15 ラメトリー〜人間という機械が止まる時
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―見張りの塔―
[ヨナの問い掛け、亡霊は彼女の望む言葉を紡ごうとして]
――……シィラは、
まだ、生きている。と思う。
[“天使”は、彼女を敵から護るために、
ここまで避難したつもりだったのだろうか。
打ち込まれた銃弾は数発、
無理をして飛んだそれはもう長くは持たないだろうか。]
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[頭痛は少しずつ、軽いモノになり。 顔を上げた時には、皆の終わりを知ってしまっていた]
…壊れたのだな。
[ぽつり一言。]
(69) 2010/07/23(Fri) 19時半頃
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―見張りの塔―
[亡霊は小さく頷いて、
けれど起きようと震えるその身体を制した。
――世界の意味を問う、言葉]
……うん、そうだね。
人が赦されなくても、生きていける存在がある。
それに、もしかしたら、
――まだ存在が赦されるヒトも、いるかもしれない。
ヒトとして、正しい形ではなくても……
[ 震える身体を、肩を撫でる
赤く染まった少女の姿、亡霊の手は赤くはならない]
水なら、あるよ。
――……君の眸の中に、
[ 亡霊は、その青を覗く
闇の世界でも、彼女が望めば、それは きっと]
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いや…
[独りで、何かをぶつぶつと。 それはまるで誰かと会話しているようで]
ああはならないし、させない。
――そうか。だから俺は生きていられたのか。
[最後の一言だけは、独り言]
(72) 2010/07/23(Fri) 20時頃
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[あぁ、それは…終わる世界の黄昏の色。
穢れていても、
いや、穢れてすらも、
むしろ、穢れているからこそ、
こんなにも、美しいのか。]
──世界《ヨナ》は、キレイだよ。
[淀みも濁りも穢れも全部、総て含めて、
世界は、こんなにも愛しい──
―見張り塔―
[聞き覚えのある声、小さく。
そう、世界は歪んでいるけれど――]
うん、泉は君の中に――……
そして、君が与えてくれた水は、皆の中に。
―――…ヨナ、
[その乾いた口唇を潤す水は、
けれどもう死んでしまった亡霊の中には なくて。
―――小さく微笑返しながら、
その唇に触れる その血を拭うことは出来なくても]
[噴き出したあか、響く叫び。
既に傍観者たる少女にできるのは、ただ、見ているだけ]
……ああ。
[衝撃を受ける器を失した身に、その音が刺さる事はなく。
そこに紛れた幾つもの呟きも、拾う事はできて]
……さびしい、ね。
[間を置いて、零れたのは、こんな呟き]
[小さなキツネリスは記憶のままに、その手へそっと擦り寄って、
最期の時が訪れるまで、傍に…*]
――ここにいるよ。
ずっと、君のそばを離れない。
[ 色を失いつつあるヨナの唇、
シィラの――異形の血だけが、鮮やかな赤を残して。
触れることのない 口付けを 落とす ]
[ 異形の大樹から は ぽたり ]
[ 泉へと 夜露が 落ちた。]
[何がどう寂しいのかの説明を請われたなら、多分、返事に窮してしまう。
強いて言うなら、そう感じたから──としか、言えないから]
…………。
[ふと、近くで何かが動いたような気がして、目を転じる。
回廊の隅。
密かに揺れるいろ。
生まれては消える、異形の花]
……花畑。
作りたかった、な……。
[その様子に、ふと、思い出す。
金髪の少女に贈った名前の花。
増やそうと、増やそうと、試みていた日々の事を]
[楽しげに笑う声がして、花の異形から視線を動かす。
目に入るのは、歌いながら歩いてゆく銀の後姿]
……あのひとも。
なの、かな?
[小さく呟いて。
それから、ふわ、ふわと。
地に足をつけぬまま、歩き出す。
行くあては、なかった]
ホリーは、ヨーランダと、シィラの事を思う。
2010/07/23(Fri) 21時頃
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知っている。
[シィラの叫びは、 痛いほどふるえて。
どうして。 どうしてシィラは撃たれた?
足は自然と、チャールズの寝床へ向かって行った]
(89) 2010/07/23(Fri) 21時半頃
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― 回想・廊下 ―
[遠ざかる 届かなくなった背中は一度立ち止まり、
こちらへと引き返してくる。
泣き濡れた瞳がその影を見上げる、セシルの姿。]
……置いていかないで…
[足はもう動かない。
足だけではない、身体が…巣食われた胸元が、
全てが止まっていく…動きを忘れていく。]
[ベネットと同じくセシルにも、生きて欲しいと望むのに
彼が死を選び取ろうとすることを止めようともせずに
連れて行って欲しいと願う矛盾。
彼からの死への誘いの言葉にはまた紺の瞳から涙が零れ]
…連れて行って…
…私も…一緒に…
[力を失いかけた手を、懸命に伸ばす。
知っている―――"彼"は、この手を振り払わない。]
[マーゴに近づいていく人は、形を人から変えていく。
裡から異形に食らわれて、その形を崩していく。
差し伸べられたセシルの手、最期の力で伸ばしたマーゴの手。
あと少しで届く、マーゴの目の前でセシルの手はなくなった。
最期は互いに触れることなく――…伸ばしていた手も力尽きた。]
双生児 ホリーは、メモを貼った。
2010/07/23(Fri) 21時半頃
[紺の瞳にはもうセシルの姿は映らない。
セシルも、セシルを食らった異形も全てなくなった。
潤んでいた瞳も乾き、光を失くしていく…止まっていく。]
………
[また独りになって、けれども最期に浮かべるのは
久しく忘れていた、幸せそうな顔]
……嬉しい、
…嬉しい…セシル…
[差し伸べられた手が、幻のものだったとしても。
彼は置いていかなかったから。迎えに来てくれたから。]
双生児 ホリーは、メモを貼った。
2010/07/23(Fri) 22時頃
[動きが、全て止まる。
人の形を忘れてしまえば、それは異形と呼ぶことになるのか。
人の心を忘れてしまえば、それは機械と呼ぶことになるのか。
死したマーゴの躯は、最期は何と呼ばれるものだったのだろう。
壊れてしまったこの世界で、
けれども最期に紡いだのは人としての言葉だったから。
この先マーゴが見る夢は、
差し伸べられた手の――…幸せの。続き。]
[ふわり]
[チャールズのところへ向かうホリーの横を白い靄が通り過ぎる。]
[ホリーはその靄に気付いただろうか、
彼女が幻影などに敏感な性質ならば
通り過ぎた靄は、黒髪の女の姿にも見えたかもしれない。]
[靄は中庭へと向かう。]
[ゆらゆらと回廊を彷徨う内、ふと目に入ったのは開いたままの窓]
そう言えば、閉めないで行ってたんだっけ。
[ここから飛び出した時の事を思い出しつつ見やった中庭には、幾人かの姿。
……傍の大樹に、以前は感じなかった何かを感じるのは、気のせいだろうか]
……いって、みよっと。
[小さく呟く口調は、一時、『妹』のもの。
そうして、いつかと同じく、窓から中庭へと飛び出した]
[ふわ、ふわり。
地に足はつかず、だからと言って、翼が羽ばたくでなく。
文字通り、漂うように、泉の傍へと近づいてゆく。
その場にあるものたちは、姿に気づくか、否か。
気づかれなくとも、気にする事はなく。
大樹の下までやって来ると、軽く首を傾げてじい、とその梢を見上げた]
[中庭に近づくにつれ、靄は形を成していく。
艶やかにウェーブを描く黒髪は綺麗に纏められ、
黒のドレスも埃に汚れてはいない。
泉へと歩み寄る足を引き摺ることももうなかった。]
……
[大樹の下にいる人に、緩く首を傾ぐ。]
…こんにちは、
……お水を飲みに来たの…?
[掛ける声は控えめな声量ではあったが掠れていなかった。
もう一度、羽のある人に首を傾いで泉の傍へと寄る。
靄は、小さな上呂を抱えていた。]
[呼びかける声に、ゆっくりとそちらを振り返る。
上呂を抱えた姿に、ゆるり、と首を傾げて]
……ううん、違うよ。
何となく、この樹が気になって、見に来たの。
[問いに答えながら、視線が向くのは、抱えられた上呂]
[はらり、はらり、
ゆっくりとせかいは、こわれていく。
季節外れの、桜の花が散るように。]
[返ってきた声に瞬いて、樹を見上げる。
異形の樹は静かにその姿を水面にも映して]
…気になって?
[反芻して、紺が瞬き見つめる。]
不思議ね、
人は異形を相容れないものとして見做すのに…
人を…世界を、命を今護っているのは、この子なの
[上呂は泉に差し入れられる。
水面が揺れることはない、上呂に水が汲まれることも。
こちらを見ている様子にそちらを見ると淡く微笑んだ。]
―――…お水を汲みに来たの、
―泉・異形の大樹―
[ 水が人を引き寄せる。
水面に映るその姿は、高らかな笑い声に笑んで、
歌う女の言葉に、眼差しを落とす。
そして2つの命ないものの気配――
翼を背にした娘が見上げていた。
果たされなかった約束を一つ、思い出して
水面に揺れる姿は小さく呟く]
……ああ、友達に、似ている。
[そして―――寄り掛かる“彼”の姿に、
梢は小さくざわめいた、アリーシャの言葉に同意するように
さわり さわり と ]
……全部のひとが、異形を嫌うわけじゃないよ。
[自分の周り。
異形が食べてしまった、優しいひとたちを思い出して、呟く]
この樹も、それがわかるんじゃないかな?
[言いながら、上呂が差し入れられる様子を見る。
懐かしい、と思うのは、どちらの記憶だろう]
……お水、汲んで。
……何かに、あげるの?
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