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[紫苑の花の前に、
薄桃色の薔薇のような少女が立っていた。
幸せになるのを見守りたかった、
患者であり娘のような存在が。]
……君こそ、こんな時間に。
[危ないだろう、とは口にしなかった。
目の前の娘の身を案ずる資格ももはや無く
霜天のように冷えた心と目で、
漆黒の髪が花弁の如く揺れるを見ている。**]
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[ 少女を糾弾すること、殺すこと。 (116) 2015/05/20(Wed) 12時半頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ
(117) 2015/05/20(Wed) 12時半頃 |
メモを貼った。
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![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ …… ―― メア? (119) 2015/05/20(Wed) 13時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[ 助けを求めた少女と、 (120) 2015/05/20(Wed) 13時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[ 吊上がる三日月、 (121) 2015/05/20(Wed) 13時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[だけれど、少女の方にも、 (122) 2015/05/20(Wed) 13時頃 |
[ひかりが在るのは目の前なのに
声
そもそも「彼ら」の声は、聞こえはすれど
「こちら」の姿は見えぬもの。
「こちら」の叫びも聞こえぬもの。
ルパートと、わたしと
さっき宿屋の裏手で嫌というほど思い知ってきたものだから
そのおとが、こえが、あの日
わたしはきっと、場に居ぬ3人目を疑っただろうに。]
…………せんせ。
[声の主を呼ぶ名に乗ったのは疑問符ではなくて
落胆と、寂寥と、懐古と、悲哀と、 …安堵。]
[背後へ振り向きながら
小さな左手は、右に絡んだ糸に触れるが
緩んでいたのは嘘のように帯のすがたを取っている。]
ここからね、ここに来いって糸が伸びていたの。
[ さらり、手首を撫でて指し示し
彼のほうへ向けようとして また戸惑う。
あの日は確かに視えたのに、
いま目の前の「せんせい」に光は無く
別け隔てなく染められた黒があるばかり。
わたしのいちばん見慣れた景色ではあるけれど
ふ、と。口から零れたのは小さな心配。]
……寂しくなかったですか。
[彼が何故、どうして死んだか問う気は無いけれど
全てを取り上げられ「こちら側」に来てからの事を案ずる。
一歩、 闇に近づく足は土を踏み
伸ばす腕は、声との距離を確かめるためのもの。
その先にあるのは闇のような霧か、
あの日と同じく握られた拳か。
触れられなかったとしても、やはり何も聞かずに]
せんせ。今日は、誰のお墓まいり?
[問いながらも、なんとなく。
傾けた顔をルパートが眠る場所へと *向けた*]
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―幼い頃の話―
[幼い頃の話。
従妹が3歳になり歩くのが上手くなってきた頃の話。
叔父と叔母には内緒で、少年は歳の離れた従妹を
村の傍の河原へと連れていったことがある。
川は絶対に危ないから行ってはダメと、
叔母にきつく言われていたのだけれども。
兄貴分の幼馴染に連いて回った遊んだ
河原の記憶はとても楽しいものだったし
何より自分がついているのだから危なくない。
水の冷たさにキャッキャと笑ってはしゃぐ従妹、
その姿を見てやっぱり連れてきてよかったと思った。
その直ぐ後だった。
従妹が、足をすべらせて川に流されたのは。]
[血の気が引いて、慌てて従妹の元へと駆ける。
幸運なことに、
従妹はすぐ傍にあった岩に引っ掛かり、
擦り剥いただけで溺れて流されていく事はなかった。
岸まで従妹を抱え上げて降ろして
驚きと、こわさと、擦り剥いた傷のいたみに
泣き始めるびしょ濡れな従妹を必死に慰める。
『ごめん。メアリー、本当にごめん。』
ドナルドが案内してくれた時は上手く行ったのに。
少年がやったら失敗してしまった。
岩がなければメアリーは流されていたかもしれない。
その事実に気付いて、ぞっとして。]
[叔母の言いつけの意味がようやくわかる。
叔父と叔母がどれだけ従妹のことを大切にしてるか、
体の弱い叔母がやっと授かった小さな宝物のこと、
家族のことを少年は傍でずっと見てきたから。
少年の失敗で、
その宝物が喪われてしまっていたかもしれない、
そう思うと――――…
『おにいちゃん、おにいちゃん、』
しゃくりながら、たどたどしい口調で、
幼い従妹が小さな小さな手を伸ばす。
頬に触れる小さな手は、温かくて、生きていた。
気付けば少年も泣いていて、
メアリーと2人涙が枯れるまでわんわんと泣いた。]
[その後、
従妹と共に宿屋の裏にこっそりと戻って。
河原に行ったことがばれないように、
井戸の水を2人で頭から被った。
新しい遊びに喜ぶ従妹と、
そんな遊びを教えちゃダメと叱る叔母。
叔父は子供2人の真っ赤になった目に
気付いていたようだけれども、
あの後叱られたのか問われないまま終わったのか。
その部分だけ、
記憶は都合よく 切り抜かれている。**]
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![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[駱駝色の奥の、血に飢えるひとみは。 (131) 2015/05/20(Wed) 16時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ … さあて。 どうしようねえ。 (132) 2015/05/20(Wed) 16時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ […… それから。 (134) 2015/05/20(Wed) 16時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[その儘、黒手袋が膨らんでゆく。 (135) 2015/05/20(Wed) 16時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[変化の追いついていない部分は、 (136) 2015/05/20(Wed) 16時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ
(137) 2015/05/20(Wed) 16時頃 |
![]() | 【人】 逃亡者 メルヤ[そして、その一連の間を縫うよに、 (138) 2015/05/20(Wed) 16時頃 |
[呼び声は生前と変わらない。
いや、その音には生前とは違う
様々な感情の色が込められていただろうか。
男は、静かに乙女が此方に振り向くのを見た。
右手に煌めく糸の意味は知らず。
指先が辿る道筋は彼女の手首から此方へと向き
戸惑うように宙で止まった。
形をとりもどしてはいたものの、
ルパートの喉は殺した時と同じく抉れてしまっていた。
今、焼き尽くされた自分の体は
どのように見えているのだろう。]
……糸、か。
[外して、託した赤い宝石があった場所に
自分で触れた。
続いた問いには、小さく「大丈夫さ」と添えた]
皆が僕の事を死んだ死んだといいながら…
深刻そうな顔をするのは、 ……目の前にいるのに
随分と、滑稽だった それだけさ。
君こそ。寂しかっただろう。
[小さく笑う。声には寂寥が滲んでいる。
マーゴットを見下ろす。
この歳で世界と切り離される。
それがどれほど残酷な事か判らぬ筈はなく。
一歩踏み出す彼女の、伸ばされる腕の先、
触れようする白いもみじを拒むことは無い。]
[掌の先にあったのは、
やはりあの日と同じく固く握られた拳。
(そこに温度はないけれど)
そっと開いて、ルパートが眠る場所を向く
マーゴットの頭を徐に撫でた。]
……死んだ皆の、
いや。 今日はお墓参りじゃあないな……
[何せ死んでいるのは僕なんだから、と笑う。
それから、 ぽつり ]
君の声がした気が してさ ここに来た。
…………守れなかったな。
すまない。マーゴット。
[声は繋がっていた筈なのに、助けられなかった。
君にもサイラスにも辛い思いをさせたと、
彼女の頭を撫でて、懺悔のような言葉を一つ零した*]
メモを貼った。
―自宅―
[くあ、と間抜けた声を上げて身体を起こす。
ぽっかりと胸に空いた穴、足りない臓器。]
あーあ、また死んだよ。
今度は心臓かあ。
[寝ぐせのついた髪をわしと撫でてから、
普段通り起き上がる。
そういえばサイラスに貸したままの布が戻っていない、
暫くはこの風穴も開けっ放しになってしまうだろう。]
兄さん、何年ぶり?
[傍らの獣に話しかけると直ぐに返事が聞こえた。]
『15年か、そこらだ』
[そっか、と亡霊は軽い調子で笑った。]
交代する?兄さんなら人の方でもモテそうだよ。
[あんなに少女達に囲まれてちやほやされていたのが
実は40手前のオッサンだなんて知ったらどんな顔になるのか。
想像するだけで笑いが、こみ上げて、どうしようもない。
この村では兄さんの顔なんて誰も覚えては居ないだろうけど。]
『面倒だからいい』
なーんだ。
[屈んで獣の頬を両手で挟む。
そのままわしゃわしゃと黒い被毛を撫で回した。
少し固い感触があって、それから胸の穴に鼻先を突っ込まれる。]
兄さん、汚れるよ?
[問いかけても獣は気にせず内側を舐めた。
暫くぴちゃぴちゃと、体内を舐めまわす音だけが部屋に響く。
こんなことされてもぶちまけた汚れは落ちないのに。]
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