268 オリュース・ロマンスは顔が良い
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[細くなる声が途切れて、先に紡げなさそうに止まったのを見て、最終確認をした。
ぶんぶんと勢いのいい首肯が返り]
あ、ああ、頭振るから……
大丈夫?
じゃ、ない、よね。
[酩酊からの目眩はとても覚えがあるものだ。
声が細って出しにくそうだったから、それ以上の返事は求めない。
前にのめる身体を支え起こして、自分の肩に凭れさせるように抱き寄せた。
一度超えた線は、再び超えるのも容易い。]
えっと……その。
いろいろ、ありがと、う?
[ありがとうと受け止めるのが正しいのかどうかわからず、疑問符がついた。
素敵な人だとか、素敵な作品だとか。
作品はともかく面映ゆくなるような言葉を多くもらって、くすぐったい。]
……あの、さ。
さっきから漂う香ばしい匂いが
俺は、とても気になってるんだけどね。
パンの焼け具合は、大丈夫かい?
[トースターをちらりと見て。
中断してしまった食事を再開しようと、促そうか。
そろそろ腹の虫がまた騒ぎ出しそうなことであるし。
彼がパンとシチューを用意してくれている間、互いのグラスへ追加のワインを注ぎ。]
そういえば、手がすきだって初めて聞いたね。
こんな手でよければ、いくらでもどうぞ。
[嬉しげに笑う間も、白手袋は脇に置いたまま。
湯気の立つシチューに舌鼓を打ちながら、顔を緩ませた。*]
別に僕は、その。
素敵、なんて言ってもらえるような人では、なくって。
仕事に夢中になって寝るの忘れたりするし、
アイスコーヒー用意したのに飲まずに机濡らすし、
かと思えばそのグラス落として割って大惨事にするし、
[自分以上に緊張している人がいると、逆に落ち着くのだから人間というのは不思議だ。
つらつら出てくるのは、自分を下げる言葉だからかもしれない。]
挙句の果てにこの間は酔っ払いすぎてマーケットで迷って、君の公演に間に合わなかったりするようなやつなんだけど――
[言ってて本当に情けなくなってきた。
自慢じゃあないが粗忽者だし、生活力というものは欠けている。
気の良いオリュースの住人たちの協力あって、なんとかやって行けているようなもの。]
そんな僕ですけど、幻滅したり、しません?
[若者の憧れなら、今潰えてくれればまだ傷が浅い*]
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