207 愛しの貴方を逃がさない。
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[突き飛ばされて、揺れた視界の中、
壁に逃げていくウサギの姿を、見ていた。
喉の渇きは癒えていた。
残るのは、痺れるようなあまい味と、
鉛を飲んだような胸の重みのみだ。]
……ごめん。
[多分、彼女の問への答えにすらなっていない謝罪を吐いて、
ゆらり、片目を押さえて立ち上がる。
向かった先、洗面所に仕舞っていた救急箱を手に、彼女の元に戻っただろう。]
手当、するから。
……じっとしてて。
[ガーゼと消毒液を取り出して、
再び少女へと手を伸ばす。
尤も、彼女が拒むのであれば、
道具を渡して、少し離れた場所から、
遠巻きに見守るだろうけれど。**]
[新井さんは本当に美味しそうにお酒を飲む。正直、言葉で勧められるよりもよっぽど誘惑だった。けど我慢。
黙々とお鍋を食べる私と対照的に、お酒の入った新井さんはとてもハイテンションで饒舌だった。お酒の勢いで褒めそやされたのをはいはいと受け流す。はいはい、酔っ払い酔っ払い。
〆の雑炊を食べて、新井さんは見事に寝落ちした]
風邪引くよ。
[いくらお鍋であったまったって、コタツで寝落ちしたら風邪引くと思う。軽く揺すってみたけど、起きない。
仕方なく、肩にブランケットを掛けておいて、後片付けをした。洗い物をして、コタツのテーブルを拭いて。寝落ちしてる新井さんの前に、水のグラスを置いておく]
[今なら、普通に逃げられそうだった。約束したのは一週間。だけど、相手は私を拉致した人だ。そんな人と交わした約束を守る必要はないと言ってしまえばそれまでだ。
それなのに]
……今のうちに、お風呂、いただいちゃおう。
[パジャマはどれを着ればいいのかわからなかった。結局、昨日借りたスウェットを借りることにする。異性の服を借りるのは無性に恥ずかしいと思ったはずだったのに。私、なにやってるんだろう。
勝手にお風呂を沸かすのはさすがに気が引けた。シャワーで済ませる。乾燥機は勝手に拝借]
私、なにやってるんだろう……。
[逃げればいいのに。またとないチャンスなのに。どうして? 約束だから?
答えは見つからない。誤魔化すように布団をかぶった**]
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