278 冷たい校舎村8
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[ いいんちょが、委員長じゃなかったら、
あたしはどういう目で、
あとうくん、を見てたのかなあ。
礼儀正しいいいひと?どうかな。
その時にならないとわからないから、
きっとわからない。
人生のルートは一度きりです。
あたしのよくある会話に返ってくるお返事は、
ふと、そう思う程度にはよくあるお話。 ]
[ にんげんもにんげんもどきも、
スマホが使えたところで脳内電波は圏外だから、
いいんちょの考えてることは、きっと届かないまま。
お利口さんです、フツーにね。 ]
[ いいんちょが、たとえば、
イメージ通りにいい人で、
イメージ通りに他人の手を引けるような、
そんな風だったら、あたしはすんなり頷くだろうし。
イメージと違って、申告通りに、
─── 冗談なのか、ほんとなのか、
自分のことと、
ちょっとぐらいしか抱えられないひとであっても、
あたしはきっと、いいんちょがすきだなって。
……そう思うのは良いことなんでしょうかね。
やっぱり届かないあたしの思考回路。 ]
……そういうもの?
[ 反対方向に首を傾げる。
連れ戻す、ことが正解であるならば。
残っている人たちはそういう意味で選ばれているって、
展開的なものを考えてしまうあたしは思うわけです。
いつだって呑気だ。 ]
[ 思いをぶつけたかもしれない、残った人は、
それを分かっている上で、
しおりちゃんの手を掴むのかな。
……ちょっとエゴっぽいの、
こどもだからできることなのかもね。
あたしたちは大人と子供の境目の、
きっと、 ぎりぎり、子供のところにいる。 ]
……いいんちょ、あたしも 思うんだけど、
こっち戻ってきても、しんどいよなー、って。
死にたいぐらいに逃げたかったのを、連れ戻すの、
本とかなら綺麗な話だけど、
綺麗なだけじゃ、ないじゃん?
[ 白紙が全部綺麗に塗られるような、
そんな ハッピーエンドなんて、
ちょっとあたしには想像つかないな。
……そこも含めて、
信じるしか、ないんだろうけど。 ]
死ぬ勇気があったひと、を。
寂しいなって思っても、
怒ることは、あたし、できない。
[ 褒めることじゃないって、わかってても。
きっとこれだってあたしのエゴ。
いいんちょの方へ向いていた目線は離れて、
マフラーに顔半分埋めながら、じっと前を向いている。
いいんちょの真似です。 ]
言いたいことかー。
あたし、案外ないよー。
しおりちゃんってわかんなかったときに、
「つまんない話します!」って、
黒板に書いてきちゃったんだけど。
……需要あるものかなあ。
[ ハクジョー、じゃないと、いい。
単純に、距離感が難しくて、
あんまりなかったの、寧ろ悲しい。
自然消滅した元彼という微妙なネタが、
そこそこ平和に話せる時がくるのかはさておいて。
多分、こういう時は、
"これから増やせば良いのかな"って
落ち着くのだけれど、 ]
[ そういうお話しができれば、
しおりちゃんもあたしも、
エンドロールの先が変わっていたのかなあ、って。
思った、思ってしまった から、 ]
……深いお話しできるひとって、貴重だよ。
あたし、ちょっといいんちょと辰美君が羨ましい。
[ 仲が良いって聞いてるからさ。
マフラーの下からもごもご言うわけです。
ほら、あたしも偏見みたいなもの? ]*
── 現在:病院内 ──
[ もう一度、の話をする。
チャンスが与えられたところで
それを生かせるのかは分からない。
それでも夢想の話をしている方が
まだ自分が無関係な存在ではないと
思い込むことができる気がした。
無関係なんだって割り切ってしまえば
その途端、紫織と自分の繋がりや
紫織の意識と現実の繋がりすら
切れてしまう気すらしていた。 ]
……ほんと、ひでぇよ。
自分でやった後におれたち呼んで、
だったら…やる前に教えて欲しかった。
そしたら何でも聞いてやれたのにさ、
こんなんじゃ……なんもできねーし。
[ 何かを与えることはできなくても、
指先を掠めることすらできなくても、
何か届けることが出来たかもしれない。 ]
[ 喜多仲郁斗は、ずるい。と思っていた。
言いたいことだけ言って、
あの世界に逃げ込んだくせに
自分たちを連れ込んで、追い出した。
紫織と、そんなことを思う自分がずるい。 ]
おれにできたこと…?
[ そんなこと、あっただろうか。
心乃の言葉を聞いて、思い返してみる。
ただのくだらない世間話。
何があったかの報告会をしよう。と言って
結局守れずに眠って、……目が覚めた。 ]
[ それに一体何の意味があるのだろうか。
紫織にとっては、意味があったのか。
無い。気がして、爪を立てる。
組んだ手は、祈るというには不格好だ。
けれど、信じるような心乃の言葉で
郁斗は深く息を吐けるようになって
きつく込めた力を緩めた。 ]
[ まだ、帰ってきていない人がいる。
現実に戻ってから見ていない顔を思って
自分より頑固そう。って考えた。 ]
……そう、かな。
いいなぁ。そーだったら…。
[ 彼らにはできなくて、自分にはできること。
現実のこと。こっちの世界のこと。
心乃の言いたいことが分かって
その優しさに、郁斗は泣きたくなる。 ]
おれは……目が覚めたら、
いつも通り、おはようって言ってほしい。
女の子には手を振ってさ、
ヤローにはどついてふざけたりして、
みんな怒ったり笑ったりするんだけど。
ちゃんとおはようって、返してくれるから。
それだけでケッコー、幸せだよ。
[ ああ、そうか。って、喜多仲郁斗は思った。
紫織がもし目覚めるのならば、
彼女もまた自分と同じように
友人が死んだ夢から目覚めることになる。
ならきっと、これは間違いではない。
そう思うと安心して、すこし笑えた。 ]*
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……1人くらい、怖いのがいたっていいだろ? お前のまわりにはさ。
[オオカミ少年は村人たちを嘘で困らせた。 だけれども、最初から怖い狼が近くにいれば 嘘をつこうなんて思わないんじゃないか。 …………というのは、0点だろうか。
颯真の方が優しくできるだろうし、 辰美は辰美のできることで彼女を引き留めたい。
親孝行と言われて辰美は軽く肩を震わせた。 笑った、ようだった。>>235]
(239) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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そーだぞ。長生きして孝行してくれ。 案外寂しがり屋だからな。俺は。
[最後にぽんぽん、と頭を撫でて、 葉野が2人に投げかける言葉を聞いている。]
(240) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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[――帰る。と彼女が言う。 その目をこすり、現実への帰還を口にする。 辰美はこくりと頷き、ぽそりと葉野に耳打ちをした。]
(241) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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じゃ、葉野、氷室、颯真。帰るぞ。 帰るまでが文化祭です。 みんな待ってる。
[仏頂面に戻ってそういって、 葉野の歩調に合わせて、帰ろうとするだろうか*]
(242) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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──現在/病院──
俺にとっては。
[ そういうもの? って音とともに、
綿津見の首が傾いてった。
それは礼一郎にとっての答えでしかないので、
そういうものかはわかりません。
あの世界の目的も、仕組みも、
正解が存在するとしたら、
あの世界の主の主観に基づくことになるでしょ。
そりゃあ礼一郎にはわかんないよね。
なかなか意見の合わない相手だったよ、あいつ。]
……だろうな。
だから最後はさ、
本人が決めるしかないんじゃん。
[ 帰ってきたら万事解決とはいかない。
礼一郎もそう思う。
礼一郎もつくづく思うんだけどさ、
死ぬのにはある種の勇気がいる。]
死ぬのに勇気がいるんだから、
一回、その一線を越えちゃったのに、
もう一度こっちに戻るのにも、
同じくらい勇気がいるんじゃねえかな。
だから、本人を信じるしかない。
……って、俺は思うけど。
……別にいいんじゃない?
怒るのも、さみしがるのも、
個人の感じ方にまで正解はない。
……らしいよ。たぶんさ。
[ 礼一郎は、遺書にクレームをつけたけど、
この状況がどちらに転んだとしたって、
怒る、に行き着くことにない気がするし。]
……もし帰ってきてくれるなら、
うれしいよって、笑って迎えたい、けど。
[ どうなるかなんて、その瞬間の感情なんて、
そのときが訪れるまで自分にもわかんないな。]
じゃ、それを聞いてみれば?
……いざ。
また本人と話せます! ってなったらさ、
案外ないってことも、
ないんじゃないかと思うけど。
[ 礼一郎はそう思います。
そればっかりなんだけどね(笑)
友だちでしょ? なら、あるはず。って、
自分の友だち観みたいなものに則ってしか、
口をきけないんだから許してほしい。]
[ 突然、ぽんと出てきた名前に、
礼一郎は一瞬驚いてそっちを見た。
大騒ぎしといてなんだけど、
お互い秘密って話だったんだけどなー。
もしや何かご存じ? って内心思いつつ、
礼一郎はもう一度前を向いて、小さく微笑む。]
……まーね。
[ 付き合い、長いんです。良い友だちでね。
……とは言わないけど、
礼一郎はその友人の存在が誇らしい。]
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