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メモを貼った。
[トレイルを見送って、
しばらくは静かな時を過ごす。
窓をすり抜けて窺う陽気は穏やかで。]
……そういえば、とっておきの場所。
…連れていってくれるん……ですよね?
[一度は果たせなかった約束は、
まだ枕元に残っている。]
メモを貼った。
[顔は上げられぬまま、弟の話を、ただ黙って聞いていた。
繋いだ手の指先には、白むほどに力が篭もる。
漸く、口を開けるまで、どれくらいの時間を要したろう。]
……恥ずかしい話だけど。
私は、おまえが死んだ時。
ともに逝けることを嬉しく思ってしまった。
けれどおまえは、黒玉病で逝ったわけではなかったから……もしかしたら、ラーマとなってしまうのではと思って……。
それが、すごく……いやだった。
何故、共鳴で死んでくれなかったのかと……考えた。
[自嘲を浮かべながら、ぽつぽつと語る。
指先は、微かに震えていたかもしれない。]
……ひどい、身勝手な兄だと思うかな……。
……けれどね。
おまえの口から、さっき、その言葉を聞いた時、何故か不思議なくらい、すんなりと受け止めることができた。
勿論、辛い、寂しい……。
離れたくなんか、ない、けれど……。
けれど、おまえの話を聞いて、よく分かった。
そうだな、おまえが、この状況を放っておけるわけがない。
おまは昔から、やさしくて……。
いつの間にか、私より大きくなってしまっても……それでもずっと、真っ直ぐなままで……。
[声が震え、涙が零れそうになる。
脳裏に思い描くのは、幼い頃の、内気だった弟の姿。
いつも自分の後をついて回っていた、泣き虫な少年。
今ではすっかり、逞しい男となったその顔を、愛おしげに見つめ。
頬にそっと、手を伸ばす。]
だから私は、おまえを好きになったんだ。
[真っ直ぐに見つめ、笑う。
笑った拍子に、溜まっていた涙がぼろりと零れてしまったけれど。]
おまえはいつまでも、私の自慢の弟で……。
誰より愛しい……恋人だ。
[ほんの少しだけ高い、弟の肩。
そこに、ゆっくりと凭れかかり]
………行っておいで。
私は、ここで待っている。
次に会える時まで、ここで、ずっとおまえを見守っている。
それにおまえなら、私の姿が見えなくても……きっと、感じ取ってはくれるだろう?
…………。
少しだけ、時間が有限になってしまったな……。
[弟がラーマとして転生するのは、半年後か、一年後か……もっと早いか、遅いのか。
そこは、弟の意志と、アメノマの恩恵に依るのだろうけれど。
猶予は、まだ残されている。
だからせめて、それまでは……**]
メモを貼った。
[丁寧に整えられた寝台。
目立たない縫い跡の残るシーツ。
きっと寝心地は最高だろう。
部屋を去るトレイルに笑顔で応える。]
ありがとう。トレイル。
… ありがとう。
[彼が撫でた箇所をなぞるように
皺ひとつなく敷かれたシーツを撫でる。
そこは少し、温かい気がした。]
[それぞれにトレイルとの別れの時間を過ごし、
静寂の中を並んで佇んでいただろう。
穏やかな陽射しの中に在る我が家は
昨日までと何一つ変わらないのに、
そこはもう自分たちの空間ではないのだと
どこか余所余所しく感じた。
実際、黒石と成り果て砕けた二人分の肉体は
既にこの家には無い。
寂寥を振り払い、向き直す。外へと向かって。]
うん。他にも、ドリーの行きたい場所があれば。
どこへでも行ける。
[ドリベルの手を握り、行こう。
途中、村の中で生者の面々と擦れ違いながら。]
…エルもちゃんと考えてください……ね。
[自分も考えるように、と釘をさし。
村の中を歩けば、
獣との争いで壊れた場所を修繕する姿も見られ。
生者達の逞しさを知る。
…住む者がいなくなったあの家も、
いつか壊されるか、別の者が住むのかもしれない。]
……エルはその場所…いつ見つけたんですか?
[ふらりと出かける水浴びも、そこで行っていたのなら。
自分がサミュエルのラーマになった時には
すでに見つけていた計算。]
[兄の言葉に、ゆっくりと首を横に振る。
生きられないなら、せめて共に逝けるのは幸福だと、
自分も思ってしまったから。
さすがに、死因が違うことに対する不満までは思い至っていなかったけれど、その話を聞いても、兄を責める気にはなれない。逆の立場なら、もしかしたら考えていたかもしれないのだから。]
…………。
[兄の言葉を、黙って聞く。
いつの間にか、背も年齢も追い抜いてしまった自分。
年齢が少し下がっているのは、元の年齢差に戻りたいと、兄に甘えられる弟でありたいと、無意識に思っていたから。]
ごめんな……ありがとう。
[手を伸ばし返し、零れ落ちた涙を指の腹で拭う。
辛い思いを押し殺して、それでも笑ってくれる兄。
我儘を言っても、最後には許してくれる兄。
そんな優しい兄が、昔からずっと、好きだった。]
……必ず会える。
永遠は、ここにしかないのだから。
姿が見えなくても、声が聞こえなくても。
心は、常に、傍にある。
……腕一本と、腹だからな。
時間はかかるだろう。
[損傷箇所は少なくない。
長く過ごすのは、手が離せなくなって困りそうな。
かといって、短く過ごすのは、寂しい。
だから猶予は天にまかせる事にして。]
戻るまでは、ずっと、一緒に。
[顔を寄せて囁き、誓いの約束をするように、
口づけを落とす**]
ボクは、ドリーと一緒なら
どこでどうしたって幸せだからね。
[すれ違う人達の顔を何気なく眺め、
彼らの表情に悼みが見えると目を逸らした。
ほんの数日で、ずいぶん変わった。
仕事や戦闘で命を落とす者が出た時は、
その勇敢さを讃えて見送れるだけの
戦う者たちの覚悟と強さがあったと思う。
不意打ちに訪れた厄災に蹂躙されて
無力に奪い去られる時は、
どんなに強い者も打ち拉がれるのか。
これも死してはじめて知ったこと。]
この村に来てすぐ後。
森が好きで。 … ひとりでよく散歩した。
[村人たちとの穏やかな日々の営みに慣れず、
修行の合間に森に入っていた頃。
そんな話を、ぽつぽつと。]
メモを貼った。
……それ…僕も同じように返したら…どうするんです。
[その時はその時で、
目的もなしに歩いて行くのも楽しいのだろうが。
少しずつ村の中心から離れながら、
耳にするのはまだ出会う前の話。
サミュエルがどこから来たかも知らない。
すべてをもらったと言ったけれど、
過去まで踏み込んでいいものかと逡巡し。
返す相槌は曖昧なものとなったろう。]
どうしよう。 考えてなかった。
[とは言え目的のない旅に出るのも
悪くないかもしれないと考える。
ずっとこの村を見つめるのも良いけれど、
広い世界を見て回るのも楽しそうだ。
村外れを流れる川を、
源流に向かって遡って歩く。
踏み均された道と呼べるものが消えて、
木々の隙間の苔生した地面が広がる。
その上を、のんびりと。
昔話はこちらも曖昧に頷き、終わる。
もうすっかりただの過去だ。現に残した過去。
とは言え、訊かれなければ語らない。
それはきっとずっと変わらない。]
[指で涙を拭われた
それは昔、泣き虫だった弟に、自分がよくしていた仕草とどこか似ていて、懐かしいような照れくさいような気持ちになって、小さく笑った。]
ん……。
これからも、常に、傍に。
[晴れた日は朗らかに。
雨の日はひそやかに。
愛しいものへ、唄を届け続けよう。]
あぁ……。
[
ジェームスは3年、ドリベルなどたしか7年くらいかかっていなかったろうか。
……いやドリベルの場合、これほど時間がかかったのは、肉体的損傷からでないのは分かってはいるけれど。]
それまでに、しっかりと笑っておまえを送り出せるようになる。
それまでは………
[誓いの囁きに、目を細め……閉じる。
涙はまだ乾きそうにはないけれど、それでも、きっといつか……**]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
[道のない場所は、生身であったなら
歩くのも大変だったろう。
形ない存在であれば足場について気にせず、
足元の草木を心配する必要はない。
周りの光景を楽しみながら
やがて目的の場所へと辿り着けば、
そこに広がる有りのままの自然の形に息を呑んだ。]
……よく…見つけましたね。
[浮き立つ声で、なるほどとっておき、と。
村に長くいるからといって、村のすべてを
知り尽くしてるわけではないようで。
長い時間の中での楽しみを見つけた気分。]
[生前よりも軽やかに進む、森の中。
途中に見かけた動物たちは
第六感が優れているのか、堂々と傍へ行くと、
不思議そうな目を向けて駆け去って行った。
辿り着いた滝壺に近い川原は、
いつ訪れても変わらず静かでどこか厳粛だ。]
本当はさ、ちょっと、
ここで死にたいなって思ってた。
昨日の話じゃなくて …
いつか、死ぬなら って。
[川原の岩の上に屈み、
水流に手を差し入れてみる。
触れられない水には温度も感触も無い。]
[冷ややかな水を湛えた場所は雪ぎ場のようで。
水辺に膝を落としたサミュエルの背を見つめ、
聞こえた声に目を伏せる。]
…………。
[それは、自分がラーマになってからもだろうか。
その時は、自分を置いていくつもりだったのだろうか。
聞きたいことはあって。
けれど言葉にはならなくて。
答えを聞くのが怖かったわけではない。
この神聖な場所に不似合いな思いを抱いてしまったから。
だからただ無言で、その背に額を預けた。]
メモを貼った。
[背中に受ける感触と僅かな重みに振り返り、
片腕でドリベルを抱き寄せた。
こめかみと目元に唇を寄せる。]
特別な場所 … ってこと。
他にも、たくさんあるよ。
[夜になると光る花の咲く渓谷だとか、
陽の光が雨のように降り注いで見える洞窟、
泉にはいつも綺麗な蝶が集まっている。
…そんな話を、続けて。
村の周りの森や山だけでも、
熱心に探索しないと見つけられない場所は
きっとまだまだたくさんある。]
全部、一緒に見に行こう。
![]() | 【人】 消防隊長 トルドヴィン − 川へ向かう途中 − (304) 2013/05/18(Sat) 20時半頃 |
![]() | 【人】 消防隊長 トルドヴィンありがとうございます。 (305) 2013/05/18(Sat) 20時半頃 |
![]() | 【人】 消防隊長 トルドヴィン釣りの予定ですので、沢山釣れたらお礼に差し上げます。 (306) 2013/05/18(Sat) 20時半頃 |
[サミュエルが病で死んでよかったと、
そんな最低なことを考えた。
それはラーマになるか問うた時にも抱いた想い。
抱き寄せる腕はきっとそんなことは知らないだろう。
落とされる口付けを赦しと錯覚してしまいそうで、
けれど目を瞑って享受する。]
……ちょっとずつの…楽しみにします。
…一度に見たら……感動が薄れそうですから。
[挙げられるのは、想像し描くだけで煌く、
きっと本物はそれを越えるだろう場所。]
…新しい場所も…たくさん見つけましょう。
[小さく笑んで、付け足した。]
![]() | 【人】 消防隊長 トルドヴィン[勿論冗談だが、主はどんな反応だったろうか。 (308) 2013/05/18(Sat) 20時半頃 |
![]() | 【人】 消防隊長 トルドヴィン[いつものようにチアキと攻芸と別れ、彼らを振り返る。 (311) 2013/05/18(Sat) 20時半頃 |
[自分は戦で死ぬのだと思っていた頃、
強大な魔物に殺される予感を抱いていた頃、
ドリベルは死に際に手放そうと思っていた。
それはこの沢で何度か考えていた事。
自分にとって彼が唯一のラーマだと確信はあった。
しかし、彼にとって自分が唯一のライマーだと、
自らを過信する事は無かったから。
死に至る病の脅威を聞いて、
実際的な死を間近に感じるまでは。
それは、抱きしめてこんなに傍に居ても
ドリベル自身には告げていない数日前までの秘密。
それは今も色濃く残る、
死に伴ってしまったという罪の意識に繋がる思考。]
うん。一緒に見つけていこう。
ボクらの特別な場所を … たくさん。
時間は無限にありそうだしね。
[笑ってくれるドリベルの目元へ
もう一度、口付けを。
楽しい想像に、胸を踊らせて。]
![]() | 【人】 消防隊長 トルドヴィン[次に会ったのはジェームスだった>>223 (315) 2013/05/18(Sat) 21時頃 |
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