278 冷たい校舎村8
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[ さすがにもう世界の主の正体に、
みんな気づくころじゃないかと福住は言う。
なるほどな、と礼一郎は思って、
同意するようにひとつうなずきを返す。]
確かに。あと4人だもんな。
昨日、ソーマと話しててさ、
あいつ、結構みんなと話して、
世界の主が誰かって、すげえ考えてたし……、
福住のことも言ってたよ。
なんだっけ、レイと二人で話ついてる?
……仲良しか。マジ仲良いよな、おまえら。
[ あのときは結構真面目に話してて、
ソーマも無邪気だったので水差せませんでした。]
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[じゃあなんでここに お前が描いた絵、みたいなのがあって 俺らとお前は残ってるんだろうな。
そう、言いかけて口を噤んだ。
目が合わない。 強引にこちらを向かせることだって出来て、 氷室は実際そうしようとしていて
けれど辰美は、眉間にしわを寄せて 手を強く握り込んだだけだった。]
(132) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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[ 埋もれそうとか、溶けそう、とか、まぎれそう、とか。
そういう感じなんだろうな、って 思う。 ]
……うん。
[ どんな顔して会えばいいのかって、
福住は本心から言っているようで、
礼一郎にはその気持ちもわからなくない。
わからなくないけど、
礼一郎は思ったよりも受け入れていて、
それは人形のあり方のせいかもしれないし、
単純に礼一郎の心境の変化かも。あるいは、]
合わせる顔がないって思うのもわかるし、
思っちゃうのはどうしようもないけど、
たぶんあいつら、福住の人形がどんなだって、
単純に、おまえのこと心配したんじゃないかな。
[ 礼一郎だって、
友人を模した人形を見るとただ胸が痛くて、
無事でありますようにって思うだけだった。]
……だから、うーん、
気にしすぎんなっつーのも、
無理な話だと思うけどさ。
[ それに、あんまりそういうこと言うと、
友だちなめんなって話になりかねない。
これは単純に、礼一郎の経験則ですが。]
ンな強く言われなくても、
聞かねーっつってんじゃん。
[ 思ったよりも返事の勢いがよくて、
礼一郎は一瞬たじろいで反論する。
聞かねえよ。ってもう一度言って、
それから、こそばゆい言葉に耳を傾ける。
あんまりそういうこと言われると、
それこそどんな顔すりゃいいかわからないだろ。]
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[その問いはずるいと、辰美は葉野に思う。 …………思ってしまったので]
(133) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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委員長する、か。
ほんとにできてたかなー、
俺、ビビり散らかしてたしな。
[ 自虐に逃げる。逃げようとして、
向けられた「 ありがとう 」に目を細めた。]
でも、もしできてたとして、
俺がそうしたくてやってたんだから、
全然、悪くなんかねえよ。……ありがとな。
[ 副委員長にはね、
礼一郎もお礼を言おうと思います。
けど、礼一郎に関しては、
ほんとにやりたくてやってんだから、
気にしないでねって、それは本心だよ。]
[ そっか。とあっさりした相槌。
うん。と礼一郎はうなずいて、
福住がそうしてくれたことに安堵する。]
だな。
あとは、葉野と残ったやつらのこと、
信じて待ってるしかねえよ。
[ 礼一郎もそう言って、
福住のあとから、病院の中へと向かった。*]
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…………。 楽しかっ「た」よ。すげえ、楽しかった。
楽しかったからさあ。 お前も含めて一緒に帰りてえんだけど。
お前、ちゃんと颯真が言ってることわかってるか? 手を差し伸べてるってわかってるのかよ。 お前も、俺も、氷室も、颯真も。 全員で一緒に「みんな」がいるところに帰れなきゃ そんなもんはな、全然楽しくねえ。
……楽しくねえよ。俺は。 今お前がここから帰んないなら。
(134) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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[ ちなつちゃん、と、呼んでしまったあの時、
あたしはあのこに、
涼しい場所だよって日陰を示したけれど、
あの場所、ほんとは
ひとのいないところでもあったんだよなあって。
他人の人生、あまり口出しするものじゃあないし、
あたしはどんな人生であれみんながすきだけれど。
……みんなもみんなで生きづらいんだろうなって、
当たり前のことを思った気がする。
差し出したカイロを見て、ふと。 ]*
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それどころか、――もしも、 ここから一人でも帰ってこねえことがあるなら。
(135) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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架空惑星 レンは、メモを貼った。
2020/06/22(Mon) 21時半頃
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[辰美は好戦的に笑った。 怒っているようでもあった。]
(136) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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[――そもそも狼がこなければ、 オオカミ少年は脅かされることはなかった。
だからさ]
(137) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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[ 手元の缶は、いつかの飲み物と違って、熱すぎるほど。 ]
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こんな校舎を立てて、不穏なメール出したやつは 俺たちのかけがえのない思い出を壊しに来たんだなって。 ああ、そいつにとって俺たちとの思い出って
……その程度なんだなって。
(138) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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*
[ あたしは立ちっぱなしでマフラーに埋もれている。
病院の入り口から足音がしているから、多分、
帰ってきた人が段々増えてきているんだ。
あたしみたいに。
夢のなっちゃんは落ちて、砕けて、"死んでいた"。
現実のなっちゃんはここで祈っている。
夢から覚めたみんなは、きっと、
そのひとの色をうつすマネキンと、
入れ違いになるんだろうな、って、
あたしは ぼんやり考えていた。 ]
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[重く息を吐いて笑うのをやめる。]
………… そんなこと思いたくねえんだよ。葉野。 ………いいのかお前このままで
[顔を顰めて、声だけは穏やかに問いかける。 クレープを共に食べた時の事を思い出して、 少しずつ、少しずつ心臓が痛くなってくる。]
(139) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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[楽しかったよ。 楽しいかったから苦しい。
許す許さないで割り切れていれば、 辰美はここに立っていない。*]
(140) 2020/06/22(Mon) 21時半頃
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[ 帰ったときのこと、実を言うと覚えていない。
あたしの夢を見ていた"あたし"と出会って、
夢が終わるのを自覚すればあっという間だ。 ]
[ もういられないのなら、
息苦しい現実に帰ろう、ただそれだけだよ。
あたしに何かがあるとするならば。 ]
[ マネキンだって、傷ひとつついてないのだろうって、
よく分からないけど、確信がある。
"人波"に紛れて蒸発してないかとまで思うけれど、
どうかなあ。多分無理かなあ。
まあ、なんでも、
残る人が怖くならないものだといいや。
それだけならだいじょぶ。きっとね。 ]
[ そこそこ整えてあるあたしの爪が、
缶のプルタブを引っ掻いている。 ]*
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[ お願い、って言われて>>128。 ずるいなあ、と思ってしまう。 俺さ、人の頼み事とか、断れないタイプなんだよ。 だけど、さあ。]
……ごめん、やだ。 帰るなら、絶対、一緒がいい。 だからさ、俺からも、お願い。
一緒に帰ろう、紫織ちゃん。
[ 信じてくれないんだ、って思われるかもしれない。 「一緒じゃなきゃやだ」なんて、 駄々っ子みたいなお願いかもしれない。 でも、これだけは譲りたくなかった。 だから、俺は何度でも言うよ。一緒に帰ろうって。]
(141) 2020/06/22(Mon) 22時頃
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……俺、さ、みんなのこと大好きだよ。 紫織ちゃんも、他の皆のことも、本当に大好き。
一緒にいるだけでスゲー楽しい。 だからさ、誰一人、失いたくねえんだよ。
一人でもいなくなっちゃったら、 めちゃくちゃ悲しいし。
楽しかった文化祭だって、 悲しい思い出になっちゃいそうで。
俺、そんなの嫌だよ。
(142) 2020/06/22(Mon) 22時頃
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だから……だから、さあ。 一緒に帰って、また楽しく騒いで、 勉強会でもして受験とか乗り越えて、 そんで、一緒に笑って、卒業、しようよ。
[ すぐ傍まで言って、まっすぐ見て、語り掛ける。 幸俊や怜の言葉も相まって、胸が痛くて、 なんだか泣きたくなってきて、顔を歪ませる。
分かってほしかった。 俺達が、どれだけ君を大切に思っているか*]
(143) 2020/06/22(Mon) 22時頃
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架空惑星 レンは、メモを貼った。
2020/06/22(Mon) 22時頃
-- 現在/駐輪場 --
[ 探し物はなんでしょう。
毎日のように乗っていた自転車の鍵。
修学旅行で買ったキーホルダーがついたやつ。
どこにあるのかなあって、愛車をみるけど、
鍵穴には鍵はさされてなくて。
結局さっき鍵しめたんだっけ、と曖昧な記憶を探る。
……うーん。わかんない。 ]
落ちてるのかな。
[ どうかなあ、と千夏はため息をついて、
スマホの明かりを頼りに地面を照らす。
びゅうと風が吹いて寒さに震える。
こういうときに、あったかいカイロは心強い。* ]
── 現在:病院内 ──
[ 最後には。の続きの言葉を
自分から聞く気にはなれそうになかった。
恐らく、夏美が一番初めに目覚めたことや
自分がその次辺りに目覚めたことを考えれば
目覚める条件というものは分かりやすい。
たぶんみんな死んで帰ってきた。のかな。
みんなあーちゃんに殺された、
……ってことはないだろうけれど。
落ち着かない指先が組み合えば、
無機質な光に当たり前に影を落として
なんてことなくそれを眺めている。 ]
[ ただひたすらに、ここが現実。
っていう事実だけを見続けてる。 ]
向こうに戻って……って、
どーやってすんの…?
[ 声が震える。
なにかを与えられるとは思ってない。
でも手を伸ばして届くならと思ってしまう。
あの時伸ばして届くことのなかった手が
もし、友達に、届く可能性がまだあるなら。 ]
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