270 「 」に至る病
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[ 暗 転 ]
(233) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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―― 夢 ――
[あたしは、遠い昔の夢を見ていたわ。
あのときのあたしは、まだ小さな6歳の子供で 朝食をパパといっしょに食べていたの。 大好きなパパの苺ジャムをたっぷりトーストに塗って ぱくりと齧りつく。
楽しい話を、たくさんたくさんして パパと顔を見合わせて何度も笑いあった。 昨日は学校でこんなことがあったんだって、 他愛もない話に花を咲かせる。
朝食を終えれば、大きなパパを見上げて シャツの袖をくいくいっと引いた]
(234) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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おでかけしよう、パパ。 ね、お願い。 今日はお仕事お休みだったよね。
[大好きなパパとおでかけがしたくって、 一生懸命におねだりをした。 こういうとき、やさしいパパは いつもあたしのおねだりを聞いてくれるんだ]
(235) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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あのね、今日はお買い物に行きたい。
[あの頃のあたしは、小さなスーパーですら パパと歩けば宝の山に思えた。 ちょっと前まで食べるものにも困っていたから、 詰まれたトマトの山を見るだけでもはしゃいだわ]
お砂糖とー、苺とー。
[買い物かごに食材を入れて、とてとてと歩く。 あたしがひとりでかごを持つの、と言い張ったら パパはとても困った顔をしていたっけ。 お手伝いがしたかったのよね。あの時のあたしは]
(236) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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[買い物を終えて帰るときには、 あたしはすっかりくたくたになって 歩けなくなってた。
そんなあたしを見かねて、 パパはいつも抱っこをしてくれたよね]
パパ。
[あたしはパパの愛情をたっぷり感じながら ぎゅうっと抱きついて、 穏やかな笑みを浮かべるんだ]
(237) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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大好きだよ。パパ。
[幸せな1日だった。 とても、とても幸せで――……]
(238) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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―― 覚醒 ――
[そうして、あたしは我に返った。 気付けばあたしは家にいて、もう日が暮れている]
……ごめ、んなさい。パパ。あたし。
[何が起こったのか、瞬時に分かってしまった。
近くにいたパパに駆け寄って 泣きながら思い切り抱きついてしまう]
(239) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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せっかく、パパの誕生日だったのに。 最高の1日にしなきゃいけなかったのに。 ごめんね。あたし、駄目な娘で。ごめんね。
[正気を、保てなくなっている自分が 憎くて堪らなかった。どうして、こんな大切な日に]
たくさんたくさんお祝いしたかったのに もう夜になっちゃった……。
[悲しくて悲しくて、涙がぽろぽろ零れた]
(240) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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夢を、見てたの。 6歳の頃のあたしに戻って、 たくさんたくさんパパに甘える夢。
[涙をこすりながら、先程まで見ていた夢の話をする]
(241) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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[ふと、家の壁に貼られた 黄ばんだ古めかしい画用紙が目に入った。
ヘタクソな「パパの顔」がクレヨンで描かれている。 いつかの誕生日に、あたしがあげたプレゼント。 遠く過ぎ去ってしまった、幸せの残滓。
あたしは、お決まりの文句を囁くの]
(242) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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"I'm so happy being your daughter."
(243) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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パパの娘でいられて、あたしとても幸せよ。
だから、あたしがどこにもいかないように、 繋ぎとめて。お願い。
[最近は、そう言って 情事をせがむことが多くなっていた。
パパとまぐわっているときは、 正気を保っていられたから。
家族として“愛し合っている”って 感じることができたから]
(244) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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[本当はね。
パパとえっちをして、血を与えれば与えるほど 依存症が進んで、あたしという存在が すりつぶされていくって、分かっていたんだ。
パパといっしょにいない方が、 あたしの寿命が伸びるってことも。
でもね、あたしという存在はパパの幸せのためにあって。 パパの家族じゃないあたしは、あたしじゃないから。
いつか終わるこの幸せな日々を。1分1秒を。 大切に大切にして、あたしは生きていく]
(245) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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[ねえ、パパ。
あたしがあたしでいられるうちに たくさんたくさん、家族として愛し合おうね。
あたしはとても幸せな、あなたの娘。 伴侶にして家族]
(246) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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[死があたしたちを別つまで、 ずっとこうしてふたりで暮らしていこうね。 愛しあって、仲良く、しあわせに。
――――約束だよ]**
(247) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時半頃
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[墓地から帰ればそこには、二人きりの家があった。>>227
よく、ソラの散歩のために朝のベッドから抜け出す僕を引き止めて、駄々を捏ねたりもしたくせに。 なんでか蒼佑はあまり嬉しそうではなくて。
リビングの隅にぽつんと残された、クッション。 もう少しだけこのまま、と片付けるのを止めた僕と同じ気持ちがそこにあることを願ってしまう。]
(248) SUZU 2019/10/20(Sun) 00時半頃
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……蒼佑、おぼえてるか。 モモがはじめてこのうちに来た時、 はしゃいで玄関にあったガラスの置物割ったの。
コンは、なかなか蒼佑に懐いてくれなかったよな。 そういえば、アサギの器だけ変な色だったっけ。
[犬の気配がない夜も。 何もしないでただ眠る夜も、いつぶりだろう。 蒼佑の隣に潜り込んで、うとうとしながらぽつりぽつりと。 思い出話をしているうちに、声に欠伸が混じりだし。]
…………、
[静かに眠りの淵に落ちていった。]
(249) SUZU 2019/10/20(Sun) 00時半頃
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[祖国に帰るのは、何百年ぶりだろう。 決してそれは比喩ではなく、生まれた街や家の記憶も正直曖昧だ。 わざわざ調べてくれたコーディネーターには悪いが、過去を巡るようなルートは丁重に辞退して。
桜がゆっくり見れる場所、とだけ希望をつけてあとは蒼佑に任せた。その結果。]
見頃なのはいいけど…… こんなに歩いたのは、ソラの散歩以来だよ。
[観光地というには、山以外何もない場所に人気はなく。 山肌一面を淡い色に染める樹を、間近で見あげれば感嘆の息が零れた。]
(250) SUZU 2019/10/20(Sun) 00時半頃
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……昔は何とも思わなかったけど、 こんなに綺麗だったんだな。
[ひらり、と落ちてきた花弁を掌で受け止めたなら。]
蒼佑がくれたのと、同じ花だ。 初めて会った時にくれた、ガラスでできた栞と同じ。
[掌を開いて、隣の蒼佑に見せ。]
……あの頃の蒼佑のこと、 なんだこの物好きなやつって思ってたな。
[そっと花弁を風に任せて地に還し。 すぐ隣の”さくら”に手を伸ばした。]
(251) SUZU 2019/10/20(Sun) 00時半頃
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でも今は───
傍にいるのが蒼佑でよかった。 そう思ってる。
(252) SUZU 2019/10/20(Sun) 00時半頃
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[このデートの日程がこの先空白なのも。 こんな辺鄙な場所を選んだ理由も、わかってる。 わかってて、僕はここに来た。]
……僕も、一緒に連れていけよ?
[狂って咲いて朽ちかけた樹へ。 背伸びをして、触れるだけのキスを。*]
(253) SUZU 2019/10/20(Sun) 00時半頃
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[モモはとてもやんちゃで、犬に慣れていない頃の男はその行動を予見出来ずに手を焼いた。>>249 眷属となってから迎えたコンは主にべったりで、それでも可愛がりたい男が持ち上げたら拒否の失禁で実はかなり落ち込んだものだ。 アサギは少し短い生だった。もっと生きていられたら、もっと良い色の器をやれたのに。
ソラは。 ソラは――「思い出」にするにはまだ、言葉を持てない。
きっと待ってくれている。 輪廻転生などないのだと100年以上を生きて諦めてはいるが、天上の楽園でまた逢えたら良いと願うだけなら自由だ。]
(254) Ellie 2019/10/20(Sun) 01時頃
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――祖国――
空港の辺りの空気が不味くてどうなるかと思ってたけど、ここまで登れば流石に綺麗だな。
[軽装備で登る本格的な山は、すっかり出不精になった吸血鬼とその眷属には、超人的な体力が備わっているとはいえ息を荒くするには充分な悪路で、その分目論見通り人気はなく、着いた時の景色で自分の選択は正解だったと弾む息のまま笑った。>>250]
俺はあの時からずっと、俺は間違ってないって思ってたよ。
[アオを選んだ。 「桜」を贈った。 生命の源を捧げた。
生まれ育った環境に馴染めず、流れた先で大切な人々を失った男の最後に、最期まで寄り添ってくれる人。
伸ばされた手を取って自らの頬の上で一緒に重ね。 触れるだけのキスにそっと目を閉じた。]
(255) Ellie 2019/10/20(Sun) 01時頃
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……うん。
[この旅の間もちょくちょく錯乱していた男は、今頭の中にかかった靄が漸く晴れたような気持ちで、桜吹雪の中に立っている。
根本に腰かけてアオを膝に乗せ、そこで「弁当」にしよう。 じっくり100年以上かけた極上のランチを彼が腹いっぱいになるまで。
それから、 それから―――――――――]
(256) Ellie 2019/10/20(Sun) 01時頃
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[見つからなければこのまま誰も知らない土地の大木の栄養となろう。 朽ちることなく毎年空に桜を舞わせ。
見つかればきっと、この国では荼毘に付されるだろうから。 共に灰となり、煙と共に同じ空を目指そう。]
(257) Ellie 2019/10/20(Sun) 01時頃
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[ 「 青 蒼 」 に至る病の果て、
二人の長い歴史で培ったもの何一つ持って行けなくても、固く繋いだ手の中に、確かな愛を閉じ込めて。**]
(258) Ellie 2019/10/20(Sun) 01時頃
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……ははは
[肩を竦めて笑った。>>229 仕方のない人ね、と言われてほっとした。
いつもどおり君は 砂糖を全部使ってしまったというから>>230 僕は先んじて買出しに行くことを提案する。
使い古したデートプランだが、 君は喜んでくれるようだ。
無邪気に苺も買おう、という様子に目を細めて それから2人だけで誕生日を祝う。
もう何回目かもわからない誕生日に 君のケーキを食べられる事を喜びながら 珈琲片手に、君の話を聞いていた。]
(259) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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ああ、そうだね。 行こうか。
おいで、ミルフィ。
[僕はそういって彼女に呼びかけると 昔のようにとはいかないが、 彼女の手をとって歩き出した。
風にさやさやと街路樹の葉が揺れて 石畳には蒼い影が落ちている。 晴れ渡った空の下、僕と君は歩いていく。]
(260) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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―― 遠い日の思い出 ――
……ミルフィ、疲れちゃったのかい?
[僕は買い物袋を片手に下げて、 とぼとぼと歩みが遅くなってきた君を見下ろした。
無理もない。 積まれた食材を見ただけで目を輝かせはしゃいだし 嬉しそうに砂糖や苺を買い物カゴにつんでは 「あたしが!」と一生懸命お手伝いをしていたから 体力も持たなかったんだろう。]
(261) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[君が買い物カゴを持っていた関係で あんまり重くない買い物袋を 僕は、手から肘に吊り下げる形にして 「おいで」と君に声をかけた。
君の体を抱き上げれば 暮れた空をカラスが飛んでいく。 ぎゅ、と力がこもるのを感じて 胸いっぱい広がる愛しさに、僕は笑った。]
……帰ろう、ミルフィ。 僕らの家へ。
………………眠ってしまったのかい?
(262) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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