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真面目な墓ログを作ったのでつらつらと投下するよ
人の少ない時間の方がいいかなと思ったけどぼくはもうねむみの限界
― 昨夜 ―
[鉄格子の影が落ちる部屋で。
男が見つめる先、机の上には。
表を上にした古いコインが落ちている。
一人の女を占った。
彼女は、人狼だ。]
…………。
[やっと見つけたのに。男の気は晴れなかった。
楽になんて、ならなかった。]
[不意に頬を撫でた生暖かい風が、微かな獣の臭いを運んでくる。
開いた扉に目を向けると、四角く切り取られた闇の中に溶けるような、暗い、暗い影が立っていた。
……ああ。
君が証明してくれるって言うのか。
俺が人間だってことを。]
――、
[さっきまで思い浮かべていた彼女の名前を呼ぼうとしたのは、"それ"が誰だかわかったからというわけではない。
それが唯一、人狼だと知っている名前だったから。
或いは、暗闇で光るそいつの目に、よく知った気の強さを見たからかもしれない。
どちらにしても、
その名を口にすることは叶わなかった。]
[悲鳴は出なかった。
声を上げる前に、喉を咬み潰されたから。
抵抗はすぐに終わった。
引き剥がそうと相手を掴んだ腕は爪で肉を裂かれ、凄まじい膂力で骨を砕かれ、皮と筋だけで辛うじて繋がっているだけの何かになってしまったから。
腕が動かない。
まだ、己の体についているのかもわからない。
この手で、お嬢様とロイエと三人で、沢山の花を植えるはずだったのに。
たったひとつの誇れるものが。飲んだくれの不甲斐ない自分でも、誰かを喜ばせることができた、庭師の腕が。
もう、動かない。
痛い。痛い。叫び出したいほどに。いっそ狂ってしまいたいほどに。それでも、声は出ない。出せない。
悲鳴も慟哭も懇願も絶望も言葉にならない。呻くことすら。
無惨に潰れた喉から、血と空気が延々と吐き出されて、赤い泡が血の海の上に落ちてゆく。
声に至らない掠れた喘鳴と、濡れて糸を引く塊を咀嚼する音だけが、部屋に響いている。
哀れな男はただ、自分の血が壁や天井を汚していくのを、虚ろな目で見つめていた。]
[――。
妹がいた。
三つ離れた、小さな妹だった。
暴力の絶えない家で二人、僅かな食べ物を分け合って生きていた。発育が悪くろくに話せない、多分少し頭も足りない、一人では何もできない妹。
それでも俺の後を一生懸命ついてきた、妹。
慕われていたと、思う。
可愛がっていたと、思う。
それなのに。
酔って暴れる父親にいつもより酷く殴られた妹を見て、尋常じゃない量の血を流している娘を前にしても夫に逆らわない母親を見て。
俺は逃げ出した。
妹を置いて、独りで。
『おにいちゃん』と足りない舌で弱々しく叫ぶ声を振り切って、逃げたのだ。
逃げて、逃げて。転がり込んだ先で、また逃げて。
そうして生き延びた。妹を見殺しにしておいて、のうのうと。風の噂で、妹は死んだと聞いてから、酒に溺れるようになった。]
[自分がこんなだから、他人のことも信じられなかった。
酒が入ると、少し自分を装えた。酒の量は増えていった。
十年前、この村に来た。
長居するつもりはなかった。せいぜい数年、身を寄せるだけの予定だった。
居着いてしまったのは、皆"いい人"だったから。
居心地がよかったから。そして、
マーゴと二人、肩を寄せ合って暮らすラルフがいたから。]
[最初は、自分が妹にしてやれなかったことへの償いのつもりだったのかもしれない。
でもいつしか、失いたくないものになっていって。
友人と呼べる人間が増えたのは、きっと彼のおかげだ。
柄にもなく人の世話を焼いているうちに、周りに人が増えていって、飲み仲間もできて。いつの間にか世話を焼かれる方になっていた。
ユージンと二人だったり、ラルフとピスティオが飲める歳になってからは、四人だったり。独りじゃない酒の味を初めて知った。
酔うと筆談がおぼつかなくなることがわかってからは、自分からラルフに酒を勧めることはなくなったが。
それでも、心を許せる友人ができても。
妹のことは一度も話さなかった。
もしかしたら、酔い潰れた時に寝言で名前を呼んだことがあったかもしれないが、きっと昔の女の名前とでも思われたことだろう。
知られたくなかった。
知ったらきっと、彼は軽蔑するだろうから。]
[頭の芯が焼き切れるような痛みの中、そんなことが走馬灯のように過ぎていった。
きっとこれは。
こんなに痛くて、苦しくて、怖くて、逃げ出したいのに体が動かないのは。
妹を見捨てた報いだ。
きっとあの子は、あんなに小さかったあの子は、もっと痛くて、苦しくて、怖かったはずなんだ。]
……、………
[唇を動かしても、声は出ない。動かせているのかすら、もうよくわからない。
ただ彼に言いたかった。伝えたかった。
いつか俺が投げ捨ててしまったものを、しっかり抱えている彼に。
―俺のような兄にはならないでくれ。
―あの子の元に、ちゃんと生きて帰ってくれ。]
――…………
[意味のある思考はそこまでだった。
後はただ、喰われるだけの。
抉られ、掻き回され、引きずり出される度に僅かに痙攣して血を吐くだけの。
ただの肉塊だった。
開いたまま濁ってゆく目が何も映さなくなり、
男の息が完全に絶えたのは。
それから程なくのことだった。**]
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連投!おめよごし!失礼!しました!大丈夫かこれ!
ピスティオくんが穏やかな死に顔
ぼくはずっとノアの腕をちぎりたいとおもってたので今日のところは心安らかにねむる
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うーん でもこういうのは了解をとってからやるべきだったような 気も してきた してきました ビェ
─ユージンの部屋─
[部屋は変わらずに、暗いままだった。
シーツをかぶせられて、そのあとに運び出された後にも、人の目には見えない血の海が、膝を折って俯いた男を中心にして、部屋の中に広がっている。]
[ ぜ ぐう
ひゅう ゼ … ]
[呼吸をする生き物だった名残なのか、濡れてくぐもったような音がかすかにしていた。]
[部屋の中には、血の匂いがこびりついている。
床は、すっかり赤く染まっていて、
ただ。]
[
触れられた手も、
そこだけ血が拭われて残る。
ラルフが触れたところも、同じように。
誰が触れたって、硬くて冷たいのは、何も変わりはしなかったけれど。もう、その手がグラスを掲げるようなこともない。
もう、温かさが、戻りはしない。]
[ 悔しいね。]
[部屋には血の匂いが満ちている。
誰に嗅ぎ取れなくても。
暗がりには、
死んだ男が身を折っていた。]
[僅かに口を開いた先から、
だらだらと赤いものを流しながら。]
[いたい
くるしい]
[さむい]
[なにも きこえない]
[許して ][(──許されるわけがない)]
[いたいいたいいたいいいたいいたいたいいたい罰なのかな ころしたから たすけて いやだ、しにたくない ]
[ あつい さむい
なんでなんでなんでなんで! ]
[なんで]
[どうして]
[─── 名乗り出たから?]
[皆の前で、話を、したから?]
[疑わなければならないことで、もがく人間が苦しそうで、つらそうで、守りたいなんて──そんな気を起こさなければよかったのか。
慣れない頑張りをしたのが。
いけなかったというんだろうか。]
[それとも、奥様を。
殺そうとしなければよかった?]
*
*
*
─回想、三日目の夜─
[
男は、はー。とそこで息を吐いた。]
ティオ。
にんげんかどーかって話じゃないんだよ。
奥様は、答えを偽ってる。
だから信用ができないって言ってるの。
…… オレねー、人間も。
嘘を吐くって思ってるから。
[だって、そう。自分だってかつては似たようなことをしていて。それがどういう被害を出すかは、──わかってた。]
… そうして、その嘘はね。
他の人を、惑わせる。
間違わせるウソだよ。
人狼を、助ける嘘だ。
[だから、真実占い師である可能性を考えながら、嘘を撤回しないのなら、彼女に。イヴォンに票を入れると決めた。]
[懇願めいたピスティオに、困って眉が下がった。イヴォンの方を見る。自分の問いかけへの答えを待つように。]
…
[責めるような棘に、
はあ。と顔を掌で擦った。]
[
そうなのだろう。必死なのだろう。大事な人を連れていかれたくなくて。
それはきっと、ピスティオの正体に関わらず、本当の気持ちなんだろう。]
…
オレが。
奥様を信じられないから、殺すの。
[チョップをした手より、別のところの方がしくしく傷んだ。罪悪感と、悲しい気分とが曖昧に混じった。
──ピスティオは守られている。でも。その代わりにローザスの奥様に自分たちはすっかり見捨てられていて。だから、自分は彼女を見捨てている。]
[情報にならない。
突き詰めてしまえば、
それが彼女を殺した理由だった。
もう、彼女の口からは、
ウソしかでてこないだろう。と、
そう思ったからだった。]
[──ピスティオ以外の人を、全員見捨てたと。
そう、思ったからだった。]
[疑いたくない。殺したくない。
見て見ぬふりをしたい。
そんな気持ちは胸の中に充満してる。
だってそうじゃなきゃ、
逃げるのを──あきらめることはなかった
──それでも。あの幼いマリオに向かって、よく考えろといったからには。票を手に取る道を選んだからには。ベッキーに、考えろと促したからには。考え続けなきゃならないと、それだけは。
自分に課された、──選んだ義務だ。]
[でも。]
うん。……
[ピスティオがマリオについて怒っていたとイヴォン話をする。直接的には、彼女が殺したわけじゃない。それは、そうなんだろう。とは思った。
人間の、占い師。
その可能性を思っていたから。]
そうだね。
…… イヴォンさんの、
そういうとこ、
オレは、嘘じゃないと思う。
[全員いいひとなんじゃないのか。と、ピスティオが言っていたことが思い出された。
イヴォンが、怒っていたことを疑う気は起きない。ただ、彼女は、──彼女の大事な存在以外を、切り捨てただけだ。昔の自分のように。]
[いいひと。なんて言い方は。
──自分に当てはめてみれば、
疑問符がつく話ではあったけれど。
だって。
もう、何人も何人も見捨ててきた。
その自分への認識は、 "薄情者"から、動かない。]
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