人狼議事


268 オリュース・ロマンスは顔が良い

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視点:


メモを貼った。


ゆっくりでいいですよ。
君がつらくなければ、10時。10時にしましょう。

僕も、ゆっくり片付けられますし。

[ね、と同意を求めれば、断られまではしなかったろうか。
 9時半、10時、どちらであってもさしてすることに変わりはない。
 あんまり急かして拍子抜けなんて思われたら、多分寝込む。]

楽しみにしてます。
公演、がんばってくださいね。

[そう伝えれば、彼はどんな顔をしたろう。
 僕はといえば、赤くなりそうな頬をキャンドルに近づけて、炎のいろで誤魔化そうとばかりしている。]


[そうして、取り決めた時間の少し前には、すっかり店を畳んで、荷物を持ちタクシーに乗っていた。
 少しでも急ぎたかったのと、ちょうど一番盛況な時間に大荷物で市電に乗るのが気が引けたせい。

 工房に着けば大荷物は置いて、代わりにキャンドルとマッチを多めに鞄に詰め込む。
 ライターも持っているが、キャンドルに灯りをつけるときはいつもマッチだった。擦る瞬間さえ、ひとつの宝物。
 先週の舶来品市で、キャンドルかインセンスを見繕っておけばよかったなんて後悔は後の祭り。
 待たせていたタクシーに乗り込み、くるりとんぼ返り。]


[往復分の代金をタクシーに払い、もう一度潮の香り濃い生温い夜風を吸い込めば、慌ただしさから一転、急にまた緊張してきた。
 それでも他に吸える空気もない。深呼吸繰り返し、喧騒の中に踏み込んでいく。

 途中、マーケットに並ぶ品々から瓶のビールを二本とチョリソやポテトを雑多に炒めたつまみを買って、舞台の方に向かった。
 彼が酒を飲めるたちかどうかを知らないけれど、そうしたら近場でまたドリンクを買って、二本のビールは僕が飲もう。
 今日は、先週のような失態はしないはず。
 おそらく、きっと*]


メモを貼った。


── 三週目の、 ──

[陽が傾き始める頃、時計屋は早終いした。
約束に遅れないためにというよりも。そわそわと集中力がなさすぎて仕事にならないから。
遠足前の子供か、とそんな自分に苦笑しつつ。
先週より浮かれている反面、少しばかりの緊張を覚えながら視線を落とした先には黒い手鞄。出張修理の時に持ち歩いているものだ。

ドアに「close」の札をかけて。]

 そういえば、手土産を忘れていたな。

[ご馳走になるのに、手ぶらもなんだと。
マーケットを経由して縦長の紙袋を一つ増やし、赤い路面電車に乗り込んだ。
さすがにこの時期、観光客だらけで。夏に黒いジャケットと帽子姿の自分に向けられる、物珍しげな視線に肩を竦めつつ。
電車を降りて、歩き出す。]


[土地勘もなかった幼い記憶なんて、ないようなもので。
単に古時計の修理に通った道を辿ってついた頃には、ちょうど空も星が瞬く頃合だった。

家の前で立ち止まって白い壁とオレンジの屋根を見上げれば、懐かしそうに目を細めてから。
玄関でベルを鳴らし、家主が出てくるのを待つ。]

 こんばんは。
 今日はお招きいただき、どうも。

[ドアが開けば、帽子の下で顔を緩ませ。
手に持った縦長の紙袋を差し出そう。]

 美味い料理には、酒が必要だろう?

 ワイン買ってきたよ。
 君の好みを聞き忘れてたから、とりあえず両方。

[袋の中身は、辛口の赤ワインと甘口の白ワイン。
食事に合いそうなものと、食後のデザート感覚のものを選んだけど。飲み方は自由だ。]


[そうして家に上がれば帽子を取り、ジャケットを脱ぎ。
黒い手鞄とまとめて置かせてもらいながら。]

 ああ。
 ついでに、時計の調子も見れたらと思ってね。

[古時計はあれから動いていると言っていたけど。
なにぶん古いから、まめに点検した方がいいだろう。
と、その前に。]

 ……いい匂いがするな。

[家の奥から漂ういい香りが、鼻先をくすぐり。
ぐぅ、と小さく腹が鳴った。*]


メモを貼った。


 あ……それじゃあ、10時で。

一体何の用事だろう。
 人形に関することだろうか。
 けれど、時間を決めて会うだなんて、まるでデートのようだ。]

 はい、今日もきっと、いい公演にします!

[激励の言葉に、笑みがこぼれる。
 きっと顔は、少し赤くなっているに違いないけど、幸い陽が落ちかけているし……大丈夫、きっとバレてない、きっと。]


[さて、彼とわかれて。

 公演はといえば、今回も大成功だった。
 ただちょっと、テンションが上がり過ぎてしまって、団長や団員たちに「何かいいことでもあったのか?」と聞かれたりもした。
 小さくて素敵なお守りを、手に入れたためだ。

 そして、片付けを終えて。
 今日も頑張ってくれた相棒を撫でながら、時計を見れば、9時40分を、少し回ったところだった。
 約束まで、まだ少し時間がある。]


 連絡先、交換しとけばよかったかな……。

[少し古い型の端末に、羽根のチャームがゆらゆら揺れる。
 でもそんないきなり連絡先交換とか、図々しいにも程がある。
 苦笑をひとつ浮かべてから、相棒を肩にのせ、通りに出てみた。

 少し時間は早いけど、そろそろ、彼の姿が見えたりはしないかな、って**]


メモを貼った。


――こんばんは。

[片手にビール、片手に軽食とバッグ、と、完全に観光客スタイルでステージの方までやってきた。
 端から見れば、公演が終わったにもかかわらずいそいそと向かっている変な客に見えたかもしれない。]

お酒って、飲めます?
一本どうぞ。

[片手に二本持っていたグリーンの瓶。
 両手が塞がっているので、二本とも差し出して片方取ってもらおうとする。]


[代金を払われそうなら丁重に断った。
 これは勝手に買ったものだし、何なら両方飲む覚悟すら決めていたもの。
 差し入れです、といえば受け取ってもらえるだろうか。]

少し、離れましょうか。
まだ人がいますし。

[静かな場所がいいんです、と告げて、歩き出す。
 ビールの栓を開けて、一口呷った。
 使います?と差し出した簡易栓抜きは、自作の物。]


――その子、大事にしてくれて、ありがとうございます。

[道中、途切れないように会話を挟む。
 店番とチャームのお礼で勝ち取った特別な時間だ、まごついて無駄にはしたくないと、アルコールの勢いで口を滑らせていく。]

その子、僕が随分前にお渡しした人形なんですよ。
今とは関節の付け方が少し違うくらい、古い子です。

[だからこそ、メンテナンスもやりづらくなかなか出来ずにいた。
 大きなコンゴウインコの出番が限られているのもあったかもしれない。
 あるいは意図的にそういった演目を外していたのか――その辺りの真意は、僕には知り得ないものだけれど。]


でも、今は立派に君の片腕になってる。
それがすごく、嬉しかったんです。

[だからずっと君のことを見に行っていました、という三行目は口には出さない。
 新作の公演はチケットを買い、数年単位で星見は必ず来ている。
 それまでに彼の肩の相棒を見る機会は何度もあったはず――

 という時系列を整理すれば、この感想がここ数日、今年のマーケットでのことではないと知れるかもしれない。
 が、知ってほしくて言っているわけではないから、この感情は知られなくていい。]

だから今日は、僕の世界を、君に見てもらおうと思って。
って言っても、大したものじゃないんで拍子抜けだったら、すみません。


……うん、この辺でいいかな。

[やがて、遊歩道に着いた。
 皆マーケットに向かっているせいか、数本外れたこの通りには空いたベンチと小さな噴水が人待ち顔でいるだけで、肝心の人影はほとんど見当たらない。]

座っててください。
それ、よければ食べて、ちょっと待ってて。

[露店で買ったチョリソとポテトのハーブ炒めをプレゼントして、着席を勧める。
 反対に自分は立ったまま、鞄を開けた。]


[ベンチの後ろに聳える街路樹に、失礼して緩めにロープを張らせてもらう。
 そこに、いつも露店の店先に吊るしているキャンドルホルダーを引っ掛けた。
 マッチを擦り、中に入れたキャンドルに火を入れれば、微かにオリエンタルな香りと共に、あたたかな灯りがぼう、と辺りを照らした。

 乳白色の樹脂に囲まれて、光はホルダーの大きさ以上に広がっていく。
 それが複数集まれば、夜中でもなんとか視界が利く程度の穏やかな明るさになる。]


綺麗だろう?
自分で言うのも、おかしいけど。

[いつの間にか意識が緩んでいたのか、顧客相手の工房の主から、ただの相良相介の言葉になって、揺れる灯りを評していた。
 隣いいかな、と、ベンチの空いた片側に座る。]


……このキャンドルは、マーケットの時しかつけないと決めてるんだ。
理由はいろいろあるんだけど、ひとつは僕がこの灯りが好きだから。

だけど君にマーケットで会えるのはまだ明るい夕方のうちくらいまでだし……夜に会うときは、僕は店を片付けてショーを見に来てる。

それじゃあ、どうしたって見てもらえない、から。

[けれど、これだけお膳立てしておいて、今日この灯りを見せた最大の目的の部分は、まだ達成できていない。
 開けないままの小箱に手をかけたまま、ビールを呷った。
 もう一息、勢いが欲しくて**]


メモを貼った。


[そういえば彼は迷わないで来れるだろうか。
彼が来てくれるという事に浮かれていてその事を忘れていた。古時計の修理で来てもらっていたから大丈夫だとは思うが、彼からすれば自分は客の一人。自分が甘えている証拠があるからこそ。

少しばかり不安が過る。窓の外を丁度見たときか
瞬く星空の間を彼が歩いてくるのが見えた。
まるで御伽話のような服装を
見間違える訳がない

黒い手鞄に黒いジャケットと帽子。
―――その姿をじっと見つめ、息を吐いた。鳴り響くベルと近づく距離、オレンジの屋根の上には猫が一匹。迷い込んだ野良がにゃぁと鳴いて。ドアを開けるまでの時間を示した]



 …こんばんは
 アリーさんこそ、来てくれてありがとう。


[呪文がわりのベル。
どこか昔を思い出して眼鏡の奥で目元が緩む。
彼の到着を待っていたといわんばかりの反応の速さに我ながら恥ずかしくなるが、差し出された紙袋をきょとんとみつめ。此れはと首を傾げた。説明を受ければ成程と納得を]


 ああ、お酒を用意するのを忘れていた…
 ありがたい。


[紙袋を受け取れば、それならどちらも使おうと彼を家の中に。以前祖父母が住んでいただけあって家具は大きく古いものが多い。彼がジャケットと帽子を脱ぐのなら、掛け。そうして椅子の上に黒手鞄を。食事場所は、古い大きな机と椅子が四つ。
テレビもあるが目立つのは花を生けた花瓶や調度品だろう。
其処に本と、先ほど買ってきたベルもある

古時計は其れ等の主ともいえるような姿をして佇み]


 そうか、それは助かる。
 この時計があるとないとでは全然生活が違うんだ。


  ……本当か?

  そう言ってもらえてよかった。


[ぐぅと小さな腹の音に少し口角をあげ。
先に食事にしようか、と声をかけてから彼が用意してくれたワインを置き、台所へ。その際、其処に座ってくれと四人掛けのテーブルを指せば出来たばかりのサラダ等を並べよう

テーブルの上にはトースターを。
出来たてが一番だと考えて]




 パンは今焼いているんだ、少し待ってくれ


[前菜がわりのサラダにチーズ。
あまり作りすぎるのもどうかと悩んだが、彼の期待に応えられるだろうか。彼が座ってくれるのならその前に座り。まずは赤ワインをあけて乾杯といこうか。と二つグラスを並べ]


 ……今日はありがとう。
 アリーさんが来てくれて、本当に嬉しかった。


[そう告げて、さあ食べてくれと言う前に。
言葉を区切り、息を深く吸う。]




 本当に嬉しかったんだ、


[帽子が無い彼をじっと見つめ。
そうして、息を吐く。――嬉しかった。テーブル一つ分の距離。そこまで縮まった距離と、こうして過ごす時間]



 星に願った事が叶ったからかな


[酒に酔って任せる前に。
言いたかったことを、告げた。知りたいと近づきたいと思うからこそ、踏み込まなかった距離。手袋を見つめて。―――

眼鏡を少し正すように触れた**]


メモを貼った。


[しばらくすると、あの人の姿が見えてきた。
 なんだか、いろいろ抱え込んでいて、その姿に少しクスッとした。]

 こんばんは。
 え、あ……、はい、いただきます。

[お酒はそこまで強くない、けれど嫌いではない。
 それにちょうど、喉も乾いていたし。]

 あの……。

[いくらなのかと聞いてみたけど、差し入れだと言われたなら、すなおに「ありがとう」と受け止めよう。]


 はい、サガラさんのお誘いですから。
 おまかせします。

 ……かわいい栓抜き、ですね。

静かなところ、と言われて、心臓がどきりと跳ねた。
 栓を開ける手が、震えなければいいのだけど。]


[あまりアルコールには強くない。
 けれど今は、それが、少しだけ緊張を解いてくれている気がした。
 とはいっても、ふたりになって何を話せばいいのだろうと、チラチラ彼を横目で見るばかりで……]

 え、あ……プルプルンのこと、ですか?
 この子も、サガラさんのところで生まれた子だったんですね。

入団してから、相棒として傍に置いていた人形。
 それを、愛おしげに撫であげる。]

 すごく、きれいだなって思って。
 けど、専属の人形師はいなくて、たまに誰かが操るってだけだったんで……だから、団に入って、一人前だって認めてもらえた時、専属にしてもらえないかってお願いしたんです。

[照れ気味に。たまにビールを飲んで、緊張をほぐしながら。
 プルプルンとの出会いを思い出し、語る。]


 ……ぼくも、嬉しいです。
 たしかに扱いにくい子かもしれないけど、とても、素敵な鳥なんで。
 もっと、たくさんの人に見てもらいたいなって、思ったんです。

少しだけアルコールでふわふわしはじめた頭。
 けれど、会話の中に、ちょっとだけ違和感。
 ただそれが何だか分からないまま、遊歩道までやってきて

 はい……えーっと、いただきます。

[言われるままにベンチに掛けて、チョリソーとポテトを受け取った。
 暫し逡巡してから、ポテトをひとつ、口の中に放り込む。
 程よい塩気とハーブの風味が、ふわりと口内に広がった。]


何かの準備をしているらしい様子を、ビールを飲みながら、ただ見つめている。
 これだけで、特等席な気分だ。
 瓶の中身は、もうあとすこし。自分からしたらだいぶハイペース。]

 …………。

 ……わぁ…………。

[やがて出来上がった光景は。
 オリエンタルな香りと、やさしげな灯が広がる、幻想的なもの。]

 はい、とても…………

溜息交じりに、「きれいです」と。
 隣に、彼の気配を感じながら、揺れる炎を、うっとりと見つめる。]


 マーケットの時だけ、なんですか……。

店の前に飾れば、きっと、みんな見に来るだろうに。
 そう思ったけど。
 彼の話に、ゆっくり耳を傾ければ。
 なんだかそれが、まるで、自分に会いに来てくれてる、と言っているかのようで。
 けど、お酒のせいで自惚れが強くなっただけなんじゃないかって。
 まだ底に、少しビールが残ったままの瓶を、両手指でしきりに弄ぶ**]


そう。
……扱いにくくて、ごめんなさい。

[サガラさんの子だったんですね、を肯定して、扱いにくいに謝罪した。
 青い自分の至らなさ。恥ずかしいところだが、認めるほかない。]

だけど、動いてるのを見ただけで君がその子を気に入ってくれているのがよくわかった。
本当に、そんなはずないのに、生きてるみたいで――


この子は生まれ変わったんだなって、思いました。
そんなふうに活かしてあげられる君の手が羨ましくなるくらい。

――専属になってくれて、ありがとう。

[ああ、自分の言っていることに、憧れと思慕が混ざりすぎてはいないだろうか。
 なるべく、なるべく普通のままでいようと思うのに、ふたりきりになった時間で少しでも多くのことを伝えようとすると、感情がすべり出てしまう。
 欲しがりと抑えたがり、矛盾する心がぶつかり合って、境目をぼかしていく。]


[誤魔化すように、灯りを吊った。
 手を動かしていれば紛れるし、冷静さが戻ってくる。]

ふふ。

[並んだ灯りに感嘆の声上がれば、つい嬉しくて笑みが浮かんだ。]


うん。
正直安全の確認もしてないから、売るわけにもいかないし。
昼より、夜に見るほうが綺麗だからね。

[マーケットの夜だけを惜しまれるのに、少し笑って理由を語った。
 風に時々揺らぐ灯りは、木々の葉に隠れて空が狭い遊歩道でも、星あかりめいて煌々と光る。]

本当は、夕暮れから宵の口に変わる頃くらいが一番綺麗なんだ。
夕陽で一度火の色が溶けるみたいに見えなくなって、それからこのキャンドルの灯りだけ、夜の中に取り残されて、照らしてくれる。

[なんて夢見るように語りつつ、反対に苦笑に眉を下げ。]


だけどちょうど、君たちの公演がはじまるころなんだよね。

[マジックアワー、なんて言うと聞いたことがある。
 橙色と藍色の混ざり合う、魔法のような時間。
 魔法が解けると夜がはじまり、灯りは主張し、人形たちは命を得たように動き出す。]

…………で、一番見せたいものは、これだけじゃなくって。

[言った。もう戻らない。
 箱に触れる手に、意を決して力を込めた。
 端が少し凹む感覚。ゆっくりと、力を抜く。]


[箱の中には、吊るしてあるのと同じようなキャンドルホルダー。
 左右に星座の意匠、正面には羽根の透かし彫り。
 ほとんどがいつものような乳白色だが、羽根の箇所だけ暗い色になっている。

 キャンドルを入れて灯せば、炎が透けて羽根だけが深紅に染まった。]

――――Purpurn。
深い赤、という意味でしょう。

[この一言で、この灯りが彼のために作られたものだということ、伝わるだろうか。]


[キャンドルはちょうどベンチの正面、僕らの真ん中になるように吊り下げた。
 透ける赤を見上げる。
 こんな告白じみたこと、隣に目を合わせて言える気がしない。]

これで、差し上げますと言えたら格好いいんだけど。
さっきも言ったように、人に渡せるものじゃあないんだ。

これはマーケットの夜だけ、つけるもので。
だから、その。

[緊張と照れで顔はすっかり赤くなっている。
 酔いと透ける灯りのせいだと言い張って、あとは詰まりかける言葉だけどうにかしようと、一度深呼吸。]


次も、こうして会えないかな。

…………な、なーんて……
いや、迷惑ですかね、すみません……

[言ってから、言ってしまってから急に理性が帰ってきた。
 いや気持ち悪いし迷惑じゃないか、なんだその来週も来年も、毎年会おう、みたいなやつ。
 これがどちらか女性ならロマンチックな告白、って奴になるだろうし、灯りなんか口実にしないでも連絡先を交換していつでも会って、ってなるのに。
 自分があんまり不器用すぎて、嫌になる。
 嫌気に任せて、一息に残りのビールを飲み干した。]


…………ごめんやっぱり忘れて…………

[半分ほどを一気して、くら、と一瞬目が回る。
 それに任せて、膝に顔埋めるように突っ伏した**]


─道中─

 気紛れで餌やってたら
 気が付いたら増えてたっつーか な…

[やけに寄ってくる猫たちへ、餌を適当にバラ撒きながら歩く。
魚の入ったビニール袋は早い段階で空っぽになったというのに、猫の挨拶は続く。

話し相手になるような友達なんて特にいないし。
勝手に引っ付いて勝手に離れる猫との適当な関係が、居心地良かった。
…その結果がコレだ。]


─マーケット中心部─

 なー? 結構難しいだろ?

[同じ結果のヒイラギに、決してオレの腕が悪いわけじゃないと主張してみる。
付き合うように遊んでくれるヒイラギは優しい。

缶ビールを片手に歩きながら、ちらりと隣の様子を伺う。
…気になる相手と一緒にマーケットを回る──という夢見たいな事態に舞い上がってしまい、なんだか変にテンションが上がってしまっている自覚は、一応ある。
普段なら子供の遊びだと断じてやろうとも思わない射的や輪投げが、今は妙に楽しく感じてしまうのはそのせいだ。

呆れられていないといい──。
不安をゴクゴクと、ビールで喉の奥に流し込んだ。]

 … ン?

[名を呼ばれ、視線を再び彼の上へ。]


─舶来市─

 織物…?

[ヒイラギに案内されたのは、金持ちでないと馴染みがなさそうな布製品が並ぶ店。刺繍や織り方が凝っているそれらには、機械製ではなく職人の手作りの品だとの手書きの説明が添えられていた。

意外な趣味だな──…という感想に被さるようにして、突然語られた昔話に。]

 ……… へエ…

[なんだか神妙な心地になって耳を傾けた。
語る彼から、目が離せなかった。]


[一通り聞き終えてから店頭のショールに指を這わせる。
滑らかで肌触りが良くて…ずっと触っていたくて…

つぅーー と布の端まできて。

指が離れる。



指先に残る感触が、切ない。]



 あ、 あア、 そうなのか。
 じいさんがまだいるンなら…

[せっかく運んでくれた明るい話題だが、ああそうだった国に戻るのだ彼は…という事実を突きつけられてしまい、なんだか微妙な表情になる。]

 ……・・・


 オレは、

[気になったものを問われ、視線をゆると市場に流す。
しばらく間を置いて、]


 ……アレ、かな

[店頭に括りつけられた赤い風船を指差す。
舶来市特有のものでもなんでもない、ありふれた市販の風船だ。]



 小さい頃によ 風船をもらったンだ。親から。

 嬉しくて舞い上がったオレは風船の紐から手を離しちまって…
 空を高く、たかく飛んでいきやがるんだ。
 だからオレは慌てて追いかけてさ。

 その背後で突然悲鳴が聞こえた。
 急ブレーキを踏んだタイヤが石畳を擦る耳障りな音も。

 振り返って見りゃ────
 大惨事さ。
 余所見運転していた車に巻き込まれて
 親が血ィ流してブッ倒れてた。

[もうすっかり風化した記憶だった。
語る言葉は淡々と乾いて。]



 あとで顔も知らねェヤツに言われたよ。
 『風船のおかげであなただけ助かったのね』ッて。

 …どーーーうだかな。

[あの日に独り残され生きる方が、
シアワセだったのか。どうか。]

 気紛れな風船は空高く消えちまった。
 それっきり。そんなオハナシ。



[ヒイラギに向き直って、少し苦笑してみせた。]

 アンタの話を聞いたら思い出しちまった。
 すっかり忘れてたのによ。
 


─朝方─

[気が付けば空が白み始めていた。
流星を店仕舞いした空は、朝の装いに着替えて新しい週を始めようと伸びをしている。

名を呼ばれる。
立ち止まる。
こんなことを、今宵何度繰り返したか。]


 オレの方こそ…

 ヒイラギと一緒に回れて
 楽しかった。
 



 あーーーー そういやァ そうだな…

[言われて気づいた。
確かに、全然星を見上げなかった。
地上で輝く隣ばかりに目を奪われていたから。]

 来週…

[また一緒に会おうと。
誘われて、…彼も同じ気持ちでいてくれたのかと、嬉しくて。心の奥が震える。]

 いーぜ。
 …オレも、また行きたいって思ってた。

[定職についていない自分にとって、時間などあってないようなものだ。
相手の懸念には気づかない侭。]



 じゃア 来週の同じ時間に
 また。

[次の約束をして別れる───
そのことが今は嬉しかった。**]


メモを貼った。


メモを貼った。


メモを貼った。


─幕間・3週目の平日─

[路面電車の停留所の傍で、いつものように観光客を物色しながら。]

 なァんか 気がノらねえな……

[人差し指でとんとん、と。
ポケットに突っ込んだ指先を遊ばせる。

他人様の金を非合法にいただくことに、今まで罪悪感を抱いたことはなかった。
間抜けな方が悪い。
金は天下の回りもの。
不幸は油断してるヤツに忍び寄るもんだと。

かつては…働いてみたこともあったのだ。これでも一応。
ただいつも続かなくて…一度手をつけたスリが性にあったし実入りも良かった。生業にしたきっかけなんて些細なものだ。]


[それなのに。]

 ……………くそッ

[ヒイラギの顔が脳裏にちらつく。
真っ当に生きている青年の隣に、汚れた自分が居ることが、ひどく罪深いことのように思えて。]



 あーーーー…     あちィ。

[結局なにをするでもなく。
白壁に反射して強さを増した照りつける日差しの眩しさを理由にして、その場を退散した。**]


[ニャア、と猫の声に屋根を見上げる。
目が合えば尻尾を振る猫に、くつりと喉を震わせたのは思い出し笑い。]

 ……ほんとに、猫がおおい街だな。
 今日の道案内は君かい。

[ぽつりと呟いて。
ドアが開くのをその場で待つこと、少し。]


[思いの外早く開いたドアに、目を丸くして。
一拍遅れて気づいたらしい彼の動揺が滲んだ目の動きに、それだけ待っててくれたのだとわかれば、嬉しくならない訳がない。]

 これから頂くご馳走のお礼、ってことで。
 
[ワインの紙袋と一緒に、帽子とジャケットも預けて。
鞄を置けば、どこか懐かしさを覚える室内をぐるりと見回した。
コンパクトさを求める現代と違い、ずっしりと大きく年季が入った家具達。
今も現役で使われてることと、彼がちゃんと手入れをしているのだろう。そのどれも埃をかぶっていることはなく。
目元を緩ませながら。]

 相変わらず、なんだか落ち着く感じがするね。
 この家にくると。

[前に修理に来た時も、そんな感想を溢したかもしれない。
まるで主のように、この家を見守り続けてきただろう古時計に目を細めていたけれど。

食欲をそそる匂いに、一日を終えた腹は正直だ。]



 すまないね。
 俺の腹はご馳走を前にすると堪え性がないみたいだ。

[微かに笑われた気配に、気恥ずかしげに口元を歪めながら言い訳を。
促されるまま、台所へ向かう彼の背を追い。示された大きな椅子のひとつに腰掛けた。
並べられていく料理と、トースター。]

 ふむ。俺もトースターを新調したら、
 うまく焼けるようになるかな。

[自宅にあるのは、近所の人から今度新調するからいらなくなると聞いて譲り受けた、旧式の小さめのオーブン型に簡易タイマーがついただけのもの。
料理に凝る気もないので買い替える必要性は薄く、きっかけでもなければ壊れるまで使い続ける気がする。]


[台所でよく動き回る彼を眺めるのは、楽しい。
手伝うべきか考えたが、台所の勝手もわからない者が下手に動くと邪魔をしそうだと、今は大人しく。]

 すごいな、これ全部用意したのか……
 そういえば今日は仕事は休みなのかい。

[これだけ準備するのにどれくらい時間がかかるのか、想像して。
彩りの良いサラダと、チーズに目を輝かせた。どうやら好みを把握されているらしい。
さすが編集者というべきか、よく気が付くと感心しながら左手袋を外せばワインの入ったグラスの片方を取ろうか。

グラスを合わせて乾杯をすれば、赤ワインを一口。]

 ……改めて言われると照れるね。

[嬉しいと告げる彼へ、顔を綻ばせ。俺も、と言いかけた口は繰り返される言葉で、そのまま閉じた。
微かに流れる緊張は、彼のものか。自分のものか。]


[逸らされることはなく。
まっすぐ見つめてくる、眼鏡の奥の瞳の向く先は。]


 ……右手、気になるかい。


[先週も見られていたことは、わかっていた。
以前から、時折視線が向けられた気がしたこともあったし。やっぱり気づかれているのだろう。

お客様の時計を汚さないために、とか。ファッションとか。
稀に気づく者がいても大概はそう言って躱してきたけど。
おそらく、彼は誤魔化されてくれないんだろう。

知りたい、と。
表情より何より、声色と視線が語っていて。
覚悟を決めるよう、はぁ、と小さく息を吐き出した。]




 食事時に、気持ちのいい話じゃないと思うけど……
 いいかな?


[彼の反応を伺いながら。
グラスを置けば、久しく人前で外すことのなかった白手袋に手を掛ける。
現れた手の甲には薄ら赤味が残る、刃物の傷痕。]



 この街にくる少し前に、襲われてね。
 恨まれて……といっても、厳密には俺じゃないんだけど。
 俺の親、仕事の関係上それなりに恨みとか買ってて
 それのとばっちりみたいな。

 被害が俺だけだったらまだマシだったんだけどさ。
 その時の同僚にも嫌がらせがあったりしてね、
 迷惑をかけてしまったんだ。

[それ以来、居心地が悪くなり。これ以上迷惑をかけたくないのもあって、独立した。
それからは傷痕の理由を話さなくていいよう、手袋で覆い。それが目立たないよう服装も合わせて。]

 知ったら迷惑をかけるかもしれないしね。
 だから……取材も断ったし。
 本当は、これも黙ってるつもりだったんだけど…──
 


メモを貼った。



 でも、俺は君の迷惑になりたくない。
 それも本当だから、困ってる。

 俺の大事なものを同じように大事にしてくれるところも、
 こうして一緒に食事ができるのも、すごく嬉しくて。
 もっと……一緒に居たいと、思ってしまうから。

[ひどく卑怯で勝手な言い分だと、わかっている。
彼の顔を見れなくて、目を伏せたまま。
見苦しい右手へ、再び手袋をはめ直そうと。*]


メモを貼った。


メモを貼った。


メモを貼った。


─店の裏手─

[ペルセウス・マーケット3週目。
この日は海の寝どこ亭には顔を出さず、直接0時過ぎに店の裏手に行った。]

 … よゥ。

[顔を見つければ挨拶代わりに緩く手を挙げる。

気恥ずかしさと、気後れと。
嬉しさと、申し訳なさと。

約束通り会えたのは嬉しい。…でも。
熱に浮かされたまま勢いで手を繋げた先週とは違い。
冷却期間が置かれた分──自分と相手の立ち居地の違いを、どうしても意識してしまったから。*]


扱いにくさを謝罪されて、慌てて首を振ったり。
 それでも、専属になったことに礼を言われ、今度は照れて赤くなった頬を指先で掻いたり。

 ……道中、なんだかデートみたいだな、とか。
 胸躍る気持ちだった。]


メモを貼った。


そして、人通りの少ない遊歩道で、彼が見せてくれた、淡い光の幻想。
 もしかしたら、これは夢なんじゃないかと。
 ひそかに、太腿をつねってみた。 痛かった。]

 ……そう、なんですね。

 でも本当にきれいだ。
 夕暮れから宵の口……きっと、もっときれいなんだろうなぁ。

想像を巡らしてみたけれど、きっと、実際に見るのとでは違うのだろう。
 けれど彼の言うとおり、その時間は、公演の真っ最中だ。夢叶うのは、難しいかもしれない。
 いや今でも十分夢心地なのだから、これ以上の贅沢はいけない!]


 いえでも、こんなに素敵なものを見せてもらって……

 ……、え、これだけではない、とは?

[なんだろうと、彼の手元をそれとなしに覗き込む。
 また、新しいキャンドルホルダー。けれど吊るしてあるものとは、少し、デザインが違う。]


 ─────あ。


[羽根だ。
 ふわりと浮かび上がる、深みのある、赤い羽根。]


[猫の道案内。
アリババを誘ったのは偶々目撃した盗賊だったが。此れは物語りではなく昔と変わらぬ街並みは彼を迎え入れる為に扉を開いた。早すぎて不自然だったのではないか。ふと過るのはどれ程待ち望んでいたか、彼にばれることだが、その心配はワインに消えた。

ぐるりと辺りを見回す彼を先導して
家の中へ。彼の緩む眼元も今日はよく見えて]

  
 落ち着くか、そう言ってもらえると嬉しい。
 祖父母も喜ぶ。


[前も同じような事を言ったかもしれない。
祖父母の知り合いを家に通した事はあっても、彼のように云ってくれた人は皆無。古時計を見る目が優しい気がして、何時までもその姿を見ていたいと思ったが、まずは腹ごしらえといこうか

堪え性がないという彼にご馳走とは光栄だ。と
口許を歪めるのを横目に告げた]



 慎重というか、パンの種類によっても
 焼き加減が変わるからな。

 そのパンにあった時間を知ればいいんじゃないか。


[時計を見るように
彼の手でタイマーを合わせればいい。
そんな風に告げた。料理を凝る気もないのなら、おいしいパンを食べたいのなら此処にくればいいとは流石に思っても今はまだ口にはできないが。大人しい彼にと振舞う料理は腕によりをかけたもの。

味の保証とまではいかないが、彼に喜んでもらえたらと
休みかどうかの問には、ああと頷いた。

――まさか、彼に会えるからという思いから有休を消費した。など口が裂けてもいえない秘密だ。グラスに合わせ、乾杯を告げれば、唇に含む一杯。それはまだ酔いには遠く。


酔う前にと心内を明かせば]




 照れてくれていい。
 


[簡潔な言葉は彼が照れてくれるのなら嬉しさが増すのだと
隠さずに告げて]


 ……ああ、気になる。
 だが


[言いたくないのなら、言わなくても。
と続けられなかったのは―――嘘でもそれを言えなかったからだ。彼の秘密は手袋の中だけじゃない。何となくつかめない相手だと思っていた。だって、好きな人だ。だからこそ気になる。

其れが分かっているからこそ。

小さな息に眼鏡の奥で一瞬怯む]





  構わない。私が言い出した事だ。


[グラスを置く、彼をじっと見つめる。
真面目な顔をして、白手袋に手を掛けるのを眼鏡の奥でとらえた。薄っすら赤味が残る傷痕が、見えた瞬間、声を呑む。

外されなかった其処。
彼の秘密を見て、目は瞬いた。
感情のみえない顔が、眉を下げて]



 ………、親の。


[何故、彼がそんな眼にあわなければいけないのか。
親の仕事の関係など彼には関係ないことだろう。彼の手が時計を修理する手であることを自分はしっている。暖かな手だ。自分を心配してくれて、星の降る夜見つけてくれた。


そんな彼を苛む孤独、自分の両親の顔が浮かび]


 …………、ああ。


[彼の全てが、きっと。
そのときの出来事からできている。まるで浮世離れしたような、物語の登場人物のような。だが、実際の彼は、どうだ。

仲よくなりたい。と言ってくれた彼。
その言葉ひとつひとつを逃さぬように。真剣な顔で、まっすぐに見つめ、聞いていた。目を伏せた彼とは対照的だっただろう。二人を見ているのは、古い時計だけ]


 そう……。
 プルプルン……って。
 こいつの名前、どうしようかなって考えてた時、見つけた言葉で。
 情熱的で快活な、深紅をあらわしてるはずなのに、響きはかわいくて……それで。

[蝋燭の炎が揺らめけば、深紅の羽根も淡く揺らめく。
 その揺らめきが伝染するかのように、胸の中も音をたてる。

 嗚呼、やっぱり僕は、この人のことが、好きだ。]


[だから、手袋をはめ直そうとするその手を
自分は咄嗟に掴んでいた]


 ……あ、すまない。


[痛くないかと慌てた声が出たのは咄嗟の掴みが強くなったから、隠さなくていい。そう告げるための手は掴みから離れ、彼の手の甲を躊躇うように撫でた。身を乗り出したままであること。

そのことに気付けば息一度吸って]


 ……すまない、アリーさん。
 色々言わなきゃいけないことがあるんだが。
 私は貴方の手が…すきなんだ。


  その、一緒に居たいと思ってくれたこと。
  そのことがとてもうれしくて


[話がまとまらない。
このまま、話を続けていればシチューがさめるかもしれない。パンの焼ける音がする。取り出さなければいけないと分かっていても。
この手は彼を撫でて、こっちを向いてほしいと告げた。


目を逸らしていたのは自分の方じゃないか]


是非、譲ってほしいって言いたかったけど。
 安全が確約できないものを、無理強いするわけにはいかない。
 けれど、まだもっと、見ていたい。]

 あの………

[だったら、また、見る機会を……。
 言いかけて、言葉に詰まる。
 そんな図々しいことを、言っていいのかと。

 けど……]


[彼が迷惑をかけると言っても、
今のところそんな迷惑をかけられたことはない。被害をかけられても、構わない。それらは彼と一緒にいられるのなら。

障害ですらないだろう。だって]


 だから、いいんじゃないか。


     ―― 一緒にいれば。


[言ってから、頬が熱くなって。
彼の手を撫でていた手を離し、自らの顔を片手で覆い。少し、恥ずかしい事を言った。と呟く声は、赤く。

気づかれないようにずれかけた眼鏡を直そうとして**]


メモを貼った。


 ………………え?


空耳で、なければ、
 また、会えないかと、言われたような。]

 あの。
 サガラ、さん……?

突然のことに困惑していると、彼はビールを呷り、突っ伏してしまった。]

 えーっと、あの……。

[沈む肩に指を伸ばし、躊躇い、何度か繰り返してから……軽く触れる。]

 あの、サガラさん、その……、
 いまの、はなし、なんです、けど……

[ごくりと、生唾を呑む音が、頭の中に響いた。]


 その、もういっかい……聞かせてもらうこと、でき、ませんか……?

 忘れないよう、ちゃんと、聞きたい、んで。

[心臓が早い。
 息が詰まる。
 それでもなんとか、いま紡げるだけの言葉を、絞り出した。*]


[ああ、言ってしまった。言ってしまった。
 割と後には戻れないタイプの告白だ。
 いいや胸のうち全部さらけ出すような恋慕の告白ではないけれど、関係が壊れるこちらを見る目が変わる軽蔑されるには充分だと思う。
 膝に顔うずめているうち、自己嫌悪だけがぐるぐる頭を回っていた。
 いっそ逃げ出したい。
 公共の場をこんなふうにして許される行為ではないと思っているけど]

…………はぁい。

[螺旋を描いてぐるぐる沈んでいく思考を、遠慮がちな呼び声が引き留めた。
 情けなく間延びした声で返事だけをする。顔を上げる勇気はまだない。]


[今の話なんですけど。
 さあ何だ。どんな断り文句が来る。拒絶も軽蔑も覚悟出来てる。
 あ、いや嘘、覚悟はできていない。何が来てもおかしくないだろうとは思っているけど、実際されたら3日寝込むし来週のマーケットは欠席すると思う。

 などと考えているところに、やってきたのはこちらの要望と真逆の言葉。]

え。

わ、忘れてくださいって、言ったんです、けど

[思わず少し顔上げて確認してしまった。
 忘れてくださいと言ったことを忘れないようにもう一度言えだなんて、いわゆる言質を取るということだろう。
 そんなに気分を害したろうか。

 上げた顔はアルコールと緊張と照れと後悔の羞恥とに真っ赤に染まって、今にも泣き出しそうなぐちゃぐちゃの表情になっていた。]


……言わなきゃ、だめです?

[申し訳無さでへりくだり過ぎて、口調がまた顧客相手のものになったことは気づけないまま、再度確認を取る。
 告白のリテイクとは、厳しい罰ゲームだ。]

――――その。
この光を君に見せるために、次もまた、こうし、て……

[あ、やっぱ無理。無理ですよこんなの。
 ぐずぐずに途切れていくリテイクセリフは、会いたい、のところまで辿り着かずに力尽きた。
 もう一度頭を膝にオンして、ふるふると横に振った*]


― 舶来市 ―

あれ、って?

[気になったものを問うと、彼は市場を見回して、何かを指さした。
一瞬何が指さされたのか分からなかった。
彼の指さす先には屋台の店頭に飾られた風船しかないように見えたからだ。

しかし、彼は本当にその風船を指さしていたのだ、と気づいたのは、彼が話を始めてからだ。
淡々と話し続ける彼に、かける言葉が出ない。

あんたの話を聞いたら思い出しちまった、という言葉が、ぐさりと自分の胸に刺さった。
苦笑いを浮かべる彼の顔がまともに見れない。]

ごめんなさい。
余計なことを、言いました。

[暫くの後、俯いて小さく謝った。]


― 朝方 ―

[来週、また市へと行こうという誘いは、肯定で迎えられた。
嫌なことも思い出させたのに、また行きたい、と言ってくれた彼の言葉にほっとして、帰路につく彼を笑顔で見送る。

酷いことを、思い出させてしまった。
その後、彼はどうしたのだろう。
彼も、祖父や祖母に育てられたのだろうか。

名前に、過去の事。
彼を形作る、いろんなものが見え始めている。
少しずつ、自分に見せてくれている。

酷いことをしたと思いながら、一方でもっと知りたいと思ってしまう自分は、冷酷なのだろうか。
答えは出ずに、家路についた。]


― ペルセウス・マーケット3週目 海の寝どこ亭 ―

こんにちはー

[今日は夜からのシフトだ。
店に居る、他のバイトに声をかけてからロッカールームに向かおうとしたところで「それ、どうしたんですか」と声を掛けられた。]

これ?
マーケットの出店で貰った。

[リュックのファスナーには、リュックと比較すると結構大きさの目立つ、片手サイズのクマのぬいぐるみがストラップで取り付けられていた。
「正直全然そういうの興味ないと思ってました」と続けられると、]

なんかさ、最初はそうでもなかったんだけど、家で見てたら可愛いなって思って。
持ち歩きたいなって思ったから着けてみた。
なんか、にやにやしちゃんだよなー

[と答えながら、リュックを肩から降ろす。
ファスナーに付けられたままのクマのぬいぐるみを片手に持って、その少し間の抜けた顔に微笑んだ。]


肩に軽く触れてみたが、顔はあげてもらえなかった。
 それでも、もう一度、あの言葉を聞きたくて。
 じっと、暫し様子をうかがった。]

 ……はい……
 けど……

忘れたくないんです。
 そう、すぐに言えればよかったのに。
 わずかに擡げられた彼の顔を見たら、また息が詰まってしまった。]


― 店の裏手 ―

こんばんは。

[0時過ぎ。
バイト終わりに店の裏手で、リュックを背負い、店の白い壁に寄りかかりながら彼を待つ。
少しの後、小さな街灯の明かりの向こうから、彼が手を挙げて現れた。

笑顔を向けながら小さく頭を下げて挨拶すると、彼の方へと歩を進める。]


今日は店の方へは見えなかったですよね。
忙しかったですか?

[と話しながら、ふと気が付いた。
彼が、どことなく他人行儀なのだ。
まるで先週の夜、マーケットの出店で遊んだ時の近しさが消え去ってしまったかのようだ。

やはり、自分が別れ際に辛いことを思い出させてしまったことに関係があるのだろうか。
でも、それでも彼はここに来てくれている。
自分の事が嫌だ、というわけではないと、信じたい。

しかしそれなら一体何が、彼の態度をそうさせているのだろう。
彼の前まで来て、立ち止まると、困ったように微笑んで言った。]


シーシャさん。
来てくれて嬉しいです。

行きましょう。
今日はきっと星が良く見えますよ。

[手を伸ばすと、彼の手を、軽く取った。
握り返してくれるだろうか、と一抹の不安に襲われながら。]**


メモを貼った。


 ……で、す……
 オねがい、し、ます……

掠れる声で願う。
 今度こそ、一字一句聞き逃すまいと。]

 …………。

 あの、サガラ、さん……?

[また、突っ伏されてしまった。
 けれど間違いなく、意味は分かった。
 聞き間違いなんかじゃなかった。

 アルコールの比ではないくらい、顔が赤くなって、頭がくらくらしてきた。]


 サガラさん、あ、の……ッ。

[また、生唾を呑む。
 幾度か大きく深呼吸して、それから、揺れるキャンドルホルダーを見つめた。

 真っ赤な羽根が、ゆらゆらと揺らめいている。

 ─────相棒から、勇気を分けてもらえたような、気がした。]


 あの……ぼくも、見たい……です。

 また、次、も……

 …………や、それ、より…………。


[息をひとつ、大きく吸った。]


 サガラさんに、会いたいん、です!


[その息を、全部吐き出すようにして。
 どうにか声に……言葉にできた。

 吐き出し過ぎて、緊張と酸欠で、倒れそうだ**]


メモを貼った。


─2週目・舶来市─

 なんで。

 謝る必要なンてないだろ。

[浮かんだ苦笑に自嘲が滲む。
自分が勝手に思い出したのだ。

同じ親が居ない境遇でも随分違う生き方してきたな、って…
それだけ。]

 アンタの家族の話とかさ
 聞けたの楽しかったぜ。

[そう言って、この話題はオシマイにした。

言葉少なに終わりかけのマーケットを歩く。
沈黙が、やがて朝を連れて来た。*]


─3週目・店の裏手─

 あッ そのぬいぐるみ…

[相手のリュックのファスナーにぶら下がっている見覚えのあるクマが、まず目に飛び込んできた。

渡した時は仕方ないなって素振りで受け取っていたので、まさか身につけているとは思わず。
驚きが口をつく。]

 あーーー 別に無理して使わなくてもよ…

[間抜けでのんきな顔のクマのぬいぐるみは、どう考えてもリュックとの比率がおかしい。]


[でも、
出店の景品とはいえ自分がプレゼントしたものを、ヒイラギが使ってくれているのは嬉しかった。
その気持ちを素直に伝えるのは気恥ずかしくて出来ないから、]

 …まァ、その

 似合ってるンじゃねェの。割と。

[くしゃりと髪をかきあげながら、笑顔と困惑の中間顔で感想を述べた。]



 いや…忙しいッつーか、  うン…

[なんとも歯切れの悪い返事だ。
自覚はあるが、理由を全部さらけ出す訳にもいかない。

今日は向こうから差し出された手を]

 ………

[少し躊躇ってから、
握り返す。]



 あァ。今日は星を見に行くンだったな。

[空を見上げるのに座席は要らない。街の何処でも流星を探すことは出来る。
ただ騒がしい場所よりも静かな方が…ゆっくり星を探すのに向いているように思えたから。]

 ンーーーー…

 マーケットじゃねェけどよ、
 星が見える いー場所があるンだ。

[行こうぜ、と誘った。


並んで歩けば、道中はやっぱり猫の挨拶に見舞われた。
今日は魚入りビニール袋を持っていなかったというのに。
餌がなくフギャーと不満そうに鳴かれたので、明日な、と流しておいた。]


[しばらく石畳の路地を進んで。
一見、袋小路めいた場所の──奥を目指す。]

 まーァ、 見てなって。

[積んであった木箱をひょいと身軽に登る。
次いでヒイラギを手招きし、登るのが大変そうであれば手を貸した。]

 そんでこの壁のくぼみに足の爪先を引っ掛けて
 身体を持ち上げて あっちの突起を掴んで…


 そう、そっち。
 ほォら頑張れ。あとちょっと。


[それは猫と付き合う内に憶えたルート。夜空近くへと続く道。]


[登って、登って。


ヒトの背丈も、路地を覆っていた家の壁の高さも越えて。

暗い空に瞬く星々が。
広く、視界いっぱいに溢れる瞬間。]



 ヒイラギ、



          …──── 着いたぜ。


[オレンジ色の屋根の上。

普段は見上げるだけの筈の、その場所は。
何も遮るもののない…流星群の特等席。]

 ここに寝転がってさ。
 空を見るの、好きなンだ。

[そう言って。言葉の通りゴロンと仰向けに寝転がった。**]


メモを貼った。


メモを貼った。


― 店の裏手 ―

[差し出した手は、少しの沈黙の後、軽く握り返された。
ほっとした。
今週もまた、彼と一緒に楽しい時間を過ごすことが出来るのだ。

思わず彼に笑いかけた時、彼が自分のリュックに付けられたクマのぬいぐるみに気が付いた。
あー、と声を上げつつ、似合ってるんじゃねえの、と言ってくれた彼に、微笑んだ。]

ええ、僕もそう思います。


えっと、じゃあどこに行きましょうか。
港のベンチかなあ…

[星を見に行く、と言って思いつくところを取りあえず挙げてみる。
ただ、自分が思いつくだけあって、0時を回った今でもそれなりに他の地元民もいるだろう。
空いてるかな…と呟きながら、ほかの候補を考えようとした時、彼がいい場所がある、と声を上げた。

あ、本当ですか。
行ってみましょう。

[素直に頷くと、彼と一緒に歩き出す。
やはり、先週と同じように猫たちが彼を見るとふらりと近くに寄ってくる。
明日な、と声を掛ける彼を見て、何となく猫に優越感を抱いてしまう。

明日の彼はお前たちのものかもしれないけど、今日の彼は、自分のものだ。
繋がれた手を、少しだけ強く握った。]


え。
ここですか。

[で、歩いて行った先は完全に袋小路だった。
ここからどうするのだろう、と隣の彼を見ると、彼はひょいっとつきあたりに積んである木の箱に足をかけて登っていく。

それでこの壁のくぼみに…と言いながら、ひょいひょい彼は壁や塀を伝うように登っていく。]

あ、ちょっと待って。

[慌てて声を上げると、多少息を荒げながらも、彼の進む後をついていく。
一応彼の行く道は、絶妙に人の通れるルートだ。
だけどこんな通り道、普通の人間は思いつかない。

もうどんなところにたどり着くのかもわからず、ただ彼に離されないように、ひたすら彼の行く後を追っていく。
頑張れ、という上から聞こえる彼の声を聞きながら、最後の壁…いや、屋根に手を掛け、自分の身体を持ち上げた。]



わあ…

[着いたぜ、という彼の声を聞き、空を見上げた。
感嘆の声しか出なかった。
目の前に遮るものが何もない。
余計な街灯りは足元の更に下だ。

白く光る夜空の星ぼしが、視界一杯に広がる。
この街の星は、こんなに綺麗だったのか。]

すごい…

[星から目を離せずにいると、屋根の上に気持ちよさそうに寝ころがる彼の気配がして、下へと目を向ける。
そして、自分も彼の隣へと寝転んだ。]


わかります。
凄く空がきれいに見える。

[彼の言葉に応えながら、空を見渡す。
きっと、ここからなら、心地よく晴れた日に、海風に吹かれながら見る青空も最高だろう。
しかし…である。
寝転がったままシーシャの方へ身を横にして、苦笑しながら言った。]

それにしても、すごい場所を知ってますね。
シーシャさん、猫に好かれているというか…まるで猫みたいだ。

[暗がりの中、段々目が慣れてきたとはいえ、彼の細かい表情まではよく見えない。
けれども、その体つき、細い腕や腰、足元は何となく形を把握できる。
こんなに細く見えるのに、その身体はばねが入ったようにしなやかだった。
きっと、必要な筋肉が綺麗に身体についているのだろう。]




[余計なことを想像した。
思わず無言で身体の向きを仰向けに戻す。

再び、視界には星しか映らない。
でも、自分で勝手に興奮した心臓の鼓動は、元々上がっていた心拍数と一緒になって、自分の身体をのぼせさせるように駆け巡る。
落ち着かせるように、深く息を吐くと、隣の彼へ、呟いた。]

シーシャさん。
星、綺麗ですね。**


メモを貼った。


[今度の呼びかけには、返事も出来ずにまた頭を振るだけだった。
 もう一度名前を呼ばれる。今度は、彼の方から何か言おうとしているようだった。
 もうやり直しは勘弁してください、と思いながら、顔も見れずに次の言葉を待つ。]

…………ふへ、

[そうして待った言葉が想定と違いすぎて、唇から間抜けな音が漏れた。
 のろのろと顔を上げて、どれくらいぶりかに彼の顔を見る。
 赤い光のせいだけではなさそうな、顔の色をしていた。]


[血が集まりすぎて熱い顔が、同じく赤い顔をぽかんと見つめて、見つめて、数秒。]

……あ、あの。ええと。
僕が言えたものか、って思うんですけど、その。

どうして……?
って、僕がそう言ったからか……

[劇団員がこんなプライベートな誘いに乗って、自分に会いたがる理由は、よくわからない。
 こちらから会いたいと言ったから、それを肯定してくれたんだと、受け入れてくれたんだとしか思えなかった。]


[けれど、慰めにしては大きな声だったように思う。
 遊歩道が静かすぎるだけだろうか。

 ゆらゆら揺れる灯火が、ひとつ燃え尽きて、ふっと消えた。
 いつでも継ぎ足せるようにキャンドルは多めに持ってきたけれど、そこに頭が回らなくなるくらい、彼のことだけを見つめて]

…………会って、くれる?

[念押しのように、もう一度だけ聞いた*]


メモを貼った。


メモを貼った。


─屋根の上─

[息を呑んで驚く相手の様子に、ふふんと得意気に鼻を鳴らした。
普通に暮らしているニンゲンが屋根に登るなんて稀だろう。

その顔が見れただけでも連れてきて良かった──と思う。]

 だろ?
 見飽きないッつーか さ。

[満天の星夜に包まれる。
街の喧騒は遠く、微かで。
隣の息遣いだけが傍に在る。]

 それに展望台やら何やらと違って
 場所代0でタダってのもいい。

[定期的な収入が確約されていないスリ稼業なので、無駄金は使わない主義だ。]


[地上より涼やかな風が、頬を撫でて過ぎてゆく。
身じろぎする衣擦れ音に応じるように、同じく寝転がったままヒイラギの方へ顔を向けた。]

 クハッ、 そりゃいーや
 ヒトといるよか猫といる方が多いかもしれねェし。

[猫の首魁の正体は猫人間でした──なんて。
そんな冗談もアリかもしれない。

暗がりにほんのり浮かぶ彼の横顔を。
嗚呼やっぱ綺麗だな、って…
ぼんやり眺めていたら仰向けの格好に戻られてしまった。]

 ン。


 あァ、綺麗…… だな。

[星も。…彼も。]


[自分も仰向けに戻って、再び夜空を見上げる。
マーケット初日よりも流星は増えたが、いざ探すと案外降ってこないものだ。物欲センサーというやつかもしれない。

でも構わなかった。
流れる星を待つ時間の分、二人きりでいられるから。]

 こんな風にペルセウス・マーケットを過ごしたの
 初めてかもしンねェ。

[ぽつり呟いて。]


[二人きりの天体観測の時間は。
…鼓動が次第に制御を失って、時間とともに早くなる。

嗚呼。

星は、星は、星は…────]


[あっ、と呟いたのはどちらだったか。
一筋の白い線を天上に描いて、星の光が流れ落ちる。]

 ……

 流れ星 見えたな。

[待っていたものが得られた時の、ふっと肩の力が抜けた心地で、表情を弛緩させる。
詰めていた息を吐いて、ゆっくりと。横たわったまま身体を隣に向けた。
彼の顔が、すぐ近く。]

 なァ なンかお願いでもした?

[そのくせ視線を合わせづらくて。
一瞬ちらとヒイラギの顔を伺ったあと、眼差しを絡ませ続ける代わりに彼の柔らかそうな薄い唇を眺めながら訊いた。**]


メモを貼った。


メモを貼った。


蝋燭のせいでは誤魔化せないほどに、顔が紅潮してしまっている。
 けれど、サガラさんの顔も赤いような……気の所為、ではないと思う。
 困った、視線が外せない。
 鼓動が早くて、息が苦しい。]

 えっと、あの……。

 どうしてか、って……いうと。

 ずっと、まえから、なんですけど。
 ぼく、郵便、配達、の、バイト、してて。
 それで、サガラ、さん、の、店、にも……配達……

 はい、たつ……、ッ……!

ここまで言って、深呼吸。
 むしろ過呼吸。]


 ……ッは、ァ

 はぁ、ッつ、は……!
  …………は、ァ…………

 あー…… ハー……

[落ち着くまで、結構かかった。
 今度こそ、きちんと深呼吸。]

 …………配達、行ったとき。

 たぶんその時、初めて、サガラさん、見て。
 ……素敵な人だな、って……思ったん、です。

 その、素敵な人が……素敵な木彫品とか、人形とかを、作っていて……あの、それで……

[きちんと話せているだろうか。
 声が、細くなってしまっている自覚はあるが、これが精一杯。]


 だから、その…………

キャンドルが揺らめいて。
 ほんの少し、明るくなったと思ったら、今度はふっと暗くなった。
 静かな夜、彼の声だけが、鮮明に耳に届く。]

 …………、

[会ってくれるかと、聞かれた。
 息が詰まって声が出なかったので、ぶんぶんと首を縦に何度も振った。]


 …………!

[そしたら。
 まだ残っていたアルコールと、緊張やら呼吸困難やら色んなものが相まって。
 かなりひどい目眩がした。

 ふわっと、頭が真っ白になる感覚とともに。
 前のめりに、身体が揺らぐ。*]


メモを貼った。


え……?

[受けいれてもらえる理由がわからなくて聞いたはいいが、自分の中で納得づけたお情けとは違うものが語られ出す
 しかも、この場の申し出を受けてくれる理由、にしては随分と過去から語られていた。
 うん、郵便配達のバイトをしてる、知ってる。
 絵の具やナイフやヤスリやら、細々としたものがよく届く工房だ。
 彼を意識するようになってからは小さな配達すら気にしてしまうようになったものだ。]


[目を伏せる直前に見えたのは、眉の下がった彼の表情。
戸惑うような相槌には、苦笑を少し。
どちらにせよ、そんな顔をさせてしまうんだと。申し訳ないと思っても、彼が知りたがってくれるならもう隠したくはなかったから。

会話が途切れれば、その分室内には古時計の秒針の音だけが響く。
覆い隠すことに慣れた右手を、いつまでも晒しているのはなんとなく落ち着かなくて。
再び手袋に指先を通しかけたところで、右手を掴まれ。
ビクッと肩が揺れた。]

 ……セイルズさん?

[どういうつもりだろうと。
掴むその手を見つめたまま問えば、慌てた声。

 いや大丈夫、もう傷は塞がってるし
 これくらいじゃ痛まないよ。

[言外に話すよう促したつもりだけど、逆に掴まれる力が力が強くなって。
手袋をはめるのを諦め、テーブルに置いた。]


って、ちょっと……!!

[途切れがちな語り口が、昔語りの気恥ずかしさや記憶を辿る曖昧さからくるものかと思っていたら、急に引き攣るように息をしはじめて、ぎょっとした。
 隣にいる背中を抱きしめるようにこちらに寄せて、慌てて何度も背を擦った。
 過呼吸? ってやつか? たしか袋かなんかで自分の吐いた息を吸うようにするといいとか聞いたことがあるような――
 目についたのは、チョリソー&ポテト炒めのパックが入っていたビニール袋。]


[甲を撫でられる感触に、くすぐったそうに首を竦めながら。
同情でも、哀れみでもなく。彼らしい飾らない簡潔な感想に、俯いたまま目を丸くして。
頬が火照るのを感じながら、ふ、と小さく息を吹き出した。]


 ……これ以上照れさせて、どうするんだい。


[こんな時こそ、帽子があれば顔を隠せるのに。

別の意味で顔が上げられなくなって、小さく首を振るけれど。促すようにまた甲を撫でられて息をつき、ゆっくりと顔を上げた。
眼鏡の奥、まっすぐこちらを見るその視線の強さに、胸がざわめき。

頑なな表情の分だけ真剣さが増す顔に、目を細める。]




 いいんじゃないか、って。
 そんな簡単に言ってしまって、いいのかい。


[問い返す言葉とは裏腹に。
掴まれた掌を返して、撫でる彼の手をゆるく握り返したなら。頬を染めた彼に、するりと逃げられてしまった。
でもそれは、嫌がられての行動じゃないことは、今更のように恥ずかしさを零す声でわかり。
くつくつと喉を震わせながら。

 でもそう言ってくれるのなら、
 遠慮なく一緒に居させてもらおうかな。

 ところで──……

[誤魔化すように眼鏡の位置を直す仕草に、手を伸ばしたくなるけれど。
それより早急に気になることが、ひとつ。]


……落ち、つい、た?

[荒い息を繰り返すのが、少しずつ穏やかさを取り戻していく。
 それまでの間、ずっと掌を背に当て、ゆっくりと上下させていた。
 呼吸が落ち着くのに合わせて、こちらの思考も落ち着いていく。
 緊急事態だったとはいえ、抱きしめて、触れて。
 密な接触に、どく、どく、と心臓が血を送る音が聞こえる。]

うん。
うん。

[理由を改めて話すのを、何度もうなずきを交えて聞いていた。
 思うことは多々あれど、話し終わるまで待つつもりで。]


― 屋根の上 ―

[空を見上げながら、彼が隣に居る事実を静かに噛み締める。
こんな風に、ペルセウス・マーケットを過ごしたのは初めて、という彼の言葉に小さく頷いた。]

僕もです。
というか、こんな風に過ごしたことがあってたまるかっていう話ですよね。
こんなところで、こんなふうに見る星空が、こんなに綺麗なんて、シーシャさんと一緒じゃなきゃ一生知らなかった。

[身体が、指先が熱い。
あっ、という声で我に返ったのはその時だった。

流れ星、見えたな、という彼の呟きが、他に人の気配のない静かな空間で、耳に吐息がかかりそうなほどすぐ近くで聞こえる。]

…すいません。
見逃したかも。

[なんかお願いでもした?という声に、素直に謝る。
まさか地上のすぐ隣に気を取られて、空を見ながらも上の空だったとはいえない。]


次。
次は絶対見逃さずに、お願いします。
それで、シーシャさんもお願いしてください。
一緒に発表しましょうよ。

でも、もう、お願いしちゃいましたか?
そうなら、同じことで良いから、もっと強く、祈ってください。

[顔をシーシャの方へと向けると、視線が合っているような合っていないような彼の顔を見ながら提案する。

そして、顔をまた夜空に向けると、今度は本気で流れ星を見逃すまいと、空を見つめた。
何を願おう。
何が自分の願いなんだろう。

星は中々落ちないが、考えも中々まとまらない。
そして、暫くのあと、空を横切るように、長く白い線が走った。
とても長い、流れ星だった。]


…シーシャさん。
お願い、できましたか。

[星が消え去った後、静かに声を掛ける。]

僕は、できました。
ずっと迷ってたんですけど、星が堕ちかけたのを見たら、咄嗟に祈っちゃいました。

[彼の方へと顔を向けて笑ってその願いを伝えた。]


[細くなる声が途切れて、先に紡げなさそうに止まったのを見て、最終確認をした。
 ぶんぶんと勢いのいい首肯が返り]

あ、ああ、頭振るから……

大丈夫?
じゃ、ない、よね。

[酩酊からの目眩はとても覚えがあるものだ。
 声が細って出しにくそうだったから、それ以上の返事は求めない。
 前にのめる身体を支え起こして、自分の肩に凭れさせるように抱き寄せた。
 一度超えた線は、再び超えるのも容易い。]


メモを貼った。


えっと……その。
いろいろ、ありがと、う?

[ありがとうと受け止めるのが正しいのかどうかわからず、疑問符がついた。 
 素敵な人だとか、素敵な作品だとか。
 作品はともかく面映ゆくなるような言葉を多くもらって、くすぐったい。]

……あの、さ。



 さっきから漂う香ばしい匂いが
 俺は、とても気になってるんだけどね。

 パンの焼け具合は、大丈夫かい?

[トースターをちらりと見て。
中断してしまった食事を再開しようと、促そうか。
そろそろ腹の虫がまた騒ぎ出しそうなことであるし。

彼がパンとシチューを用意してくれている間、互いのグラスへ追加のワインを注ぎ。]

 そういえば、手がすきだって初めて聞いたね。
 こんな手でよければ、いくらでもどうぞ。

[嬉しげに笑う間も、白手袋は脇に置いたまま。
湯気の立つシチューに舌鼓を打ちながら、顔を緩ませた。*]


別に僕は、その。
素敵、なんて言ってもらえるような人では、なくって。

仕事に夢中になって寝るの忘れたりするし、
アイスコーヒー用意したのに飲まずに机濡らすし、
かと思えばそのグラス落として割って大惨事にするし、

[自分以上に緊張している人がいると、逆に落ち着くのだから人間というのは不思議だ。
 つらつら出てくるのは、自分を下げる言葉だからかもしれない。]


メモを貼った。


挙句の果てにこの間は酔っ払いすぎてマーケットで迷って、君の公演に間に合わなかったりするようなやつなんだけど――

[言ってて本当に情けなくなってきた。
 自慢じゃあないが粗忽者だし、生活力というものは欠けている。
 気の良いオリュースの住人たちの協力あって、なんとかやって行けているようなもの。]

そんな僕ですけど、幻滅したり、しません?

[若者の憧れなら、今潰えてくれればまだ傷が浅い*]


メモを貼った。


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