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車が突然に止まった。まわりにぼんぼりがない。本当のまっくらだ。
おじさんが車から降りた。おじさんの重さの分、車がゆれた。
おじさんが車をまわって、自分の方に来ようとしているのがわかった。
俺は逃げ出そうと、ドアに手をかけて―――……
[気がついたら、俺は牧野駅のバスロータリーのオブジェの前に座っていた。
手にはあの時の切符を握りしめていた。
信じられるか?
あれから3年経っていたんだ。
その間の記憶が、全くない。
いや、なんとなく3年間の”穴”がある感覚は判る。
その間に経験した恐ろしいことを、恐ろしかった感覚を、特に孤独感を覚えている。
意識が戻って、最初に考えたのは、母さんのことだった。]
[警察に行き、自分の名前と、自分の家の住所を告げた。
捜索願が出ていたこともあって、どうにか親戚と連絡をつけることはできた。
母さんはさぞかし心配しているだろうと思ったら、
母さんは2年前に男といなくなったと聞いた。]
母さんは、俺を探してくれなかったの?
母さんは、俺を待っていてくれなかったの?
あんなに仲良く、毎日暮らしてたのに。
愛されていると思っていたのに。
父さんがいないから?俺が父さんの代わりになれないから?
それとも俺が父さんの代わりをしていたの?
その俺が居なくなったから――……
[俺には、極端すぎるほどの電車恐怖症だけが残った。]
―……あぁ、そうだ。
俺があの女にキレたのは。
失踪した家族を心配しない、あいつが許せなかったからだ。
心配してもらえないアイリスが、俺に思えたからだ。
[――痣女。
そのキーワードから、今朝の記憶がぼんやりと思い出された。
霜が降った窓を擦ってその向こうを覗いたようなの不鮮明さだが……]
[俺は、たぶん朝方に店を追い出され、新宿駅近くで座り込んでいたんじゃないだろうか。
早朝の新宿駅駅は足早に歩く人ばかりだ。自分と同じように地面にへたり込む人、死体のように転がってる人とゴミもあるが。
それらをぼんやりと眺めていたら、「なぎさ」――あの痣女が視界に入ったのだ。]
(俺はあいつを、……追いかけたのか)
[勇気いったろうなあ、と何故か客観的に自分を思う。記憶が断片的で、不確かだからだ。
駅に踏み入れるなんて、考えただけでも恐ろしかったろうに。]
(それから……どうしたんだっけ…… ホームに……)
[思い出せない。つかみ合ったような、気がする。あの女の顔と、痣ばかりが浮かぶ。]
(押……された?俺はあいつを掴んで、一緒に……)
[ホームから、落ちた?]
つきのみや駅、月の宮駅………
[思考がアナウンスに遮られた。窓から外を覗くと、存在しないはずの"つきのみや駅"がある。
ホームが何個もあり、路線がいくつかあるようだ。改札にも人がいる。
どこに乗っていたのか数人が降りていくが、あたりが暗いせいかそもそも人でないものなのか、黒いシルエットでしか確認できない。]
[とっさに自分も降りようとするが、開いたドアの前で足が止まった。]
(電車から降りたら……今度こそ帰れないんじゃないか……?)
[子供の頃の自分がしたことを振り返る。
電車から降りてしまった。人と口を聞いてしまった。車に乗ってしまった……
しばらく思案したあと、ドアから離れた。それをきっかけにしたかのようにドアが閉まり、電車はまた走りだした。]
次は―……きさらぎ駅………きさらぎ駅……
[それは、十数年前に降りた、あの駅の名前だった。]
絶対に、帰ってやる…… 絶対に……
[そう言って、スマホを手にとる。
電話も繋がらない今、twitterでしか元の世界と繋がる手段がなかった。]
[すぐに彼の「きさらぎ駅実況」はネット上で話題に上がった。
フォロワーにリアルの知り合いが多かったため本当に連絡がつかないと裏がとれたこともあったが、
合わせて設定されたアイコンが「日本人離れしたハーフらしい顔つき」だったことと、
アイリスのフォロワーであったこと、
過去のツイートから付き合っていたと思われることから、一部では「アイリスの呪い?」などとも囁かれるようになった。
彼のつぶやきはTogetterにまとめられてRTされるが、”バッテリーやばい”の言葉を最後に呟きは途切れている。**]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
― きさらぎ駅 ―
[「廻谷なぎさ」の形をした女が、「きさらぎ駅」のホーム内の椅子に独り座り、スマホを操作している。]
[ただ、その顔…口許には、「痣」が無かった。]
[「痣女」の噂を「表層の世界」に残してきた事を示すかのように、「きさらぎ駅にいる廻谷なぎさ」には「痣女」の象徴と言うべき「痣」が無い。]
/*
あ、今日から襲撃できるのがひなこちゃんだけになるよね。
忘れない内に村建て発言を渡しておいた方が良いかしらね。
/*
渡しちゃった…★
だって、ひなこちゃんの描写見たいじゃないですか。
でも時間とか体力の都合でちょっと…!って時には、適当に何かするから、遠慮なく投げ返してくれて良いですからね。この先いつでもね。
早々に襲撃をひなこちゃん一人に任せる事になっちゃってるので、巻き取れるとこは巻き取ります。
/*
あ、渡しちゃった。
そしてミルフィさん以外の可能性を特に考えてなかった。
まあ、その時は日が変わってからまた、ひなこちゃんからその人に渡してくれても問題無いですし。
【人】 石工 ボリス[会話を聞くだに、二人はどうやら顔見知り程度の仲のようだった。そして不思議なことに、3人目の女の子も。] (209) 2015/06/06(Sat) 23時半頃 |
【人】 石工 ボリスえ?なんすか。四つ子? (213) 2015/06/06(Sat) 23時半頃 |
メモを貼った。
【人】 石工 ボリス[そのままスマホをいじりながらカウンター内へ戻る。 (217) 2015/06/06(Sat) 23時半頃 |
【人】 石工 ボリス
(219) 2015/06/06(Sat) 23時半頃 |
【人】 石工 ボリス[チラシを見ていないと聞いて、堀川はアレッという顔をした。] (240) 2015/06/07(Sun) 00時半頃 |
【人】 石工 ボリスしっかし、その中華料理屋、不思議っすねー。 (249) 2015/06/07(Sun) 00時半頃 |
【人】 石工 ボリス[続いて、席を立つ女性の勘定を受け取り。] (274) 2015/06/07(Sun) 01時半頃 |
カタン
ゴトン
ガタン
ゴトン
――きさらぎ駅……きさらぎ駅
[電車が減速したのを感じてすぐ、駅名のアナウンスが始まった。
電池が切れて使い物にならないスマホをポケットにしまう。
twitterでも「降りるな」と言われていたし、以前の経験からも降りるつもりもなかった。
それとなく、きさらぎ駅を車内から見下ろしてみる。]
………!
[ホームに誰か、いる。ホームに設置された簡素なベンチに、誰かが座っていた。
あれは……]
[気がつくと、自分の足はホームにあった。
ゆっくり、その人影に近づく。走っては逃げてしまう気がしたから。
]
[お互いの顔が視認できるところまで近づく。
その女の顔を、まじまじと見た。]
…………ッ………は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………
[大きく、吐き出すようなため息をついた。
落胆したような、安堵したような。
膝に手をおいて、前屈するように上半身を屈める。
長い髪が流れて、表情は読み取れない。」
…………あー………
[言いたいことは沢山ある。
言い足りなくてたまらなかったはずなのに、
どれにも優先順位がつけられなくて言葉につまる。]
………何でここにいんの。
[言葉を発すると。
電車は出発してしまった。
振り返らず。顔を上げず。
音だけでそれを見送る。]
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