281 緋桜奇譚−忌−
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[気がつくと、どこまでも暗く、果てしなく陰鬱な、じめっとした場所に倒れ伏していた。
辺りに生者の気配はなく、持っていた道具も全て手元にはなく、体からも功夫が失われている]
…死んだか。三途の川かな。
いや、最初に死んだのは遥か昔のはずだし、地獄に来たのは150年昔のはずだし…
こういうのを適当に表す言葉がないな。困った。
…それより困ったな。咎を受けるのは仕方ないとしても、これでは何枚始末書を書かされるやら……
もういっそ地獄滅びればいいのに。
[冥府の事は、自分も隅から隅まで知っているわけではない。げっそりとしながら、ともかく報告はせねばなるまいと、坂を下り、地獄に帰ることにした*]
次会った時……どうなんだろうねえ。
[クソ鬼が憑いていたら、という言葉に苦笑した。
そもそもこれからどうなるのか、冥府がつながるのかどこへ行くのか。]
うん、改めての紹介ありがとねー。
[なんとなく貴重なものを聞いたような気がしていた。]
十王の殭屍……?
「ああ、あいつのことじゃねえの。
あの堅そうな女。
十王の手下ってんなら納得だなァ」
[言われて、あ、と一人候補者に思い至る。
別れた後、どうやら彼女も命を落とした?らしい。
そうかー……とちょっと声のトーンが落ちた。]
?
[その後、優しげな声で話しかけられ。]
口臭……ワキ?
……っふ、あはは。
そうだね分離してるね。まあ、自由というか、
俺が住まわせてやってるんだけ……
[ど、と言い終わる前に傍らの鬼が身構えるのが視界に入り]
「はっはっは。
テメエ……死にたりねえらしいなァ!!!!!」
[あー、と止める間もなく、ガルムに殴りかかっていく明星の姿を見た。]
ねー、こんな所でくらい大人しくしてたらー。
[言ってみたところで止まるだろうか。*]
/*
相変わらず来るのが遅い時間にー
……というかちょっと寝てたごめん。
地上は大詰めかなー?
/*
大詰めねえ。更新まではゆるゆる見守ってるつもり。
― 十二年前の続き ―
[その鬼は、暴れまわっていたせいで退魔師たちに追われ、随分と弱っていた。逃れるために山に身を隠していた所に人間の子供が偶然現れたのは幸いだった。
相手の同意を得て、うまく丸め込んで"契約"をすることでやがては肉体を乗っ取ってやろうと企んでいた。
たかが子供だと高を括っていたのだが、相手からの返答は。]
――断る。
[子供は手を伸ばし、バツを作り。
堂々と断ったのだった。]
『は?』
いやだって、そんな、僕だけが都合の良い取引なんて怪しいでしょ。しかもどうみてもおじさん人間じゃないし……
絶対何かあるんだ、僕知ってるもの。
[呆気にとられた鬼と、睨みながらも心臓バクバクしている子供。人間にとっての危機的状況だ、簡単に食いついてくるだろうと鬼は思っていたのだが。
この少年は昔話おとぎ話ファンタジー小説が好きで読みまくっていたので、人外との約束、うまい話には絶対何かある、あるいは約束の隙をつかれて酷い目にあうと警戒したのだった。
人間の体を乗っ取るには手順が必要であった。こちらに有利な案に本人の同意をさせねばならなかった。鬼は子供を説得してみるも、なかなか首を縦には振らず。]
……まあ、そんなに言うならね。
可哀想だから、少しだけなら貸してあげる。
でも、「体の主は僕」だし、
「僕が許可しないと貸さない」し、
「僕が返せと言ったらすぐに返してもらう」。
[ようやく妥協してきたと思ったら、きっちりと契約内容を提示してきた。他にも細々と。
しかし、少しばかり鬼の立場に同情してくる辺り甘いと思った。そこらは子供だとも。ただ、子供の癖に慎重で、弱くて怪我までしている分際で鬼の優位に立とうという図太さは面白いと思った。
どうせ他の人間がたまたま此処に訪れるとも思えない。
ゆえに。]
『しゃあねえなァ。
その条件でお前の体に「住んでやる」よ』
いいや違う。僕が「住まわせてやる」んだよ。
[契約は成った。**]
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