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言いたいことかー。
あたし、案外ないよー。
しおりちゃんってわかんなかったときに、
「つまんない話します!」って、
黒板に書いてきちゃったんだけど。
……需要あるものかなあ。
[ ハクジョー、じゃないと、いい。
単純に、距離感が難しくて、
あんまりなかったの、寧ろ悲しい。
自然消滅した元彼という微妙なネタが、
そこそこ平和に話せる時がくるのかはさておいて。
多分、こういう時は、
"これから増やせば良いのかな"って
落ち着くのだけれど、 ]
[ そういうお話しができれば、
しおりちゃんもあたしも、
エンドロールの先が変わっていたのかなあ、って。
思った、思ってしまった から、 ]
……深いお話しできるひとって、貴重だよ。
あたし、ちょっといいんちょと辰美君が羨ましい。
[ 仲が良いって聞いてるからさ。
マフラーの下からもごもご言うわけです。
ほら、あたしも偏見みたいなもの? ]*
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── 現在:病院内 ──
[ もう一度、の話をする。
チャンスが与えられたところで
それを生かせるのかは分からない。
それでも夢想の話をしている方が
まだ自分が無関係な存在ではないと
思い込むことができる気がした。
無関係なんだって割り切ってしまえば
その途端、紫織と自分の繋がりや
紫織の意識と現実の繋がりすら
切れてしまう気すらしていた。 ]
……ほんと、ひでぇよ。
自分でやった後におれたち呼んで、
だったら…やる前に教えて欲しかった。
そしたら何でも聞いてやれたのにさ、
こんなんじゃ……なんもできねーし。
[ 何かを与えることはできなくても、
指先を掠めることすらできなくても、
何か届けることが出来たかもしれない。 ]
[ 喜多仲郁斗は、ずるい。と思っていた。
言いたいことだけ言って、
あの世界に逃げ込んだくせに
自分たちを連れ込んで、追い出した。
紫織と、そんなことを思う自分がずるい。 ]
おれにできたこと…?
[ そんなこと、あっただろうか。
心乃の言葉を聞いて、思い返してみる。
ただのくだらない世間話。
何があったかの報告会をしよう。と言って
結局守れずに眠って、……目が覚めた。 ]
[ それに一体何の意味があるのだろうか。
紫織にとっては、意味があったのか。
無い。気がして、爪を立てる。
組んだ手は、祈るというには不格好だ。
けれど、信じるような心乃の言葉で
郁斗は深く息を吐けるようになって
きつく込めた力を緩めた。 ]
[ まだ、帰ってきていない人がいる。
現実に戻ってから見ていない顔を思って
自分より頑固そう。って考えた。 ]
……そう、かな。
いいなぁ。そーだったら…。
[ 彼らにはできなくて、自分にはできること。
現実のこと。こっちの世界のこと。
心乃の言いたいことが分かって
その優しさに、郁斗は泣きたくなる。 ]
おれは……目が覚めたら、
いつも通り、おはようって言ってほしい。
女の子には手を振ってさ、
ヤローにはどついてふざけたりして、
みんな怒ったり笑ったりするんだけど。
ちゃんとおはようって、返してくれるから。
それだけでケッコー、幸せだよ。
[ ああ、そうか。って、喜多仲郁斗は思った。
紫織がもし目覚めるのならば、
彼女もまた自分と同じように
友人が死んだ夢から目覚めることになる。
ならきっと、これは間違いではない。
そう思うと安心して、すこし笑えた。 ]*
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──現在/病院──
俺にとっては。
[ そういうもの? って音とともに、
綿津見の首が傾いてった。
それは礼一郎にとっての答えでしかないので、
そういうものかはわかりません。
あの世界の目的も、仕組みも、
正解が存在するとしたら、
あの世界の主の主観に基づくことになるでしょ。
そりゃあ礼一郎にはわかんないよね。
なかなか意見の合わない相手だったよ、あいつ。]
……だろうな。
だから最後はさ、
本人が決めるしかないんじゃん。
[ 帰ってきたら万事解決とはいかない。
礼一郎もそう思う。
礼一郎もつくづく思うんだけどさ、
死ぬのにはある種の勇気がいる。]
死ぬのに勇気がいるんだから、
一回、その一線を越えちゃったのに、
もう一度こっちに戻るのにも、
同じくらい勇気がいるんじゃねえかな。
だから、本人を信じるしかない。
……って、俺は思うけど。
……別にいいんじゃない?
怒るのも、さみしがるのも、
個人の感じ方にまで正解はない。
……らしいよ。たぶんさ。
[ 礼一郎は、遺書にクレームをつけたけど、
この状況がどちらに転んだとしたって、
怒る、に行き着くことにない気がするし。]
……もし帰ってきてくれるなら、
うれしいよって、笑って迎えたい、けど。
[ どうなるかなんて、その瞬間の感情なんて、
そのときが訪れるまで自分にもわかんないな。]
じゃ、それを聞いてみれば?
……いざ。
また本人と話せます! ってなったらさ、
案外ないってことも、
ないんじゃないかと思うけど。
[ 礼一郎はそう思います。
そればっかりなんだけどね(笑)
友だちでしょ? なら、あるはず。って、
自分の友だち観みたいなものに則ってしか、
口をきけないんだから許してほしい。]
[ 突然、ぽんと出てきた名前に、
礼一郎は一瞬驚いてそっちを見た。
大騒ぎしといてなんだけど、
お互い秘密って話だったんだけどなー。
もしや何かご存じ? って内心思いつつ、
礼一郎はもう一度前を向いて、小さく微笑む。]
……まーね。
[ 付き合い、長いんです。良い友だちでね。
……とは言わないけど、
礼一郎はその友人の存在が誇らしい。]
[ でもね、礼一郎の視界には、
綿津見のまわりにだって、
たくさんの友だちがいるように見えてたよ。
そう、例えば──、]
そういえばさ、
黒板のアレ、書き換えたの綿津見だろ。
[ いろんなひとが書き足してって、
最終的に辰美が写真に撮ってたアレね。
並んでいた文言を思い出しながら言う。]
「 まなっちと映画館に行きたいです 」
…………だって。
綿津見いなくなったあとも、
残ったやつらで好き勝手書いててさあ……
ほら、たぶん。ああ書くほうがさ、
ちゃんと帰ったんだって信じられるから。
……ありがとな。あれ、残してくれて。
[ 福住も帰ってきてるよって、礼一郎は言った。*]
メモを貼った。
―― 現在:病院前 ――
[ 病院の中に入る千夏を見送って、
誠香はまたジャスミンティーをこくりと飲んだ。
だいぶぬるくなっちゃったなあ、なんて思う。
ポケットに片手を入れて、缶コーヒーで指先を温める ]
……もしも、さぁ、
[ ぽつりと誠香は独り言を言った ]
あの世界に行ったみんなが、
ほんとに死にたいくらいの悩みを抱えてる人ばっかり
だったとして。
あの世界の主が、しおちゃんじゃなかったとして、
[ ぼんやりと、誠香はそんな想像をしてみる ]
[ きっと、世界の主が誰だったとしても、
みんな一生懸命
みんなで帰ろうとしたんじゃないだろうか。
死にたいくらいの悩みを、
受け止めようとしたんじゃないだろうか。
誠香はそんなことを考える ]
……だとしたら、
案外、人生って悪いものじゃ、ないのかも。
なーんて。
[ 楽観的過ぎるかなあ、と誠香は思う。
でも、そうだったらいいなあ、と思う。
まだ問題は山積みだけど。
受験だって立ちはだかってるけど ]
[ 結局誠香は、紫織の悩みを知らないままで、
帰ってきてしまって、
もう、待つことしかできないでいる。
けれども ]
帰っておいでよ、って思った分くらいは、
しおちゃんの力になれるように頑張るからさ。
帰っておいで。
[ 白い息を吐きだしながら、呟いた* ]
-- 現在/病院前 --
[ 誠香の反応を観察する。
あれ。可笑しなこと言ったかな。
と千夏は思ったけど、言葉をごく普通に続けた。
そして飛んできた質問にも、うん、と小さく頷く。
毎日しんじゃいたいし、しんじゃえって、思ってるよ。
────……って、言ったら、
誠香はどんな反応をするんだろう。
好奇心はあれど、
現実世界で間違いがあってはいけないから。
千夏はただ頷くだけに留める。
目指せ、現役志望校合格だよ〜。
ん、わかった!
一緒になりたい自分に近づきに行こう。
メイクすると、本当に感動するから、ね。
[ わかりました、と依頼を請け負う。
ぐ、と拳を握って、にこにこと千夏は笑った。 ]
そっかあ。
首許から風が入り込まないようにするんだよ。
[ 頑張ってるみんなのために待つという誠香に、
千夏は首を傾げて。
マフラーをきゅ、とするエア動作をする。
そうして、暖かな空気が満ちる病院内へと。* ]
-- 現在/病院内 --
[ クラスメート達の姿が見える。
どこにいこうかなあと千夏は考えて。
一人ぽつんと立っている夏美の傍へと寄る。 ]
怖くなかった?
[ なにが、と書いてある夏美の顔に千夏は苦笑。
主語が抜けていると認識を改め。
持っているジャスミンティーを転がしながら、
正しい主語を導き出そうと千夏は考える。 ]
[ たとえば、あたしが白紙をびりびりに破いて、
"向こう"に行っちゃったとして。
"こっち"に戻ってくるのに、
確かに勇気はいるのだろうなって。
ちょっと、想像してみる。
あたしは多分、帰りたくない。色々な意味で。
……だから、ほんとね。信じるしか無いんだろうな。
それに、帰ってきてくれたとしたら、あたし、
嬉しいことには変わりないの、それはほんとう。 ]
一番最初に帰ってきて、色々解らなかったと思う。
メールとか、電話とか、してくれてありがとう。
何もわからなくて怖かったと思うけど、
行動してくれたことが、
私にはとてもありがたかった、よ。
[ なにそれぇと泣き出しそうな夏美の姿をみて、
千夏は、ほんとうにありがとう、とまた繰り返した。 ]
紫織ちゃん、帰ってくるかなあ。
[ 帰ってきてほしいな。
千夏はそう思っている。
文化祭の打ち上げも、できたらしたいし。
……卒業祝い、の打ち上げも兼ねられたらいいな。
早未千夏は願っている。* ]
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