158 Anotherday for "wolves"
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[止めるべきだったと、ぼんやり思う。
マーゴットの死を、せめて男は止めてやるべきだった。
いずれ自らが死を望むなら。
せめて娘に、親しい友を遺しておいてやるべきだったのだ。
─── ぽたり ぽた、 ぽた
しずくが零れて血と交じり合い、二人の少女の上に降り注ぐ。
決して彼女たちを濡らすことのない雫が]
(ああ、)
[ふと。何かに気付いたという風に、男は外に目を向けた。
ゆらり漂う希薄な影は、嘆く娘を置いてふわりと壁をすり抜ける。
泣き声が大きくなっている]
…───どう 、したんだい?
[辿ったのは、先に聞こえた泣き声
幼子のような泣き声を辿り、泣きながら歩む娘に声を掛ける。
彼女の顔は先ほど見てきた死体と同じ。
泣きじゃくりながら歩くらしきその娘の魂へ向け、希薄な男の幽霊が*首傾けた*]
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―朝―
[いつもなら、鳥のさえずる声や裏手の動物たちの鳴き声のだが、 その日はそうではなくて人の叫ぶ声で目が覚めた。
短い言葉で何かを指示する声があちこちで飛び交っていて やや怒声のような声圧におののきながら窓の向こうの方を覗いた。]
[何か黒い煙のようなものが見え、 窓を開いた時に 漂うきな臭さから 何かが燃えていることが窺えた。]
…火事……。
[あっちの方、教会がある方を見ながらわたしは思わず ベッドから飛び降りた。]
(49) 2015/05/17(Sun) 16時頃
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―未明・教会付近―
[自警団のおとなや村のおとなが消火活動に当たる。 人間のおとなは人狼のおとなをやや疎ましそうに 見ているが、今ばかりは仕方ないと言わんばかりに 意識は燃え盛る火に集中している。]
[その中にいつもスティーブン先生のところにいる 男か女か見分けがつかない人がいるのを見かけた。
向こうは消火活動、片やわたしは野次馬。 人垣に紛れて相手に見えることはなかっただろう。 辺りを見渡すと、他にも人はいただろうか。]
[燃える教会はうなりをあげて、ステンドグラスが熱に耐えきれなくなったのか時々ガラスが割れる音がする。
その恐ろしい光景が心配でしばらく眺めていたが、 ごう と風が吹くたび火の粉があがり 少女にはそれが村全体を飲み込むような気さえした。]
(50) 2015/05/17(Sun) 16時半頃
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逃亡者 メルヤは、メモを貼った。
2015/05/17(Sun) 18時頃
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―朝―
[結局、沈下しきる前に家に戻りベッドの中で丸くなって時間をつぶした。 母の命日から二日、族長の召集が掛かった日より三日が経過した。
だが体感する時間はそれよりずっと長く濃く感じていた。]
…起きなきゃ……。
[でも外は怖いよ。]
…お父さんのおそう式……。 しなきゃ…。
[よろよろと立ち上がり服を着替え、墓地へと足を向けた**]
(51) 2015/05/17(Sun) 18時頃
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― 回想:二日目 夜 ―
[ …………――ざあ、と木々がざわめいた。
その中に一つ、幼い頃共に登った木がある。]
[夜の森の中、濃く、血の匂いが馨る。]
[崩れ折れた体を受け止めている。]
[消えゆく体温をその手で感じている。]
[淡い笑みに気づく事は勿論無かったが、
村医者は、やがてはその背に手をそえ、
共にずるりと座り込んだ。]
………どうにかできるわけ、ないだろ……
[血のにおいの中、小さく呟いた。
集会のあとのグレッグの言葉を思い出す。]
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―回想・3日目・宿屋裏手― [警戒を隠そうとしない男の様子に クラリッサは、ドナルドは、何か言っただろうか。 名前を呼ばれると男の視線はベネットへと動き、 惑うように一度地面を見つめてから、 宿屋の中を案じるように視線を移した。]
…さっきまで人が来てたんだ。 メアリーに話を聞きたいって…、
…オーレリアのネックレスの話だよ。 マーゴットにメアリーがあげたものが、 それと同じものだって話が、村の中を回ってる。
[メアリーが疑われている、とベネットへと口にし 新たに訪ねてきた3人へと視線を戻す。 警戒の色が溶ける様子はない、 それでも口を開いたのは、 昨日親身に相談を聞いてくれたベネットがいるからだ。]
(52) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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メアリーは、ネックレスは拾ったって言ってた。 ―――…訊いたんだ。 こんな大ごとになるとは思わなかったって… こわがってさっきまで泣いてた。
[これで、メアリーへの疑惑は晴れてくれるだろうか。 不安げに3人を見てからもう一度宿屋を気にするように見て。 本人に話させた方がいいのかもしれなかったけれども、 先程までの従妹の様子を思い出すと、 会って訊けばいいと口にすることはできなかった。]
あのさ…、今日の投票のことなんだけど…、
(53) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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……いや、……なんでもない。
[言いかけて、言葉は続かず首を振る。 それを口にするのは『掟』に反する気がしたから。 人間との『共存』の為の一族の『掟』、
天秤を、水平に保つための。
それによって叔父は殺された。 どうすることもできないのかと。 揺らぎ、揺らぐのは渦中にいる従妹の姿を思ってのこと。]
(54) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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[もう一度、 クラリッサから小屋を調べたいとは訊かれただろうか。 訊かれたのなら小屋の方を仰いで、 少し考えた後「明日でいいなら…。」とぽつりと呟いた。
ドナルドと、クラリッサを見る瞳からは、 警戒と怯えの色は拭えていない。**]
(55) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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「…ルパートとスティーブンはさ、
ずっと…このままなの?」
もう、とっくに、とっくにさ……。
[そう簡単に戻れたら、八年の月日なぞ経っていない
どうしようもないことだと、村医者は思っていた。]
( 君の大事な妻を殺した )
( 君の娘を 君の目の前で突き飛ばした )
( 君の平穏を壊した )
[ ――いつも、傷つけてばかりだ。
投票前の彼がぶつけてきた静かな怒りを思う。]
( 酷いやつだろう。君は僕を思うまま殺してよかったんだ。爪で牙で言葉で。臓腑を抉り、心を八つ裂きにして、かまわなかったんだ。)
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―朝― [昨晩、教会で火事があった。 夜、伝達の連絡は来たのだけれども、 寝ていないことも含めて体調が優れないと 消火活動は他の村の人達に頼むことにした。
顔色が本当によくなかったからか、 叔父の事もあったからか、 深く訊かれることはなく伝達に駆ける人を見送って。
宿屋の位置からも教会の方角が 闇の中。炎で仄赤く色付いているのがわかる。 まるでぽかりとそこだけ夕暮れの空になったようだ。 そんなことを考えながら早く鎮火されることを祈った。]
(56) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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―宿屋― [やはり簡単に寝付けるものではなくて。 浅い眠りと、覚醒とを繰り返していたからか、 未だぼんやりと頭の中に重さを感じている。
酒場に降りて、2階の方を見る。 従妹は――…まだ上で寝ていると、思っていた。]
………、……?
[着替えて、顔を洗いに行こうとして。 >>16聞こえてきた力の強すぎない戸を叩く音。 切迫した音に訝しげに扉を開くと、 厚い前髪のカーテンの下からたくさんの雨を降らす 幼馴染の姿があった。]
(57) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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……ラーラ…? ……どうしたんだ。
[問うのと同時に彼女の声を聴こうと、 手のひらを差し出すのは迷いのない所作で。]
…レオ…ナルド、が…?
[男の手のひらに、痞えながらも震える指先が 紡いでいく言葉に男も手を震わせてから、 縋るような指先を軽く握ってから小さく頷きを返す。]
(58) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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[ だが、振り返ればこの有様は何だ。
どうして自分「が」彼を殺しているのだろう。
縋りつくことすら
「それで許してくれ」と言っているようで、
できはしなかったのに、それが間違いだったのか。
――彼が自分に殺されたがっていた事など、
悟っていて尚、そう「誘った」事など、知らぬ儘。]
[何故彼は昔の呼び方で この自分を呼んだのか]
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――…ちょっと、待ってて。 ……行くから。
[2階を仰いだのはメアリーを置いていってしまって 大丈夫だろうかという心配があったから。 けれどもこのまま放っておくわけにもいかずに。
ラディスラヴァに少し待ってもらうよう告げてから 一度裏手の小屋へと向かう。
他の場所には触れず、 家畜の処理用の布袋を一枚だけ取って戻ると 泣きじゃくるラディスラヴァの手を引いた。**]
ラーラ、 …近くまで、案内してくれるか?
(59) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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―――――――、…………!!!
[空を仰いだ。
雲母の如く黒い空を。
潮騒を奏でる森の中、
旧友の亡骸の背を搔き抱き、
一つ、消え入りそうな狼の遠吠えが響き渡る。
頬に流れた銀色を、蒼褪めた月だけが見下ろしていた。*]
徒弟 グレッグは、メモを貼った。
2015/05/17(Sun) 18時半頃
― 3日目、そして、 ―
[本に埋もれて死ねるなら。
きっと、彼も本望だったのだろうとは思う。
――実際は森の中、
狡猾に仕組まれた罠の餌食になるのだが。
ジョスランが伝言を受け取ってくれたので
その背を見送り――]
[ シャボン玉のような聲が聞こえた。
”それ”が何を意味していたのか、
今となっては、わからないままだ。 ]
[
最初はただの衝撃にしか感じられなかった。
どうやら悪い予感は的中したらしい。
ああ、やられたなと知覚するには
どうにも深く眠りすぎていたようで、
胸が十字架で貫かれる瞬間すら
意識は酷く曖昧だった。 ]
( …………、 )
( ……朝飯、
何にも作ってないな。 )
[ 轟、と炎が唸る ]
[ 体が焼かれていく。悪臭がする。
酷い痛みを感じながらも動けずにいる。
ぐらり、祭壇付近の壁が一つ落ちた時]
[男の男としての意識も また 燃え落ちた。*]
|
― 教会 ―
[滴るものが、枯れたとき。 瓦礫を踏みならす音が、した。>>47 重く、ぎこちない動作で首が回る。 肩に手を当てる存在は、また珍しい。] …… ジョー、 …… っふふ、随分冷静だなあ こういうことにも、慣れたかい?
[いつもの、猫目が皮肉交じりに、わらう。 頬を伝う雫の、乾ききった一筋を拭いながら。
仄暗い狗のひとみは、 殺気にも近い澱みを抱え 蒼を濁らせる。 カチリ カチリ、 時計が逆向きに回転するよに 戻らぬ針を 記憶だけを、書き換えようとする。]
…… 。
(60) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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そうだなあ、『スティなら』、 鞭打ってやるくらいで丁度いいけど ――― 、
( ぼくが『死神』の役目を、 審判を下すより(そのつもりも無かった癖に) 逝くなんて、 …… 逃げるなんて、 )
…… 『別のひと』だもの、ねえ?
[こころのなか。 『元』の、『個』があった時の一人称に、 鏡写しに語られるものでない 『ぼく』に。 ちいさな黒犬のような存在に、戻りながら。]
[確に在る金色に、上目を遣い、問いかける。 それはさも、‟そうであること”を望むように。 頼むから、否定してくれ。そう、追い縋る。
焼けた遺体から手を離し、掌の残る灰を、 払おうともしないまま。 ]
(61) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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[口に出されない言葉を、 飼い主だと。問う声がないことをいいことに。 ……‟悪いクセ” ―― 『逃避』が働いていた。
『いつものように』現実が離れていってくれるのを 待ってるのに。願っているのに。]
( ――― 分かってるさ、本当は )
( なんで、この嫌な風は。 焼けた臭いは、ぼくを引き戻そうとするんだ。)
[いつもなら掛けられそうな、悪趣味な問いは。 この時ばかりは 途切れ、潰え。
切れた言葉に、きょとり。 憂う少女とは異なる、無理矢理造られた空洞を ひとみにぽっかり開けて みつめる。 ]
…… それとも? … なんだい、
(62) 2015/05/17(Sun) 19時頃
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[顎先を、緩慢に持ち上げ。 促すように問うた。
手にした、紅い塊を。 ―― ガーネットを 見ないよう、 無意識の心理が働いて、外套に仕舞う。]
[ 犯人を、殺してやる。 …… でも、なら。スティは。]
[背反に 振り子は揺ら揺ら、] [殺意と、喪失感と。澱みだけが、残る。]
…… っはは、 死体愛好家でもないのに、 持って帰るわけ、ないでしょ。
このひともね、埋めてあげないとな。
(63) 2015/05/17(Sun) 19時頃
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[布を被せるまで、頭の回ることのない狗は。
思い出したかのように、 死体が持っていたらしい まあるくなった、銀を手に取る。
――― 回る 廻る、 呪われたような、銀の薔薇。
その形を 所在を、 何故『彼が』もっていたかを、知らないから。 拾いあげるだけ拾いあげ、不思議そうに見る。]
[ >>42赤毛の鴉の存在は、 未だ、狗も気付いていない。 気付く余裕も、ない。*]
(64) 2015/05/17(Sun) 19時頃
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逃亡者 メルヤは、メモを貼った。
2015/05/17(Sun) 19時頃
― 未明 ―
[ 祭壇を中心として、教会が焼かれていく。]
[ 十字架を突き立てられた骸が一つ
ゴミのように――事実、ゴミなのだ。
無残に転がっている。]
[ まるでそれは悪魔の処刑のよう ]
[ 赤々と燃えあがり夜を煙らせる炎は、
さながら、愚か者に下された―― ]
……罰でも与えたおつもりかい?
……はははっ。
[ 一つの影が、教会を仰ぎ嘲り笑った。 ]
[
そこには真っ黒な影が立っていた。
目も口も鼻も無く、
スティーブン・イングロットのシルエットを象るような影。
胸に十字架を突き立てられたからか、
そこから、もやもやと僅かに白色が滲んでいた。
生前と違う形があるとすれば、
時折揺れる尾と耳らしきものだろうか。
それは揺らぎ、霧散し、また形となって揺らめく。
その姿は狼男のようで、悪魔のようにも見えた。]
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