48 マーメイドライン
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[冷たい風が、頬を撫でる。
その冷たさが、ミッシェルのあの手の冷たさに感じて。
風の囁きか?
彼女の声が、聞こえた気がした――]
[―――ふわり]
ぁ……
[人間の身体が海辺で静かに消え去った後、
私はまさに、マーメイドとして、存在していた。]
ピッパ
[声が出せる。
身体も痛くない。
けれど、海から離れられない――]
[駄目だ、諦めちゃだめだ。
陸に上がれなくても方法はある。
魔法なんて、使えて当然だ。
否、そんなことはないのだけれど。]
[矢張り魔法は使えないようだ。
深海から見る景色、マリンスノーが視界を覆う。]
……私は
[何処から来て何処へ行くんだろう。
最初からマーメイドとして生を受けたのとは違う。
あのマーメイドラインが出てから、だ。
そして本物のマーメイドでも、ないのだと思う。]
……。
[見上げた上には空から射す光が満ちて
少し眩しくも、美しい**]
― 岬 ―
[涙を流しながら、呆然と海を見詰める。
家に帰る事も、もう出来ない。母が待ち構えてるだろう。
かと言って。ミッシェルの家など知るはずも無く。
もう、会う事すら叶わないのかと思うと――
いっそのこと、ここから飛び降りて。
海の泡となれば。想いだけでも、ミッシェルの傍に
居る事が出来るのだろう、かと]
[その時。不意に聞こえる女の声に、思わず振り返る
彼女が何を言っているのか、理解する暇も無く。
――背中から胸を貫く鈍い痛み。
急に、呼吸が苦しくなって。立ち上がろうとしてみたが、
足に力が入らない。ただ、呆然と。彼女の顔を見て。
薄ら笑いを浮かべる彼女の言葉は、やはり理解出来なくて。
ただ、なんとなく。もう悩まずに、済むのだという
その事実だけを受け入れた]
[彼女が、ゆっくりと自分に触れる。
実際は、もっと早く、力強かったのかも知れないが。
ゆっくりと、時間が流れてる様な感じの中で。
彼女が、自分を海へと押し出す。
バランスの取れない状態の身体は、簡単に地を離れて。
軽く空を舞った――]
ミッシェル……。
[最後の力で、愛しの人の名を呼んだつもりだったが。
肺を貫かれて。呼吸の代わりに漏れるのは、血]
[強い衝撃を感じて。自分が海に落ちた事に気が付く。
身体から急速に失われて行く、温もり。
既に、意識は朦朧としていて。
もがく事すらせずに、ただ導かれるかの様に
静かに沈んで行く。
朦朧としながらも。ミッシェルの事を想う。
このまま死んでも、心だけでも、ずっとミッシェルと
居る事が出来るようにと、祈り続けて――
意識は、*途切れた*]
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