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─ 幕間 ─
[どうして、自分のサイキックは氷槍だったのだろうと
闘いながらに考えたことは幾度かあった。
炎でも、水でもなく。
光でも闇でもなく。
炎のように人を温め、罪を焼き払い、
辺りを照らすこともなく。
水のように人の渇きを潤し、岩肌を削り、
全てを水底に沈めることもない。
貫こうとする、凍て付かせようとする、
それでいて陽の光をキラキラと返しながらも
砕け散ってしまったりもする。
それが、自分のサイキックだった]
[相棒のそれと比べて攻撃的なその力は、
確かにこのゲームの中で役立つものでもあった。
しかし、それで他者を殺めてしまったのも事実。
自分は、若しかしたら自分に危害を加えて
殺してしまった人物に対抗したい気持ちがあって
この能力を得てしまったのではないか、
そんな事を思う。
失ってしまった、
エントリー料として支払ってしまった
自分の中のW女性らしい自分Wが、
相手に危害を加えようとしたまでかは分からない。
けれど確かに死にたくはなくて。
あの時だって桃源郷を目指しての
逃避という生き方を目指そうとしての家出で。
けれど、残された自分の男性的な部分は、
相手に仕返ししたくて、けれど
殺したいかまで問われると頷くことは出来ず
氷なんて砕けるものを、武器として
選んでいたのかもしれない]
[タネがわかればおのずと対処法も浮かんでくる。
あの漆黒のものが本で見た魔法陣と同じなら
壁に描かれた陣の文字を消す、もしくはビルの壁ごと陣そのものを破壊すればこの召喚の儀式も止まるはず。]
―パティさん!
[ここからノイズの攻撃をかわしつつ陣へ到達し破壊する事を考えれば、彼女の能力の方が適している。
彼女が陣の元へ走ろうとするならば、少年はサポートに回る為構えただろう。*]
[キラキラと輝く、綺麗な氷。
それを赤に染めてでも守りたかったのか。
それとも、
微かに残る母との大切な思い出ゆえか]*
メモを貼った。
[ リョウが語る言葉は、
この七日間で自分の目でも見てきた事。
命を賭けた【 死神のゲーム 】
ノイズとか死神とかに襲われて、
怖かった事もあったけど、
それと同じくらいに、あるいはそれ以上に、
“ 楽しかった ”のも本当で。
だから、彼女言う事は伝わったし、
最後の言葉を聞いて、悟った。
―――― 止めてあげるべきじゃない、って ]
なによ、
途中で引き返したくなっても、知らないわよ?
[
言いながら、でも、分かっていた。
リョウは、一度言い出したら聞かないし、
後ろ髪を引かれるような事なんて、しないだろう。
無意識に握りしめた拳は解けない。
だって、気を抜いたら
笑顔で見送れなくなりそうだから ]
[ だけど、下がっていた視線が思わず上がったのは、
全く予期しない答えが返ったから。
し、知らない人 …… ?
[ なのに、どうして
あんなに大事にしてるんだろう。
ポカンとしている間に、
リョウの髪が解かれて、黒髪が靡く。
( 境界の向こう側から )
手渡された、それは ―――― …… ]*
―― 二年前 ――
[ しゃがんで差しかけた傘の中。
見下ろした顔は、夜の暗さと、
フードの陰に隠れてよく見えなかった。
短い金糸だけが、ちろりとその陰から覗く。
大丈夫か、と。
呼びかけた声に応えはすぐには返らなかった。
雨音に掻き消されないように、
注意深く耳を傾けていたけど、
やがて聞こえてきたのは、予想外の返答だ。
誕生日 …… ?
[ 覚えていると思う。普通は。
だって自分の子供の生まれた日だもの。
おめでとう、って祝ってくれるのが、
自分にとっては当たり前だった。
でも、目の前に転がってる少女にとっては、
もしかしたら違うのかもしれない。
だって幸福に包まれている子供は、
雨が降る夜に、独りで道路に倒れてなんかないだろう ]
[ 掛ける言葉を失う。
雨が傘を叩いて、その淵から雫が止めどなく流れ落ちる。
ふ、と。
濡れて、ぼさぼさの金糸が目に留まる。
女の子なのに。勿体ないなぁ、って。
そう、思った時には、]
―――― これ、上げる。
[ 小さなショッパーを彼女の頭上に翳した。
それが濡れないように、傘の角度を変えて。
背中が冷たくなり始めるけど、構う事は無く ]
誕生日忘れられたら、寂しい、よね。
だから、通りすがりだけど、祝わせて。
―― 誕生日、おめでとう。
[ 夜の闇と傘の陰で見えなかったかもしれないけど、
それでも黒髪の隙間から覗く目元は、緩く、笑んでいた。
命がある事を、その存在がある事を、
この世界に生み落としてくれた親に祝われないのは
とても寂しい事だから。
せめて、その寂しさが少しでも紛れればいいと思う ]
キミにとって、いい日でありますように。
[ 差し出したショッパーの中には、
「 Happy Birthday 」と書かれたタグと
リボンが巻かれた箱が一つ。
その中身は ―――― …… ]*
[ 鮮やかな空の色をした シュシュ ]
…………。
[ 同じとは、気付いていた。
でも偶然だろうと、思っていた。
だって、とても大事そうにしているから。
あの日は、名前も聞かずに、渡すだけ渡して去った。
たったそれだけの事だったから、違うだろうって。
( でも、いま立っている現在地が、
“あの日”と“今”が交わる地点か、
一人じゃ分からないから。だから、)]
…… アタシもねえ。
前に、知らない女の子に、
これと同じもの上げた事があるのよね。
短い金髪の女の子で、雨が降ってる夜に
道路に転がってたから、びっくりしちゃった。
[ 苦笑いして、手の中の青色を見遣る。
差し出されたそれは、
少しばかりゴムが緩んでいたけど、
どこもほつれてはなくて、
本当に大事に使われてたんだろうな、って ]
[ ちらり、上げた視線。
解かれた髪は、金じゃなくて、黒だったけど、]
―――― 知らない、かしら?その子の事。
[ 流れるような長髪に、
微かに、あの女の子の姿が、重なる気がした。
境界のこちら側からは、動かないまま、
手の中の空色を返すように、ただ、手を伸べる ]**
メモを貼った。
![]() | 【人】 花売り メアリー[暗闇と静寂の広がるステージの上では、コール音がよく響く。>>@70] (85) 2017/06/24(Sat) 17時頃 |
![]() | 【人】 花売り メアリー昨日の話? (86) 2017/06/24(Sat) 17時頃 |
ー 九想屋付近/目覚めた時のお話 ー
(その手があったか……!)
[なんて心の中で驚いたのも無理はない。
だって桐生の能力で出した氷を溶かした水使って血を洗うなんて発想オレにはなかったんだもの!
しかもちゃんとハンカチ持ってるし!
悔しい!でもナイスアイディアだ桐生!
あ、オレも水使うか聞いてもらえた時は軽く顔洗うのに使わせてもらった。
口元は勿論洗うけど、目が覚めたばかりだからスッキリしたかったのもある。
さて、顔洗って服で拭いたらちょっとした日常もどき風景はここまで。
ボロボロになってもオレを呼ばなかったのはなぜか
そんな事をオレが聞いたら言葉を詰まらせてるような、答えに困ってるような
そんな様子だったから顰めっ面もやめて、急かさず桐生が話すのを待ってた。]
[いざ話が始まったのはいいけど
オレにとっては疑問だったり、そうなのかな?っていう想像が浮かんだりする内容でさ。
普通に生き返りたいって思えるってなんだ?
生き返りたいって思ってないのか?、とか
迷ったというのは言葉になってなかったあのテレパシーがそれか?とか
エントリー料の関係で自分の事がらんどうって言った時はそう見えてなかったから驚いたし
親から産まなきゃ良かったって言われるの相当ショックだったろうな、とか
とにかく色々考えてたんだ。
酷い目にあったってとこに関してはまぁ……木村翔子が電話で言ってた事がそれに当たるのかなとか想像出来たから、そこは深く考えなかったけど。
でも泣きそうになりながら話すもんだから、無理しなくていいぞとか言ってやるべきだったかもしれない。
かもしれないけど]
………うん?
[今回最大の悩みポイントが投下されて言えずじまいに。
”俺の中の、女の子”とはさてどういう事なのか。]
(女の子って、男子女子の女の子だよな?
桐生って実は所謂オネェだったとかそんなん?
それとも心と身体で性別違うとか……んん?)
[ごめんって言われたのを聞いた後、腕組んで黙り状態のまま暫く考え込んでた。
考え込んだ原因はそこだけじゃないけど、目を瞑りながらそうしてた。
何をどう言えばいいんだろうなとか、色々考えて。]
………ありがとうな桐生、エントリー料の事とか
オレが聞いてない所まで話してくれてすげぇ嬉しい
[漸く目を開けて先ず出て来たのは桐生への感謝の言葉。
難しい事を考えていたら結局オレが言いたい事言えなくなるんじゃ?なんて結論が出ちゃったからな。
まとまりも何もない内容になってもいいから、とりあえず喋ろうって。]
ただな……”俺の中の、女の子”がどういう事なのか
ここで一緒にやって来た”桐生ロイ”しか知らないから
オレにはイマイチ、ピンと来てないけど
そんなのどうでもいいかなって、オレ思うんだ
言い方悪く聞こえるかもしれないけど
そういうつもりはないぞ?
ただ……オレ、桐生の事信頼してたし
色々ツッコミ入れたけどバカやってる時も楽しかった
お前と友達になれた気でいたんだ
だから、今まで一緒に頑張ってきた桐生がな
上っ面だけとか、がらんどうだとか
その上エントリー料の事聞いたらさ
生き返って本来の桐生と友達になりたいって思ったから
女の子ってのがどういう意味でも気にならねぇかなって
友達も男も女もない、って言うだろ?
[友達がいた事ないからなんの説得力もないけど
そこは一旦目を瞑って見逃してほしい。
上手く話せてるか分からないけど、まだ話は終わりじゃないから
それが心配でつい首をぽりぽり掻きつつ、話の続きを。]
生き返れるなら生き返りたいって、そりゃ思うさ
オレ、バスケしか好きでやれる事ないのに
その事で考え出すと周り見えなくなるし
元の体は膝ダメになってて、今みたいに満足に動けない体に戻るし、友達だって1人もいないけど
それでも色々経験してきたオレの唯一の身体だし
さっきも言った通り本来のお前に会ってみたいし、友達になりたいからな
まぁ……桐生が生き返りについてどう思ってるにしろ
オレは何を聞いても、何を知っても
お前を1人置いて行くつもりはねぇよ、って
……それは確実に言える事かな
[と、一応話し終えたところでオレの緊張はぷつん。
だらだらっと長く語ってしまった気不味さに苦笑い。]
いやー悪い、長すぎて伝らねぇよな!
どう言えば上手く伝わんのか分かんなくてさ
……あ、こう言えば伝わるか?
[桐生の目の前に、ビシッと右手を差し出して]
今までもこれからも、オレ達は相棒だろ?
[全てこの言葉でオレの気持ちを表せる。
……というのは流石に大げさだが、ほぼ間違いはない。
差し出した手を握り返してくれるといいんだけど
強制出来る事ないからダメだったらその時は仕方ない。
でも、今話したのは全部本心だ。
こいつの為ならどんな事でも頑張れる、頑張ってやるとも思える。
それ以上の理由は、オレは思い浮かばないんだ。*]
メモを貼った。
[パートナーが陣へ到達するまでの間
一体、また一体と新たなノイズが召喚されたが
内5体はこちらを気にする様子もなくそのまま東へ向かっていった。
もしノイズが陣より無限に召喚されるというなら、そのすべてを相手にしていたのではとてもじゃないがキリがない。
彼女の邪魔をするノイズのみに標的を絞り込んで…]
[4体のノイズが砕かれ、もしくは絞り粕となっただろうか
黒い骸の道を敷きながら、ようやく彼女が陣の元まで到達したのを見届ければ少年は叫んだだろう。]
そのまま壁ごと壊して!
[そして言われるまでもないと即座に構えられる回し蹴りのモーション。
さぁ、陣は無事に破壊できるのか。*]
メモを貼った。
─ 6日目/九想屋付近・目覚めた時のお話 ─
[戸惑う内容だったとは思う。
生き返るのを躊躇う人間が居るなんて、そもそも
じゃあ何でW契約Wしてゲームに参加したのだと
問い詰められても不思議ではない。
消えるのが怖かっただけの臆病者なのだと、
問われたならばそう答えていただろう。
だが、彼はそれを問う事はなかった。
ただ、此方の言葉にずっと考え込むようだった。
エントリー料に関しても、腕組みをして。
どう言う意味だとも問われる事なく。
その暫しの沈黙が恐ろしくて奥歯を噛みしめる。
ぎゅっと瞳を閉じて次に来る言葉が何であれ
耐えようとしていた、その時に]
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