278 冷たい校舎村8
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あああ、ああ……!
[ 降ってくる。降ってくる ]
(636) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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[ ひらひら ]
[ ぱらぱら ]
[ ばらばら ]
(637) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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[ どさどさどさどさっ! ]
(638) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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おにーちゃん。 おにーちゃん、ごめんなさい。 おにーちゃんには、才能がありました。 おにーちゃんは、作家になれる人でした。
(639) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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嘘をつくつもりなんてなかったんです。 おにーちゃんの夢を応援していたんです。 本当の本当です。
(640) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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それなのに僕は、 イライラをぶつけておにーちゃんを傷つけました。 しかも、自分がちょっとでも楽になるために、 おにーちゃんの才能を疑いました。 おにーちゃんに才能がなければいいと思いました。
(641) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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その上、こんな死に方をするなんて。 これじゃまるで、僕の一番の悩みは、 おにーちゃんの残したお話がなくなっちゃって、 僕は作家じゃなかったって ばれることみたいじゃないですか。 結局僕は、おにーちゃんのことより、 自分のことばっかり考えてるみたいじゃないですか。
(642) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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そんなつもり、なかったのに。 そんなつもり、ないのに。 そうだったのかな。 そうなのかな。 そうなのかなあ……?
(643) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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そうだとしたら、やっぱり、 みっともなくて、恥ずかしくて、 僕はとても生きていけない。
(644) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。
(645) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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おにーちゃん。 父さん。 母さん。 本を読んでくれた人。 みんな。 みんな、ごめんなさい。
(646) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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[ 真っ白の原稿用紙が、どんどん、どんどん。 もがいても、もがいても、上から上から降ってくる。 溺れてしまう。
視界を埋め尽くし、 部屋中を覆いつくし、 そして ]
(647) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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[ このまま雪景色に溶けて、消えてしまえるなら>>0:27 ]
(648) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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[ 雪ではない、けれど確かに白いものに、 誠香は埋め尽くされて、押し潰されて、 そして見えなくなりました。 めでたしめでたし? ]
(649) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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―― AM8:50 ――
[ 購買にほど近い空き教室が、すりガラス越しに 天井まで白い何かで埋まっているのが見える。 扉を開けたいなら、気を付けて。 真っ白な原稿用紙が、 雪崩のように廊下まで崩れてくるでしょう。
教室の中は、机も椅子もありません。 食べ物も飲み物も跡形もなく消えています。 そこにあるのは、ただ白紙の原稿用紙だけ。 ああでも、原稿用紙を根気よく掘り返せば、 うつ伏せに倒れた状態でへしゃげたマネキンが 見つかるかもしれませんね。
けれど、このマネキンのために、 そこまでする価値はきっとありません。 それはただの嘘つきなニセモノのなれの果てですから** ]
(650) 2020/06/21(Sun) 23時半頃
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-- 現在/病院→駐輪場 --
[ 送る背中はみっつ。
くるりとこちらを向いた顔に首を傾ぐ。 ]
……うん。
わ、ありがとう。
[ カイロを差し出してくれるまなの姿に、
3年8組になったばかりの春を思い出す。
あのときは飲み物で今はカイロだな、と。
春もこっちのほうが涼しいよ、
と教えてくれたんだっけ。違うっけ。
たった八か月前のことがすごく遠くに思えた。 ]
[ 生きて積み重ねた十八年と数か月。
特に事故などなければ、
おそらく何十年かは続いていく。
他人の人生、あまり口出しするもんじゃないけど。
千夏は思う。
生きてたら、いいことあるよ、って。
紫織ちゃんの人生、
ここで終わらせないほうがいいよ、って。 ]
[ あつい缶コーヒーを指先でつまみながら、
教えられた方へと歩く。
たしかにすこしあったかいかもしれない。
そう思いながら、苦いコーヒーを啜る。
すこし寒さが和らいだころに、
自転車の鍵がポケットにないことに気が付いた。 ]
……鍵、さしっぱなしかも。
[ こんな真夜中。
自転車泥棒が出没するとは思わないけど、
手許に鍵がないのも不安で。
千夏は再び駐輪場へと戻る。** ]
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