人狼議事


268 オリュース・ロマンスは顔が良い

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視点:


【人】 三等兵 ロバート


わふんわふん!

[こっちもこっちで真新しい匂いのスニーカーにメロメロ
しかも親しみやすいサイズ。これには尻尾もくるんくるん]

(1) 2019/08/05(Mon) 00時頃

[彼の手を掴んだのは衝動的だった。
隠されたくない、隠したくない。幾つもの思いが浮かぶ。思ったよりも強い力になったのが不安だったが力を緩める事ができなかった。痛くない、と言ってくれた事がはしゃくをかける。

漸く手の甲を撫でるまで進んだのは
自身の気持ちの落ち付きから]




 ……どうする?
 そうだな、どうしようか。


[彼の顔を見ていたい。
帽子がない分、変わる顔がよく見えて、小さく首を振って顔をあげるその表情に一瞬見惚れる。とても良い、嗚呼、とても……。喉奥から溢れかける言葉を飲み込み、眼鏡の奥にしまい込む。

真剣なまなざしを受け止める細まる目が紡ぐ声に
そっと声を潜めて、そうして悪魔のように
いや甘やかすように囁きを返そう]


[私も彼に甘えているから。
その自覚があるからこそ、問う言葉にこくんと頷いて。]


 いい、簡単でいいじゃないか。


[緩く彼が握り返してくれるのだから。それでいいんだって思ったが、穏やかな時計の音が告げる刻に恥ずかしさを覗かせ。手を離してしまう。名残おいしいくせ、喉を震わせる彼に

今更の動揺を眼鏡で隠すようにして]


 ああ…それは勿論。
 ぜひ、私はもっとアリーさんと……ん、


[きょとんと眼鏡の位置を直しながら傾げ。
はっとしたのは、彼の言葉とトースターの鳴った音。タイマーをセットしていたので焦げることはないが、せっかくの料理が冷めてしまうのはもったいない]


 …忘れて、いや
 それどころじゃなくて、
 大丈夫、タイマーセットだから焦げはしないが


[食事の再開を促す言葉に頷き。
パンとシチューの用意を始めよう。パンは幸い焦げてなく、バターをたっぷり塗り。温めなおしたシチューとともに彼の前に。その間にワインを注いでもらえば、先ほどの話など。
遣り取りもなかったようになるかと思ったが]




………、それは


[白い手袋を脇に置いたまま。
舌鼓を打つ彼にバツが悪そうな顔をみせるのは、自分と彼がこうやって一つのテーブルを囲む姿を想像もしていなかったからだ。空の奇跡、星が叶えてくれなかったら、きっとこうはならなかった。

ちらりと視線が、むき出しの手の甲を見て]


 言えないだろ、良い年した大人が。


[それは夢をあきらめた事に似ている。
彼への思いを律しなければと思っていたのと同じ。踏み込んではいけないと、その背を眺めていた頃と。でも、こうして踏み込み、彼の事を聞けば、ずっと近くに居れる気がして。

傲慢さを覗かせる瞳は穏やかな色を湛え
シチューを掬えば、飲みほして]


 ただ、言ってしまったから
 隠せないだろうな。


[恥ずかしさを誤魔化し。
隠す気もないがと付け足せば、いくらでもというのなら食事を終えた後、じっくりと触れてもいいかと願ってみる。

照れが無いわけでもないのに。
彼が自分を大胆にさせるのだ**]


メモを貼った。


[背伸びした心算が足元を払われた。
 性別も違えば、年齢も違う。諦める方が余程簡単な関係。
 こんな捻じ曲げるように向かい合っても不毛であるのに。

 揶揄めく笑みも、見慣れてくれば悔しいが嫌ではない。

 好ましく想うところばかり増えていく。
 幾ら煽っても底に辿り着かぬワインのようだ。
 ―――― 干さぬ内から足されるので、出足からペースが曖昧だ。]

 ハワードさんは元々しゃんとしているじゃないですか。
 大丈夫です、こう見えても丈夫なことが一番取り柄です。
 
[医者の子が医者いらず。
 お蔭で万人を病から救う使命よりも、路面電車を追い掛け鉄道員になった。母親から譲り受けた柔和な顔だが、逞しい咽喉仏も在って子供の頃からわんぱく小僧の名を欲しいままにして。]


メモを貼った。



 へぇ…、仕事一筋なんですね。

 いえ、俺の職場は多分他所より、
 公私混同の志望動機が多いので……、まぁ、分かります。
 うちにも現行車両派と先代車両派の派閥がありますし。

[彼の口ぶりに少しの違和感を覚えても、納得の落としどころへ誘導する。鉄オタの集う自社と彼の持つ倦怠では根本から違う気もするが。


 ――――― 流石に、此処で、

 俺は?

 ……と聞けるほど無神経でもないし、万一お茶を濁されたら立ち直れない。既に釘を刺されても居るのだから。


陸に打ち上げられた魚のように、呼吸してるはずなのに苦しくて、口をパクパクさせるばかり。
 どうしよう、こんなのではサガラさんに何も伝えられないし、迷惑ばかりかけてしまう。
 涙目になってもどうすることもできず、混乱ばかりが膨らんだ。]

 ハッ  ぁ、ハ……
 ……は っ

 …………っ、……ぁ…………

そこに、突然被せられたビニール袋。
 何をされたのか、はじめよく分からなかった。
 けれど何故か、次第に呼吸が落ち着いてきた。]

 は、ぁ……、ぁ……

 ……えっと、だいじょぶ、です。
 ありがと、う、ござい、ます……。

[まだとても苦しいけど。
 一度、限界まで行ったからか、少しは落ち着こことができた。気がした。]


[聞けないことがあれば、口を噤む代わりに酒が進む。
 咽喉を滑り落ちる冷たさだけがするりとしている。]

 ……っ、……はい!
 勿論、喜んで。

[パッと輝かせた顔には喜色と期待が乗った。
 人間関係の億劫を語った後で水を向けられ、社交辞令と捉えるほど悲観的ではない。
 勇んでしまって少し椅子から腰が浮く。]

 俺も好きなんですが独り暮らしだと中々鍋を出さなくて。
 ここのレシピなんか本当に気取らず作るから、
 真似出来そうなものなんですが、
 やっぱり沢山作らないといけないらしく味が違うんです。

[だから、共に来れたら嬉しいと喰い気味のアピール。
 一部にレモン汁が多分掛かるのは無意識のサービス。]



 ………、

[色々とは?と踏み込んだことを聞きそうになって、理性が慌てて押しとどめ。]

 色々ってなんですか?

[酒の力が検閲を放棄した。
 頭は冴えているが、舌が軽い。
 自らに歯止めを掛けてもブレーキが壊れたようで赤信号も灯らない。]

 ………身分違いとか…?
 お嬢様の恋を応援する陰で、泣いて? ん?

[西暦を彼の年齢分差っ引いても、中世までは遡らない。
 金持ちはいるが貴族制度は教科書の中だけの話。
 要領を得ずに首を捻ると、甲斐甲斐しい指が果汁に濡れた指を拭ってくれる。]


[……尤も。
 気がしたって、だけで。
 話し終えた緊張のまま、あんなに頭を振ってしまったもんだから、今度はサガラさんの方へ前のめりに倒れるという、なんだか余計に迷惑のかかりそうな事態。

 すぐ、起き上がらなくちゃと思ったのだけど、肩に凭れさせられ、抱き寄せられて。
 また頭がくらくらしてきた。

 耳の、すぐ近くで。
 愛おしい人の声が聞こえる。]


彼が語るのは、おそらく、かっこいいとか素敵とかとは、真逆の話。
 けれど、それもまた彼の一面を教えてもらえたようで、愛しさが更に募った。

 何度も頷き……頷くしかできなかったけど。
 最後、やっと言葉が出せた。]


 ……そんな、でも……

 じゃ、なくて。



 …………、……。

[素知らぬ顔で配膳済ませるポーカーフェイス。
 許容を越えた若造はフライを齧り、もそもそと一匹完食。
 間にワインを一息に干して、二匹目も完食。

 フライもワインも味がしなかった。]

 あの ―――、

   釦、締めても、良いですか?

[眉間にうっすら皺を寄せる難しい顔。
 視線で示すのは彼の胸元。

 凝視してしまうのは己だけだが、だからこそ問題なのだ。**]


 そんな
 サガラさん、が……

 すき

 です。


[普段、舞台で出しているものとは真逆、か細い声。
 けれど、はっきりと、告げて。

 肩口に顔を埋めたまま、震える指先を彼に伸ばし、その服を握りしめた**]


メモを貼った。


メモを貼った。


メモを貼った。


メモを貼った。


[頷きを重ねていた中、声を出そうとするのに気づけば、無理はしないで、と前置きはした。
 今出来ていたように、肩に体重感じる今ならそれで意思の疎通は取れる。

 にも関わらずその喉が音を紡ぐようなら、一音たりとて聞き逃さないように、耳をそばだてる。
 ふつ、とまたひとつ、キャンドルが消えた。]


――――っ、

[さがらさんが すき です]

[その音を耳が受け取って、脳に到達した瞬間、呼吸が止まった]


なんで、はさっき聞いたか。けど、ええと。

[何が起きているのか、今さらになって混乱している。
 告白めいたことをしたのは自分からなのに、それ以上のものが返ってきて大混乱だ。
 脳への処理負荷が大きすぎて、嘘だ、と反射的に否定したがる思考が巡る。]

そ、れはさ。その、
好きって――好き、って意味、でいいんだよね。

僕のことが好き、       っていう。

[改めて口にしたらとんでもないことのような気がして、確認には大きな間が空いた。
 相楽さんが好きです、なんて、長い人生の中でもそうそう聞いたことがない。
 自分はどちらかというと惚れっぽい方で、けれど伝えるのに臆病になってばかりでいたから、こんな色めいた会話になったことがほとんどないのだ。]


[否定されれば、たぶん人生で一番つらい失恋だが納得もできる。
 いやそんな意味ではなくてただの職業人としての憧れですと言ってもらえれば、自意識過剰を恥じてそして浮かれたことでこちらの真意を知られて、永遠の蕾は咲かずに枯れるだけだった。

 けれど、もし肯定が返ったなら。]

そう、かぁ……そうかぁ〜〜〜〜…………

[天振り仰ぎ、いっそ脱力するような体で、額に手を当てた。
 今までの自分が全部、全部滑稽に思えた**]


─屋根の上─

[見逃したと言って謝る相手に、笑った。]

 ンじゃ、1個。

 見つけた数、オレの勝ち だな。

[勝ち負けも何もないけれど。
冗談めかして誤魔化せば、この、妙に心ざわつく感情も落ち着いてくれるかと。…思って。]



 いンや、オレも見ただけで終わッちまった。

 次?
 わーーーッた。 いーぜ。

[少しムキになったみたいな口調が楽しい。
ヒイラギの提案に頷いて、視線を再び星空に戻した。

流れ星に願い事。
子供騙しみたいなささやかなオマジナイ。

その癖軽く流すことが出来ずに。
何を…願ったらいいかと。
少し真剣に考えてしまったのは、きっと。

一緒に発表しようと。
強く願ってほしいと。

隣の彼が、言ったせい。]


[待ちかねた末に流れた星は、…長く、強く。
意識の奥に一条の眩い残像を残して、ただ真っ直ぐに煌いた。]

 ………

[消え去った後の静寂に、静かな声が響く。
ヒイラギの願いが夜を震わす。]


[しばらくの間を置いたのち。]


 ……あのさ。
 オレのことどんな風に思っているンだかしらねーけどよ

[息を吸う。
そうして腹の底の黒いモンを吐き出すように続けた。]

 普段はスリやってんの。
 犯罪者。
 アンタとは… 住む世界が違うンだよ。

[指の力を緩める。
幻滅したか?…なんて自虐気味な笑みを添えて。]



 だからよ。
 ホントは、多分。

 あンまり関わりすぎねーほうがいいの。

[身体を起こして、立ち上がる。
屋根に寝転がったままのヒイラギを見下ろしたから、願い星が流れる星空はもう視界に映らない。]


[──────でも。

          星はもう流れた後で。
          願いも…紡いだ後だ。]

 …

 オレがさっき願ったのは


 アンタと
 来週もまた会えたら って……

[距離を置いた方がいいと理性が諭す一方で、
本能に近しい欲がじわりと溢れる。**]


メモを貼った。


[これだけ年齢差があるというのに、不思議と彼との会話に困窮しなかった。恐らく彼が気を遣ってくれているのだろう。

丈夫さに胸を張り、腕白小僧、なんて言葉に自然と頬が緩む。
路面電車に揺られている間は知る由もなかった彼個人の話。
ともすれば中性的な面持ちであれ、性別を見紛うような骨格でもないことは目に見える部分でも、体感した部分でもわかる。
腕っぷしの強さといい、着やせするタイプなのか──。

これまでずっと押さえていた不埒が脳裏をよぎるのもまた、今が自分にとって完全なプライベートである証拠。]


 今は、そうですな
 仕事に打ち込んでいれば退屈も老いも忘れられそうで

 ……ほお…派閥…
 そういえば先日展示に使われていた車両は
 確かに現行の物とは微妙に違いましたな
 トレイル君はどちら派で?

[微妙にすれ違う公私の別。
彼の分類を問われずに済んだのは僥倖だった。
ただでさえ今は気が緩んでいる。
思わず余計なことを口にしないとも言い切れない。

何故、彼が仕事を依頼してきたことに憤慨したのか。
説明するとなれば、お世辞にも聞こえがいいとは言えない話題に触れることになるから。]


[咥内に残るサーディンの脂と塩気をワインで濯ぐような自然さで、ひとつ捲れば新たに見える彼の表情に、目尻の皺を深く。]

 ……ふ、…ええ、楽しみですな 
 その口ぶりだと自分で作ったりも?
 
[軽い調子で口にしたが、口約束で済ませるつもりはない。
星に預ける程度のささやかな願いに返ったのは星よりずっと明るい、太陽のような煌めきで、眩しさに息が詰まった。]


[和やかに弾む食事。ボトルも半分以上空いた頃合か。
妙な方向へ分岐しそうな気配。
今のところ、平生より陽気さが窺える以外の変化もなく、思慮深い彼のこと。さらりと流すかのように思われたのに。]

 色々、とは……色々です

[君、一度飲み込みかけただろう?
退いたと思われた姿勢が前傾を見せた上に、続く想像は随分と可愛らしいものだった。
逡巡するようにグラスの中のワインを卓上で揺らめかせる。

自身の恋愛遍歴はそんな綺麗なものじゃない。
『ゼロイチ』で語られるような感動も、サイラス氏が描く絵画のような美しさもない。聞かせれば、彼が抱いてくれている純粋な好意を失うかも。]


[──正直、とても気分が良かった。
見目もよく仕事もできて、人柄まで完璧な若い男が。程度までは解らないがこれほど解りやすく好意を示してくれることが。
人並みの幸せを夢に、星に願いたくなるほどに。

失いたくない。せめて今夜だけでも。
なんて、切実な欲求の方が憚られるか。
観念したようにワインで舌を湿らせ、重い唇を静かに開く。]

 ちょっとしたスリルを味わうための火遊び、
 とでも言いましょうか
 当時はコンプライアンスも倫理規則もなく

 ……私も若くて誘惑にも弱かったし
 お互い都合が良かった、というか……

 昔の話です。君が生まれるずっと前、の 

[言い訳じみた念押しを重ね、口元をナプキンで拭った。]


[おしぼりで手を拭ってやるなど、仕事でも早々しない。
急に黙々と食事を再開した姿に、やりすぎたかと表情を窺う。
険しい顔。さっきまであんなに楽しそうだったのに。

やはり先ほどの会話がまずかったか、いや、いっそこの場で幻滅してくれた方が傷は浅くて済むやも。
百合の香る薬では到底癒えやしないだろうが───。]

 はい?

[平静を装う素振りで進めていたフォークがぴたりと止まる。
示された先には、無自覚に解いた釦と、酒精で仄か染まる肌。
夏の暑さで最近食欲が落ちたせいか、薄らアバラが浮かんでいる。

が、目のやり場に困る程の乱れでない。
視線は胸元と、泳ぐ碧眼を交互に追い掛け。]


 
 ……大人をからかうんじゃない

[長いようでほんの数秒の、不自然な間の後。
憮然に憮然を重ね、対面のグラスにボトルを向ける。

これほど雑にワインを注ぐのは、屹度これが最初で最後。]**


メモを貼った。


メモを貼った。


…スリ

[屋根に寝転がったまま、彼の話を聞き続ける。
自分でも、彼を見る目がどんどん険しくなっているのがわかる。
何をしているのか、ずっと気にはなっていた。
だけど、まさか、そんな風に金を稼いでいたなんて思わなかった。
身体の熱が、別種の熱さに変わっていくのがわかる。

立ち上がった彼の話を聞き終わると、自分も黙って立ち上がった。
彼の目の前へ行くと、彼の顔を見つめた。]

シーシャさん。
もう、店来ないでください。

[真正面から彼に告げる。]

俺の前で人から掏った金使ったら、俺は貴方を軽蔑します。


[そして、置いてあったリュックを持ち上げると、ファスナーの引き手から一思いにクマのぬいぐるみを引き千切った。]

これもいりません。
返します。

[無理にでも、シーシャの身体へと押し付ける。
彼が受け取らないのであれば、ぬいぐるみはただ屋根の上に落ちるだけだろう。]




[沈黙が辺りを包む。
体が熱い。
多分、苛立ちや、怒りのせいなのだろう。
だけど、だけど…]

…シーシャさん。
来週も、待ってます。

金がなくたってペルセウス・マーケットは楽しめます。
僕も、最近稼いでるんで、シーシャさんの遊ぶ金ぐらい奢ります。


だから…

[彼の顔を懇願するように見る。
彼はどんな表情をしていただろうか。
恐らく、長くは目を合わせて居られなかっただろう。
ふっと目をそらすと、呟いた。]

帰ります。

[そのままリュックを背負って、登ってきた場所を駆け下りるようにその場を去る。

居たたまれなかった。
彼にとっては、たまに行く店のバイトの学生に、お気に入りの場所を案内してやったら、訳のわからないことを言われた挙句、説教らしきことまで言われたわけだ。

自分が彼の立場だったらイラつきしか覚えない。
嫌われた。

思わず目の前が涙で霞む。
一旦立ち止まると大きく息を吐いて鼻を啜り、そのまま足早に家路についただろう。]*


― 4週目・店の裏手 ―



[0時前。
先週と同じように、壁に凭れて彼を待っていた。
リュックを前側に持つと、ぬいぐるみの無くなったファスナーの引手が揺れた。
あれだけでも、返さなければよかった。

店に来るなとまで言ってしまった。
今日彼が来なかったら、二度と会うこともないかもしれない。
それなら、あのぬいぐるみだけでも…

いや、持っていたらただ未練になるだけだ。
今日、ずっと待とう。
それで、朝まで経っても彼が来なかったら、それでもう、すっぱり思い出にしよう。]


…はあ

[来ない時のことばかりが脳裏によぎる。
あの時、あんなことを言わなければ。
もっと別のことを言っていれば。
後悔ばかりが出てきて、思わずため息をついて壁に凭れたまましゃがみ込んだ。]**


メモを貼った。


メモを貼った。


メモを貼った。


繰り返される「なんで」に、小さく身を竦ませる。
 夜でよかった、蝋燭が消えていてよかった。
 じゃなかったら、きっと、みっともないほど赤い顔で、半泣きになっているのが丸わかりだ。]

 ……、っ……!

[「好き」の意味を問われたが。
 さっきまで以上に、声が喉に引っかかる。
 だからかわりに、抱きついたような状態のまま、彼の言葉ひとつひとつに頷いた。]


 ……あって、ます。

 そう、です。

[やがて、少しだけ、答えを返せるようになったけど。
 その矢先。
 突然、まるで脱力したような声。
 何事だろうと、こちらも、だいぶひどいことになっている顔を上げた。*]


[――― 色々。

 他愛無くも楽しい会話に花が咲き、ついオリュース鉄道史や簡単な駆動系統を掻い摘んで酒の肴にしても、彼の誤魔化すような口ぶりには空気が一変する。
 彼が己を気遣い退いてくれるのは有り難く思う時もあるが、こんな風に露骨な隠し事は胸がキリリと痛む。]

 ……色々って、俺には言えないことなんですか?
 さっきも言いましたけど、俺もう24ですよ。

[ワイングラスに吐き出した声は頑是ない稚気そのもの。
 彼に食い下がるのは何時もの絡み酒か、それを言い訳にした本心か。
 咽喉の奥を唸らせる前に折れたのは勿論、彼の方。]

 …………、

[プレイボーイの告白は、やはり心に波が立つ。
 既婚歴があるよりもずっとマシだが、思わず責めるように半眼になってしまうのは仕方ない。彼と己の関係性は空欄なのだから、そこに義はないが。]


[一度グラスを卓上に戻すと彼の襟元へ手を伸ばした。
 持ち上がった語尾は考慮せず、YESの意だけを曲解して受け取って。
 こんな時、テーブルが狭いのは有り難い。

 指先で襟を攫い、酒に末端まで温められた体温が霞める。
 最初に整えるようにコーナーを伸ばし、自然と上体は乗り出し気味。

 ホールに指を掛け、釦の丸みを指腹が辿り。
 覗きこむ角度は近く、仄かに同じ酒精が口元から香る。]


 ………男が好きなんですか、ハワードさん。


[疑問ではなく断定の囁き。
 喧噪に紛れてしまう声量を、鼓膜の傍で転がして。]



 ……俺は本気です。

[返ってきた言葉に、もう拗ねたりはしなかった。

 些か子供っぽい自覚はあったが、襟元から腕を下すとグラスに注がれるボトルの底を掴んで押し上げ、表面張力一杯まで注ぎきらせた。

 これで結局、ボトルの殆どを己が干すことになる。]


メモを貼った。


[そのままグラスを引き寄せ、一気に煽った。
 強い酒ではないから締まらないが、意地は張りたい。

 ドン、と空のグラスを卓に豪快に戻すと、皿が揺れる。
 柔和な車掌は酒に溶けて、彼に燃やされ、尽きた。
 細く長い酒気が零れ、濡れた口元を緩く拭い。]


 俺だけが本気でも良いです。
 ――― でも、相手にしてください。
 

[普段は柔い碧が爛と輝き、情熱のままに訴える。

 そうして、テーブルに多めの紙幣を乗せ、彼の抗議を聞くより先に手を取った。訪れた時と同じ声色で清算を呼ぶと、釣銭は全てチップにして店を出ようか。*]


[合ってるかー、そうか。
 喜ばしいはずなのに、喜ぶよりもどっと疲れたような気分だった。]

……ずっとさ。
君に嫌われないようにするにはどうしたらいいかなって、思ってた。

[こうして話している間にも、キャンドルは粛々とその役目を終えていく。
 遊歩道は暗く、時折吹く風で木々の葉がざわめくくらいで静か。
 自分たちの声ばかり、よく聞こえる。]


[顔は天を仰いだまま。
 星のひとつも流れないだろうかと思いながら、言葉を継ぐ。]

君はいつも輝いていて、……若くて。
素敵だと思った。目が、離せなくて。

だけど、普通に考えたら気持ち悪いと思ったんだ。
自分より10年近くも歳上の男の好意なんて。

[好意、と口にしてしまった。
 もう戻らない。が、今なら躊躇う必要はないと、わかる。]


だから、せめて普通にしていたくて。
それでずっと、普通の中でなるべく会えるように、時間作って――

[それでいいと思っていた。
 嫌われなければいい。ずっと見守っていられればいい。
 それで満足だと、それ以上は過ぎた望みだと自分に言い聞かせて日々を過ごしてきた。

 盛大な行き違いがあったことに、はは、と乾いた笑いが漏れた*]


メモを貼った。


[潜められた声色は、低く甘く。
これまで動揺したように逸らされたことが多かった分だけ、こんな甘やかし方もできるのだと、少し驚く。

と同時に、どこか無防備にも見えて。
今度は別の意味で困ってしまうけれど。

手を握り返すだけで、再び動揺する様子はやっぱり彼らしい。



 焦げないならいいか。
 でもせっかく君が作ってくれたんだ、
 一番美味しいうちに、食べようじゃないか。


[逃げないよ、と示すように右手は覆わないまま。
手際のいい彼の手つきにこっそり見惚れながら、サラダとチーズをつつき。
焼きたてのスライスされたフランスパンを齧れば、カリッとした外側とやわらかくバターが浸み込んだ内側がこれまた絶妙で。ぺろりと食べきって、もう一枚焼いてほしいとねだろう。

そしてもう一枚焼ける間に、左手でスプーンを取ったなら。夏野菜がごろごろ入ったシチューをひと掬い。
濃厚なホワイトソースに絡む、やわらかい野菜と、ほろほろの鶏肉の美味しさに目を輝かせ。舌鼓を打った。]


[そうして。
一通り口にしたところで、ワインで口を休めながら。

 そういうものかい。
 いや俺としては、
 好きだと褒められるのは照れるけど、嬉しいからな。

 そういえばこの間サイラスに、
 魔法使いみたいだって褒められた時も嬉しかった。

[そこに少しばかり下心も混ざっていることは伏せたまま。
せっかく知った自分の中で彼が好きなパーツだ。
下手に自分を気遣って、彼が再び隠そうとしないように。]



 だから、隠さなくていいし。 
 あとでなら、いくらでも。

 さっきも撫でられるのはくすぐったかったけど、
 

[控えめに乞う声に、勿論と目を細めて。
自分は、シチューのおかわりを彼に願った。*]


[食後の時間。
彼が片づけをしている間に、黒い手鞄を開ければ持ってきた仕事道具を床に広げ。
自分は、古時計の点検にとりかかる。

壁に面した背をずらして開け、少し溜まった埃をブラシで丁寧に除いてから、規則正しく動く歯車の音に耳を傾けた。]

 ……うん、問題なさそうだ。

 ちゃんと定期的に螺子を巻いてくれてるおかげだね。
 人間と同じで止めずに動き続けるのが、
 長生きの秘訣だ。

[簡単なことだけど、一番大切なんだと。
今は素の右手で時計を撫でて、蓋を閉める。
広げた道具を片づけながら、ふと、鞄の底に入れてきたものを思い出し。
ほんの少し眉を歪めた。]


[彼の片づけが終わるのを待ってから。]


 セイルズさん。
 これ……返そうと思って持ってきたんだ。


[差し出したのは数週間前に置いて行った資料。
──の、間に挟まったままの原稿。

素知らぬふりで返すのが、紳士なのだろうけど。]

 少し見てしまって、すまない。

[敢えて、余計な一言を付け加えて。*]


[隠し事を一つずつ明かしていく
彼の目には自分はどう映っているだろうか。彼のような隠し事を自分は持たない。自分が有して隠すのは彼への思い。憧憬や憧れをひっくるめて、そうして今は食事を楽しもうか。

そうだな、と彼の言葉に頷いて]


 じゃあ、ぜひ沢山食べてくれ


[作り過ぎたぐらいなんだ。と
彼がサラダとチーズをつついたのを待ってから、焼きたてのパンを渡そう。小気味よい音をさせて食事をするのをじっと眺めながら自分もパンを口に運ぼう。もう一枚と強請られるのなら、再びオーブンを動かして、少し待ってくれと出て。


また彼を観察する事にしようか。
シチューを掬い、食べるのを見るのも楽しく。目を輝かせる姿に良かったと安堵を浮かべた。美味しそうに食べてもらえる。こんな倖せな事はあるだろうか。今まで一人で済ませてきた食事に戻るのがどこか寂しい気もして]


[窓際から吹き込む潮風がやたら冷たくて、
首裏にじっとりと汗が滲んでいるのを自覚した。

飲ませ過ぎたか、と判断してももう遅い。
──元よりそのつもりだったのだから。
酔わせた後のこと、までは考えていなかったが。

どうやら随分と愛らしい猫を被っていたらしい。
確かに三歳児に聞かせる話ではない、否、まだその方がいい。聞かせたくないのは目の前にいる彼だけなので。]

 ──…トレイル君…?

[結局は根負けしてしまったわけだが。
呆れ、軽蔑、幻滅。
さて、どれが飛んでくるやら。
半ば開き直ってはいるが、こっちだって胸が痛む。
告白するつもりなぞなかったが、こんな形で失恋したくもない。]





 …ああ、そういうものだ。
 ん、サイラス……。


 ………。


[ワインを飲んだ後は、シャーベットを冷蔵庫から出そうか。と考えつつも彼の言葉を聞き一瞬固まったのは彼の言葉に少しばかりちりっと胸の奥が焦げた感触を味わったせいだ。


―――彼の友人を羨ましがたときと同じように
其れを飲み込むようにワインを飲んだ]






 …それは楽しみだ。
 ありがとう、いくらでも言ってくれて。

  …くすぐったいのは、諦めてくれ。


[自分は、こんな人間だっただろうか。
勿論と彼が触れるのを赦してくれることに歓びを感じている。ただ其れだけで嬉しいはずなのに…。シチューのおかわりを願われるなら、まだデザートもあるんだが。と苦笑にも似た形を浮かべ。

でも食べれるというのならシチューを掬い

自分はそのままスプーンを置いて彼の食べっぷりを観察しよう*]


[暫し無言の後。
何か呟いたように蠢く唇は、喧騒の中で聞き取れず。

軽く腰を浮かせれば容易く届く対面。
状況が飲み込めず、襟に伸びる指に反射で身が竦む。
間近に迫る碧眼から、籠る熱気から、濡れた唇から
逃れるように視線を外し、顔前を手の甲で覆う。

鼓膜に叩き込むような低音に背筋が震えた。
責められる謂れなどないのに、言葉が出てこない。

何を莫迦なことを、と。
咄嗟に訂正できなかった時点で答えは決まっている。]


メモを貼った。


サガラに身を任せたまま。
 心音と風の音ばかりがやけにはっきり聞こえる中。
 彼の声が、耳に届く。

 ずっと、そんなふうに思われてただなんて。
 気付かなかった、気付けなかった。
 もしもっと早くに、彼に語りかけていたならば、もっと早く、こんな風にできたのだろうか。]

 ─────素敵、なのは。

 サガラさん、の、ほうですよ。
 初めて会った時から、ずっと、気になってて。
 たまに、お店の前を通ると、真剣な眼差しで、木と向き合ってたりして。
 それだけじゃなくて、優しげに人形を見つめてる時とか。

 ……正直、嫉妬したことも、あるんですよ。
 人形相手、に。


メモを貼った。


 年の差とかは、考えたこと、なかった、けど……。

 考えてなかったのは、たぶん、勝手に……諦めてたから、というか。
 たまに会えるだけで、いいと思って、た、から……。

 ……ばか、みたい、ですね……。

小さく肩を震わせての声は、泣き笑い。
 ずっと、勝手に、悪いほうに思い込んでただけだなんて。]


[続く一言に、再び言葉を失う。
軌道修正のポイントをすべて通り過ぎ、終点に到着したことを告げるような音が卓の周りに響いた。

喧嘩か?と密かにざわめく喧騒も、どこか遠い。]

 俺だけが、って、きみ……ちょ、……

[静かな啖呵に、碧眼の揺らめきに、ひとまず落ち着かせようと伸ばした腕は、呆気なく攫われる。
酒量といい、常にない態度といい、間違いなく酔ってはいるだろう。が、店員を呼ぶ声は明瞭だ。もしかしたら顔や声に出ないだけで、既に酩酊しきっている可能性もあるが。]


 ……でも。

 いま、おれ。
 すごく、嬉しい、です。

 ずっと、サガラさんのこと、思ってたから。
 だから星にも、こっそり、願おうかって思ってて……。

[ようやく上げた顔には、たぶん、涙の跡まであって、お世辞にもいい顔とは言えないもの。
 口元は弛んでるし前髪ぐしゃぐしゃだしで、たぶん相当だらしない。
 けれど……]

 おれ、サガラさんのこと……すき、です。

[とても、幸せな笑みだってことは、伝わるといいな**]


[シチューを食べ終えた後の片づけを。
その後でゆっくりシャーベットを食べるのもいい。洗い物をしている間に彼が古時計の点検をしてくれるというのなら其れを任せ。

自分は背を向け、洗い場に向かった。
途中、何度か振り返り。
その姿を盗み見てしまったのは仕方ない事だと思う。真剣な姿を見ると胸が熱くなる。何かに真剣になる事。本当に好きをやっているのだと感じさせるその背は自分にはないものだ。

いや、自分は諦めてしまったものか]


[だからこそ、憧れるのだろう。
カランと音がなり、洗っていたお玉が落ちる。彼を盗み見るどころか、じーっと見ていたと慌てて、その後は泡を立て食器を洗うことに集中しよう。規則正しく動く時計の音だけがいやに響く。

――右手で時計を撫でた彼の顔を思い出して。
気が逸れ、もこもことした泡が少々大きくなりすぎたが]


[何とか無事に洗い物を済ませ。
この後はゆっくりシャーベットを食べながら話でも。そう思いながら時計の点検を終えた様子の彼に近づいていったが。

その彼から、差し出されたものに目を見開いて]


 ……あ、あ。そうだ。


[彼の処に忘れていたんだった。
その事を思い出せば、眼鏡を思わず抑え、すまないとその原稿を受けとろうとしたが、続く一言に固まってしまった。ピシッと音がするようだ。少し見たって、……待ってほしい。

見たのか、いや、見ても大丈夫なはず]



 ………見た。


[見ても大丈夫なはずだ。
そう其れはただの題名だ。何度も消して見えなくなったはずの。うっすらと残っていてもきっとばれやしない。『恋』という文字が見えても。


擦れきった『時計屋』の文字はきっと]


 いや、恥ずかしい。
 大の大人が、……恋だなんて。


[墓穴を掘った気がする。
原稿をようやくと受け取れば其れを直ぐ近くのテーブルの上に置き、眼鏡を何度と直した。ズレてもいないのに、何度と動かし。それから、いや、私の事ではないんです。と言い訳をして]


メモを貼った。




 … 子どもの頃、見た物語りに憧れて
 書いていたはずなんだが


      何故か。その


[『恋』などという単語が沸き立つような物語になってしまった。言い訳を重ねようとするたびに、段々と酷い事になっていく。
そんな気がして、色んな意味での羞恥に


自分の顔が耐えられそうになく
平素とは比べものにならぬ赤が刺して*]


[酒場を過ぎた港周りは暗く、遠くに船と灯台の灯りがあるだけ。
潮騒と海風に吹かれ、どれくらい彼の後に続いたか。]

 ……何処に行く気だ?

[急に動いたことで巡る酒精に軽く息を切らし、半歩先にある彼の背中に問うが、制止はしなかった。
ここで振りほどくくらいなら、とっくにそうしている。]*


メモを貼った。


見られてたのか。

[作業中は周りが見えなくなるから、じっくり眺められたところで気づきもしなかったろう。
 その視線に気づいていたら、この関係はもっと早くに変わっていたかもしれない。]

嫉妬、とか。
なんかくすぐったいな。僕みたいなやつに。
本当、君に好きになってもらうなんて勿体ないような人間なのに。

でも。
……もう、しなくて済む?

[身体を起こして、ふ、と小さく笑う。
 隣の彼の、顔を見たかった。]


うん、そう……そうだ。僕も、勝手に諦めてた。
こんな憧れが募って形になったみたいなの、青臭いし。

たまに会えるだけで、近くで見られたらラッキーで。
本当、馬鹿みたいだ。

[やっと見られた顔は、少し濡れていた。
 ひとつだけ残ったキャンドルが揺れて、その跡を微かに照らす。
 彼の肩に腕を回して、もっと近く、と身を寄せた。
 万一誰か通っても、こんな愛しい顔を誰にも見せないように。]


メモを貼った。


[すっかりと酒場の空気は出来上がっていて、己が彼の手を引いても誰も止めはしなかった。マスターは羽振りの良いチップに喜んだだけで、己の勤務を知っている同僚らは“良い休日を!”と囃すだけ。
 連れ去られる彼を按じないのは、それだけ己に信頼がある所為だ。――― この場で己に危機感を覚えねばならぬ相手はひとりだけ。

 彼の手を引き、夜の潮風を浴びてズンズンと進む。
 足取りが雄々しいのはこれもまた酒の所為。

 アルコールは確かに血中に回るのに頬は朱色を知らず。]



 ……俺が付き合ったのは、年下の女の子だけです。
 でも、ずっと一番好きだったのは電車です。

[淡く呼気を漏らして質問の答えを態と避けた。
 代わりに吐いたのは、彼よりは控えめだろう恋愛遍歴。
 
 その間も歩みは波止場に別れを告げて、街灯に誘われるように路面電車の終点方面へ向けて舵を取る。倉庫と空地の並んだ静かな港地区を闊歩。]



 現行車両も可愛いけど、俺が鉄道員になりたかったのは、
 旧式の――― ORS-1型に憧れていたからです。
 
 古い型だから色々と不自由もあるんですが、
 その分、オリュースの鉄道史を語るには外せない存在で。
 俺はその貫禄と言うか、積み重ねてきたものと言うか、
 誇り高いプロ意識が特に好きなんですよね。

[酒場でも同じ話をしたが、二度も熱を込めて語るのは、酔っているからではなく通常運行。空の拳を胸の前で握り、天を仰いで真剣な顔を晒し。

 ふと、瞳が緩む。]

 ……だから、貴方にも、
 同じものを感じていると思ってた。
 



 でも ――――、

   ちょっと迂闊過ぎませんか?

[焦れるように肩越しに流す碧眼。
 彼の風通しの良い鎖骨に視点を置くのは露骨な行為。]

 疲れて寝てしまうのは分かるんですが無防備過ぎます。誰がどんな眼で貴方を見ているか分かったものではないのに。ハワードさんは自分が持つギャップを知らないからピンと来ないかもしれませんが、気付いたら三十分くらい経っていて俺も驚いたくらいなんですよ。あと、口元に触れてぼんやりするのも疚しい眼で見る人がいないとも限らないと思いませんか。いえ、別に是正してほしい訳ではないんですが。大体、見るからに怪しい依頼は受けるべきじゃないですよ。俺の話ではなく一般論ですけど、金で買ったと興奮するタイプは大体碌なこと考えてませんから。いや、俺の依頼は良いですよ? 俺は良いですけど。

[……憧れとして数えるには、言い分の八割が俗物だった。
 文句の語調を取りながら、年若い婦女のミニスカートを注意するソレと大差ない。彼が飽きれても仕方ない。]


メモを貼った。


[ゆっくりと足を止めれば、視線を傍らのビルに向けた。
 外階段で繋がる三階建ての鉄筋コンクリート、人の気配はない。]

 ……デートが初めてなら。

 お持ち帰りっていうのも、
 初めてだったりするんですかね。

[答えを求めず呟くと、そこで漸く身体ごと振り返った。
 微かに孕む緊張と、ともすれば熱に揺れてしまう瞳と。]

 一階と二階は倉庫なんですが、三階は俺の家です。
 ―――…意識してくれましたか?

[腕を軽く引き寄せれば、そのまま解放し。
 代わりに五指が掛かるのは彼の近付いた腰。
 酔っ払いに似合わぬ流れる仕草。

 逃がさぬように、強く、抱いて。**]


メモを貼った。


メモを貼った。


[掴まれた掌が熱くて、痛い。
此方の歩幅なぞ構わず進むから足は時折縺れるし、酒精が巡って息も途切れる。

というのに、自身の三倍以上も酒を飲んだ筈の男はけろっとしている。酔うのも早いが覚めるのも早いタイプか、それとも顔や言動に出ないだけか。質より量、の意味を改めて考える。

──同じ酒量を飲んでいたら潰されていたのは此方だったやも。

ともあれ具合が悪くならないだろうか、と按じながら大人しく後に続くうち、見慣れた道に出る。
終着駅も近いこの辺は早朝のランニングコースだ。]


メモを貼った。


 
 ……はあ? 何、…

[頭の芯がぼうとしかけたところで、不意に返る声に、今日何度目か解らぬ間の抜けた相槌が零れた。

彼が鉄道を愛し、電車を愛し、仕事に誇りを持っていることはこの数年、数週間で目の当たりにしていたが、まさか同列と捉えられていたとは。
呆れていいのか喜んでいいのか判断に迷うところではある、が。]

 迂闊、と言われましても……ちょっと、待て
 ……私のどこに比がある? 全部、きみの主観じゃないか

[続くマシンガントークは呆れていいところだろう。

疲れて、とは冬の日か。三十分、とは一体何だ。
口元に指をあてる時はぼんやりではなく真剣に考え事をしているし、是正しなくていいなら放っておいてくれ。
だいたい、怪しい依頼をしてきた本人が何を言う。
それだって相手が君だから受けたわけで、もっと言えば君からの依頼だから良くないんだ。

──だめだ、今は思考がまとまらず、言葉にならない。
なのに、彼の声だけは一言も漏れず耳に、裡に響く。]


メモを貼った。


[とはいえ、このまま駅へ向かう可能性を捨て切れないのは、脆い心が張る予防線。
彼の足が漸く止まる頃には、汗でシャツが湿っていた。]

 は……ああ、そうだな
 持ち帰るというより部屋から部屋、…じゃなくて、

[正しく迂闊な唇を噤む。
乱れる呼吸を整える間に、鮮やかな手付で腰を捕らえられ、じ、と碧眼を見据える。背後に細い一条が見えた気がしたが、今は流星を数える余裕はない。]

 ──…まだ、君に話していない大事なことがある

[意識なんて、とうの昔に。
は、と顔を逸らして息を吐き、半端な隙間を詰めて囁いた。]


メモを貼った。



 ──…階段はゆっくり上ってくれよ
 何度も言いたくないが今年で59なんだ

[歩き出す前にそう、釘を刺すのも忘れなかった。]**


─屋根の上─

[スリと告白した後のヒイラギの反応は、予想していた通りのものだった。

怒り。
拒絶。
軽蔑。 …当然だ。

諦めという名の泥が胸底に重く積もってゆく。]


 ………… あァ。

[店に来るなと言われ。
クマのぬいぐるみは乱暴に返却された。]



 ……

[来週も待つと。…そう告げられたのに、返事できない。
来週も会いたいと願ったのは自分なのに、望めない。

息苦しくて、…辛い。
分かっていた結末なのに、それでもヒイラギの、あの綺麗な双眸が曇って、苛立ちや怒りを宿しているのを見るのは苦しかった。]

 …ヒイラギに。
 奢られたくなンか ねーよ。

[やっとのことで言えたのはそれだけ。]


[懇願する瞳を直視できたのは、僅かな時間だけだった。
それ以上はあまりに胸が痛すぎた。

視線を逸らす。帰ると告げる声。逃げるような足音。]

 …

[独り残された屋根の上で、天を仰いだ。
ついさっきまで綺麗だと思えた星の光が息苦しさに滲む。]



 知らなかったンだ。

[ぽつり。呟く。]


[悪事に手を染めてると──
こういう時にこんなにも苦しいことを。
大事な誰かを苦しませてしまうことを。

普通に働くより楽だと思った。
気軽な気持ちで手を出した。

でもそんなの一時的なマヤカシで…]


 …ッ

[顔を覆う。
昔の愚かな自分を呪いたかった。*]


─幕間・4週目の平日─

 ………むむむ。

[厳しい表情で睨むのは1枚の紙。
以前、どっかのジイさんの財布に挟まっていたものに似た、求人広告の貼り紙だ。]

 働く。
 ……仕事、…なァ…。

[意を決して訊ねた────ものの、圧迫面接で返り討ちにあった。]

 だーーーーーーーーーッ

[次のところは歓迎されたが、職場の他のヤツらに生気がなく目の下にクマだった。
ブラック臭に回れ右した。]

 がーーーーーーーーーッ

[仕事探しとはなんと難しいことか。]



 ヤベえ…

 なんで世の中のヤツらって普通に仕事できてンの。
 凄くね?

[直射日光の照りつける中を歩きながら、恨めしそうに街行く人々を見送る。]

 だいたい集団行動とかすっげーー苦手だしよ。
 まともに働いたこともねーし…

[結果、面接で惨敗という訳だった。
ブチ猫が足元でニャゴニャゴ構ってコールをしているが、気力がゼロでそんな気にもならない。

明日はまたペルセウス・マーケットが来るというのに。
……自分は、まだ何も変われていない。]


[ニャゴニャゴニャゴニャゴ。]

 はァ…

[本日何度目かの溜息を吐く。]
[ニャゴニャゴニャゴニャゴ。]

 おい。だァからオレはな──…  ん?

[文句を言おうと煩いブチ猫を睨むと、猫は鳴きながら1点を指し示している。
どうやら少年と犬のコンビのようだ。
少年の前には身なりのいい男性。片足を前に出し──どうやら靴を磨いてもらっているらしい。
確かによく耳を澄ませば、少年の明るい客引き声も聞こえた。]

 靴磨き…?

 ──────!!

[その手があったか。と、内心で膝を打った。]



 おいちょっとそこの アンタ…!

 遣り方教え────

[てください。
オーケーオーケー丁寧語。
大事っつーのは惨敗続きの面接で学んだし。


そうして靴磨きの少年の元に。
愛想の浮かべ方を知らない男が弟子入り(?)したのだった。*]


─4週目・店の裏手─

[0時前。
ヒイラギの待ち人が現れる気配は何処にもない。
ただ代わりに…

ニャアアアアア、とブチ猫がのっそり姿を見せた。

よく見ると、首に細い皮紐がリボン結びされており。
くるくる丸まった紙片が、首輪と一緒に巻かれている。]


 『来週。ヒイラギの店に行く』


[紙片に記された文面はその一文のみ。**]


メモを貼った。


メモを貼った。


― 4週目・店の裏手 ―

だよな。

[0時半を過ぎるころ、しゃがんだままぽつりと呟いた。
これまでだったら、と言っても二回だけだが、ここに現れていた時間にも、彼の姿はない。

分かっていた。
分かっていたけど、辛かった。]

…ねこー

[少し前からいつものように、反対側の塀の下に、いつかシーシャと一緒に店に来たぶち猫が佇んでいた。
どこからか魚の骨のようなものを持って来て、舐めたり、飽きたら顔を拭って毛づくろいしたりを繰り返している。
その姿に、小さく呼びかけた。]


ねこはのんきだな。

[苦笑いしながら猫を眺める。
何にもあげる物もない。
ただ遠くから、猫ののんきな姿を見て居るだけで気がまぎれた。

と、猫がこちらの視線に気づいた。
逃げるか?と思った猫は、今日だけ、にゃああと鳴きながら、自分に近づいてくる。
思わず目を丸くして彼?を見た。]

どうしたお前。

[ぶち猫はしゃがむ自分の足に顔を摺り寄せてくる。
思わず笑い声を上げた。]

はは、くすぐったい。
寂しいのがばれたのか。

[猫に顔を近づけたその時、何か紐のようなものが、ぶち猫の首のまわりに、リボン結びで結わえられているのが見えた。]


何だ、誰かに付けられたのか?
苦しくないのかな。

[結び目を解くように、リボンの下の部分を引っ張ると、紐は簡単にほどけた。
そして、同時に紙片が、地面に落ちた。
拾い上げて、そして丸まった紙を開く。]

…シーシャさん?

[思わず立ち上がり、辺りを見回す。
しかし彼の姿はどこにもない。
猫は驚いたのか、にゃあ、と言い残してその場を去っていった。
紙片を見たまま、もう一度座り込む。

多分、このぶち猫に、自分を名指しで呼ぶメッセージを付ける人間など、シーシャしかいない。
じっと見つめた。
来るなと言ったのに「店に行く」。
このメッセージで彼は一体何を言いたいのだろう。

でも、もしかしたら、万が一、このメッセージはシーシャが付けたものじゃないのかもしれない。それに、今週来ないとは書いてない。]




[メッセージの書かれた紙を、大事に広げて、手帳に挟むと、リュックにしまった。
そして、もう一度同じ場所にしゃがみ込んで、スマホでゲームを始めた。
目が痛くなって、シーシャがまだ来ないから、スマホもしまうと、目を閉じた。

温い風が、段々涼しくなっていく。
いつしかその場で座り込んで眠ってしまい、起きた時には辺りは夜明け前の明るさになっていた。]

…帰ろう。

[呟くと、立ち上がり、ぼんやりとしたまま家路についた。]


― 5週目・海の寝どこ亭 ―

いらっしゃいませー!

[店の奥から入口へ向かって声を上げる。
祭りも終盤を迎えつつあり、店も大いに繁盛している。
この分では最終週は、バイト3人体制も必要かという勢いだ。

いつものように半袖白シャツと黒パンツで、いつも以上にきびきびと動き回る。
やはり疲れるが、忙しい方が、気が紛れて楽だった。

先週、結局シーシャは姿を見せなかった。
もしも、何度も家で見返した、あのメッセージが本当に彼のものであるならば、今日、彼は店に来るはずだ。

でも、店に来たら、どんな顔をして会えばいいのかわからない。
会いたい。
けど、店で会って、どうしたらいいのかわからない。


犯罪者だ、と彼は自分で自分の事を言っていた。
でも、実際そうなのだ。
掏摸で稼いだ金で店に来られたら、自分はいつか、彼を通報しなければいけない事になるのではないか。
かといって、自分の中だけで事実を隠し通すのも苦しい。

どうしたって苦しいのだ。
こんなことで苦しむような人間じゃなければ良かった。
でも、会いたい。
2週間前までは、手を伸ばせば触れられる距離にあった、その顔が見たい。]

ご注文は何にされますか?

[仕事で思考を上書いた。
これを1週間、毎日繰り返しているようなものだった。
入口の前にまた人影が見える。
取った注文を店主に急いで告げた後、いらっしゃいませ、と声をかけながら、入口へと向かった。]**


[己の職場には近いが民家は殆どない。
 お蔭で夜のしじまに二人きり。]

 自覚がないから注意を促しているんです。
 落ち度のあるなしに関わらず、自衛してください。

[彼に誑かされているのは己だけだとしても、自分はその当人であるから見逃せない。今だってなんの抵抗も無く彼の腰が抱けた。危機感が足りないのか、――― それとも危険は覚悟の上か。

 抱いた彼の身体は熱が溜まって、布越しにも吸い付くような錯覚がした。
 自然と近づいてきた彼の顔に、すん、と鼻を鳴らすと彼の匂いがする。吟味するように瞳を細め、ともすれば蕩け落ちそうな一瞬。]



 ……へぇー。

[恍惚に酔いかけていても現実へと引っ張る大人の手腕。
 先ほどの物言いたげな半眼よりも、更に白々しい相槌の声がでた。それでも、己が生まれる前の話と繰り返される彼の遍歴を、感情のまま詰ったりはしないが。――― 今はまだ。

 ただ ―――、少しばかり。
 プレイボーイの鼻を折りたくて、腰に回した掌で脇を静かに撫で上げた。夜の湿度を孕んだ繊維が彼の触覚を刺激し。]



 大事な…こと?
 
[意外な問いかけに鸚鵡返し。
 碧眼を軽く瞬くと、一段ずつ踏みしめるエスコート。
 彼は先見の明を持つらしく、二段飛ばしに駆けあがりたい衝動を堪えながら。

 ちら、と逡巡の隙間に彼を覗き見た。]


[三階分の階段は結構な運動量。
 朝晩降って昇る健脚は若さの証左。
 息も切らさず、最後の一段を踏み越えて。]

 そういえば、俺も大事なこと言い忘れてました。

[否、忘れて居た訳ではなく、彼が逃げられぬ段階まで先送りにしてきただけ。回れ右しても長い下り階段では逃げきれない。
 そうして―――、彼に逃避できない理由を与える狡猾。
 酔った頭は己をずっと素直にする、言葉も、行動も。]


[空を沢山の星が駆けていく。
 碧眼を緩く撓め、不安に揺らしてドアノブを捻る。]


 好きです、貴方が。


[いらっしゃいと迎える気安さ。
 どうぞ、と軽く引き寄せる若さ。

 ――― 彼ごと飲みこんだ扉が静かに閉じた。*]


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 おれ……僕のほうこそ。
 ずっと、尻込みばっかしてて。

 そんな、サガラさんに好いてもらっていいのかな、とか、思ったりして。

けれど、そんな思いも、もう終わり。
 微笑みに応えるように、笑みを返す。]

 なんか、ものすごい遠回り……しちゃったみたいですね。
 お互いに。

 …………ぁ。

身を寄せられるまま、抱き寄せられるように。
 そのぬくもりを、享受する。]


[デザートもあるという忠告も聞いていたのに、少し食べ過ぎた。
だから少し時間を置いてから、と告げて。腹ごなしがてら古時計の点検を。

食べ過ぎた理由は、料理がとてもおいしかったのもあるけれど。食べていると、彼がとても嬉しそうだったから。
帽子がないと、自分の表情を隠せない半面。彼の表情もよく見え。
時折顔を上げれば、目が合う度に照れくさそうに顔を緩ませた。

そして、今も。
カランと聞こえた音に点検の手を止めて振り返れば、じーっと見る視線と目が合い。
慌てたように顔を戻す姿が見えたりして。

和やかな時間を過ごしていたのだけど。]


[原稿を挟んだままの資料を差し出せば、明らかに変わった顔色。
どうしてそんな顔をするのか。知りたくなって付け加えた一言に、伸びてきた手が止まった。

何度も眼鏡の位置を直す仕草。
さっきの比じゃないくらい動揺しているのを見れば、ほんの少し面白くない気分が湧きつつも。]


 いや、そんなことは──……


[表面上、いい大人らしく。
そんなことはない、と宥めるように言いかけて、とめる。
テーブルの上に放られたそれは、取り組んでる記事の草案とか、企画とか。
もっと上手い言い訳がきっとあるだろうに。

彼の自身のこと、と言っているような言い訳に。
胸の辺りがもやもやしてくるのを覚えていたら。]


 
 それは……難しいことを言う
 君が私を監視する方が早いんじゃないか

[自覚も危機感もないのに何を自衛すればいいのか。
例えばこんな風に? なんて笑気を含み、がっちりと腰を掴む手の甲から二の腕へ白指を重ねる。

払うでも剥がすでもなく、ただ、触れて。
ここがまだ野外だということを忘れそうな刹那。]

 ……ン゛ッ!? ──…こら、

[布越し、焦げそうな熱を添えていた掌が齎す不埒。
完全に油断したいたこともあって腰ごと身体が跳ね、背中が丸まり、最終的に彼の鎖骨付近に鼻先がぶつかった。
夜目も利くなら、むす、とした双眸を覗けるやも。] 



 物語……
 じゃあこれは、物語の一頁目?

[ぱち、と目を瞬かせた。
ほんのり赤く染まっていくその顔をじっと見つめてしまう。
彼は編集者であって、作家ではなかったはずだけど。]




 セイルズさんて……
 もしかして作家を目指してるとか?


[動揺の理由に合点すれば、ホッと胸を撫で下ろしかけて。
慌てて誤魔化すように手を振った。]

 いや、意外というか……
 ああ違うんだ、悪い意味じゃなくて、その、
 新鮮な一面を見たという意味で。

[一歩彼に近づけば、左手を伸ばし。肩の力を抜くよう、ぽんぽん、と軽く叩いて目を細める。
近くで見ると耳まで真っ赤で可愛らしいとは、さすがに黙っておいたまま。]


[高度を増すにつれ、気持ち近くなる夜空。
潮風に誘われるように視線を向ける。相変わらず海と空の境目くらいは視認できるが、流れる星までは見つけきれず。]

 はぁ、……は…言っておくがこれくらい
 普段は何ともないから、な

 今は酒が入ってるから…、

 ……ん? 何だね

[まだ抜けきらぬ酒精と、近すぎる距離と。諸々により、不覚にも息を乱しながら漸く辿り着くドアの前。人が住んでいるようにはとても見えぬ外観と、唐突な自己申告に眉根を寄せ。]



 でもそれなら尚更……
 大の大人だって、恥ずかしがることないだろう。
 恋が主体の物語は、世の中にたくさんあるのだし。

 むしろ……そう聞いたら俺は、
 どんな話を書いてたのか、気になるけどね。

[これ以上触れられたくない素振りをされたら、やめておくけれど。
彼が書く恋物語に、興味があるのは本当の話。

そろそろデザートをいただこうか、と笑いながら。
シャーベットを用意してくれるようなら、今度は隣の席に腰掛けようか。*]


 
 ……トレイル、…

[──今、言うことか、とか。知ってた、とか。
いつもの調子で呆顔に悪態を添えるのは簡単な筈なのに。

碧眼の揺らめきから目を逸らせず、
呼吸の仕方を思い出す前に背中を夜に包まれ、扉が閉まる。]*


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……そうだね。
でも、悪い遠回りじゃあなかった気がする。
君のことがたくさん見られた。

[実らないつもりでいた恋が不毛で不幸だったかというと、そんなことはなかった。
 むしろ、穏やかなオリュースの空気と同じくらいに、心地よくて幸せだったように、思う。]

これから一緒に歩いていけばいいんだし、ね。


…………あ。

[最後のひとつ耐え残っていたキャンドルが、ついに力尽きた。
 辺りは急に暗くなって、隣り合う体温と心臓の鼓動をより強く感じる。
 またつけようか、と思うのに、ほんの少しといえど離れる気になれなくて、そのまま真っ暗な遊歩道に視線を漂わせている。
 次も、会える。だから惜しくない。会える。
 その実感を噛み締め――]


[食事中、照れくさそうに顔を緩ませていた彼が
真剣な様子で時計と向き合っていた。その様子を見つめていた事に気付かれ、此方が慌ててしまったけど。時間の過ごし方は穏やかでゆっくりとしたものだった。

ただ其れは原稿を差し出されるまでのこと。
顔色が変わったのは彼がそれを見たというから、故意ではないのは分かっている。問題は「彼」に見られたという事だ。

この題名の元になった彼に――]



 ……、…ああ、 …そうだ。



[彼が宥めるように云いかけるのも聞こえていなかった。
彼が自分の発言で何かを覚えている事にも気づかない。それほど羞恥心が強く、逃避を図るつもりが自ら墓穴を掘った。物語りと言う彼の瞬きに今更に白をきる事もできず

思わずという具合で頷いてしまい。
頬の熱が上がっていく]


[此れ程、動揺した事はあっただろうか。
視線は眼鏡の奥で彷徨い、彼を直視できない。羞恥は秘密がばれたことと、よりによって彼に明かしてしまった事から、更に高まって。思わず、彼の言葉。作家を目指しているという言葉に

首を振って]


 ……そんなんじゃ……

  …??

   新鮮だろうか、えっとすまない。


[慌てて手を振る彼がちょうど見え。
きょとんとしてしまう。ぽんぽんと軽く叩く手の温もりに少し落ち着きを取り戻す。そのせいで目を細める彼の顔を間近で見てしまい、声を飲み込んだのだけど]



 ………そうか?
 いや、元々、……そういうのは得意じゃないんだ。

 だから、自分が書くのがおかしくて



  ……内容は…。言えない。


[アリーさんには特に。
そう告げる声は、彼の方を見上げるようになり、物語の内容を隠す。ただ笑いながらシャーベットを望むのなら彼の言葉に頷き、冷凍庫から冷えたシャーベットを取り出そう。

甘さと酸っぱさを絡めたものを机の上に置き。
隣の席に腰かけた彼に少し驚いた顔を見せたのち]


そういえば、ステージの近くに露店出していいなら、宵の口の灯りも少し見られるかな。

[夢物語じみて語っていた出店。
 そこに含めていた下心についても、もう今更隠す必要もない。
 なら、現実問題うまくやれないだろうか。]

もし良ければ、近くに場所が取れないか聞いてみたいな。
マーケットの総務と……それから誰に言えばいいだろう。団長かな?

ステージ周りのスペースの整理とかって、誰がやってるか知ってる?

[思いつきには夢中になってしまうのが、悪い癖。
 夢のつもりが、いつの間にかやるつもりになっている*]




 手をその触っても?


[意を決して告げるのは食事中の遣り取りを振り返り。
少しばかり躊躇いがちに。彼の手を求め、彼の手に触れる事が叶うのならその手をぎゅっと握り締めて、傷を見たまま告げよう。もし、それが叶わないのなら、目を閉じて、息を吐いて]


メモを貼った。


[告げたのは先ほどの回答のようなものだ。
けど、深くは羞恥が邪魔をして言えなかった。このままとなりから彼が立ち去っても自分は文句を言えない。そのような不純を彼に抱いている。本当なら律して隠すべきだった。


だが、彼は自分に話しをしてくれた]


 ………、だから、内緒なんだ。


[星にも知られてはいけない秘密だと
流れ星が覗かぬように家の中で。

彼以外、聞かぬように声を潜めた。不器用なはにかみは唇にうまく乗っただろうか。彼に手の震えが気づかれないといい。

シャーベットを食べようと促すのは逃げか、それとも*]


 たくさん……。

 ……ですね。
 おれも、仕事中の、真剣な眼差しのサガラさん、たくさん見られましたし。

これからも、見ようと思えば見られるのだろうけれど、瞳に映るものは同じでも、きっと何か少し違って見えるのかもしれないから。
 だから彼の言う通り、今までの時間だって、無駄なものではなかったのかもしれない。]


  …………あ。


ふっと、辺りが暗くなった。
 蝋燭がすべて消えたことに気付くまで、少しかかった。]


暗がりの中、サガラの体温だけが鮮明で。
 鼓動はおおきく、でもゆっくりと。]

 はい……、あ……

[彼の屋台が、ステージの近くにあれば。
 たしかに、宵の明かりが、見られるかもしれない。
 けどそんなことできるのだろうか?]

 ……です、ね。
 おれからも、団長に、聞いてみます。

 ステージ周り、たぶん、団長に聞けば分かるんじゃないかなと……。

[できるかどうか、考えるより。
 聞いてみたほうが、早い。]


メモを貼った。


[ちらと見上げた夜空に、星は流れるだろうか。

 もしも流れたならば、ずっと、彼とともにいられるようにと願おうか。
 いや、それはもう、願う必要はないかもしれない。*]


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