88 めざせリア充村3
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[人の動く気配を感じれば、リッキィとヤニクの姿。]
リッキィも…おかえり。
おはよう…かな。
[リッキィの気まずそうな表情に
気軽にかける声などなかった。
殺されたナユタと、殺したリッキィ。
辛いのは…後に残された者。
それを思うと、気にするなとも、大丈夫だからとも、言えず、
模索するどの言葉も的確ではない気がした。]
[ 素頓狂なことを言うヤニクに首を傾げる]
そうだよ?
[とても不思議そうにくすりと笑みを、まるでなにかを隠すように]
おかえり、オスカー。
[久しぶり、とくすりと笑った彼に挨拶をする。
手を伸ばして握手を求めた。
夢の中では隣に立って戦っていたはずの相手に対して、ひどく懐かしそうな――そして、すこしだけ哀しげな眼で見ながら。]
[しばらく、オスカーに浴びせられる質問と
その返答を黙って聞いていたが、
ヤニクの言葉にピクリと心臓が跳ねた。]
オス・・・カー?
[何事もなかったかのように
サラリと返された言葉に、目を見開いた。]
オスカー…、オスカーなのか。
生きてたんだな。
[理由などは、どうでも良かった。
きっとまた、これも実験なのだろう。
そうとしか考えられない状況で、
乾いた笑いが零れそうになる。]
ふふ、……父様に孫を、見せたらどうなるのかしらね
[楽しげな音に同じ音を重ねる。
いつか――そんな日が来ればいいと、
くすくすと笑みを零していれば、
オスカーの言葉にキィが自分を見上げていて]
なぁに?
[不思議そうな目が何を訴えたいのかと瞳を覗き込む。
チアキを見ていたのは、なぜなのだろう。
キィの視線を追って、チアキを見つめる。
見つめる瞳は、悲しげに揺れていた。]
[お母さん、という単語に反応して志乃を見つめる。
話しを逸らした姿を見ると、なにやら関係はありそうで。
オスカーの楽しそうな笑い方を見ると、納得したように頷きそうになったが、
幼子の視線を追えば、目に飛び込んだのは。
………世の中には、分からない方が良いこともあるのかと、変な結論に着地した。混乱したようだ。]
[ 握手を交わせば伝わってくることも多い。
それは知りたいことも、知りたくないこともいっぱいある。
ヤニクから伝わってくることはいつも明快で心地よかった――]
うん、ただいま。
[ 「生きていた」と言われれば苦笑を浮かべてナユタを見やる]
僕は簡単には死なないよ?
[3年後には死んでたけれど、と]
[どれくらい見つめていただろう。
モニカが死んで逝く。チアキの手で。
燃えていくモニカは、どこか安堵しているようにも見えて。
自分もこうだったのだろうかと、瞳を揺らしていた。
ふいに、腕を黒く染めながら、
チアキが、自分を呼んでいる気がした。
握っていた手も、撫でていた手も放して。
モニターの方へと近づいていく。
自分を想う音が、聞こえた気がした。
その音に、少しだけ困ったように、悲しそうに見つめる。
兄に恋する時期は、疾うに過ぎていて。
恋心は、家族を想う愛に変わっていた。
ただ、守りたい。幸せになって欲しい。
その為に手を尽くしたい。]
……やはり、私たちって似たもの兄妹ね
[気付くのも、伝えるのも、お互いに遅くて、不器用だ。
小さな声で囁けば、モニターをさらりと一撫でした。
無機質な感触に、苦笑を漏らして、
はらり一滴零れるものがあった。]
……ん。ナユタも、……
[返事をする以外にどう彼と接していいか分からなくて視線は空中を彷徨い、結果的に床へと落ち着いただろう。
口を小さく動かして、結局彼女が選んだ言葉は。]
………ごめん。
[伝えるべき言葉は、選択した言葉は正しくなかったかもしれない。
けれど、リッキィからは今は、これしか出なかった。]
[じっ、と怪しむような視線をミナカタに浴びせながら。
頭を撫でられれば、直ぐにそれを止めただろう。]
現実………。
………そ、う。それじぁ、あの光景は。
[焼けた野の匂い、火薬の匂い。鉄の匂い、雨の匂い。
あの場所の風は様々な物を運んできた。それも、現実に近い形で。
おそらく、あの光景は。風が貫いた、あの画は。
思わず言葉を飲み込んで、自分の右手を見つめた。
言葉にしてしまえば、音になってしまえば。本当に現実になってしまうような気がして。怖くなった。]
[きっと、そう遠く無い未来。
自分は、大切な人さえもこの手にかけるのだろう。
それが、今回の実験で彼女が得た収穫でもあった。]
[キィの視線の動きやらで、リッキィが
なにやら誤解をしているなんて、露知らず。
オスカーが、オスカーじゃなかったような口ぶりをする。
ヤニクやナユタの会話は、不思議そうに聞いていただろう。
なんとなしに、実験絡みなのだというのは分かったので
深く聞くことはしなかった。
少しの間、モニターの前にいたが、零れたものを拭えば
みんなの近くへと戻った。]
[オスカーと握手を交わす、それで想いが伝わるから、彼との会話は楽だったけど。
今は、言葉を口に出す大切さを知っている。
それを教えくれた人は――もう、いないのかもしれなくても。]
……?
[ナユタとリッキィのやりとりの様子は、何が起きたのかを知らないので不思議そうな顔で見ていたけれど。
俯いたリッキィを眉を寄せて見つめながら、長く続くようなら二人の方へと歩いて行くかもしれない。]
オスカー、おかえり。
[『簡単に死なない』と、夢の中で一度死んだであろう彼が言うと
思わず苦笑してしまう。ただ、目覚めたのであれば、実際
簡単には死ななかったのであろう。
とにかく気になっていたことを聞いてみる。]
キィの居た後が、首筋に残ってるってことは…
オスカーは、オスカーだけど、
オスカーが居なくなったあとに居たオスカーと同一人物?
[なんだか、言いながら、意味が分からなくなってしまった。]
その…、夢の中や…その前の記憶も…全部ある?
[ モニタに映る火と化したモニカをただじぃと見つめる。
あれは数ある未来の一つに過ぎない。
自分は絶対にモニカを"魔女"にしないと心に誓う。
そこにあるのは少しばかりのクアトロへの対抗心]
[何かを呟いたリッキィの頭を、無言で撫でる。
彼女が何を思ってつぶやいたのかは知らない。
この実験で彼らが何を思ったかは、
後々一人ずつゆっくりと聞かなくてはいけないのだろうけど。
今は、今日だけは少しぐらい忘れてしまえ、と。
そう思うは己のエゴだろう。]
ん…、
[リッキィから返された言葉に、
やはり、何を返すのがいいのか分からず、頷き、
暫く考えてからポンポンと、頭を撫でて小さく呟き返す。]
俺の方こそ、ごめん。
[もう、何も言わなくていいからという風に
目を細めて口元を緩めた。]
んー、説明は難しいな。
[ 答えるのもなかなか難しい]
僕は今から三年前に――
[延々と納得してくれるまで説明することだろう。
途中からクアトロは遠くに行っただとか、いろいろ飛んでることも言うだろうが――]
[モニカとライジが死んだのを見た。
これで、夢の中のニュリクティ共和国は敗戦の一途を
辿ることになるだろう。
生き残った二人は、どうなるのか。
不安そうにミナカタを見たが、彼もまた、終わる時期を知らない]
なんで……ナユタが……
[どうして彼が謝るのかと。
謝っても、いくら詫びても死んだ時の感覚、恐怖は夢だったとしてもはっきり残っていたはず。
それを、与えてしまったのは、自分だ。]
……謝る、必要無い。
[ナユタの手に、思わず泣きそうになってしまい必死に床を睨みつけた。]
[息を飲んで、はいて。吸って、はいて。
もう一度深呼吸をしてミナカタを見上げる。]
眼を、元に戻す事は、できないの?
[きっと戻す方法はあるのだろうけれど、戻さないに等しい事を彼女は知っていた。
知っていてもミナカタに訊ねる。ほんの少しの希望を持って。
一瞬だけ、ミナカタがあの歪んだ笑いを浮かべた白衣の男に見えてしまい、震えるが。
静かに、返答を待った。]
[を聞けば、言葉に少し引っかかりを覚えて。
誰かと問われればオスカー君なのだろうけど。
それをそのまま答えていいのかが分からない。]
何があったとしても。
時間がすぎても、オスカー君はオスカー君じゃない?
[ちょっとだけ外れたことを。]
[近づいて聞こえた会話は謝罪のしあい。
喧嘩をしているわけではないだろうし、と俯いたリッキィの姿を心配そうに見つめるものの。
ナユタとの会話が終わらなければ近づかない。
志乃がモニターをじっと見つめてからこちらに戻ってくるのには、近くに近づいて。]
……皆眼を覚ます。
俺達は生きてる。――生きてる。
[生きてればなんとかなる、と不得手な慰めの言葉をぶっきらぼうに。]
――戻して欲しいのか?
[そう言うということは戻して欲しいのだろう。
わかっていてあえて問いかけたのは
戻してやるとは言い切れない立場にあるから。]
……お前が、どうしても生活できなくなるぐらい
それによって苦しんでいると報告すれば。
[あるいは、と静かな声で。
そんな約束もできない自身に苛立ちながら。]
だが、どちらにしろしばらくは無理だろう。
……すまないな。
そう、ね……生きてる、
[悲しい顔をしてしまっていただろうか。
ヤニクが声を掛けてくれた。
ぶっきらぼうな口調だけど、慰めてくてるのは分かって。
緩く微笑んで、頷いた。
生きていれば、変えられる未来もあるだろう。
目覚めたら、変えて行けるようにすれば……]
…………生きてる、
[同じ言葉を繰り返した。
リッキィとナユタのやり取りをちらりと見る。
殺した人、殺された人。刻まれたものは、消えるのかと
過り……頭を振った。]
[俯いて耐えているであろうリッキィの姿に、
もし、自分が殺した立場なら、
これ以上の言葉は逆に辛くさせてしまうだろうと、
ゆっくりと手を離す。
ヤニクがやたらと不安そうな視線を
投げかけているのがチラリと見えた。]
[モニターに写しだされるモニカの死体と、
ソフィアの手の中で、動かなくなったライジ。
彼らも、また、もうすぐ目覚めるのだろう…。
自分の死後、
ライジに亡骸を運んでもらったのをモニター越しで見ていた。
もう戦場には赤の仲間がいない…。
ライジの、モニカの…亡骸は、どうなってしまうのだろう…と、
そんなことが頭を過る。]
[黒くなった名前は二つ。
ライジとモニカ。
残っている名前は二つ。
――それでもまだ、止まらない。]
……チアキ、ソフィア……
[呟く名前は、まだ悪夢にいる二人のもの。]
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