281 緋桜奇譚−忌−
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それにしても、ここは地獄?極楽?
リバーオブサンズ?
何かどれでもなさそうな…
「お、ガルム」
えっ。
[よう、と気楽に片手を上げる鬼と、何だかわたわたしている人間と。そんな二人がガルムを出迎えた。]
ど……どうも。
[そろっと京助も手を上げる。]
「まあな。
干支が一周するくらいには憑いてんな。
最初はこんなに長く付き合うとは思ってなかったんだがなァ。こいつが取引で素直に頷く可愛げのあるガキだったらさっくり体を乗っ取れていたんだがな」
……。
俺は京助だよ、ガルムくん。
やっぱり俺たち死んでるのかなー。
[明星の物騒な告白はスルーし、京助はガルムへと自己紹介と素朴な疑問を口にした。**]
/*
核の見える……半透明?
雷獣ってさわったらバチバチするのかなー
霊体だからしないかな(どきどき)
/*
バチバチ
ちょっとスマホの僕としてはバチバチしているのこわいな。
そこふたりはなんだかんだ喧嘩したりしてても見てて和む。
へえ〜12年か。
コイツが今大体成人ぐらいで…ガキの頃ねえ。
[取引して取り憑くとか真面目え、とか言ったら絶対脱線するのでそこは黙っておくとして]
京助ってのか。キョウスケ…キョウスケ……
人間って見た目がすぐ変わるから覚えるの大変なんだが。
次会った時もこのクソ鬼が憑いてたら思い出してやるよ。
俺は聞いてると思うが雷獣のガルム様よ。
[大サービスといった風に自己紹介をする。]
どうなんだろうな。
三途の川が一番近い気がしなくもないぜ。
匂いも薄っすい気が。
最近十王の手下の殭屍ってのと会ったが、そいつなら詳しいかもな。
シノがさっき冥府送りにしたらしいし、どっかその辺にいるかもな。
シノってのは一緒に冥府を開こうって仲間…だったやつの事。
[殭屍を見たらそいつに聞けと、ついでに無駄話も混ぜる。]
[そして優しげな、神妙な声で]
しっかしさ、京助くん。
鬼のアカボシが憑いてこのかた苦労の連続だったんじゃないかなあ?
コイツが憑いてから口臭とかワキ臭とかきつくなったんじゃね??
人間には辛いよねえええ。
[煽る。]
今折角分離してるんだしさ、アカボシだけさっくりと殺ったら君自由じゃないかな。
[名案だというように告げた。
もちろんこの空間でアカボシが死ぬのか殴り合いが成立するのかは疑問だが、殺ってみる価値はあるだろうと。*]
/*
雷属性同士だし、電圧を中和させるとか、本体の周りに電磁シールドを貼るとか…
/*
タイプがほのお、でんきの複合だからガルムさんほど、雷特化じゃないんですよね〜。
弱点も雷という感じ。
近くでバチバチしだしたら電磁シールドはきっと張った。
/*
なっちゃんが来たら最終かなあ。
そう言えば私、共鳴二人とは絡みなかったね。
残念。
/*
金魚ちゃんとだけは絡めなかったんですよねえ。
SHINOちゃん頑張れ〜
冥府から応援動画を撮影。
[気がつくと、どこまでも暗く、果てしなく陰鬱な、じめっとした場所に倒れ伏していた。
辺りに生者の気配はなく、持っていた道具も全て手元にはなく、体からも功夫が失われている]
…死んだか。三途の川かな。
いや、最初に死んだのは遥か昔のはずだし、地獄に来たのは150年昔のはずだし…
こういうのを適当に表す言葉がないな。困った。
…それより困ったな。咎を受けるのは仕方ないとしても、これでは何枚始末書を書かされるやら……
もういっそ地獄滅びればいいのに。
[冥府の事は、自分も隅から隅まで知っているわけではない。げっそりとしながら、ともかく報告はせねばなるまいと、坂を下り、地獄に帰ることにした*]
次会った時……どうなんだろうねえ。
[クソ鬼が憑いていたら、という言葉に苦笑した。
そもそもこれからどうなるのか、冥府がつながるのかどこへ行くのか。]
うん、改めての紹介ありがとねー。
[なんとなく貴重なものを聞いたような気がしていた。]
十王の殭屍……?
「ああ、あいつのことじゃねえの。
あの堅そうな女。
十王の手下ってんなら納得だなァ」
[言われて、あ、と一人候補者に思い至る。
別れた後、どうやら彼女も命を落とした?らしい。
そうかー……とちょっと声のトーンが落ちた。]
?
[その後、優しげな声で話しかけられ。]
口臭……ワキ?
……っふ、あはは。
そうだね分離してるね。まあ、自由というか、
俺が住まわせてやってるんだけ……
[ど、と言い終わる前に傍らの鬼が身構えるのが視界に入り]
「はっはっは。
テメエ……死にたりねえらしいなァ!!!!!」
[あー、と止める間もなく、ガルムに殴りかかっていく明星の姿を見た。]
ねー、こんな所でくらい大人しくしてたらー。
[言ってみたところで止まるだろうか。*]
/*
相変わらず来るのが遅い時間にー
……というかちょっと寝てたごめん。
地上は大詰めかなー?
/*
大詰めねえ。更新まではゆるゆる見守ってるつもり。
― 十二年前の続き ―
[その鬼は、暴れまわっていたせいで退魔師たちに追われ、随分と弱っていた。逃れるために山に身を隠していた所に人間の子供が偶然現れたのは幸いだった。
相手の同意を得て、うまく丸め込んで"契約"をすることでやがては肉体を乗っ取ってやろうと企んでいた。
たかが子供だと高を括っていたのだが、相手からの返答は。]
――断る。
[子供は手を伸ばし、バツを作り。
堂々と断ったのだった。]
『は?』
いやだって、そんな、僕だけが都合の良い取引なんて怪しいでしょ。しかもどうみてもおじさん人間じゃないし……
絶対何かあるんだ、僕知ってるもの。
[呆気にとられた鬼と、睨みながらも心臓バクバクしている子供。人間にとっての危機的状況だ、簡単に食いついてくるだろうと鬼は思っていたのだが。
この少年は昔話おとぎ話ファンタジー小説が好きで読みまくっていたので、人外との約束、うまい話には絶対何かある、あるいは約束の隙をつかれて酷い目にあうと警戒したのだった。
人間の体を乗っ取るには手順が必要であった。こちらに有利な案に本人の同意をさせねばならなかった。鬼は子供を説得してみるも、なかなか首を縦には振らず。]
……まあ、そんなに言うならね。
可哀想だから、少しだけなら貸してあげる。
でも、「体の主は僕」だし、
「僕が許可しないと貸さない」し、
「僕が返せと言ったらすぐに返してもらう」。
[ようやく妥協してきたと思ったら、きっちりと契約内容を提示してきた。他にも細々と。
しかし、少しばかり鬼の立場に同情してくる辺り甘いと思った。そこらは子供だとも。ただ、子供の癖に慎重で、弱くて怪我までしている分際で鬼の優位に立とうという図太さは面白いと思った。
どうせ他の人間がたまたま此処に訪れるとも思えない。
ゆえに。]
『しゃあねえなァ。
その条件でお前の体に「住んでやる」よ』
いいや違う。僕が「住まわせてやる」んだよ。
[契約は成った。**]
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