241 The wonderful world -7days of KYRIE-
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[ 自然と携帯を取り出すのは現代人の性。
通知が無いかを確認するのも、 無意味に何かを開いてしまうのも、 それをしながら、 遠くから聞こえてくる ちぃさな誰かさん>>@5の声に、 意味の無い相槌を打ってしまうところだって、
きっと。すべて。 ─── の居た世界の自分の、 ]
(31) 2018/05/12(Sat) 11時半頃
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─── きこえたよ。
[ "こにちんは"。ちぃさな君。 君には聞こえているのだろうか。
或いは、欠けた何かか、誰かに。 何時か雪の日に 母と棄てられた僕の声は、 ]
(32) 2018/05/12(Sat) 11時半頃
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[ ── ながら動作というのは、きっと。 疑問より先に出てくるもので。
丁度おんなのこに返した後の話だ。 "これまで"を思い起こして、 …否、そもそもど真ん中で寝ていたことも含めて、 色々な"おかしいなあ"が、漸く出てきた。
だけど、そうか。成程自分は死んだのか。 どうやら骨になって 地中に埋められる展開じゃあ無かったらしいけれど、 …欠けた記憶の向こう側なものだから、 現実味が無かった。 ]
(33) 2018/05/12(Sat) 11時半頃
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─── 誰なんだろうなあ、…
[ 無気力じみているのも、きっと、 それこそ徴収されてしまったからなのだろう、とは。 此も他人事のように思う。
死ぬ前まで覚えていたらしい、 少なくとも母と、新しい父以外に隣にいた何か。 笑っていたらしい、なにものか。
…一人で投げ出しておいてパートナーなんて! 感想すらながら作業。携帯を片手で弄りながら、 ふ と 陰る空を見上げた。
…蛙の雨は、雪と呼ぶには黒過ぎる* ]
(34) 2018/05/12(Sat) 11時半頃
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[ ――サングイス。 キリエ区のカラーギャングの一グループで、チームカラーは赤。 主に蕗之原――西エリア近辺を拠点としている。 結成は二年前で、キリエ区の不良グループの中じゃ新興もいいとこだな。 そこの頭――「キング」が俺だった。
つっても特に何かやる訳でもない。 やりたいことがあってここに在る訳でもない。 他のグループ連中のようなややこしいルールみてぇなものもない。 『トラブルは報告しろ』 『クスリにだけは手を出すな』 ルールなんざ、別にこれで十分だろ。]
(35) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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[ そもそも俺がサングイスのキングなんてもんに 収まっちまったのは 単に気に入らねぇバカがいたんでぶっ潰したら、 残った連中に勝手に持ち上げられちまった。 ただそれだけの話だ。 身長190cmの強面スカーフェイスは どうやら連中にとって「王」として祭り上げるのに うってつけの人材だったらしい。 俺にとっては知ったこっちゃねぇ話だけどな。
……それでも、好き勝手やれるあの立場を 俺自身気に入っていたことは事実だ。 やりたいように生きて、その責任は自分が持つ。 その生き方の、なんと気楽なことか。
――…だから、あの終わりだって 別に仕方ないと思っているし、悔いらしい悔いもない。]
(36) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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いや、だからってこれはねぇべよ……。
[ いかにもだぼだぼのパーカーは もはや服というよりは重石か何かのようだし チームカラーの赤いTシャツは宛ら膝上ワンピース。 身に着けてたはずの金属類はどっかいっちまったらしい。 パクられた可能性は無きにしも非ずだが。
襟ぐりから覗く細い肩も、 その肩を撫でる栗色の髪も、 自分の記憶の中のそれとは似ても似つかない。
お前は死にました ←わかる 気がついたら姿が変わってました ←は? なんか知らないゲームに強制参加させられた上、 大事なものを勝手にパクられたみたいです]
(37) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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…………意味わっかんねぇ……。
[ 思わず頭を抱えて呻く。 大事なもの、というのは…いやなんとなくわかる。 わかるけど理性が追い付かない。]
くっそ、面倒なことになっちまったな。
[ わしゃわしゃと乱暴に頭を掻く。 その手ですら、見慣れたごつごつしたものとは 比べ物にならない、細く小さくて柔らかなもの。
メールには『パートナー契約』という一文があった>>#4 ざっとルールを読んだ限り この『死神のゲーム』とやらの攻略には、 二人一組のペアになることがほぼ必須らしい。 つか、組めなければ死ぬ。ほぼ間違いなく。]
(38) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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[ きょろきょろと、視線を巡らせれば>>@3 見つかったのは、パートナーにできそうな 人間ではなく、妙な模様の蛙たちだった。]
…なんだありゃ?
[ ゲコゲコ、ゲコゲコ、鳴きながら 此方に近づいてくる黒い蛙たち。 トライバルにも似た模様を身に纏ったそいつらは ……いや、たぶんそうだろうな。 あれが、ルールに書かれていた"ノイズ"とかいう 化け物なんだろう。]
(39) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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……っ。
[ 富嶽三十六景逃げるに如かず、だっけか? 逃げるは恥だが役に立つともいう。 こんなところで、なによりこんな格好で 死ぬわけにはいかないから。 だから、活路を開くためにまずは逃げることにした。
まともに履いてられない靴をそれぞれ力いっぱい 蛙共に投げつけてから、引きずりそうな裾を 小さな手で持ち上げて目の前の蛙たちから逃げ出した。
――…その先にいる女の存在には全く気付かずに>>25]*
(40) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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── スクランブル交差点 ──
[人、人、人人人。 ────人の行き交う雑踏の中、立っていた。
この雑踏には些か不釣り合いなようにも見える、黒を貴重とした上品な制服を身に纏って。 気付く人なら気付くかもしれない、その制服がとある女子校のものだということに。それなりには名の知れた、所謂お嬢様校というやつだ。
ただ、それを着ている少女の方は、……いやまあ、たしかに少女であることには違いない。 それでも、お嬢様、というには些か躊躇われる形相。 例えば、この世の終わり、みたいな、──絶望を貼り付けた、凄まじい形相をしていたけれど。
そんな少女の制服のポケットの中、携帯端末が存在を主張するように鳴る。 その高らかな音に、少女は、びくりと肩を跳ね上げ、高速で端末を取り出した。 そうして。]
(@11) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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………………嘘ォ!!!!
(@12) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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[素っ頓狂な悲鳴を、あげた。]
うわうわ。うわ。 ……ああ、嫌、……始まっちゃったのね…………。
[そうなのだ。嘘ォ! ではないのである。 始まっちゃったのである。 誰が、なんと言おうとも。
7日間の死神のゲームの火蓋が、切られる。
だからほら、そうしている間にも。 ──精一杯の愛らしいご挨拶と共に、何処かでカエルの雨が降る。>>@3]
(@13) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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[そうやって、早速お仕事を始めている者もいるというのに。 此処にいる死神は、携帯端末を両の手で握りしめ、身じろぎもせずにメッセージを食い入るように眺めて。>>7 暫しの時を経てから、……そりゃあもう深いため息を、落として。 次の瞬間、ガバリと顔を上げて、スクランブル交差点のド真ん中、叫んだ。]
(@14) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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ラーメン如きで、誰もが奮い立つと思わないで────!!!!
[絶叫。嗚呼、本当に、嫌。 …………、嫌。 激辛カレーも、それはそれで嫌……。
『頑張ります。』
結局、端末に打ち込めたのは、それだけだった。 苦々しい顔つきのまま、気持ちを切り替えるように、ぶん、と頭を振る。 黒く重そうなふたつの三つ編みが、ばびゅんと空を切った。]
(@15) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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[死んだら、頑張らなくていいと思っていた。
いつだって、なんだって、頑張らなければ何も手に入らない。 頑張ったって、一部の選ばれた者しか、戦果を手に入れることのできない。
条理で不条理な、すばらしきこのせかい。
ゲームはもう、始まった。 まずはそうね、諦めること。>>#2 現状を受け入れること。
そこからどうぞ、あなたがたは頑張ってくださいな。 ────譲れないものが、あるのなら。**]
(@16) 2018/05/12(Sat) 12時頃
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[ 前日の晩に『猫の恩返し』を見たのがいけなかった。 ]
(41) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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[ 猫が木から降りられなくなって鳴いていると、 仁衣奈に声をかけてきたのは、 如何にも木になぞ登れそうにもない小太りの男だった。
そのとき仁衣奈が背負っていたのは ラクロスのクロスではなく剣袋で、 猫をすくい上げることなどできないということは 理解した上での行動だった。
その猫はたぶん、まだちいさな子猫で どうしてこんなか弱そうな生き物が、 あんなに高い木の上にいるのだろうと、 疑問に思わなかったわけではない。
けれど、そこに子猫がいるのは事実で、 足早に自分がそこを去ったとして、 あのちいさな生き物はどうなってしまうのだろう。]
(42) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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[ 仁衣奈は制服姿で木に足をかけた。 膝にかかるくらいの丈のスカートが足にまとわりついた。 はしたないと注意されるのを想像した。
上方の枝に剣袋を通すようにして支えにし、 木の幹を上っていった。 こんなことに使うんじゃないと叱責されるのを想像した。 学校関係者が近くにいなければ良いと願った。 けれど仁衣奈は、そんなことを願うべきではなかった。
体重を支え得る太さの枝を掴んだ。 腕の力で身体を持ち上げた。
枝の上に立ち、もう一段上にいる子猫に手を伸ばした。 怯えて木から落っこちてしまわないよう、そうっと。]
(43) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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[ その腕に仁衣奈は子猫を抱いた。 片腕で身体を支え、慎重に木から下りてゆく。 地面がほど近くなったとき、先に子猫を逃した。
走ってゆく小さな影を見届け、 さあ自分もと、木の枝をしっかりと掴み、 木の幹に足をかけ直したとき、 強い力で右足を掴まれ、鈴池仁衣奈は、落ちた。
大した高さではなかったが、仰向けに倒れた拍子に 硬いなにかで頭を打ったため、意識が遠のいた。 様子を伺うように、覗き込む小太りの男があった。]
(44) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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[ 仁衣奈は思った。
きっと私は死ぬのだろう。 せめて子猫のちっぽけな命でも 守れた結果としての死でありますように。
厭な笑みを浮かべた男の顔の背後、 広がる青空を横切るように、鳥が一羽飛んでいった。 せめて、最期に見る鳥が鴎であればよかったのに。
疑う余地もなく、それは黒々とした鴉であった。]
(45) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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[ そして、鈴池仁衣奈は死んだのだ。 ]
(46) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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[ 死んだ──はずだった。]
ここは……どこだ?
[ ゆっくりと身体を起こす。 鈍く頭が痛むが、硬い地面に転がっていたせいだろう。
けれど、それさえも今は些細なことだった。
交差点のど真ん中。 そこに転がっていた私を気にする素振りもなく、 数多の足が忙しげに行き交う。
避ける素振りさえないくせに、 何者かに蹴り飛ばされる痛みもない。]
(47) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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……これは一体?
[ 制服のスカートを簡単にはらって立ち上がる。 高校の制服を着ているのは、 死んだはずのあのときと同じだった。
黒い生地に目立つ汚れがないかを確認し、 リボンタイの形を整えて、 指先、腕、肩と不調がないか確かめていく。
どうやら問題はない。 問題がないことこそが不可解といえる。
確かに私はあのとき死んだはずだった。 奇跡的に命をつなぐことができたとしても、 突然、何の怪我もなくこんな場所にいるのはおかしい。]
(48) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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[ まるで映画のようだと思った。 あるいは小説といってもいい。
やはり自分は死んでおり、 自分を殺した犯人を誰かに伝えるであるとか、 家族や犯人の人生を見届けるべくここにいる。
そういう物語を想像してみる。 ──それにしたって、だ。 今の私が誰の目にも止まらぬ幽霊で、 心残りを解消するまで この世を漂うなんてことになっても、 その場合は例えば、こんな場所ではなく、 通学路や、学校や、家────、]
(49) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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──……家?
[ その違和感に、ふと立ち尽くす。
しかし、それについて考え込むことはできなかった。 不意に響いた声>>@5のせいだ。
その音の不可解さ、 そして既視感の正体に思い至る頃には、 先程覚えた違和感など、 とうに頭の片隅に追いやられていたのだ。]
(50) 2018/05/12(Sat) 13時半頃
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…………タイポグリセミア、か?
[ 聞くと読むとでは勝手が違う。 言葉の内容を聞き取るのに難儀しながらも、 おおよその意味を理解し、 声の主を探すように顔を上げた。
──ちょうどそのときだった。 携帯電話がメールの着信を告げたのは。**]
(51) 2018/05/12(Sat) 14時頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2018/05/12(Sat) 14時頃
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[特に目的もなく、ぼーっと周囲を見ていた。 そりゃあ、身に危険が迫れば動くけれど。 だからといって、他人を蹴落とす行為に快楽も愉悦もない。 そんなだから、無為に時を過ごすと言う、多分よくない選択をする。
……その時までは、だった。 こちらに女の子が。 まるで自分が事故から助けた女の子が、大きな蛙のようなものに追いかけられているのを見れば。>>40]
(52) 2018/05/12(Sat) 15時半頃
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