278 冷たい校舎村8
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[ そこかしこが真っ赤だった。 知っている教室なんかじゃない。 でも、その判別をする余裕もなくって、 鍵をかけたいのに、手が震えてうまくしまらない。 ガチャガチャとしていたら、扉が開いてしまう。
逃げるように教室の奥まで行くけれど、 距離感をうまくつかめていないので、 器用に机にぶつかって、転倒した。
黒い悪魔は、もうすぐそこまで来ている。 じりじりと後ろへにじり寄るけれど、──ああ、 どうやら行き止まりのようだった。
頭上に、黒板が見える。 これ以上は、下がれない。 ]
(793) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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神様、お助けください……!
[ 両手を合わせてお祈りポーズ。 エクソシストなんて、ここにはいないので、 自ら、神に祈るしかもう、方法がなかった。
迫り来る悪魔の、姿形がはっきりとしてくる。 ……見覚えのあるシルエット、縦にも横にも大きい。 口角は持ち上がり、その悪魔は微笑んでいた。 ]
(794) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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悪魔は、自分自身だった
(795) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 自信がなかった。 認められたかった。 存在証明をしたかった。 生きていてもいいと、許されたかった。
心乃が誰かに愛を施し、奉仕する理由は、 だれかの為ではなく、自分のためだ。 偽善、とでも表現できるのかもしれない。
「だれかを助ける立場にあるという事実」をもって 愛宮心乃は幸福である、と結び付けたかった。
価値を見出したかったのだ、己の存在の。 不幸であると、認めたくなかった。
愛≠ほしがった、愛宮心乃の闇の部分。 ]
(796) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ だれよりも、救済を求めていたのが 自分だった、なんて笑えちゃう ]
(797) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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ねえ、いらない、わけじゃないんだよね ………いられない、だけだよね
(798) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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愛宮心乃の腕の中、あいてます 向こうで広げて待ってるからね
(799) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ ───8時50分、幾度目かの鐘が鳴り響く。
物音などひとつもしない。 増築されたB1F歪な形の家庭科室の黒板の下。 うつ伏せに横たわる一体のマネキンがいる。 背中には、お掃除用の箒が2本突き刺さっている。 それは、まるで逆十字のように見えなくもない。 ごろん、と身体を動かしてみれば、 額には赤いペンキで十字架が書かれており、 両手は合わせられ、祈りを捧げていた。 ]
(800) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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ああ、そういえば、 おにぎり、食べたかったなあ ツナカレーおいしそうだと思いました。まる**
(801) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 謝るくらいなら死ぬのをやめてほしい。
何で死ぬかって、原因の一言も書かずに
謝って、死のうとして、世界を作って。
そして追い出すのだから、我儘。
あと「許してくれなくてもいい」なんて
まるで許すのが当然みたいな言い方
ぜんぜん気に食わないな。って思う。 ]
[ でも、郁斗は怒っていなかった。
怒る気にもなれなかった。
怒ったら死にたくなりそうだ。
あの時みたいに泣き叫ぶ気にもなれなかった。
いっくんは大人になりました。
まだ未成年だけどね。
騒いで正気を失う気にもなれない。
というか、寝起きなんで。だるいな。
全部夢だったらな。夢かも知れないな。 ]
[ そんな訳ないだろうな。
夢だったらもっと楽しいはずです。
あーちゃんも居ないし、
みんなも、まだ、死んでないし。 ]
── 現在:病院 ──
[ 兄の運転する車のドアを開ければ、
冷たい空気が流れ込んでくる。
一歩踏み出して、その中へ体を晒す。 ]
……帰るときまた電話する。
まー、寝てたら、タクシーで帰る。
[ わざわざ窓を開けて話を聞く兄は
いっつも無視したり無下に扱ったりするのに
郁斗に対して結構過保護。かもしれない。
負い目だね。負い目だよ。
そーゆーとこ、ほんと親子だよね。
前言ってしばかれたので、言わないけど。 ]
[ 寒い。外は寒い。
というか、病院に着いてしまって怖かった。
開いたシャツの首元を手繰り寄せる。
ダルそうなふりして心配そうな運転手が
お前それ大丈夫か。って平坦に聞くから
素直に兄の視線を追ってしまった。
手首に痣がある。あーあ。 ]
はは……なんだろ…、
なんだろーね……。
[ 無数の手。小さな手に触れられる感覚。
臭い。音。……を、思い出す。笑う。 ]
あれはあーちゃんなんでしょうか。
あーちゃんじゃなければ、なんなのでしょうか。
[ 顔色を悪くした郁斗を見て、それに対して、
兄はマフラーを投げつけてた。
寒いなら使えば。って、ぶっきら棒に言う。
かわいくねーツンデレ(笑)って、思う。
嘘。カッコワライつける元気は、無い。 ]
ありがとー。
……じゃあ、行ってくる。
[ そう宣言したくせに動かないでいる弟の背を
兄はぞんざいに、勇気づけるように叩いた。 ]
[ 正気になったら。
色んなことを考えてしまうので、嫌だ。 ]
[ あーちゃんのこと。ワタリさんのこと。
あと、あーちゃんのこと。
そういう、どうしようもないことを考えても、
苦しくなるだけだ。過去は変えられない。
事実は嘘にならない。 ]
[ 喜多仲家は矯正された。そこそこ幸せな家族に。
兄も母も父も、郁斗を大事にしてくれる。
喧嘩もするけど、ちゃんと気にかけてくれる。
なりました。普通の家族に。
なんで。って、あーちゃんのおかげだよ。
あーちゃんが死んだおかげ。だよ。
あーちゃんが死んで郁斗が病んで、
三人が何とか繋ぎとめようとしたからだ。
あーちゃんが死ななければ。
こんなに幸せになることはなかった。きっと。 ]
[ あーちゃんはクソみたいな親に殺された癖に
それをダシに幸せになっていいのか。って、
そういうことを考えると、
目の前が真っ暗になる。眩暈がする。
そのくせ、今だって
兄ちゃん優しーやったじゃん(笑)なんて
この結果を喜ぶ自分が居るので、笑える。
あーちゃんが死んだことによって、
いっくんも全部全部不幸せになれればよかった。
でも違った。幸せになってしまった。 ]
[ 授業中眠くなったときとか、
つまんねー講演を聞いているときとか、
ふとした瞬間に正気に戻って考えて、
その度に死にたくなってしまう。
どうせその数十分後にはそんなこと忘れて
皆とバカやって笑ってるっていうのに。
バカやって笑ってる自分を冷静に見て
自己嫌悪して、忘れて笑って、
みたいなエンドレスはしたくないです。
どーせなら笑ってたい。笑っていたい。 ]
[ 持てるもの全部持って抱えて、
正気になりたくない。って思う。
可笑しいですか。
可笑しくても良い。……って、思ってた。 ]
あれはあーちゃんなんでしょうか。
あーちゃんじゃなければ、なんなのでしょうか。
夢の中のあーちゃんは
いっくんがあーちゃんだって言うから、
あーちゃんです。そういうことになりました。
チビだったり、同い年たっだり、
たまーに全然人間じゃなかったりしても、
夢の主があーちゃんって言い張るのですから、
あーちゃんはあーちゃんでした。
いっくんにはあーちゃんだって分かっていました。
でも、本当は。
あーちゃんなんて居ないのかもしれません。
居たけど、たしかに現実に居たけど、
もう、いっくんの傍には居ないのかもしれません。
じゃあ。本物のあーちゃんは
一体全体、どこに行ったんだろう。
ハア?叩かなくてもよくねえ?
チョー酷いんですけど。
寝ててもマジ叩き起こすから。
[ 寝起きにしたってテンションの低い郁斗は
それでもなんとか、病院へ進んでいく。
もう嫌いじゃなくって、
もう嫌われてもいない兄を背にして。 ]*
[ え。てか、夜中の病院って怖くねえ?(笑)
フツーに怖いんですけどぉ!! ]
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