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[知っている。よく知っていた。
ならば、どうすればいいかわからなかった。
だからこそ、あの時。
そして彼に「誘われ」た時。
男は、優しさと反対の道を行った。
あの家族から更に父を奪う事になると知りながら
大義名分をたて、信じた道を進む事にした。
話し合うこともあるいは出来ただろうに。
うらまれることなど重々承知だった。]
[――……「村医者」を罰すならば、
一番最後につるし上げればよかったのだ。
すべての罪を押し着せて、
「疑いあいを唆した、こいつこそが大罪人だ」と
そう云って処罰してしまえばよかったのだ。
それを予感し、受ける覚悟すらあった。]
( ……残念だったね……。)
[それとも、「裏切りもの」たちは
(それが男の予想する彼らだったならば)
あの火刑で少しは、溜飲が下がったのだろうか。
そうならばいいなと思う。
きっと、生きる限りそうではないんだろうなとも思う。
罪は人の心にすまうもの。
けして、逃れられはしないものだから。]
[
夢の中に彼の背を見た。
無邪気に声をかけていた時は最早遠く
降り注ぐ雨の中立つ彼の姿は
一層、孤独なように思えた。 ]
( ……ルパート。 )
( ………………、僕は)
[ 聞き覚えのある足音が聞こえた。 ]
― 現実へ ―
[目を開ける。
顔も体も、依然として真っ黒な影のまま。
( ……足音。)
視界の端に、蒲公英が揺れていた。
白い綿毛が風にそよいでは、
( ……噫、聞きなれた、足音だ。)
一つ、また一つと飛んでいく。]
タンポポの綿毛を一息に吹き飛ばす。
――種が残らなければ、恋が叶うんだと。
昔、よく遊んだ人間の子が言ってたよ。
[彼女はとうの昔に亡くなったが。]
[影は前を向いたままそういうと、
ずるりと立ち上がり、
彷徨う幽霊の目の前に立った。
自分が抉った首の惨状がそのままなのを見ては、
虚勢の様な笑顔を浮かべる。
全て黒く塗り潰された顔では伝わりはしないが]
…………やあ、ルパート。
[そう、静かに元友人の名を呼んだ。*]
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![]() | 【人】 徒弟 グレッグ―宿屋裏手・小屋の前― (288) 2015/05/18(Mon) 21時半頃 |
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![]() | 【人】 徒弟 グレッグ[はじめから、投票などというものを使わず。 (314) 2015/05/18(Mon) 22時半頃 |
![]() | 【人】 徒弟 グレッグ
(315) 2015/05/18(Mon) 22時半頃 |
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[ゆらり、幽霊の行き着いた先は懐かしき木の根元。
死出の道行にも見かけた、一本の木の下に
…─────、
[ひゅう。と、喉から開いた穴から空気が抜けた。
これではタンポポの綿毛は飛びそうにない。
向こうを向いたまま、昔がたりを口にする黒焦げに、
そんな、他愛もないことを思って]
… スティー 、ヴ
[名を呼び返す音は掠れて聞き取りにくく、
ひゅうと空気の通る不快な音が混じる。
おかしいなと喉に手を遣れば、またそこから血が滴っていた。
少し眉を顰めてみる。
こんな姿を、また晒しに来たかった訳じゃない。
これでは、あまりにこれ見よがしではないか。
とはいえ向こうも黒焦げなのだから、これで丁度というわけか]
……………………………。
[ああ、やはり。彼を前にすると言葉を失う。
なんだ、これは死んでも同じか。
死んでも人は変わりはしないか…当たり前の話だろうか。
血を押さえるようにして、喉に手を当ててみる。
可笑しかった。こんなに穴から空気を吐いて、
なお、喉に言葉が詰まるとでもいうつもりか]
……………………。
… 謝りに、……───来たよ。
[長い沈黙の後、ひどく聞き取りにくい囁き声を風に乗せ。
一歩を踏み出しす足が、タンポポの上に重なった。
透き通る足の下、タンポポの白い綿毛が身体を抜けてふわり、闇に白く浮き上がる*]
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![]() | 【人】 徒弟 グレッグ[家畜の騒ぐ音に、 (351) 2015/05/19(Tue) 00時半頃 |
[焼かれた体に未だ炎が燻るように
ゆらりと尾のような影が揺らめいた。
――かちり、と影の爪が一度鳴る。
(誰が彼を殺したのか)
ひゅう、と虚ろな空気が通う音。
(あの喉を抉り殺したのは自分)
つ、と骨ばった首から、ぽたぽたと血が滴る。
(あの血を掌で受けたのも、自分)
呼ばれた名と、続かない言葉。
(…………ああ、変わらないな、何もかも。)
彼が――ルパートが、何を知っているのか、
何も知らない影は、彼が眉を顰めた理由を
正しくは理解していない。
ただ、死んでもまだ痛いのか、と思っただけだ]
[長い長い沈黙の中、
影は、無い目でただ鳶色を見つめている。]
……………。
[ 彼が一歩。踏み出せば
花は折れることなく、綿毛を揺らすだけ。]
[ 何を、と思う。]
………… は。
[小さく息を吐いたのは、沈黙が重かったからで。
それから、小さく肩を竦めて、それは少し
憎たらしげな仕草に見えただろうか。]
…………子供の時は、
一晩寝りゃすぐ仲直りだったのにさ。
なんだって、僕ら今こんなに不器用なんだ。
謝られるような事は、されてない。
(むしろ謝ることの方が多すぎるんだ)
それでも。
[相も変わらず、彼を目の前にすれば
胸が痛み、心が血を噴出すような心地がするが
少しだけ向き合えるようになったのは
最早、死んでしまったから、というのが大きい。]
ルパート。
……何か、あるのかい……?
[喋ることさえ辛そうな彼に
問う声は、できる限り柔らかく。
まるで診察中の医師のような口調で問うた。*]
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![]() | 【人】 徒弟 グレッグ[抵抗を試みて、それをサイラスに封じられて、 (367) 2015/05/19(Tue) 01時頃 |
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