えまで抑えて、人差し指の背で君の涙を拭う。
そして君に読み聞かせをするときのように
優しく笑って、唇にキスをする。]

(269) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

 
 "I'm so happy to be your daddy, my love."
 

(270) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

[いつか眠りにつく君が、
穏やかに笑えていますように。

願いながら、僕は君を愛すだろう。
愛によって全てが終わる日まで。

……その血も。涙も。笑顔も、]

   ( ”You are mine, my love." )

[――――いずれは、そう胸を張って言おう。

孤独に至る病を抱えながら
僕らは本当の家族になる。*]

(271) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ

――  ――

[曇天に黒いカラスが舞っていた。

クリスマスが近づく町はどこもかしこも飾り立てられている。にも関わらず、天気のせいか、降り始めた雨のせいか、どこか灰色だった。

町を歩く人間たちは皆家族や恋人を連れている。
冷たい空気を、互いの微笑みで暖めて灰色の町並みを歩いていく。

その人ごみの中で、黒いコートを羽織った男があたりを見渡した。
足しげく通った店にも、友人が住んでいた家にも、知った顔の1つもないことを理解すると、納得するように歩いていく。]

(272) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


「ママ、パパ、サンタクロースが来たら
 ぼくあれが欲しいなあ」

「いい子にしてたらきっとくれるわ」

「おいおい、いつもいい子にしてるじゃないか、なあ?
 クリスマスを待ちなさい」

「え――、僕待ちきれ……、わ、ごめんなさい!」
 

(273) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


[町を歩く親子連れがプレゼントについて語り合っている。

はしゃいだ少年が父親に振り返ろうとして、前方を歩いていた男にぶつかり、咄嗟に謝罪を口にした。

男は黙って微笑むと、彼の頭からずり落ちた帽子を被せなおして、何かを呼びかけた。聞き取れなかった少年がぱちくりと瞬きをする。
――直後。]

「……、誰と喋ってるの?」

「ほら、そんなにふらふらしてたら危ないぞ」

「えっ、――うん、……」

[両親の声が聞こえ、少年は不思議そうに首をかしげた。
そうする間にも、黒いコートの男は雑踏に消えていく。広い背を雨に濡らしながら、家族連れの中をひとりで。]

(274) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

【人】 公証人 セイルズ


「雨が降ってきたわ。――さあ、帰りましょう。
 私達の家へ」

「うん!」

[微笑を交わし、人間たちはそれぞれの帰路につく。

結露に曇った窓の向こう。
クリスマスツリーを室内に飾り、
暖かな料理がテーブルに並ぶ場所へ。

それら全てを祝うように、
あるいは厳かに祈るように

柔らかな雨の中で、リンディンの鐘が鳴っていた。]**

(275) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃

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