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……別にいいんじゃない?
怒るのも、さみしがるのも、
個人の感じ方にまで正解はない。
……らしいよ。たぶんさ。
[ 礼一郎は、遺書にクレームをつけたけど、
この状況がどちらに転んだとしたって、
怒る、に行き着くことにない気がするし。]
……もし帰ってきてくれるなら、
うれしいよって、笑って迎えたい、けど。
[ どうなるかなんて、その瞬間の感情なんて、
そのときが訪れるまで自分にもわかんないな。]
じゃ、それを聞いてみれば?
……いざ。
また本人と話せます! ってなったらさ、
案外ないってことも、
ないんじゃないかと思うけど。
[ 礼一郎はそう思います。
そればっかりなんだけどね(笑)
友だちでしょ? なら、あるはず。って、
自分の友だち観みたいなものに則ってしか、
口をきけないんだから許してほしい。]
[ 突然、ぽんと出てきた名前に、
礼一郎は一瞬驚いてそっちを見た。
大騒ぎしといてなんだけど、
お互い秘密って話だったんだけどなー。
もしや何かご存じ? って内心思いつつ、
礼一郎はもう一度前を向いて、小さく微笑む。]
……まーね。
[ 付き合い、長いんです。良い友だちでね。
……とは言わないけど、
礼一郎はその友人の存在が誇らしい。]
[ でもね、礼一郎の視界には、
綿津見のまわりにだって、
たくさんの友だちがいるように見えてたよ。
そう、例えば──、]
そういえばさ、
黒板のアレ、書き換えたの綿津見だろ。
[ いろんなひとが書き足してって、
最終的に辰美が写真に撮ってたアレね。
並んでいた文言を思い出しながら言う。]
「 まなっちと映画館に行きたいです 」
…………だって。
綿津見いなくなったあとも、
残ったやつらで好き勝手書いててさあ……
ほら、たぶん。ああ書くほうがさ、
ちゃんと帰ったんだって信じられるから。
……ありがとな。あれ、残してくれて。
[ 福住も帰ってきてるよって、礼一郎は言った。*]
メモを貼った。
―― 現在:病院前 ――
[ 病院の中に入る千夏を見送って、
誠香はまたジャスミンティーをこくりと飲んだ。
だいぶぬるくなっちゃったなあ、なんて思う。
ポケットに片手を入れて、缶コーヒーで指先を温める ]
……もしも、さぁ、
[ ぽつりと誠香は独り言を言った ]
あの世界に行ったみんなが、
ほんとに死にたいくらいの悩みを抱えてる人ばっかり
だったとして。
あの世界の主が、しおちゃんじゃなかったとして、
[ ぼんやりと、誠香はそんな想像をしてみる ]
[ きっと、世界の主が誰だったとしても、
みんな一生懸命
みんなで帰ろうとしたんじゃないだろうか。
死にたいくらいの悩みを、
受け止めようとしたんじゃないだろうか。
誠香はそんなことを考える ]
……だとしたら、
案外、人生って悪いものじゃ、ないのかも。
なーんて。
[ 楽観的過ぎるかなあ、と誠香は思う。
でも、そうだったらいいなあ、と思う。
まだ問題は山積みだけど。
受験だって立ちはだかってるけど ]
[ 結局誠香は、紫織の悩みを知らないままで、
帰ってきてしまって、
もう、待つことしかできないでいる。
けれども ]
帰っておいでよ、って思った分くらいは、
しおちゃんの力になれるように頑張るからさ。
帰っておいで。
[ 白い息を吐きだしながら、呟いた* ]
-- 現在/病院前 --
[ 誠香の反応を観察する。
あれ。可笑しなこと言ったかな。
と千夏は思ったけど、言葉をごく普通に続けた。
そして飛んできた質問にも、うん、と小さく頷く。
毎日しんじゃいたいし、しんじゃえって、思ってるよ。
────……って、言ったら、
誠香はどんな反応をするんだろう。
好奇心はあれど、
現実世界で間違いがあってはいけないから。
千夏はただ頷くだけに留める。
目指せ、現役志望校合格だよ〜。
ん、わかった!
一緒になりたい自分に近づきに行こう。
メイクすると、本当に感動するから、ね。
[ わかりました、と依頼を請け負う。
ぐ、と拳を握って、にこにこと千夏は笑った。 ]
そっかあ。
首許から風が入り込まないようにするんだよ。
[ 頑張ってるみんなのために待つという誠香に、
千夏は首を傾げて。
マフラーをきゅ、とするエア動作をする。
そうして、暖かな空気が満ちる病院内へと。* ]
-- 現在/病院内 --
[ クラスメート達の姿が見える。
どこにいこうかなあと千夏は考えて。
一人ぽつんと立っている夏美の傍へと寄る。 ]
怖くなかった?
[ なにが、と書いてある夏美の顔に千夏は苦笑。
主語が抜けていると認識を改め。
持っているジャスミンティーを転がしながら、
正しい主語を導き出そうと千夏は考える。 ]
[ たとえば、あたしが白紙をびりびりに破いて、
"向こう"に行っちゃったとして。
"こっち"に戻ってくるのに、
確かに勇気はいるのだろうなって。
ちょっと、想像してみる。
あたしは多分、帰りたくない。色々な意味で。
……だから、ほんとね。信じるしか無いんだろうな。
それに、帰ってきてくれたとしたら、あたし、
嬉しいことには変わりないの、それはほんとう。 ]
一番最初に帰ってきて、色々解らなかったと思う。
メールとか、電話とか、してくれてありがとう。
何もわからなくて怖かったと思うけど、
行動してくれたことが、
私にはとてもありがたかった、よ。
[ なにそれぇと泣き出しそうな夏美の姿をみて、
千夏は、ほんとうにありがとう、とまた繰り返した。 ]
紫織ちゃん、帰ってくるかなあ。
[ 帰ってきてほしいな。
千夏はそう思っている。
文化祭の打ち上げも、できたらしたいし。
……卒業祝い、の打ち上げも兼ねられたらいいな。
早未千夏は願っている。* ]
[ あたしはみんながだいすき。
変わりないの、それもほんとう。
あの世界の主が誰であろうと。 ]
……つまらないものですが……って、
お約束的なノリでいけばいけるかな?
[ そういう問題じゃないって?(笑)
こんな風に言えてしまうのだから、多分、あたし、
戻らなくても仕方ないそぶりしておいて、
やっぱり、戻ってきてしまうことを
期待してるんだろうな。
ともだち観、っていうもの、
あたし、ちょっと曖昧なので。
ちゃんと話すようになったときの展開までは、
想像、ふんわりしていたりして。
それでもマフラーの下で、笑ってたんじゃないかな。 ]
[ あ、ふたりのこと。
噂以上のことは聞いてないよ。
それか、いいおともだちだってことは、
あたし ずっとみんなを見てたから、
なんとなくわかる……と、いいな。
テレパシーじゃない。たぶん、
動物の群れを眺めてる、
まっさらないきものみたいな風。
肯定をいただいたのなら、そっか。って。
やっぱり、笑って返すだけ。 ]
……辰美君、なんかさ、
たまに生きづらそうだなーって思うから、
いいんちょ、見てあげてね。
[ 手がやばかった……とまでは言わなかったけれど、
( そもそもその後、
会ってるとも思ってなかったけれど、 )
ちょっとあたしと似てるなあと思ったのは、
異文化コミュニケーションのたまものかな。
廊下のすれ違いは、夢に入ったばかりのあの話は、
生きづらい二人の会話だったと思う、から。
"紳士" にも、
手を引いてあげる誰かがいれば良い、とは、
やっぱり、観客たるあたしの エゴです。 ]
[ だから、かな?
緊張とか、それこそ やばい、とか。
そういう感覚がちょっとだけ消えたように、
いいんちょを見てた時、
ん? って、声が出た。
─── あ、あれね、そう。
ちかちゃんと喜多仲君が帰ったあとに、
どう書いたら良い?って、
せいかちゃんが言ってたから……。
[ あれも元々しおりちゃんと話してて、なんて。
あたしの夢の話が膨らみかけた。
あれってあの後どうなったのかな?
帰ってしまったあたしはわからないことだけれど、 ]
……えいがかん。
[ 鸚鵡返し。
……ちょっとびっくりした。
あたしの目、びっくりで、
そりゃあ丸くなってたと思います。
せいかちゃんが書いてくれたんだ、とか、
あたし、書かれてたんだ、とか。
あれ、誰かがまた書き足してくれたんだなあ、とか。
エンドロールの続きを祈るようなあれが、
なんだか、届いたような気がして、 ]
……うわー。
あたし、なんか、すごいことしたみたいだね?
[ 他人事みたいに言っちゃうの。
しょうがないんですよ。
ちょっとどきどきしてるんです。
あたし、あがり症なんだって。
顔がちょっと熱いの、
おしるこのせいじゃないでしょ。 ]
……あたし、そしたら、いいんちょとは、
えーと、そうだなー。
格ゲーやろうよ。Smitchの。四人対戦できるやつ。
イカになって陣地塗りまくるやつでもいいよ。
っていうかいいんちょゲームやるのかな?やろ?
せいかちゃんも……
しおりちゃんも、みんな誘ってさ。
それでポップコーン食べるの。
どっかスペース借りるとかする?
[ 生憎書き記す黒板はないけれど、
あたしたち、現実を振り返れば受験生だけれど、
"帰ってきたあと"、のこと、
それくらい語ってもいい?って、わらった。
ほら、打ち上げと、お帰りと。そういう名目。
何度やっても、いいよね?
[ テレパシー、ぴぴぴ。拝啓、せいかちゃん。
おとこのこたちには負けないように、
がんばりましょー。 ]*
―― 少し前:病院前 ――
[ うん、と小さく頷いた千夏に
そっかあ、僕も死にたかったよ、なんて、
もちろん言えるわけもないけれど、
いつか、千夏には謝らなければいけないと思っている ]
あのね、あの本にサインするべき人は、
僕じゃなかったんだ。ごめんなさい。
[ まだ言えないその言葉をきちんと伝えるためにも、
誠香は生きなければいけない。
メイクの先生を引き受けてもらえたら、
楽しみ! と誠香も笑った ]
あの舞台のみんなのメイク、すごかったし。
千夏ちゃんのメイクの腕は折り紙付きだからね。
……きっと、しおちゃんも一緒に。
[ ちらりと病院の方を見て、誠香は頷く。
マフラーへのアドバイスに、はあいと素直に返事して、
きゅっとマフラーを結び直した* ]
メモを貼った。
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