193 ―星崩祭の手紙―
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[そうして最期の一つ。 金色が眩しくて、赤い色がアクセント。 開いて次々現れるものに、君の興味は有頂天。 丁寧に取り出した、歪な模様のコインを摘み。 白の天井に翳して見つめ、鼻を掠める良い香りに 君は穴が開くほどその液体を眺めていた。 どれも、この星ではもう見ないもの。 物々交換もしくは配給が主流、 食事は、基本的には睡眠中に 白い箱が勝手に何かしているらしいとのこと。 見慣れぬ二つ、君のココロは踊る。]
(54) 2016/07/20(Wed) 01時半頃
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ねぇ、星。 見たことないよ、なんだろう? これは、何に使うんだろう!
[興奮した様子で、 ケースの下に置かれた羊皮紙を手に取るのだ。 そう、君の使う紙と、同じもの。]
(55) 2016/07/20(Wed) 01時半頃
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[文字列を追いかけ終えると、 君は瞳をぱちりと閉じる。]
ううぅ〜ん、 このひとたちも、星を渡れるのかな。 僕がもらって、よかったのかな…。
[貰った文は嬉しいけれど、 何やら心配なご様子で、小さく唸る。 君はこう続けるのだ。 旅人なんて、この星にやってこない。と。]
(56) 2016/07/20(Wed) 01時半頃
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[けれど。]
おまもり、もらうの初めて。 うれしい、な。
[先ほどのコインを再び手にして、 表面の模様を指でなぞる。 ……君は小さく微笑んだ。]
(57) 2016/07/20(Wed) 01時半頃
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[手紙を書き終えリビングに戻ると シンが窓辺でなにかをしていた。]
………?どうした、シン。
[声をかければ、彼はビクリと大きく肩を揺らし ぎこちない笑顔で振り返った。 ……こういう誤魔化しの笑みが下手くそなのは、 いったり誰に似たのやら。 何か隠しているようだけど、 彼が言いたがらないのなら無理に聞くこともないだろう。
ぽんぽんと頭を撫でると、 俺は窓を開け手にしたカプセルを空に放つ。 前夜祭、最後の手紙。 夜空に溶けて見えなくなるまで 見送った。
どこかで、歌う声がする。]
(58) 2016/07/20(Wed) 01時半頃
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[眠りの深さは一律ではない。
波のように、浅く深く、変わりゆく。]
明日はお祭りだから、早く体力が回復するといい。
ゆっくり休んで。
[ヒトの声が、聞こえた。
ワタシ達も呼応するように、お大事にといったようにちかちかと念を送った。]
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[君は、文を三通したためて。 宇宙へと放つのだった。 次もまた、誰かの元へ届きますように。 祈りは、天へと届くだろうか?]
いってらっしゃぁい!
[………残念ながら、 内の一通は。 エラーで返ってきてしまうことなど、 いまの君には知る由はないのだけれど。]
(59) 2016/07/20(Wed) 02時頃
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[つんつんと突いては『ぴちち』突いては『ぴちち』を繰り返していると、突かれるのを厭うようにぴょんぴょんと窓辺へと移動して行く。 この辺りの行動パターンがどう設定されているのかは、自星の技術力を遥かに超えた域の為、想像も付かない。 調べる為に分解したら元には戻せないだろうし、手違いで故障させたとしても直すのは容易ではないだろう]
こら、あんまそっち行くと落ちるぞ。
[窓を閉めていると言っても湖上のこと、何かの拍子にでも水に落ちてしまったらどうなることか。 丸い頭を抑えて遮ると、『ぴゃぴゃっ』と抗議するような囀り声が掌の中から聴こえてきた]
[そしてもう一つ。 何かがこんこんと窓を叩く音も、耳に届く]
(60) 2016/07/20(Wed) 02時頃
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[捕まえた鳥を肩の上に移動させてから、窓の外を改めて見遣る]
……??
[先程は気付かなかったけれど、見覚えのある魚型の小さなカプセルが宙に浮いていて、正面から見るとちょっと間抜けなその顔で此方を覗き込んでいる。 カプセルに意思など無いのだから、覗き込んでいるというのは此方の主観だけれど]
返事だ!!! おい鳥!返事が来たぞ!!!!
[窓を開け放つと、メモリーから宛先へと辿り着けたカプセルは手の中に収まった]
(61) 2016/07/20(Wed) 02時頃
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[早速玩具のような形をしたカプセルを開くと、手紙と、それよりも小さい紙片が零れ落ちてきた]
……肖像画?
[それにしては精巧な、青い水溜りを背に微笑む少女の絵姿。 湖底の遺跡から発掘出来る技術達の中から静止画を紙に焼き付ける術は未だ確立されていないから、それが『写真』と呼ばれる物だとは、分からなかった。 矯めつ眇めつしながら裏返すと、年若い少女のような丸い文字で『いつかの海で』と走り書きがされていた]
海?これが……
[一見すると湖に良く似た、大きな水溜り。 けれど見知った水の色より、幾分か青が深く見える]
[幸せそうに映る少女の絵姿を一度置き、手紙を取り上げる。 紙片の裏の走り書きと同じ丸い字で、絵姿の少女から受ける印象のままの書き文字が並んでいる]
[彼女の星の空は灰色をしていて、海はもう青くない。 そんな文字と、絵姿の微笑が結び付かないけれど。 昨日の、子を持つ『彼』の星がそうだったように、彼女の星もまた、自然が減りつつあるのだろう]
(62) 2016/07/20(Wed) 02時頃
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んー。 大切な人かぁー。
[昨日の『彼』が良い父親のように思えたからだろうか。 深い意味も無く、つい訊ねてしまったこと]
[職場の人間、友人、商店の人々。 日々を楽しく過ごす相手は沢山居るけれど、その全てが『大切な人』ではあるけれど、『特別』ではない]
[職を得て、一人暮らしを始めて。 快く送り出してくれた三つ向こうの湖に居る親の顔も、暫く見ていない]
……たまには実家に帰るかな。
[肩で髪を啄ばむ鳥に「な?」と話し掛け頭に頬を擦り付けると、『ぴちち』と鳴き声が返ってきた]
(63) 2016/07/20(Wed) 02時頃
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― 調査船島 ―
[湖底遺跡調査部のデスク。 鳥が起こしてくれたお陰か、今朝は屋台で行列が出来る人気の朝食も食べられたし、始業前に露天に寄る時間もあった]
[今日帰りに飛ばそうと購入した一揃いのカプセル。 それと、小さな額縁]
(64) 2016/07/20(Wed) 02時頃
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[星の名を持つ少女の絵姿を納め、デスクに飾る。 「彼女かー?」「ちげぇよ」なんて、お約束の会話を同僚と交わして]
いつかパパと会えるといいな。
[彼女の言う『空』が、比喩なのか事実なのか分からないから。 『早く』ではなく『いつか』。 彼女ではなく、きっと彼女の父親が望む『いつか』に、それが叶うことを祈る]
[手紙の最後に添えられていた五画を持つ記号を三つ、絵姿の端に書き足した]
(65) 2016/07/20(Wed) 02時頃
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