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−素心若雪−
[雪若は母親というものを知らない。
母だったその人は、子を産んだその時に息絶えたからだ。
雪若は父親の温もりを知らない。
物心ついてから…。いや、生まれてから一度たりとも、父は子に触れたことが無かったからだ。
父義景は嫡子でありたった一人の子である雪若を居ない者のように扱った。
家臣たちも皆、主である花柳藤義景の不興を買うことを恐れて、雪若を路傍の石のように見えぬふりをした。
雪若の世話をするのは、母の乳母であった老女と年若い家臣のみ。]
[ある日。
一人庭で遊んでいた雪若は視線を感じて顔を上げた。
遠くの渡り廊下から、自分を見ている男が一人。
乳母に尋ねれば、躊躇いの後にこういった。
「あのお方は花柳藤義景様。雪若さまのお父上にございますよ。」
歳四つ。
雪若は生まれて初めて自分に父がいることを知った。
父とはどのような人なのか。なぜ声をかけてくださらないのか。
乳母に父の話しをねだり、父の人となりを想像しては、会ってみたい口にする。
乳母が母と似ていると言えば、愛らしく華やかな女童の着物を好んで着るようになった。
それでも時が経てば、子はおのずと理解するもの。]
[自分が父に、憎まれているということを。]
ちちうえ…
[乳母が亡くなり、城の片隅にただひとり。
まだまだ人恋しい年頃だった雪若は、父の気を引こうと頑張った。
それでも父は、雪若を見ようとはしなかった。
声をかけることすらしなかった。
そんな父が、初めて雪若に声をかけた。
「そうか…」と。
そっけない一言であったが、初めて父と目が合った。
雪が降り積もる冬。雪若八つの年である。
それは、雪若が生まれて初めて人の返り血を浴びた日でもあった。]
[死んだのがどこの草かは知らされなかった。ただ、義景の命を狙っていたことだけは確かだった。
そして雪若の剣の才は瞬く間に重臣たちに知れ渡り、無い者のように扱われていた雪若への扱いが変わった。
天剣の才有と讃える者。それまでの不遇を憐れむ者。剣鬼と恐れる者。義景の意を伺う者。
その周囲の変化は人の醜さを雪若に見せつけると共に、ひとつの光明をもたらす。
「父上は、雪の事がお嫌いだから」
けれど…
「剣の腕を磨けば、父上は雪を見てくれるかもしれない」と。
そして瞬く間に腕を磨き、戦場へ出るために元服を迎えた。
その日。まだ幼い雪若は愛らしさを残したまま、父より一字を賜り景虎となった。
戦場で敵と切り結べば、命を絶つその瞬間までは、相手はただ自分だけを見てくれる。
戦で武勲をたて、大将首を持ちかえれば父への目通りが叶う。乳母のように頭を撫でて褒めてはくれなくとも、忌み嫌うような目を向けられようとも。
桶の中で塩漬けにした“手土産”を差し出すその瞬間は、確かに自分は父の目の前に存在できるのだと。]
[しかし幼い心を打ち砕くかのように、希望は幻想と消え果る。
義景が本当に望んでいたのは敵将の首ではなく、愛する女を殺した夜叉子の首…つまり自分の首だと知ったからだ。
そして景虎は出会う。
金さえ詰めば、相手がだれでも、どんな仕事でも請け負う忍びの頭領に。風間小太郎の名を継ぐ青年に。
ならばこれが天命かと。
紅玉の瞳に影を落として、手の平から零れる小判で金の雨を降らせた。]
「じゃあ、次は雪に仕えてよ。」
[始めは義景の顔色を窺って居ない者として扱っていたくせに、剣の才有りと見ればころりと掌を返した家臣たち。その誰一人として、景虎は信じてはいなかった。
一度簡単に態度を変えた者は、またすぐに態度を変えて自分を裏切ると。
だから、決して自分を裏切らない者が欲しかった。
忠も儀もいらない。ただ自分を見て欲しい。
むしろそれが金で買えるなら安いもの。]
[逃げた毬のように転がる父の首を大事に抱きかかえて、家臣一同の見守る前で高座に座った。
既に風間の忍びを使って根回しは済んでいる。これはただの通過儀礼だった。]
今日から雪が花柳藤家の主になるけど…。
異論のある人、いないよねぇ?
[白い着物を緋に染めながら、ふわりと花のように綻んだ。*]
よく似たご姉弟のようで。
[気丈な女。容易くは折れぬ男。そのまま鷹船悠仁を女にしたような様を思い浮かべて、微かに容姿に疑問もあったが。
李伸睦の名前が出れば、おやと片眉上げて茶席の主人を見やった。]
枷……などと、そのようなもの、では。
しかし、ええ……
そうかもしれませんね。
[躊躇い、迷う。肆番の影であることは、枷などではない。
それが自然なこと、そうあるべき姿だった。
ただ、もう一つの大きな枷は――残した黒千代の名に縛られていた玖の露蝶という存在自身は、風間小太郎の手によってすっかり壊されてしまったような心地である。]
簪など、似合わぬもの、お止めください。
[自分が簪刺す姿は、仕事でもなければこそばゆいだけだ。
目尻を恥じらいに僅か染めて、否定の意を示す。]
メモを貼った。
[本当によく似た顔立ちをした姉弟の器量については
李伸睦が知っているだろうから、掘り下げないでおこう。
掘っても誰も幸せにならない結果が在るとだけ。
伸睦に目配せひとつくれ、
ふと、辺りに藤の香が在るように思えて
そのまま眼差しを辺りへぐるりと巡らせた。
気のせいかもしれないが。]
――赤が鮮やかなものを選ぶかね。
[そぞろ巡った視線は再び露蝶の顔に戻り、
目元の赤を肯定と捉え、
ついでのそこに浮く色の艶やかさを示唆した。]
さて、見届けに行かねば。
日ノ本の明日を。
[藤の香が気になった事もあって、
後ろ手に槍を掴むと
茶の席を辞して、再び甲板へ出てゆこうかと。
三途の川の水底、現世の戦をしかと見届けるべく。*]
人の話を聞かない方ですね……
[ぽつりと零し、出ていく背を見送る。
妙に暑い気がして、こんな成りでも暑い寒いがあるかと、外の風求め船窓へ手をかけた。
どことなく届く花の香が冥府送りらしい、などと失礼千万思いつつ。]
山芭と義姉の名が口に上るを耳に挟めば視線もついそちらへと向き。]
決めたことは頑として譲らないところはそっくりよね。
下手したら戦にも参じていたかもしれないわ…。
[片翼を失った鳥は、高みを飛ぶより止り木こそを選ぶのだと言い切って。自ら鷹を討ち落とさんと弓を持つのを甥がいるのだからと引き止めたのだ。
万一私が戻らなければ鷹船に…と弱音を吐こうものなら弓の胴で活を入れられた。]
守るものを持つ女性とは、かくも強いものかしら。
[山芭への問いかけに、返るものはあったろうか。]
綺麗な髪だから、簪がよく映えそうよね。
聞かれれば助言はするから悠仁殿が選びなさいな。
[性別を長く違って捉えていたといっても、過ごした日の長さから、相応しい品を選ぶのは悠仁の方が適役であろう。
手前に置かれた椀を、悠仁へ軽く頭を下げた後持ち上げる。
土を焼き固めた手触りを数度回し、口をつければ少し粗い泡が喉を通った。
そのざらつきは、現世に置き去りにしてきたものへの未練のようで。喉のつかえと諸共に飲み込む。]
[相変わらずひとところに落ち着かないお人だ。
空席になった亭主の席に一礼して席を締めくくり、開かれた船窓から流れ込む風に当たるよう、座る角度をやや変える。
戦の流れは今はどこにあるのだろう。
この屋形船に乗る魂は東の者が多いが、その目で確かめるための腰はあがらなかった。*]
ッたたた…………やっぱりダメだったかァ。
[碧如は頭を抱えながら立ち上がる]
まァ、簡単にはいかねェ話だが。そうなっちまったモンは仕方無ェな。それが仏さンの示した道ッて事だ。
[碧如は目前に広がる河の前であぐらをかく。]
― 屋形船 ―
ほほほ、若いもんらはみんなそんでええんや。
未練も残しもあらへんのは、ババアの特権どすえ。
[若い彼らのやりとりを眺め、各に浮かんでいる心残しを眺めて、八重は静かに椀を傾けるのみだった]
女はなぁ。決してつよぉはないんや、男よりは弱いいきもんや。
やけど、女はつよなくても、無力やあらへん。
そないな訳どす。
茶ぁん礼にでも、涅槃ば後学に覚えとき、李ぃのん。
[視線向ける姿に答えながら、八重はよっこらせ、と老女ゆえの重たい腰をあげる。
鷹船に続き、少し外に用事がある様な按配で、茶の席を辞していく]
[船に流れ込む風に乗せられて、どこかで花か何かの香りがする。
甲板を出て、波面の揺らぎに一瞥して、八重は辺りの甲板をゆっくりと歩く。
既に待ち人はこの屋形船が揺られた先で待たせている老女に、彼岸の手前へ続く場所にのこしてきた思いはない。
唯老女は、この船が波揺られる先を待ちながら、そしてこの船を訪れるのはだれぞと待つのだ。
藤の香る様なそれを頼りに、いくぶんか船に歩みを刻めば、やがて柳の梢に隠れている様に、白い童の姿は見えんものかと瞳を向けるのだ]
[船のへりに額を乗せて俯いていれば、人の気配を近くに感じて咄嗟に持っていた太刀を引き抜く。
――シャッ
と鞘走りの音を立てて振りぬかれた太刀は、常であれば相手の胴を上と下とで切り分けていた瞬足の一太刀。
しかし肉を断つ馴染んだ感触はなく、代わりにそこに立つ人を見上げて緋色の目をぱたぱたと瞬かせた。]
………鷹船?
[こてり。なぜここに居るのかと疑問の色をありありと浮かべて、景虎が首をかしげる*]
[さらに鷹船のその後ろ。
見覚えのある老女の姿に気づけば、今にも緋色の目が零れ落ちそうなほど大きく見開いて。]
八重…?
[なんで?と、八重と鷹船の顔を交互に見比べる。
八重が死んだこと。自分が死んだこと。
それは理解しているのだが、鷹船もまた、既に死人であることを景虎は知らなかった*]
メモを貼った。
[船窓より覗く、視線の先。
達観したように河前にしてどかりと座る男
名だたる武将の姿なら多少はわかりそうなものだったが、彼は特別見覚えなく思えた。
あの合戦場にいたものか、それとも不幸に命を落としただけか。
幾度か思考を巡らせはしたが、答えは出ず。]
……もし、そちらの方。
[気づけば思わず、声をかけていた。]
―屋形船 船縁―
[波間を揺蕩うような現世の像を見下ろしながら、
みしりと船板を鳴かせて進む。
戦場では、土下の竜が蠢き、大猫の爪が燃え。
まだ戦が続いている事を明白に知らせてくれる。
そこに安堵を感じ、同時に悲しくも思う。
――俺は未だ、そこに居たかった。
…………これが、何よりの欲。本心であった。]
――……姫夜叉か……?
[変わらず漂う藤の香に誘われるように、
戦の最中覚えた好敵手の香に引き寄せられるように、
足は山芭と同じく、花柳藤の傍へと向いた。
ぱたぱた、鏡写しのように瞬く目で、花柳藤を見た。]
[条件反射で抜いた太刀を鞘に納めて、鷹船の問い
鷹船の目には、雪以外の誰かに見えるの?
[見上げた緋色の瞳を猫のように細めて、ちょっとした悪戯な笑みを浮かべる。
まさか、男が藤の香に引き寄せられて現れたとは露程にも思っていない。]
鷹船こそ本物なのかなぁ?
[目の前の鷹船は、一見すると死人には見えない。
けれど自分だって生前と変わらない姿をしているのだ。
ここに居るということは、自分と別れた後に死んだのかもしれない。
ならいつ?誰に?
湧き上がる疑問は好奇心か、それとも戦狂いによるものか。*]
[花柳藤の手に刃有ろうと、得物は握らない。
この船路の意味を解してしまっているからだ。
それが悲しく、ただ強く拳を握った。
地上で対峙した際と変わらぬ花柳藤の姿に息漏らし
一歩、近付いた。]
鬼か夜叉か、と。
――……俺を模した姿を成して、何の得になる。
坊主の後光に目を潰し、
森の大熊に食われた敗軍の将の姿など。
[はははっ、と笑ってもう一歩。
これについては納得いく全力の負けだと
いっそ気持ち良く堂々と。]
ふふっ
敗軍の将っていうなら、この船に居るのは全員そうじゃないかなぁ?
ねぇ。
川を渡り終えたら、本物の鬼と合戦でもしてみようか?
[夜叉もまた鬼。
川を渡り終えれば、恐らくその先は地獄だろう。
にやり、と笑って鷹船に船尾の席を譲ると、とことこと八重の方へ近づきその手を引いて戻ってきた。
鷹船と八重の間に収まる形で、愛刀を抱きしめて水面に目を向ける。
場面は丁度、猫の爪が小太郎の胴を抉る瞬間だった
無残に引き裂かれ、血を流し倒れる小太郎の姿に微かに目を伏せる*]
かははは、うちはまず本物じゃよ、景虎や
[そう呵呵と笑いながら、夜叉の様な童の頭にしわがれた手を乗せる。
景虎に手を引かれて船尾まで歩み行けば、子供を見守る目で彼の様子を眺めるだろう]
天下のおおいくさは、もうすぐしまいじゃあ。
鬼が、合戦に応じてくれおるかはうちもわかりまへんえ。
やけど、それもそれで面白そうやのぅ。
[もし本当に、涅槃に鬼がいるならば、きっと自分の良き人も、呵呵大笑しながら鉄砲の大筒を今ぞ鬼へと向けていることだろう。
流れる水面の行方を、老女はただそうして眺めていた**]
黄泉の手前でも学ぶものはあるのね。
[八重の言葉は頭で理解できたとは言い難いが。
何となし、胸に落ちるものはあった。]
[窓から聞こえる声の数が増えている。
この船に人が満ちる頃には彼岸に辿りつくのだろうか。
二度と見られなくなる前に、あと一度此岸を目にしておこうと膝を伸ばし出た甲板。3つ並ぶ中央の白に目を見張る。
獣を名に飼い、夜叉として戦場を舞っていた子も三途の渡し船に乗ったのか。
愛刀を抱いて川面を見つめる姿に声はかけず、反対側の船縁から視線を落とした。
水面を覗く頃には戦は幕引きに近づいていただろう。]
[
人に頭を撫でられたのはいつ振りだろうか。
驚きが過ぎ去れば、嬉しそうにふわりと目を細めて笑い。
八重の手を引いて船尾へ戻る。
関ノ原の戦は、西軍の惨敗で終わる。
その結果は奇跡でも起こらない限り覆らないだろう。
八重の言葉にこくりと頷いた。
もしかしたら、話しに聞く件の魔王が先陣を切って合戦の真っ最中かもしれない。
所詮は戦の中でしか生きられない鬼の子だ。
ふと船板の軋む音に顔を上げれば、こちらに背を向けて船の反対側から水面を覗く伸睦の背。
声はかけず。
再び水面を見つめながら、太刀の鞘をぎゅっと抱きしめた。*]
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