191 The wonderful world -7 days of MORI-
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[ ── その後を追うように、地面を蹴った。
炎の消えた道を、駆けて、
まっすぐ、その、化物に、突っ込んでくみたいに。
或いは、飛んで。きみのくれた力を駆使して。
どうにかして、近づきたかった。
炎を纏っていようが、電気を帯びていようが、
”触れたら”、なんとかなるって、
さっき、思ってしまったから、
煙の膜が、炎が、電気が、
狐の動きを阻害しているなら、
伸ばした手の届くところに、まだいるなら、
今度こそ、痛みも、なんにもない、
ただ、”動けない”ってだけの感覚で、
そいつを、捕らえてしまいたい。*]
ぐ……っ……!
[僕の姿が、崩れて行きます。
思ったよりも苛烈な攻撃だったことを、受けてから思い知ります。
次は何の姿になろうかと、考えて。
この状況から逃れるために、もう一度、“龍”に。]
ふふっ、ふ……ふふ……。
[何故でしょうね。笑いが込み上げてくるのです。
本当に、何故なんでしょう。
再び取った龍の姿は、どろりと溶けるような醜い姿。
ソウルを安定させる暇はありませんでした。]
[蕩けたぐちゃぐちゃの龍が、残滓を周囲に撒き散らしながら。
そのまま天へと昇り、地上を見下ろします。
僕の体力も大きく削られてしまいましたので、あまり長くは保ちません。
そして、僕を中心に雷雲を発生させて、
――雷鳴の後に、全てを焼き尽してやろうと、大地に向けて大雷を放つでしょう。
それが放たれるまで、数秒。
消え行く貴方がたに、何ができるでしょうか。*]
(行け!)
[機動力として動く狼は、まずは、その攻撃に専念する。
煙と火に包まれた光弾は、かなりの威力をもつだろう。
だが、それでも、この街を一つ消し去る力には及ばないかもしれない。
だが、狼は、圭一の攻撃がより当たりやすいよう、飛び込み、
そして、相手からの反撃がくれば、飛びのくつもりだ。
圭一に危害は加わらぬよう、
八の尾っぽが間違ってもその柔肌を切り裂かぬよう。]
[それが着弾した時は、あきらかな変化が訪れた。
その狐の尻尾が飴細工のように溶け流れると、
またその存在は高貴な龍、だが今度は、まるで腐れ神のようになった]
(退くぞ)
[もちろん、悪予感しかしない。
見るからに醜悪な姿に、生理的嫌悪を覚えたか。
ともかく、生み出される雷電は、くらいたいものではもちろんなかった]
圭一をやや強引に揺さぶった状態になったかもしれない。**
―――………!!
[皆方の背の上で、暫く…呼吸を整えるために目を閉じていたが。
やっと落ち着いてきた所で目を開く。
狐狩りの狐は、見るも無残な姿になり…そして再び龍へ。
いや、龍のゾンビのような凶悪な姿へと変貌した。]
ちゃんとした形じゃねーって事は…やっぱ、ダメージ通ってる気がする。
気がするけど…うぅ…ビジュアルがえげつねー。それに…
雷なんて、人の真似して欲しくないんだけどなっ!
[上空に不自然なまでの黒い雲。軽口を叩きながらも、尋常じゃない力が集まっている事を肌でぴりぴりと感じる。]
――わかった。
[皆方にそう伝えると、緊急離脱の為か、今までにも増して強い揺れ。
姿勢を伏せ、全力でしがみついたまま、移動するに任せた。**]
/*
Tips:ノイズ<エクゥウスカンタス>
ゲームマスター白上理許がノイズ化した姿。馬型の半身を持つノイズ。
尋常ではない脚力を持ち、固い蹄を伴う蹴りは強烈。
燃えるような背中のタテガミからは、炎が零れ落ちる。
(#3) 2016/06/19(Sun) 01時半頃
(ダメージは通ってるだろう。
だが、こっちが落とされちゃたまらん。)
[まねしてほしくない、といった言葉には、苦笑い、は見えないだろうけれど]
(電流が走る経験、してみるか?
残念ながら本物は萎えるぞ。)
[なんて、無駄口叩きつつ、
また身を翻すと、ダッシュでなるべく龍から離れようと**]
[ ── 立ち止まれない、と思った。
確かに触れた、と思ったときに、
また、するりと逃げられるような感覚。
目前で、また、輪郭を失っていく化物に、
立ち止まれない、と、思って。
……何もしなきゃ、終わる命だ。
後を追うように、地面を蹴る。空に。
歪だろうが、醜かろうが、
”きみのためならなんだってする”って、
あのとき、この世界がはじまった瞬間から、
思った。思っていたんだから。]
[ ── 危機的状況の残り何秒だか。
そんな状況でも、おれにできるのは、
ただ、きっと地上から狙いを定めるきみに、
そのほか、なにかを試みる皆さんに、
少しでも役に立てなかろうか、と、
決して、丈夫じゃない翅で、
残滓の中、ソレを追いかけ、飛び上がり、
その、脚なり、どこかをつかもうと、
あの紋様の浮いた手を、まっすぐ、伸ばすことのみである。*]
.
[突如の加勢と、
それから、その主たちの姿に、
僕は目を瞠りました。
正確には、そのうちの一人の顔に、です。]
き、北見さん……!?
[どうしてここに、なんて愚問でしょう。
彼らも、僕らと同じ目的で――
奪われた生の権利を、もう一度取り返すために来ている。
僕は、ちらりと、幼馴染の顔を伺ったと思います。
“いつも通り”のその顔に、何だか無性に、怒りとか、悲しみとか、
そういうのがないまぜになって。
けれども、それを吐き出すことはせず、怒涛の攻撃を受けて、
姿を崩す狐に、目線を向けたと思います。
油断はせず、盾を構えた兵隊を傍らに置いて、
照準を、その狐に合わせたままで。]
[苦しそうに、どこか愉快そうに笑って、
狐は、その姿を、先程までと同じ、龍に変えました。
けれど、その姿は荘厳とは程遠く、
まるで溶けかけた雪像のように、崩れ、溶けた、醜いものでした。
それでも、その超越した力は失われていないらしく、
瞬く間に、周囲に暗雲がたちこめたでしょうか。]
[自分たちの手に負えない、自然の怒りに対して、
人間に出来ることは多くありません。
雷雨にしろ、吹雪にしろ、ただ、身を縮こまらせて、それが去るのを待つしかないのが常です。
けれども、目前の、龍の最後の足掻きに対しては、
ほんの数秒では、逃げることも、建物の中に隠れることも難しかったでしょう。
ですから、僕は、一か八か、といった調子で、
空に羽ばたいていく幼馴染の背を守るように――彼に仇なすもの全てを退けるように、
兵隊が、銃弾をがむしゃらに龍に向けて繰り出したでしょうか。
少しでも、ルイの手が、龍の身体に届くように、祈りながら。*]
[圭一と名乗った青年が、怒鳴の炎と合わさった電気の球を
魂を込めたような掛け声とともに放つ。
赤に、白に色合いを変える弾は、
狐の形をしたコンポーザーに真っ直ぐに飛ぶ。
それを躱されぬようにと張った煙の膜は、
狐の動きを阻害し、そして燃え上がった]
! まだ動けるか……!
[強烈な一撃を喰らわせたかと思ったが、
コンポーザーは再び龍へと姿を転じ、空へと昇る。
ただし、その姿は先ほど見たものとは違い、
身体の輪郭はどろりと崩れ、その鱗片は地に落ちる]
[―― その直後。空に掛かる暗雲と轟く雷鳴。
マズイ。そう、直感で思った。
龍より離れる圭一と皆方を見やって、
そして空を飛ぶ類の姿を認めた]
類!無茶をするでないわ!
[空を飛べない男は地上より叫ぶほかない。
けれど、周囲にまだ狐が燃えた時の煙が残っているのを知り、
パイプからのそれと共に天へと昇らせる。
それが形成するのは、コンポーザーと同じ"龍"。
手を伸ばす類の狙いが何かは分からないが、
彼の目的が達成されるように、
そして、コンポーザーを逃がさぬようにと
白煙の龍は相対する龍に絡みつかんとした]**
[雷が放たれるまでに。
彼らは、最後の抵抗をしたでしょう。
僕も、まさか、これが最後の一撃になるだなんて。
そんなこと、考えもしませんでしたから。
白い龍が立ち上れば、それはどろどろの龍へ絡み付き、
銃弾の雨が轟きます。
崩れた醜い龍の体は、びちゃびちゃと飛び散りますが、それを抑えるだけの余裕がありません。
死を賭した、翅の少年の手が。
とうとう、直に触れたものですから。]
…………! !!
[体の芯へと、痺れが回る感覚。
それと同時に、龍は地へと堕ちました。]
[同時に、形作っていた雷雲は霧散して、
溜め込んでいた雷のパワーは周囲に飛び散ります。
僕の体は、地面に堕ちて、ぐにぐにと変化して。
何者にもなれなくなって、ひどく、苦しい。]
……ぐ……っ……う……。
さすが、です、ね。
くっ……ふふ。
[身を守るくらいの力はありますので、殺されることは、きっとありません。
ありません、が。
どんな攻撃をされても、抵抗はできないでしょう。*]
[文字通り、龍は崩れ落ちて、地面に叩きつけられたでしょうか。
そうすれば、ぐねぐねと苦し気にもがくその胴に、兵隊の剣が押し当てられたかもしれません。
切り付けた訳ではありません。ただ、動きを封じ――平たく言うならば、脅すために。]
……降参、してください。
倒す、が、ミッションの目的、なんですよね。
[コンポーザーを“殺せ”、では、なかったはず。
メールの文面を思い出して、僕は、もがくそれに、そう呼びかけたと思います。
或いは、その動きを封じた立役者――幼馴染が、再び、その身体に触れようとしたかもしれませんが、
何にせよ、僕がそれに求めたのは、彼が負けを認めること。それだけです。
甘い、と言われるかもしれません。
けれど、それでも、意思を持ったその人を――何故、生き返ろうと思うのか、僕に問うた彼を、殺すのは、何だか忍びない、と、思ってしまったのです。*]
[ 伸ばした手に、あれは、なんだったのだろう。
硬いウロコ? なにともつかぬ異形のモノ?
とにかく、ただ、手を伸ばして、掴もうとして、
やっと、なにかに触れたんだ、と思った。
── そして、落下。
必死に掴もうとした、その化物に、
巻き込まれる、みたいに。]
── っ !!
[ 翅、を、広げて。
たぶん、最後の悪あがき、ってやつ。
少しでも、衝撃をやわらげようと、試みつつも、
蛾 のようななにかもまた、地面に落ちた。
結局、翅以外は、人間だから、
硬い地面に打ち付けた身体のどっかしら、
うまく動かせないのも、仕方なかろう。
それでも、這うようにしてでも、
あきらめの悪いおれが、再度、
べたん と、その、異形に、手を伸ばしたのと、
見上げた先、きみが、きみの司る剣が、
光 みたいに、見えたのは、ほぼ同時だったと、思う。*]
[ すこしでも、きみの役に立てたんだろうか。* ]
.
[さらに触れられて、身動きひとつできない僕に、
降参が突きつけられました。
その顔を見上げることもできませんでしたが。]
そう、です、ね。
殺そうとしても、きっと貴方がたには殺せない。
それだけの自負は、あります。
[ただし、今は。
力を使い果たしてしまって――こんな感覚、初めてで、どうしたらいいのか。]
もう、十分です。
この短い間で、十分に見せてもらいました。
僕が知らなかった、可能性を。
[僕が感じたものが、全て間違いでなければ。
こうして戦うことができて良かったと、結果的には思うのです。
実際に向き合わなければ、知ることのなかった“せかい”。]
……降参しましょう。
ミッションは、達成されました。
モリ区の未来を、もう少しだけ、見てみたくなりましたから。
[地に伏したまま、つい笑いが零れました。]
そして、――ありがとう、ございました。
[傷付きながらも、恐怖を前にしても、
消滅の運命を突きつけられても、それでもなお、
立ち向かうことを諦めなかった、皆様に。
心からの感謝を告げて、僕の姿は“夜羽 仙寿”へと戻ります。
間もなく、ゲームの終わりが、訪れるでしょう。*]
……こちらこそ、ありがとうございました。
[降参を認めた彼は、上品そうな人の姿に変わったので、
僕も頭を下げて、兵隊の剣を収めました。
そして、幼馴染の元へと駆け寄って、その怪我の度合いを確かめたでしょうか。
あちこち打ち付けてはいるようでしたが、
それでも、酷い怪我ではありませんでしたので、]
ルイ、……良かった……!
[ようやっとその時、僕は安堵したように、表情を緩めたと思います。
そうして、ぺたり、彼の傍に座り込んで、
彼に向かって、笑いかけたでしょうか。**]
[ 地面から、空を背負った、きみの顔を見ていた。
光を背負って、表情は、よく見えなくて、
ただ、なんとなく、
きみが、泣いてないといいなあ、って、思った。
「ミッション」「達成」の、たったふたつの言葉が、
行く先を、示している、んだろうなって、
こみ上げるのは、安堵、だろうか。
”今度こそ”、きみの力に、なれたのかな。
きみを、守れたのかな。おれのせいで死んだきみ。]
[ おれは、今更ながら、
火傷や落下のダメージに、地面に転がったまま、
肩で息をして、日頃の運動不足なんかを呪った。
なぜか吐き出された礼の言葉の、
意味するところは、いまいち分からなかったけれど、
きみが褒められているようで、おれは誇らしくなる。
その姿が、ヒトらしいソレに戻ったことも、
気づくことは、なく。]
……ネル、
[ 正直なところ、
きみが傍に来てくれて尚、
立ち上がらなかったんじゃなくて、
立ち上がれそうにもなかったのだ。
疲れ、か、怪我のせいか、なんだか、分からない。
でも、きみが来てくれたって、そのこととか、
熱に焼かれた頬が引きつって、
うまく表情をつくれる気は、しなかったけれど。]
── おれの、パートナーになってくれて、ありがとう。
[ たぶん、こどもみたいに、笑った。*]
事件の主犯に、引導は渡された。
参加者の手のひらのタイマーは消え、ミッションのクリアを告げるだろう。
7日間の死神のゲームは、これで終了する。
暖かな光が、生き残った参加者を照らし、包み込んでいく——
(#4) 2016/06/19(Sun) 04時半頃
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