278 冷たい校舎村8
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[ 立ち上がって、大きく伸びをする。 あのさあ、愛宮、これマジできりないよ。 やれるとこまでやるけど……腹減ったな。
家庭科室。おにぎりがある。だっけ。 じゃ、家庭科室前まで片づけようか。*]
(249) 2020/06/20(Sat) 22時半頃
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[ 愛宮心乃の寝起きはいつもと違う
ミュージックなんて聞こえない無音の目覚め。
嫌な汗をかいているのが分かる。
滲んだ額を、パジャマの袖で拭った。
台所へ降りて、冷蔵庫を開けた。
ちょっとつまめるもの、……見当たらない。
コップ一杯の水を喉に流し込んでから、
コートを羽織り、近所にコンビニへ歩き出していた。 ]
[ 夢占いをしたら、どんな結果になるんだろう?
結局、あの校舎の主は誰だったのか。
答え合わせがままならない状態で、
追い出されてしまった、不思議な世界だった。
……もしかしたら、己の内に秘めていた感情が、
しらずしらずのうちに見せた、単なる夢だったなら、
いいのに─── って思っていた。 ]
[ 愛宮心乃は歩きスマホはやっぱりしない人間だった。
だけれど、ちょっと出かけるって時に、
念のためスマホを持ち歩くのは、現代人ゆえ。
コンビニのレジに並んでいる間、
ふと、ぴかぴか通知が光ってるのに気づいたら、
開いてみないわけがないんだよね。
……見覚えのあるメール。
続いて届いてたのは、なっちゃんから。 ]
[ あの、増築されたぐちゃぐちゃな校舎。
しおりちゃんの頭の中だったんだ、って呟いた。
どうしよう、って思って、
コンビニのおにぎりコーナーにいた。
夜だからか、種類はほとんどなくって、
昆布をひとつ選んで、ビニール袋を揺らしながら、
愛宮心乃は、走っていた。
ついさっきまでも、走ってた気がするけど
身体はまだ、心乃にしては軽くって、
ぜえはあしながら、病院まで走っていた。
……自転車とか、親に送ってもらったりとか、
そういう頭がなくって、ただ。走っていた。 ]
[ もう、だめだ── って思ったら、
ようやく病院のエントランスが見えてくる。
呼吸を整えるため、走るのは一旦終了。
深呼吸をしながら、エントランスまで歩き始める。
このときに、まだ自販機の下に人影は見えたかな。* ]
── 現在:病院前 ──
[ お元気ですか?元気じゃないね。
元気だったらチョーヤバいね。逆に。
今の状況で元気な人がいるって言うなら
教えてほしいな。と郁斗は思う。
やばい。って、かわいい。と同じくらい
ふり幅のある言葉でしかないけれど、
どうしたって、やばい。としか言えない。
ボキャブラリー貧困?知ってる。
別に良くね? ]
[ じゃあ夢の世界が優しいだけかっていうと、
……うーん。どうだろ?(笑) ]
[ マフラーを片手で解く。こと82(0..100)x1秒。
適当にぐるぐるって巻きなおす。
おしゃれさ?何それ美味しいの?ってふうに。
片手で綺麗に巻けるほど、郁斗は器用じゃない。
でも首が締まるよりマシ。じゃないかな。
びっくりするくらいストレートな髪の毛が
マフラーの下から露になって、
また緩いカーブを描いていく。
マジ髪綺麗だよね〜(笑)って、
こんな状況じゃなければ言ったんだけど。 ]
[ たぶん、紙と舞台の上の世界が一番優しい。
消しゴムだって使えるし。
練習だって出来るし。
…………でも、もう終わっちゃったね。 ]
終わ、……そっかあ。
[ 終わり。って単語すら、ちょっと怯んだ。
なんたって、怖い。
その意見に同意しかなかった。
脚本を語るまなはだいたいハイテンション。
だった、ので。いつもと違う雰囲気で、
それすらも郁斗は、足元がぐらつく気がする。 ]
まぁ、も〜病院ついたし、
ゆっくりしなよ。
おれたちたぶん、待つしかできないし。
[ さっき言うのをやめたっていうのに、
つい口に出してしまった。残念ながら。
どうしようもない事実だった。
紫織は自殺未遂を起こして、それは過去で、
現実の過去はどうにも書き換えられない。
し、夢から醒めてしまった自分たちは
もう声を掛けることなんて、できない。 ]
[ コンポタの缶にかぶさる白い息を眺めてたら、
まなが手を振ったので、そっちを見た。
千夏だった。あの夢にもいた。
自分も軽く手を振って、そうしたら
心乃の姿も見えた。また手を振る。
続々と集まってくるクラスメイトは
なんなんだろうな。何もできないのに。
なんにもできないけど、こういう時って
無駄に、足掻いちゃうよな。と郁斗は思って、
人数は増えたのに、物寂しい気持ちだ。 ]
おはよ〜、心乃ちゃん。
……おにぎりぃ?いいなあ、おなか減った。
[ コンビニの袋がぶら下がっているのを見て
郁斗はそう言ってみる。
半分以上、ウソだった。おなか減ってない。
ただ会話していたいだけだった。
そもそも、おはよう。って挨拶自体
相応しいのかは分からない。
いつも動かしている頭の、四割くらいしか
上手に働いていない気がした。 ]*
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[ 彩り豊かなおにぎりに、 礼一郎はわあっと感嘆の声を漏らした。 おにぎりなんて、海苔をぺたり。 食べていけば梅か鮭、みたいな、 ベーシックなのしか馴染みがなくて。
うん、でも、あれ? あのさ……、]
(282) 2020/06/20(Sat) 23時半頃
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──現在/家庭科室──
……ど、 どういう計算?
[ 食事は残しちゃいけません。 ──って、習わなかったか?
なあ葉野、これ、 何人が何個ずつ食べる計算なんだ?
もちろん、礼一郎の頭には、 そんな計算ありませんって想定はない。]
(283) 2020/06/20(Sat) 23時半頃
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[ すでにいくつか食べられた様子はあるが、 葉野と福住は女子だし、つか葉野も食べるのか? レイとソーマ……そんな大食漢だったかね。
……細かい計算なんてよそう。 礼一郎はとりあえずって、 ベーシックっぽいのふたつと、 変わり種っぽいのからツナカレーを手に取る。
ついふつうっぽいの選んじゃうのは、 礼一郎の性格なので仕方がない。]
(284) 2020/06/20(Sat) 23時半頃
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……いただきます。
[ 例によってひとり呟いて、 かぶりついてみたら、 中身はおかかとツナマヨだった。 ……ツナがかぶっちゃったな。]
(285) 2020/06/20(Sat) 23時半頃
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[ ゆっくりとそれを咀嚼していたとき、 礼一郎はふと黒板に残されていた、 短い返事に気づいた。>>3:326
お礼、こっちが言う側だと思うんだけどな。 ……やっぱり、帰ったら何か奢りますね。
……帰ったらって、何?
礼一郎はやっぱり、 すっきりしない顔をしているんだろう。
ふと、さっきの会話を思い出して──、]
(286) 2020/06/20(Sat) 23時半頃
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[ 委員長なら全部書いちゃう? ──って聞かれて、>>256 礼一郎は一瞬答えに詰まった。
「 ……遺書を宛てる相手に、 関係あるなら、書くんじゃねえかな 」
考えた末にそう答えたんだけれど、
……そうだね、言っても仕方ないことも、 言うのが恥ずかしいこともあるだろう。
葉野の言うのはたぶん正論だった。 だから、それ以上は何も言えなくて──、]
(287) 2020/06/20(Sat) 23時半頃
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──つっても、 許さなくてもいいって、 なんの話だよ……
[ ごちそうさまでした。
ちゃんと食事を終えてから、 スマートフォンを取り出した。
電波状況はいまだ圏外。 それでも確かに届いたメール。 正解を探すように、しばらく眺めていた。**]
(288) 2020/06/20(Sat) 23時半頃
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[ 夢の世界は、どうだったんでしょうね。
なっちゃんのマネキンはやばかったし、
辰美君の片手もたいへんやばかったし、
ぐちゃぐちゃに増えた学校もやばかったから、
………… 優しいだけじゃないですかね?(笑) ]
[ 一番優しくて、一番夢中になった、
あの、紙と舞台の上の世界は、もう、終わっちゃったね。 ]
[ ぐるぐる。長いもの(物理)に巻かれている。
エントランスと街灯と、それから自販機と、
少しのあかりに照らされた赤いマフラーは、
ちょっと目立つ。
おしゃれは多分、フツーにそこそこ?
気にしないひとでも、ありがたく巻かれましょう。
あたりまえのことです。おしゃれと命の天秤。
あたしの髪がまっすぐになったり、
カーブになったり忙しくて、ちょっとだけ笑った。
ありがと、って、ぽつり。 ]
[ すき きらい はフツーにあるから。
短いより長い方がすき、って、
そういう理由の、あたしの髪。
いつもの調子だったら、
ありがと〜(笑)で返すぐらいの、
……そういう、軽いやりとりが、
あったのかもしれないけど、
やばいね、あたしたち。やばいね、いつもより。
ずっとこれ言ってるなあ。もう。
他に見つからないじゃん。状況。 ]
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