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[ あの世界での死が、再出発を示すなら。
何一つ間違いではないのだろう。
新たに拓けた道が、
只明るいだけとも限らない。 ]
……俺なんかよりも、
他のみんなの方があるんじゃねぇの。
そういうの。
[ 養はもちろんのこと、だが。
指に挟んだ煙草を口許に寄せて、
また、離した。
胸元に燻ぶった妙などよめきは
煙草のせいにしてしまえば、良い。 *]
メモを貼った。
[ だって私達、ただの人間だものね。
そんな超能力があったら、楽しいかしら。
苦しいかもしれないけれど。 ]
知らなあい
[ だってよう君、私のペットじゃないもの。
ニュースの情報は限られていて、
夢の中の記憶と掛け合わせて、
お腹、痛かったんだなあって。それだけ。 ]
[ 冷たい手の中のココアが、段々と
丁度いい温度になったから、開けるの。
甘ったるい匂い。眠くなっちゃう。
イヤホンの無い姿を褒めたら、
惚れた?なんて。流石ひいらぎ君だね。
そうね
好きになっちゃおうかな
[ 今までずっと、ペットの事で手一杯だったもの、
恋愛なんて、してこなかった。
好きな人でも作れば、変われるかしら? ]
[ 缶がカラン となった時にね。
いろはちゃんがやってきました。
おはよう、いろはちゃん
無事出れて、良かった
[ ひるの君の話は、正しかったみたい。
校舎の中で夜を超えた時の記憶……あるいは
夜を超えなかった記憶は、最早遠くて。
二つのボタンを押していたのですから、
私はびっくり、不思議な顔をする。
ふたつ飲むの?
ようこちゃんの分?
[ ふたりは、仲良しですから。
首を傾げながら、尋ねます。 ]*
メモを貼った。
[「おはよう」だって。
―――うん、その挨拶は何だかしっくりくる。
まあ、ね。無事だね。
ルリちゃんこそ無事で何より。
[ふだんの挨拶みたいな調子でさらっと、言った。
無事に帰れる事例は多い……らしいけど、
生きて、動いているクラスメイトの姿を見るとちょっとはほっとする]
[重々しい音とともに吐き出される缶の数はふたつ。
それを見届けていたらしい宮古から疑問が飛ぶ。
あ、 そう、じゃなくて……蛭野くんの分。
学校に行く前に奢られちゃいましてね。
で、いつか返す、って言った手前とりあえず買っておくかー……って思って。
[ようこちゃん、と。なんだかんだ気がかりにしている人の名前が出てきたから。
苦笑を交えつつ正直なところを話す。
奢られたことすら養の世界での一部にすぎなくて、
蛭野の財布には1円たりとも損失がないにしても。
イロハはおごってもらったミルクティーの缶の温かさをおぼえていた。
だから借りを返そうと思った。それだけのこと]
[宮古が言っていた賭けの報酬は。
ちゃんと宇井野の手にわたったのだろうか。
そんなことを考えたから、イロハは訊ねてみたくなった。
ハッピーエンドを信じるかどうか]
ね、みんな、ちゃんと帰ってくるかな。
養くんも。
あたしは、……なんとかなるって思うんだけど。
[そうしてまた賭け、という言葉を思う。
イロハの言ったことのあたりはずれをその対象にすることは、
……外れた時にもやもやしそうだから、
話はいったん終わりとばかりに曖昧に笑う。
右の手の中には、自販機から取り出した小銭のじゃらじゃらとした感じが残っている*]
[ 一本は、彼の指先へと収まっていく。
意外、と思ったのは真面目そうな堅治が
言わずとも受け取るとは思わなかったからだ。
そして、可愛さの欠片もない光景に馴染む姿から
マフラーに沈む顎を眺めてみていれば、
首元を暴くように伸びる指先が見えた。 ]
ふぅん、
[ 窓に反射する堅治の首元に薄ら残る痕。
双眸も同じように薄まれば、そっと逸らす。 ]
心理学の本。持ってんだろ?
[ あの本があったから。とでも言いたげに答えて。
それでも、返答に深追いをするでもなく、
また、ふぅんとだけ答えてから壁に寄りかかる。 ]
まあ、な
それなりに生きていけりゃ、今はいいか
[ 同意を示す。
吹っ切れた、かどうかは分からないけど
自分自身で固めた鎧を嘘にしたくなくて
なんでもない、みたいに簡単に頷いた。 ]
メモを貼った。
[ 再出発をするといっても、人はそう変われない。
頷くみたいに、簡単には変われないのだから
何かを捨ててきたからと言っても、
結局のところ、俺は俺のまんまだったけど。 ]
誰しも、悩みはあるのかもしんねぇなあ
……でもな、今は堅治の話してんだけど?
[ 自分より目線のやや高い堅治の額に
いっぱつデコピンでもおみまいしてやろうか。
伸ばした指が果たして届くかは分からないけど。
煙など立たない堅治の手元にある煙草を見れば、 ]
火。ないと意味ねぇだろ
いらないもんはちゃんと突き返せっての
[ 弄ばれるだけの煙草に肩を竦めれば、
そんなに安くないんだからな、と付け足して。
よいしょ、っと凭れた壁から離れる。 ]
探しに行くぞ、火。*
[ たくさんのものを受け取って、
全部が馴染みの深いものになった。
てんとう虫を好きになったみたいに、
煙草だって 大人になったら、
持ち歩くようにもなるのだろう。
理想を描くための時間ばかり覚えた指に、
大人の嗜みを教えてやるのも悪くはない。
それだけだ って、思いこむ。
同級生の煙草を咎めるような真面目さもないし。 ]
ああ、あれか。
[ 持ってただけだ、って風に。
短い答えで区切りをつける。
心理学の道に進むわけでもないのだから、
悩みを抱えるが故と思われてもおかしくないか。
同意が見えたら、
ほんの少し、安堵した。
固めて形を整えた鎧の内側は、
覗かれてしまうことを怖れている。 ]
[ 世を渡る器が出来ればそれで良い。
人生の半分以上をかけたって、
中身は変わってくれなかったから。 ]
……ははっ
そこは誤魔化されてくれよ。
[ あでっ て
わざとらしく声を上げた。
デコピン一発で腫れやしないが。
額をゆるく、さすって。おろして。 ]
どうせ、大人になれば付き合うもんだろ。
火のアテ、……ああ。
[ 問いを遮る。
なるほどな、って、病院の方を見た。
壁から離れて、扉に手をかける。
安くない煙草のおかえしは、
自販機のジュースでどうだ、って、わらって。
外に出たらまた、
冷えた風が頬を撫でる。
頭の中が 雪がれたようだった。
持ったまんまの煙草をくるりと回して。 ]
……友達とな、久しぶりに会ったんだ。
会ったけど ひさしぶり、って、言えなかった。
俺が、昔から変わりすぎて、
どんな顔すれば良いのかわからなくて。
ごめんね、って、気持ち。
ずっと引きずってる、って。
だた、俺が情けないってだけの悩みだ。
[ 軽く流してくれって、浅く笑う。
友達本人に言うのはどうだって、
そう、思いもしたけども。
気づいてないから。
気づいてないのを良いことに、
ごめんね を、押し付けたかった。それだけ。 ]
[ 昔も今も 怖がりなままだ。
ひさしぶり、って、いったら。
嬉しい が、あふれてしまいそうで。
おともだち で、いるには。
たぶん 今の形が一番、
綺麗に収まってくれるとおもう。
それで、良い。
自己満足にすぎないって わかってるけども。 *]
![]() | 【人】 R団 タカモト
(378) 2019/06/17(Mon) 22時半頃 |
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