273 魔性の病院【R18ペア】
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[頑なな魂は瞼を閉ざし、自身を保とうとする。 ささやかな抵抗が愛おしい。]
…── してごらん。
[硬い声に応えて頷く。 それでこそ私の心を惹きつけてやまないもの。]
(7) 2019/12/09(Mon) 23時半頃
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口にできるようなら食事も用意させるよ。 食べないと力も戻らないだろう。
[必要の無くなった短剣をサイドテーブルに置く。 抜き身の刃は涼やかな銀色をしていた。
そう言えば歓迎会の報せを聞いたと思い出す。 あの魔王の評判を聞くに、関わり合いにならない方が良さそうだったが、一方で興味もあった。 何か食べさせてみるのも面白い。]
(8) 2019/12/09(Mon) 23時半頃
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宝飾交易 黍炉は、メモを貼った。
2019/12/09(Mon) 23時半頃
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─ 病室 ─ >>16
[食事の勧めに答えは無く、彼は目を閉ざしたまま眠ってしまったかのよう。 寝たふりであろうことは、容易に読めた。 困惑する自身を守るためにか、ずいぶんといじましいことをする。 目蓋の上に指先を触れさせて温度を確かめ、寝具を整えてから立ち上がる。
病室から出ると、ちょうど食事を配るワゴンが通っていた。 ずいぶんと豪勢なものが乗っている気がして尋ねれば、宴に出席できない患者のための特別食だと言う。 粥に似た病人向けの料理の隣にチーズや肉の塊が乗っているのは若干シュールだったが、せっかくなので病室に運ばせた。]
(19) 2019/12/10(Tue) 06時半頃
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目を開けなさい。 冷めるよ。
[配膳人が部屋を出てから、彼の枕元に戻って声を掛ける。 顔を近づけたついでに、軽く唇を啄んだ。]
(20) 2019/12/10(Tue) 06時半頃
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>>21 [目覚めのキスは彼を喜ばせたに違いない。 開いた瞳に虹が踊るのを見る。 これからの習慣にしよう。
食事の準備をしようと手を伸ばしたが、彼の言葉がそれを遮った。]
そうなのかい? 好き嫌いなら許さないけれど、
[指を伸ばし、彼の顎先を軽く持ち上げて目を覗きこむ。]
(28) 2019/12/10(Tue) 21時頃
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ではなにを食べさせればよいのだろうね。 ああ……分からない間は私の血で養うしかないな。
[拒絶ではなく、単なる事実らしいと判断して疑問を呈する。 だがそれも官能的な吐息に流れた。
吸血鬼の血は液化した魔力のようなものだから、魔物に注げば命を繋ぐこともできよう。これまでのように。 命を削って分け与えるような行為だが、彼の為ならばそれも良い。*]
(29) 2019/12/10(Tue) 21時頃
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>>30
言っただろう? おまえはもう私のものだと。
[何の権限があって、と問う彼の唇に指を置く。 彼を捕えたならば好きにしていい、とは依頼に来た使者に認めさせた条件の一つだ。 無論、彼の意思は関係ない。]
それに、おまえが早く回復するようにと願っているのだよ。 ここも悪くはないけれど、おまえを私の城に連れて帰りたい。
[置いていた指を上に向ける。 居城は魔界には無いと示す仕草だが、別に気づかれずとも構わなかった。]
(35) 2019/12/10(Tue) 22時頃
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[そっと転がされた答えに口元をほころばせる。 命じるのではなく答えを差し出させたことに喜びを感じた。 彼の心の一端を手に入れたような気がして。]
おまえは宝石を食べるのかい? だからおまえはそんなに美しいのだね。
[食べる物で身体が形作られるならば、彼自身が一個の宝石なのだ。 あの時散らばった宝玉の意味も、今ならば納得する。]
ならば、いずれオパールの鉱山を手に入れなければならないかな。 けれども、今はこれで我慢おし。
[懐から摘まみだしたのは、我が身を穿った緋色の珠だ。 彼自身を由来とするものが糧になるかは知らないけれど、口さみしさを紛らわせる役には立つだろう、と彼の唇に指先で押し込んだ。]
(36) 2019/12/10(Tue) 22時頃
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[動けるまでの時を測るのは、武人の性か、それ以外の意図か。 問われて暫し思案の間を挟む。]
そうだね…… お前を救うのに一度深淵との繋がりを断ったからね。 道を繋ぎ直すまでは動けないかもしれない。
[異形化から救うために力の根源へ繋がる道を断った。 それだけでなく、影が奪ったものも含めて彼の力を吸い取ったのは自分だが、そこまでは口にしない。]
けれどもそう時間はかからないよ。 そのために、私がここにいるのだからね。
[動けるようになるまで世話をしようとの意図を込めて笑いかける。 血と共に与えた力が馴染んでいけば、そう先の話でもないはずだ。]
(37) 2019/12/10(Tue) 22時頃
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>>42 [問いの形で為された警告に、唇の端を上げる。]
侯は、しばらく自領のことで手一杯になるだろうね。 死んだことになっているおまえを探す余裕はないだろう。
仮に侯が真実に気づいておまえを取り戻しに来たとしても、いくらでも対抗する手はある。けれど―――
[言葉を切って、彼の髪を撫でる。 滑らかなこの髪もまた、オパールでできているのだろうか。]
おまえが望むのなら、 正式に、侯爵からおまえを譲り受けてみせるよ。
(49) 2019/12/11(Wed) 00時半頃
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[立つ瀬に迷い自身の心に困惑しているらしき彼のさまを、涼しげな眼差しで眺める。 全ての原因は私にある、と告げる気はないけれど。 死の淵から呼び戻し、深淵の手を振り払うために彼が持つ繋がりのほとんどを握ったのだ。 彼にとっては、生まれ直したようなものだろう。 戸惑うのも無理はない。
それでも、恩義を告げてくる実直さに、溺れそうになった。]
構わないよ。私がしたくてしたことだ。 けれどもおまえがそう言ってくれるのは嬉しい。
[彼の上に屈みこみ、親愛の情を込めて額に唇を捺す。*]
(50) 2019/12/11(Wed) 00時半頃
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[尖った声は拒む色を帯びている。 それを押し開き、壊し、蕩かすことこそ愉悦。 けれどもまだその時ではない。
今度は本当に休むらしき彼のために寝具を整えてやり、今は手を引いた。 次に目覚めた時にはもっと楽しいことをしよう、との約束を髪への接吻けに変えて残して。]
(54) 2019/12/11(Wed) 11時頃
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[部屋を出る直前、ふと食事の乗ったワゴンに目が行った。 彼の食事には適さないなら無用の長物だし、自分にとっても必要ないものだ。 放っておけば誰かが片付けるだろうが、わざわざ魔王が用意させたものというのが気になって覗きこみ、チーズをひとかけ口にしてみる。
要は、好奇心に負けたのだった。]
(55) 2019/12/11(Wed) 11時頃
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黍炉は、その味は…1
2019/12/11(Wed) 11時頃
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[口に入れた瞬間、動きが止まった。 これは一体何なのか。 今までに味わったことのない旨味が口に広がり、感動すら覚える。 世界に色が付いたよう、とはこのことか。
舌を喜ばせた豊かな風味が喉を下れば胸の奥から喜びがあふれるほど。 これほどの滋味に出会えた幸福に身体が震える。]
………。
[未知の感覚をもたらしたチーズを暫し凝視した後、そっと皿に戻す。 そもそも吸血鬼である己は血以外の味をあまり感じないのだ。 なのにこれほど美味と感じるのは、おかしい。 なにか術が掛かっているに違いなかった。
単に魔王の歓待の印であれば申し訳ないが、そうだとしてもこれは病みつきになる危険物だ。 君子危うきに近寄らず、と今更のような言葉を呟いて、病室を後にした。*]
(56) 2019/12/11(Wed) 11時頃
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