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60か……
[オスカーに体重を教えられて
あどけなく見えるキィを見下ろす。
見かけ体重の4倍ほどはあるだろうか。
どんな生体構造なのかとか、
そんなことには少し興味がわく。
青い飴をまた用意しようか。]
お兄ちゃんの言うことちゃんと聞けよ。
[しゃがんで手を伸ばし、髪を乱す。
抱っこをねだられれば、
忠告を思い出して抱き上げはしないものの
抱きしめるぐらいはした。
冷たかっただろうか、
温かかっただろうか。**]
― 自室→実験室 ―
[帯を直して、ナユタと共に部屋を出た。
部屋に行く時より、大分心が落ち着いていた。
傍らの人のおかげなのだと、胸に刻んで。
実験室の扉を開けば、オスカーの姿が見えた。]
目覚めたのは、……オスカーさんだったのね
おかえりって、言ったら良いのかしら
[それとも、おはよう?と緩く首を傾ぐ。
ヤニクとリッキィがいれば、同じように言葉を交わして。
ふと、ミナカタの近くにいる小さな子に気付いて]
その子は……?
[この子がキィだと教えて貰えば、あの声の主かと
キィの頭を撫でただろう。母のように思っていると
言われたのを思い出して、優しく、優しく。]
[キィの頭を撫でていたが。
モニターの方を見つめて、手が止まった。
戦っている。
モニカが、チアキが、ソフィアが、ライジが、
4人が戦って、血を流して、苦しんでる。
モニカが魔女の様に戦う姿は、見たことはあったが
今回は何かが違う気がして、不安が募る。
そして、彼女と対峙するチアキの様子にも。]
……私の言葉は、何も、できなかったのね
[幸せを願った。
人を殺すのも、傷つけるのも、
自分で終わりにして欲しかった。
チアキの悪夢を、止めたかった。
あの時は、あんな方法しかできなかったけれど。]
[ナユタも傍にいれば、
モニターをじっと見つめながら、彼の服の裾をひいた**]
メモを貼った。
ダメだよ。
[
研究員の中には解剖したがった者も居たが、実行即死亡になるだろう。
キィはミナカタの言葉にこくんと頷くと両手を広げた。
そのままでしばらく抱っこされないと両手をだらんと下げて首を傾げて抱きしめられるままになっていた。
キィは温かくもなく冷たくもない、常温くらいの温度に感じるだろう]
やあ、志乃にナユタ。
おはよう? 3年とちょっとぶりくらいだね。
[
キィは志乃の姿を見るとミナカタの腕の中から飛び出して、志乃の脚にむぎゅりと抱きついた。
顔には満面の笑みが浮かべられ、嬉しそうに甲高い金属を打ち鳴らしたような聲を出していた。
頭を撫でられるととてもご満悦なようだ――]
その子はキィだよ。僕の項に居た子。
[そう言って自分の項を見せると深い傷跡があるのが見てとれただろう]
志乃のこと、お母さんと思ってるみたいだから――
――よろしく
[何を、というと世話というかなんというか――兄よりも母のが好きらしい]
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だめって……病気とかにはならないんだろうな。
[オスカーの言葉には不安そうに眉をしかめる。
呼吸をしているのかとか。
食事をするのかとか。
肺があるなら肺炎になるかもしれないし、
消化器官があるなら腹を下すこともあるだろう。
ひやりとするわけではないが、
温かくも感じないキィは不思議な体温。
しばらく抱きしめて頭を撫でていたけれど
「母親」がきたらそちらに取られた。
……志乃が母親なのか。
[先ほどの己の言葉は
あまり冗談にならなそうである。]
メモを貼った。
…っ、ふふ。うん。有り難くきいておく。
[まるで甘えているように頬を寄せるヤニクに小さく笑って
ヤニクは笑った事に怒ったかもしれないけれど、自然な笑みをしまう事は無い。
その顔は、彼の胸に埋まったままだから、見られる事は無かっただろうか。
ヤニクが満足するまで…それかヤニクから離れていくかするまでその状態のまま。
恥ずかしかったけれどそれに勝る感情が、確かにリッキィの中にあった。]
―ヤニクの部屋→実験室―
[どのくらい、時間が経っただろうか。
随分と長い間だったかもしれない。
ヤニクに手をひかれながら部屋を出れば、ほんの少し後ろを歩いただろうか。
着いた先の扉を見上げれば、一瞬だけ立ち止まり。
どこから何処までが悪趣味な夢の中だったのだろうかと、ぼんやりと考えながらと扉を潜った。
残りのカプセルを順々に見つめ、ある一箇所へと歩み寄る。
その中で悪夢に魘されている人を、心配そうな顔で見つめた。]
………、嘘でも、死ぬ場面なんて見たく、ない……
[それだけ呟くと、カプセルから離れる。
オスカーとケイトを見つければ、近づきはしただろうけれど、なんと声をかければいいか分からずに黙ったまま。
後から入ってきたであろう、志乃とナユタが目に入れば……特にナユタの方に視線をやれば気まずそうな顔をして。
ただいま、って言うのも……変。
[一言、ぽつり。]
――→実験室――
[廊下を歩きながら、リッキィの手は握ったまま。
扉の前に着くまで誰にも会わなかったから、その手はそのままに。
さすがに部屋に入る前は、恥ずかしくて手を離し、並んで入るのもなんだか気恥かしくて、数歩だけ先に中に入った。
彼女を抱きかかえて外に出ていたのは見られていたから、下手な誤魔化しでしかないのだが。]
オスカー。……なんだそいつ?
[部屋に入るとオスカーはケイトと何か話していただろうか、彼の傍らには小さな影
近寄ってじっと見つめる。怖がられただろうか。
彼はオスカーに少し似ていた。]
[小声で尋ねて、彼の返事を待つ。]
3年?
[夢での年月の事だろうか。
不思議そうに首を傾げたが、それ以上は問わなかった。
脚に抱き着いてくる可愛い子。
聞こえてくる金属音に、笑みを零した。
キィの頭を撫でながら、リッキィたちの姿を見つけて、
オスカーに言った言葉を繰り返せば、返ってきた声に
くすりと笑んだ。]
そう、ですね……
やはり、おはようの方があってるでしょうか?
[リッキィがナユタに向ける視線に気付いていたが、
知らないふりをした。あの時、ナユタが誰と戦っていたか。
良く覚えているから。]
お母さん、か……
[
そのこと自体は嬉しい。だけど、母親と言うのが
どういうものかは、良く知らない。
一瞬だけ、寂しげに呟けば、すぐに微笑んだ。
キィを撫でる手は、優しく。
だけど、モニターの向こうを知れば、その手は止まった
ん。おはよう、志乃。
[眠る前とはなるべく変わらない声で志乃に返す
彼女の足元に抱きついている幼子をみつければ、視線を合わせようと膝を折り。
叶うのなら、その子の頭を撫でただろう。無言で。]
で。これは誰かの隠し子?
[淡々と、そう訊ねた。さて、こたえはなんと返って来るだろうか。]
[モニターにはなるべく視線をやらずに幼子へと注がれる。
それでも音は聞こえただろうか。ソフィアの声、チアキの声。
モニカの声、兄の声。
志乃が幼子の頭を撫でる手を止めても、画面だけは見ないように。
……見れない、が正しかったかもしれないけれど。
何かしら先ほどの問いの答えが返って来れば薄く、または何やら楽しそうに反応をしめしたかもしれない。
そして、ミナカタを視界に入れると。]
ねぇ。どこからが夢?私が眼に何かされたのは、現実?
[気になっていた事を、そのまま声にしただろう。]
[暗い思考に落ちかけていたが、ミナカタが呟く声が
聞こえて
ふふ、私がお母さんだったら、父様はおじい様?
[楽しそうに声を震わせたが、隠し子と聞こえて
瞳を瞬かせた。]
そういえば、……どうして、この姿に?
[隠し子云々については、とりあえず触れないでおいた。]
[ヤニクとリッキィ、志乃とナユタ。
人が増えて、実験室はにぎやかになる。]
俺のではないからな。
[リッキィの問いの第一候補は己だろうか。
心外だ、という顔をしながら
キィの代わりに、彼女の頭を撫でる。
そうすれば顔をあげてこちらを見ただろうか。
問われた質問には
……それは、現実だ。
お前は部屋の前で意識を失ってたところを
カプセルの中に運ばれている。
夢なのは、それから先。
[その先の彼女の記憶は何だろう。]
……いうなよ。志乃。
[彼女の顔に苦い顔をする。
それでも嫌がる感情はない。
隠し子云々については自らはそれ以上は言わず。
キィについてはオスカーに説明を任せただろう。]
[ミナカタの苦い顔に、またくすりと声を震わせる。
嫌がっていない様子で、嬉しい。
"家族"――自分にとって、何より大事なもの。
兄や、妹、父。ここで共に過ごした仲間たちは、
血の繋がりはなくても、自分にとって"家族"だった。
ふと、視線でケイトを探す。ケイトは傍にいただろうか。
近くに居なければ、こっちにおいでと手招きをしただろう。]
……ケイトさん、
[どんな表情で、どんな想いで、
ケイトは、戦う彼らを見ていただろうか。
目覚めた自分たちを見ていただろうか。
自分より幾分か大きい彼女に手を伸ばして、
キィにしたように、その頭を優しく撫でた。]
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