272 【R18RP】十一月と、蝶が奏でる前奏曲
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[ピッ ピッ ピッ とおく、とおくに電子音が聞こえる。 規則的な音。アラームにしては小さいような。 だいたい私の携帯の音じゃないし。
手を伸ばして止めようとして 身体の節々が痛いことに気がついた。 そうだ刺されたんだし当然なはず。
待って、痛いのはむしろ背中というか肘とかで でも刺されたのは腕なはずで……。 あと右足はどうにも感覚がないし それに何かが引っかかって 腕が動かせるんだけど引っ張りにくい。
おっかしいなーと思っていると 何かが私の手を強くつかむ。
疑問符を浮かべながらようやく目を開ければ ――そこに居たのは。]
(15) moggyu 2019/11/10(Sun) 14時頃
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――病院――
[バタバタせわしなく病室に入ってきた 看護師さんとお医者さんによると
私は車の前に飛び出した子供を助けようとして 道路に飛び出して子供をかばった結果 車のボンネットとフロントガラスに全身打ちつけて 意識不明のままここに運ばれてたらしい。
……お、おう? すごいね??
我がことながらそんなことをするとは ちょっと思えなかったんだけど そういうことなら、そうなんだろう…?
全身強打はしているのと 右足はしばらくギプスだそうですが 幸い命に別状はないとのことだった。]
(16) moggyu 2019/11/10(Sun) 14時頃
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[――私が選んだのは 「知らない今日」の「続きの明日」。
私の大切な人は そこで笑っていてくれるだろうか。**]
(17) moggyu 2019/11/10(Sun) 14時頃
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[目を開けたら、そこに居たのは――>>30]
や、まと?
[声を出そうとしたら掠れていて 思わず咳き込めば彼が笑った。]
(38) moggyu 2019/11/10(Sun) 21時半頃
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[さっきまで見ていた十五歳の少年ではなく けれど私の知る、私から遠い彼ではなく>>0:248 あの頃そのままの印象で大人になった 知っているけど、知らない大和。]
…………
[やまと、と唇だけでもう一度繰り返して 彼の手をぎゅっと握り返す。
横顔を見つめていれば こちらに気がついてくれたかな。
こころは無事かなってそれだけ聞きたかったけど 私が何かを言う前に病院の人がやってきたから その時はそれ以上話せなかった。]
(39) moggyu 2019/11/10(Sun) 21時半頃
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[先生たちがいなくなったのと入れ替わりに タッタッタと足音が聞こえる。 大和かな、と体を起こそうとすれば バッとカーテンが開かれて正面から抱きつかれる。
誰に? ―――――そう
一瞬誰かわからなかったのは 私が知らない みらいのカタチだったから。]
(40) moggyu 2019/11/10(Sun) 21時半頃
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こ、こころ……?
[恐る恐る名前を呼べば 私の欲しかった未来は私をぎゅうぎゅう抱きしめた。
幻なんじゃないかって思うこともできないほど いい感じで首にキまっててしんどい! ギブギブ! ギブです!]
ちょ、痛い痛い苦しい! ごめ、ごめんね!?
[心配したとかあんたは全くもうとか 前もどれだけ心配したと思ってんのとか。 耳元で散々怒られたんだけれども
……記憶、ないって、言いづらい。]
(41) moggyu 2019/11/10(Sun) 21時半頃
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[私を散々締め上げてから 勤務中だったらしいこころは風のように去っていく。 そういえば看護師さんの恰好だったな。 こころはちゃんと夢を叶えたんだね。
よかったなぁ、って思いながら ヘッドアップしていたベッドにもたれかかる。 何が起きたか本当によくわからないけれど あと6日ぐらいで退院できるらしい。
……さて残る問題は この七年間の記憶がないってことだよ。 ううん、ないわけじゃないんだけれども それは、こころのいない世界の記憶だから――……]
(42) moggyu 2019/11/10(Sun) 21時半頃
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[だから、ようやく二人だけになった部屋で 大和が山盛りにされているみかんを剥きながら 今回の事故(?)――について聞いてきたとき。
私は困った顔をしながら どう答えるか考えあぐねてしまった。
覚えてない、と正直に言えば 大和をさらに心配させてしまいそうだし こころには、いよいよ殺されちゃいそう。
そんな私の表情を読み取ったのか それとも長すぎる沈黙のせいなのか 大和の表情が変わってしまったから 私はあわてて首を横に振った。]
(43) moggyu 2019/11/10(Sun) 21時半頃
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違うの――子供がって意味じゃなくて。
[大和が私の話を聞いてくれそうなら 離れてもいかず、視線もそらさないのなら 私はその姿に、打ち明ける勇気をもらえる。]
……こころが死んじゃった世界があったって そう言ったら大和は信じてくれる?
[笑ったかな、困ったかな。 止められなければ私は続けよう。]
私は、こころを死なせないように 過去に行ってそれを変えてきた ……そう言ったら、大和は信じてくれる?
[彼が本気にしないようなら それ以上は言わず強引に夢オチってことにしておこう。 記憶の欠落は頭を強く打ったことによる健忘症って 診断されるはずだから。*]
(44) moggyu 2019/11/10(Sun) 21時半頃
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[大和がいう「いつも」をわからないことを>>46 ちょっとだけ寂しく思いつつ。
私はぽつりぽつりと、 「続けなかった昨日」の話をする。
七年前にこころが死んだこと。 大和が私と疎遠になってしまったこと。 二日だけ過去に戻ることができたこと。 こころを襲った相手を追い払えたこと。
事実だけを並べれば それは大和の知っている過去だったかな。
ここにいる私は知らないのだけれど 待っていて欲しいと言った大和は>>2:343 同じ気持ちのまま今にいるのかな。]
(49) moggyu 2019/11/10(Sun) 23時頃
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……あのね、大和。 私は二つ謝らないといけないの。
[本当は一つのつもりだったけれど 話している間にもう一つ増えちゃった。
本当はこころにも、他の人にも 謝らなきゃいけないことなんだけど。 皆にはこの「なかった過去」の話ができないから。]
一つは、ちゃんと大和に話さなかったこと。 怪我させずに済んだかもしれないのに。
[こっちはきっと気にするなとか そんなことを言うのだろうし 私も大和が怒るなんて思ってないんだよ。
でも――でも、もう一つは 大和は許せないんじゃないかな。]
(50) moggyu 2019/11/10(Sun) 23時頃
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[大和が握ってくれている手を>>48 私は強く、強く握り返す。]
こころが死んだ過去を、私は変えたの。 だから、私は。今の私は。 こころと大和がいない世界の菜摘なの。
[この世界にも「私」がいたはずで なのに私は七年間の記憶はなくて 代わりに「なかった未来」の記憶があるの。
これってどういうことかわかる? 私にはわかってしまった。]
……ショッピングモールで怪我したよね。 あの日から今日まで大和と一緒にいたのは 「私」であって私じゃ、ないの。
[大和がこの七年間一緒にいた菜摘はもう、いない。]
(51) moggyu 2019/11/10(Sun) 23時頃
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[本当は言わないでおきたかったけど。]
大和がどう思うかは大和に任せるよ。 その結果私をどう扱っても 私は構わないって、言っておくね。
[握りしめていた手の力を緩める。 振り払われるなら縋りつきたくはないから。]
――……ここのベッドで目覚める前のことは 覚えていないんじゃないの 私には、なかった昨日なの。 だから――ごめんね。
[ごめんね。と言ったときの大和の表情は 私は見ることができたかな。]
(52) moggyu 2019/11/10(Sun) 23時頃
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[たとえ大和がどんな反応をしても 私はそれを受け入れるつもりだった。 だって過去を変えたいと願ったのは 私の勝手だったんだから。]
ごめんね。こんなこと話しちゃって。 でも大和に言わないままで 「私」のふりはしたくなかったんだ。
[これも全部私の勝手なんだけど。
戻らない記憶をずっと待ってもらうのも 「私」のふりをし続けるのも 私にはできなかったから。*]
(53) moggyu 2019/11/10(Sun) 23時頃
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[構わないって言いながらほとんど手を離したのは 震えていることに気がつかれたくなかったから。
きっと、私はずっと大和が好きだった。 だから離れて行っちゃったことに傷ついた。 でも、こころのことでいっぱいいっぱいで 気がつかないまま、時を過ごしてしまったの。
変えたかった過去は――こころの生死だったけど 恋心っていう大事なことにも気がつけたから 私が手に入れるのには十分すぎるはず。
硬い表情をしている大和をみながら>>73] 自分に必死にそう言い聞かせていれば いきなり頬をうにょーんと伸ばされた。]
む、ににゃにゃ!
[乙女の顔引っ張るものじゃないでしょ!って つい頬を膨らませたらやっと手が離れる。]
(90) moggyu 2019/11/11(Mon) 23時半頃
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[赤くなっていそうな頬を押さえたまま 大和は私の選んだ未来を肯定してくれた。>>74 それは私自身への肯定だったから、嬉しくて。
つい表情が緩みかけたところで 大和の手が首の後ろに回って――]
わふっ――!
[間抜けな声をあげた私は 大和の腕の中に捕まっていた。>>75 ずきずき痛みを感じている余裕もなくて 耳元で聞こえる声に心臓が容赦なく跳ねる。]
(91) moggyu 2019/11/11(Mon) 23時半頃
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[あの時も、抱きしめられたけれど>>1:324 広くなった胸と伸びた腕が、私を完全に囲っている。 ぎちぎちに締め上げられているわけじゃないのに 私はみじろぎすらできなくて。]
でも、そんなに、欲張っちゃ いけないって、思ったんだもん……。
[問われた言葉は震える声で肯定する。
こころが居なくならなければ……なんて 百万回は考えたよ。 でもこころが無事だったのなら 私の気持ちは別にいいかって、そうも思ったの。]
(92) moggyu 2019/11/11(Mon) 23時半頃
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[代償を払うのが私なら、それでこの奇跡が叶うなら それでいいかって思ってたのに。 思って、大和に嫌われる覚悟までしたのに。
大和が続けた言葉のせいで 鼻の奥からツンと痛みが強くなって もうこれは無理だなってわかってしまう。]
へいきなわけ、ない、じゃん……!
[大和がメールすら送ってくれなくなって 私が、私が、どれだけ。
長い、永い、七年間を過ごしたんだよ。]
(93) moggyu 2019/11/11(Mon) 23時半頃
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[昨日の、七年前の私の言葉に応えるように 大和が伝えてくれた言葉を聞いて 涙がぽたぽたと大和の服を濡らした。
変わりないと他でもない大和が言ってくれるなら 私は「私」でもあるって思っていいのかな。
私は、私になかった未来を 生きていこうって思えていいのかな。 ――こんなに何もかももらって、いいのかな。]
(94) moggyu 2019/11/11(Mon) 23時半頃
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[大和の背中に手を回して ぎゅっとしがみつくようにした。
体温を分け合えば これは夢じゃないんだって思えるけど できればもっと、実感させてほしくて。]
もういちど、ちゃんと、いうね。 ――好きだよ。大和。ずっと、
(95) moggyu 2019/11/11(Mon) 23時半頃
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――そのあと――
[退院は予定より早くて ギプスがとれるのも見立てよりずっと早かった。 (なんだか先生は首をかしげていたけれど MP使用的な治療が成されてたとは私も知らない)
七年間分の記憶がないことについては 健忘症という診断が下されたので こころにはものすっっっっっごく怒られた。
退院日はわざわざ休みを取って 大和といっしょに付き添ってくれたし その後もしょっちゅう家に遊びに来ては 私の知らない、七年間の話をたくさんしてくれた。]
(131) moggyu 2019/11/12(Tue) 22時頃
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[高校の卒業旅行は 私のこころの二人で沖縄旅行にいったとか。
大和の大学合格祝いに遊園地にいったときには 私が真ん中で二人とそれぞれ手を繋いだのに 別方向に行かれてひっくり返りそうになったとか。
バレンタインにマカロンづくりに挑んだときは どうにもこころの分が上手く膨らまなくて 結局、私が作った分もこころの失敗作も 大和が延々食べ続ける羽目になったとか。
一つ一つ、私の知らない過去の話を聞きながら 想像して、笑い転げて、倖せを噛みしめる。]
(132) moggyu 2019/11/12(Tue) 22時頃
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[仕事…仕事は…たいへんでした……。
入院中に携帯にかかってきた電話の向うで 私の上司らしい人が大混乱だった。
どうやら今の私は雑誌の編集者をしているらしくて 私に任された記事がまるっと残っているらしい。 ……雑誌の編集なんて経験がありませんよ? ってさすがに言えなかったんだけど。
事情を話せば大きなため息が聞こえたけど 翌日には大量のお菓子と色紙が届いたので きっと、いい職場なんだと思う。
記憶なくてもできる仕事山ほどあるって書いてあって 泣きそうになっちゃったのは秘密ね。]
(133) moggyu 2019/11/12(Tue) 22時頃
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[私の手掛けていた雑誌は若い女性向けのもので 過去に私が担当した記事が載っているものは 全部こころが病室に持ってきてくれたけど。
ページをめくっても私は何も思い出さないけど 『キャシーの相談室! あなたのメイクを100点満点!』 という連載は、メイクじゃない話が半分ぐらいだったけど キャシーの回答がとても面白かった。
……ただ、どうにも顔に見覚えがあって この人は俳優さんだった気がするのだけど>>0:119 私の覚え違いだったかな……?]
(134) moggyu 2019/11/12(Tue) 22時頃
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――ショッピングモール――
[ギプスが外れてしっかり歩けるようになる頃には 季節はクリスマスになっていた。 クリスマスもクリスマスのイブなんだけど お仕事に関しては快くお休みをもらえてしまった……。
遠慮しても仕方ないので思いっきり楽しもう。 臙脂色のワンピースに白いコートを着て 星のネックレスを付ける。 黒のヒールを履けば、クリスマスっぽいかな?
イブだからなのか、モール内はカップルが多くて …あ、いや、私たちもそうだな? そうだね? 混乱しながら隣を歩く大和を見上げる。
……うん、だいぶ見あげなきゃいけない。 七年前は私の方が高いぐらいだったのにね。>>0:70]
(135) moggyu 2019/11/12(Tue) 22時頃
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[人が多いからね。はぐれちゃっても困るしね。 そう言い聞かせながらそろりと手を伸ばして 大和の指先をきゅっと握る。
いちおう、両想いの、恋人というやつだよね? ならこれぐらいはしてもいいんだよね?]
大和の手、あったかいね。 ……ッ、ほら、どこからいく?
[自分で握って自分で話題を振っておいて 恥ずかしくなるってことがもう恥ずかしいんだけど そういうのは! 触れないでください!*]
(136) moggyu 2019/11/12(Tue) 22時頃
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[ぎゅうっと指の間に指を挟まれれば>>139 こ、これは恋人つなぎというやつなのでは…!? 意識してしまうと顔が熱くなる。
二人並んで顔を赤くしたりうつ向いたり咳払いしたり 若干挙動不審だった私たちも 寒さに頬が冷えてきたら中へと入った。
一番近くの入り口から入った角には 青い海と白い海岸の写真の前に 綺麗なウェディングドレスが展示されている。
来年度に向けて私が企画している一つも 「特集!海外婚!」だったりして 最近は海外リゾート地での結婚式も流行りらしい。 お価格もそこまで高くないところが多いしね。]
(145) moggyu 2019/11/12(Tue) 23時半頃
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[ここは旅行会社とレンタルドレスショップの提携で 日本で選んだドレスを海外で着れる! というのも売り文句らしくって 事前に試着できて手ぶらで飛行機乗れるのは 楽ちんでいいなあとか思ったり。
価格もお手軽だなあとか うっかり仕事頭になっていれば 店員さんがパンフレット片手に話しかけてくる。]
えっ、いえ、あの……その 式とかは そんな ぜんぜん
[全然も何も付き合いだしたばっかりだし 私はともかく大和はまだ学生だし そもそもそんなこと考えているかもわからないし。
でも、その気がないというのも変だし 私は曖昧な返事を返すばかりになってしまう。]
(146) moggyu 2019/11/12(Tue) 23時半頃
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[ぐいぐい来る店員さんは 私の曖昧な反応を遠慮だと思ったらしい。
今ならこんなにお安いんですよとか こちらのドレスきっとお似合いになりますよとか もう試着室まで連れていきそうな勢いだ。 彼氏さんもみたいですよね? とか振るのヤメテー!]
つ、付き合ってはいるんですけど まだ結婚とか、そういうのは早いって言うか…… し、したくないとかじゃなくて! あっ……んんんっ……。
[ここまで言っちゃったら誤魔化せないのでは? と思っている冷静??な私と だって大和はまだそういうのないでしょ! 年下だし学生だし重いとか思われたら嫌じゃん! ってじたばたしている私で大乱闘中です。*]
(147) moggyu 2019/11/12(Tue) 23時半頃
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[わたわたしている私とは対照的に 大和はとっても落ち着いている。>>183 わあ、たよりになるなあ〜って感心することで ちょっとがっかりした心を押し殺した。
…大和が照れたり肯定してくれれば ちょっとは期待が持てたんだけどなあ……。
っていやいや、相手はまだ学生だし。 私だってまだ二十四だし。 結婚なんてずっと先の話だ。 特集のせいでいろいろ調べたから ちょっと詳しくなっちゃってるだけです。
大和とずっと付き合うかもわからないし まだ付き合う?ことになって二か月もしてないし 恋人らしいコトなにもないし……]
(196) moggyu 2019/11/13(Wed) 23時頃
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[プチパニックだった自分を落ち着かせるため つらつら考えていたらだんだん凹んできた。
恋人(のはず)だけどそれらしいことは何もない。 退院日も初出勤日も付き添ってくれたけど>>180 抱きしめてはくれたし、手を繋いでもいるけど
……私、大和に女性として意識されてないのでは?
思いあたってしまって顔が強張っていたから とっさに上手く言葉がでてこなくて んーん、ってかえすのが精いっぱいだった。]
(197) moggyu 2019/11/13(Wed) 23時頃
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[さらっと言われた言葉の意味が分からなくて>>184 無表情のままゆっくり三回は瞬きをしたから 大和を誤解させたかもしれない。
指輪、だけならピンキーリングとかかな?って (それもかなり恥ずかしいけど) 意識をそらすこともできたのだけど
だってウェディングドレスだよ。 それとセットの指輪っていわれたら どう聞いてもそういう解釈になっちゃうよ。]
えっ、えっ、えっ あ、あ、あの、ど、ど、どういう
[動揺しすぎて足元がもつれたけど 大和が手を握ってくれていたので転ばずに済んだ。]
(198) moggyu 2019/11/13(Wed) 23時頃
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[なんとか体勢を立て直しながら 繋いだままの手から視線を動かして 大和の肩から、顔を見上げる。
向うの顔も赤ければちょっと緊張はほぐれたけど どっちにしろ動悸がうるさくて倒れそう。]
そっ…そういうのは 調子乗っちゃうって、いったじゃん!
[大和にとっては遠い昔かもしれないけれど 私にとってはちょっと前のことだったから>>2:185 思わずあの時のことを思いだして 繋いでいないほうの手でぺちりと大和の胸を叩いた。*]
(199) moggyu 2019/11/13(Wed) 23時頃
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[ほら、またそういうこと言う。>>209 調子に乗って良いみたいな…みたいな!?]
よっ……予約って あのキャンペーンは今年度中の予約のやつで
[いやいや、そうじゃないでしょ私。 うん、混乱してるけどそうじゃないのはわかるよ。 ちょっぴり…いやだいぶ期待しちゃってたもんね。
握られた手は大和の本心を伝えてきているようで その態度も心もまっすぐだったから 私はしばし、息を止めてその言葉を聞いて。]
(213) moggyu 2019/11/14(Thu) 00時頃
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[どうしてそこで視線をそらしちゃうかな〜。 大人っぽくなった。男の人になった。 それでも大和は大和のままだなぁ。 ――すきだなあ。
私は変わらぬ彼に安心してしまって 気抜けた笑みを浮かべてから 大和のマフラーを掴む>>139
転びかけたのを支えてもらった時に 通路のど真ん中から壁際に移動していたけれど ここはクリスマスイブのショッピングモールで 人がたくさん行きかう場所なので 恋人っぽいことするのはとっても恥ずかしいんだけど。
でもね、私もちょっと反省しているの。 だってあの病室のとき以来 あなたにちゃんと伝えてなかったと思うから。]
(214) moggyu 2019/11/14(Thu) 00時頃
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[きらきらの飾りつけの中で 大和のマフラーをぐいっと私の方へと引っ張った。
つま先立ちになって 大和の頬に唇を押し付ける。
リップ音をたてるサービスをする余裕はなくて 代わりに思いっきり笑顔を見せれたかな。]
いいよ! 予約ね〜!
[心臓はバックンバックン言ってるし あぁああ人前でなんてことを! とか 内心は大嵐だったんだけど。
大和の視線がこちらを向いてくれたら 今はそれでいいかなって。
なおこっちに気がついた人は5人ぐらい!**]
(215) moggyu 2019/11/14(Thu) 00時頃
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[小学生の方が上手いんじゃないかって思う稚拙なキスは ちゃんと大和の顔を赤くしてくれた。>>241
マフラーに隠された笑顔をみたくて 掴んだままだったマフラーをなおしていれば ようやく周囲の注目はなくなった。
何人かには注目された気がするけど 私は何も見えてない、見えてないぞ〜!]
大和こそキャンセルは、だめだよ〜?
[冗談めかして本音を告げる。 もちろん未来がどうなるかはわからないから 100%本音として押し付けるつもりはないけどね。]
(243) moggyu 2019/11/14(Thu) 22時半頃
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――ジュエリー Reincarnation――
[人の波とは逆の方向に歩いていけば 高級感溢れる佇まいの店舗があった。
店内で一番私の目を引いたのは きらきらした宝石ではなく 黒いスーツの男の人。>>238
日本人らしくない顔立ちに青い目で 外人さんかな?って思いながら足を止める。 あれっ、どこかで会ったような――…… 雑誌か何かで見たのかな?]
(244) moggyu 2019/11/14(Thu) 22時半頃
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[足を止めたから興味があると思われたのか それとももともとそこが目的地だったのか、 大和と一緒に店内に入れば 店員さん(だよね?)は静かに笑みを浮かべている。
おっと、お店なんだから商品みなきゃ。 わ〜! イヤリング可愛いなぁ。 でも私はそそっかしくてなくしそうなので 覚悟を決めてピアスを開けたほうがいい気がする。
こっちの宝石は大きいなあ。 お値段もいち、じゅう、ひゃく、せん… ………みなかったことにしよ。]
(245) moggyu 2019/11/14(Thu) 22時半頃
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[大和は何かみたいものがあるのかな。 私もそこまでおバカじゃないというか ここで「来年の母の日は何にしようかな〜」などと のほほん相談する空気じゃないのはわかる。
さっき、指輪買ってから、なんて言ってたけど>>184 そんなのまだ早いからね、大和…! 給与三か月分は今や過去の話ではあるけど!]
(246) moggyu 2019/11/14(Thu) 22時半頃
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[などと私は勝手にいろいろ考えすぎていたけど 並んだ結婚指輪も婚約指輪もとても綺麗で いいなあ、ってケースの前で思ったのは事実です。
さすがに大和は結婚指輪を買うつもりはないだろうし 何を探しているのかなって振り向けば ショーケースを見ている大和の横顔は 七年前にはあった少年らしい丸みはもうなくて 私の手を握る掌はもっと大きくなって 記憶と同じに、でも、それ以上に、]
……あッ! いやっ かっ、かっこよくなったなって思って……
[私の方を向いた大和と視線があってしまい 大慌ての中で漏れてしまった言葉は 頼むから聞こえてないことにしてほしい。 聞こえてない!聞こえないで!*]
(247) moggyu 2019/11/14(Thu) 22時半頃
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[あーあーあーあ! ほら聞こえてた!>>251 心なしか店員さんの視線も向いているような]
忘れて! 忘れてね? ちょっと思っちゃっただけなの!
[内容自体は否定しないまま 深呼吸を何度かして自分を落ち着けて 大和と一緒にショーケースを覗き込む。
結婚指輪はそれなりにお値段はしていたけど ペアリングのコーナーはちゃんと価格帯に幅があって 学生でも買おうと思えば買える値段だった。
男女で黒とピンクのリングもあるし 石が一石入っているのもきれいだし 裏に刻印できるのも素敵だよね。]
(257) moggyu 2019/11/14(Thu) 23時半頃
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[じっと見ていれば店員さんに声をかけられ 断る前にペアリングが目の前に並べられた。
だ、出されたらつけてみるしかないよね…? 大和が指輪を買って〜と言っていたの>>184 私ちゃんと聞いてたし覚えてるんだからね? ちょっとは期待してるんだからね?
ちらっと大和の様子をうかがって 止めてくれって様子じゃなければ 指輪を手にして――……]
(258) moggyu 2019/11/14(Thu) 23時半頃
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ねえ大和……。
[ちらり見上げてから いや、これ恥ずかしすぎるなって視線を指輪に戻す。]
……ど、どの指につければいい?
[言われた通りの指につけるつもりだけれど 左手の薬指だけは分かっていても意識しちゃって 耳まで真っ赤になると思う。**]
(259) moggyu 2019/11/14(Thu) 23時半頃
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[大和の答えが返ってこない。 これはミスったな…! そうだよね! ちょっと重かったよね! 右手の薬指にでもつければよかったのよ私め!
焦ったせいか上手く手が動かなくて 傍目には戸惑っているようにみえたのか 大和の手が伸びて私の左手をとる。>>296
い、いや落ち着こう。 中指とかかもしれな、]
ひゃっ…!
[さり、と指をなぞられて 変な声をだした私は手を引っ込めかける。]
(297) moggyu 2019/11/15(Fri) 22時頃
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[えっ……エロいよ! いつそんなの覚えたの! 確かにこの七年間をぜんぜん知らないけれど!
頭から湯気が出そうになりながら 八つ当たりめいたことを考えながら それでも指輪を落とさなかった私はえらいと思う。
黙っていれば大和はもう一度同じことをしたかな。 未だなにもつけたことのない指を見下ろせば 一応残っている乙女心が胸の内をくすぐる感じがする。
私だって女の子だからね。 誰かに贈られた指輪を、ここに付けて欲しいって そう思ったことは何度もあったから。]
(298) moggyu 2019/11/15(Fri) 22時頃
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[ようやく大和の顔を見る余裕ができたけど 視線は合わなかったかもしれない。 ちらりとこちらを見る瞬間を捕まえて 私は握ってた指輪を大和の手の中に押し込む。]
大和がつけてよ。 好きなところで、いいから。
[最初につけてくれるのは、あなたがいいな。*]
(299) moggyu 2019/11/15(Fri) 22時頃
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[指を撫でるなんて思わせぶりなことをするくせに 手を引っこめられかけたらしょんぼりするとか>>300 そう言うところがかっ…わいいよね! 言わないけど!]
大和がいいな。
[迷っているのか確認したいだけなのか どちらにせよ、私の心は決まっているんだよ。 だからそっと私の希望を伝えれば 大和がゆっくり指輪を指に付けてくれた。>>302
好きな人に指輪を付けてもらうって とってもとっても ドキドキするよね。]
(306) moggyu 2019/11/15(Fri) 23時頃
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[左手の薬指に光る銀色。 手を開いたまま目の高さにもってきてから 握ったり開いたりするのは挙動不審に見えたかも。
何度繰り返しても消える様子もなくて ちゃんと私の指にはまったままだ。]
きれい……! 大和はどう思う?
[手の向こう側には頬を押さえている大和がいて 照れてるのを隠してるのはバレバレだったので 私は質問の答えを聞く前に 男性用のリングを手にして、大和の左手を勝手に握るの。]
(307) moggyu 2019/11/15(Fri) 23時頃
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[大和の指に指輪はうまくはいったかな。 もしかしたらちょっと緩いかもしれないけど。
もちろん左手の薬指。 重ねた手に、同じデザインの指輪が光る。
これから先何が起きるかはわからないけれど 結婚だってしないかもしれないけれど。]
……ふふっ ううん、幸せだなって思って。
[今は、本当にそう思うから。 ちゃんと今の幸せを大事にしようと思う。*]
(308) moggyu 2019/11/15(Fri) 23時頃
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[サイズを測ったり、やっぱりこっち?と悩んだり ペアリングが決まるまで色々あったけど ようやく二人とも満足できるものを決めて これ結婚指輪はもっと悩むんじゃ……とか あるかもしれない未来に想いを馳せる。
店の前を行く人たちからは 結婚指輪を決めにきたカップルに見えるのかな。
そう思うとくすぐったい気持ちになっていた私は ちょっと離れたところに見た人影が>>319 知っている人のような気がしたのだけれど 仕事の時のイメージとかなり違っていたので 確信を持てないでいるのでした。]
(342) moggyu 2019/11/16(Sat) 21時頃
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[とんとん、と肩を叩かれて>>316 なあに、ってなんの警戒もなく振り返る。
かさっと紙の音がして 視界一杯に大和の顔があって それから、唇にそっと触れたのは――]
(343) moggyu 2019/11/16(Sat) 21時頃
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なっ なっ なっ…!
なんっ…! こ、ここ外っ……!
[パンフレットで隠したつもりなのかな!? 紙一枚だし店内からは丸見えじゃない! だいたい、キスならもっとムードのある場所でしてよ! さっき頬にしちゃった私が言うことじゃないけど……
――と、言いたい文句はたくさん思い浮かんだし 落ち着いてからはしっかり怒ったのだけど。>>317
それよりね、今はね。]
(344) moggyu 2019/11/16(Sat) 21時頃
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[だから困るな、って呟いた私は さすがに恥ずかしさで顔を伏せていたから 大和の表情は見えなかったし
その頃には店員さんが戻ってきたから 店内ではそのあと何もなかった……はず。*]
(345) moggyu 2019/11/16(Sat) 21時頃
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