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![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[戻れない、時間。 (186) 2015/05/18(Mon) 02時半頃 |
[ ざららら、と潮騒のように草葉が舞う。]
……やっぱり、出られない か。
[ある程度まで進むと、足が引き戻される。
肉体はないのに痛みを感じるように。]
――見届けろ、という事、なのかね。
[ きな臭い匂いと共に、歩きだす。
アネモネが揺れていた。]
[風に乗って届く声。
盗み聞くつもりはなかったが
いつのまにか墓の近くに来てしまっていたようだ。
少女の咽び泣く声が胸に痛い。]
(君のお母さんもお父さんも、
殺してしまった…な)
[村医者はルパートの無実も何も、知らないから
何がどうなっているのかもまた知らないが。
向けられた刃のような言葉を思い出している。]
「さっき聞こえた、投票の話。
もしそんなものをするんだったら
わたしは先生が死んだらいいと思う。」
……人を呪わば、穴二つってな。
[それが皮肉なのか自嘲なのか、
影自身にもわからなかった。
ただ、もやもやと白く、胸に燻るものに
そっと手を当てて、空を仰ぐ。]
( ……そもそも、どうして…… )
[「裏切り者」の人狼は、人を殺す禁を犯し
その上、同族まで殺してまわっているのだろう。
――投票にて過ちを正せと、最初に言ったのは自分だ。
それが裏切り者たちを刺激することになって
教会に火災を起こさせ、
(あの時はそういえば、呼ばれていた気がするが。
死んだショックからか、上手く思い出せなかった。)
無関係な人々までも巻き込んだ とするなら。]
…………はァ。
馬鹿らしい……。
[……この体では、ヤケ酒も飲めはせんのだ。]
[死んでも尚色々と苛まれる事に
改めて自分の罪の重さを自覚しながら、
疲れ果てたかのように影は、再び森へ。
少し開けた場所に出ると、
幼い頃登った木の根に座り込む。
風に蒲公英の花が揺れる中、
影は、無い瞼を静かに閉じた。*]
メモを貼った。
― 昨日 墓地 ―
[ その場から遠のいてしまったふたつ
わたしは行く先を知るほうへ足を運びます。
ルパートさんが居るということは
族長様やオーレリアもどこかにいるかもしれないと
そんな小さな 期待と言ってしまっていいものか
複雑なものを胸に抱きつつ。
幾つかの声が聞こえたのは墓地のはしっこ
開いた穴と、その中で動かない骸が4つ。
包まれていて触れることはできなかったけれど ]
ルパートさん……。
[ さっき身を預けた彼なのだろうと、声を落とす。
サイラスが促して結果は聞かずに帰ってしまったけれど
”選ばれた”のは彼だったのかと 頭を垂れた。]
[ 先刻感じた 彼の手から拾った違和
ふ、と、何かが過るけれど わたしはそれに蓋をする。]
もうどうしようも、ないのだもの。
[ それが本当だったとて、わたしを撫でてくれた彼の手は
変わらないあたたかさだったのだから。
ひとつ、慈しむように ざらりとした袋を撫で
土が被さるおと達に重ねて うたを唄う。
また会う日まで また会う日まで
神の守りが 貴方のお側にありますように。
そんな、送別のうたは
声の無いラディ
エルの悲壮な遠吠え
……エル、
あなたの名前、喚べなくって…ごめんなさい。
[ ふっさりとした毛並みを抱きしめて。
せめてあの時。 ”彼”が名を教えてくれたとき。
口にしておけばよかったと、後悔ばかりが募る。]
せんせ、ありがとう。
[ わたしをここまで運ぶのも、土をかけることも
たぶん彼
抜けるような空も、見上げる姿
固く握られた拳が、視えた気がした。 ]
[ ばさり、とたなびく外套のおと
いっつも上機嫌なようでいて、その向こうは霞んで
ほんとうのすがたが見えなかった 不思議な彼。
それでもいま、この人が”そう”ならないために
一番頼れるのはこのひとだったから。]
アル、おねがいがあるの。
…………せんせを、護って。
わたしと繋がっていたひとを…まもって。
[ 右手首のさらりとした絹糸に左手を被せ、
この糸が 彼と繋がってしまわぬように。
自警団の彼が一緒に住んでいるのなら心強いと、
小さな願いを言葉に乗せて、翻る足音
― 早朝 火事 ―
[ 赫く燃える教会、わたしの目にすら映るような。
雑多な野次馬たちは、わたしの友達の姿
焼けるおと、パチンと何かが弾けるおと、悲鳴
いまこの村を包んでいる不条理が ここに凝縮されて
擦れ、熱を持って、業火を吹く。 ]
族長様……。オーレリア…。
[ あの2人がころされたばしょ。はじまりのばしょ。
わたしなら、熱も感じず中へ行けたかもしれないのに
両親が出会った村が壊れてゆくさまを”視て”いられずに
鎮火に励むヒトとヒトオオカミとの間をすり抜けて
誰もいない家へと帰る。
昏いままのベッドで
何処かから聞こえた笑い聲
メモを貼った。
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ─墓地─ (214) 2015/05/18(Mon) 11時頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[私の名と、メアリーさんの名前がつげられて。 (217) 2015/05/18(Mon) 11時半頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ─自宅─ (221) 2015/05/18(Mon) 11時半頃 |
![]() |
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
[腕に縋り来る娘へと視線を落とす
彼女に自分の今の顔はきっと見られてはいないだろう。
情けないような、泣き笑いのようなその表情は]
(救われているのは、───どちらの方か)
[絡めた指先に、抱き寄せた腕の中のぬくもりに。
存在を、ここに在ることを確かめ許して貰った気になっているのは、むしろ、こちらの方かも知れなくて]
ああ。
[サイラスから、生きる大切な者から目を背けて。
搾り出すように湿った声で紡がれる、愛しい娘の名前
こたえた男の声は、罅割れてはいなかったか。
後悔やら悲しみやら罪悪感やら、それでも断ち切れぬ未練やら。
そうしたものを綯い交ぜに、ほつりと短く声が落ちる]
… ああ。
[あの子も、置いていかないでとあんなにこの腕に縋っていたのに]
そうだね、
[この娘は気付いているだろうか。
自分を励ますだろうその言葉、
それがこの愚かな男をも励ましてくれていることに。
犯した罪悪、それを口にするのはやめた。
少なくとも今この時彼女に告げるべきことではない。
言えば自分は楽になろうか、彼女をきっと苦しませて。
そんなことはもう、充分以上にやって来た。
己の為に友を苦しませ、娘を甥を嘆かせた。
この上更に、重ねることに意味があるのか。
…───それともこれも、弱い愚かな男の逃げか]
傍にいて欲しいと、きっと思っているよ。
[君にはつらいことだろうけど。
そう音にせず思うのは、互いに知ることだろうから。
だからと、彼女が与える希望だけを口にして]
君は強いな。強い、いい子だ──…
ああ。行っておいで、マーゴット。
気をつけて行くんだよ。
[自分勝手な感傷を裡に押し込め、目を細め、
かつて、宿から娘と出掛ける彼女に向けたと同じ声を掛ける。
そして淡い花の微笑
─ 墓場 ─
[聞き覚えのある声
男はは、その声
マーゴットのような強さを持ってのものではなく。
ただ”呼ばれた”のだ。
見えるのは、娘一人の”おそう式”
震える肩はやはりあどけなく、ひどく小さく見えた]
メアリー……
[嗚咽。嘆き。
この娘をもっと見守っていたかった。
ずっと傍にいて守ってやりたかった。
…ああ、これが未練かとぼんやりと思う。
未練が未だに、この身を縛り付けているのかと]
…………、
[いつものように、大丈夫だよと言える声も腕もなく。
風に紛れて寄り添い、娘の肩を抱くようにする。
透明な腕は草も娘もすり抜けていて、気付かれることもないけれど]
[娘が泣き止むまでそうしていて、
やがて真っ赤なアネモネが供えられるに手を添えた。
娘の目が、花と同じように真っ赤に泣き濡れている。
涙を拭ってやれる指はなく、
男は微かに歯をかみ締めて俯いた。
喉に手を当てる。ああ、やはり涙の代わりに血が流れている]
……、すまない。
[死んだというのに、妻の気配は近くにはない。
こんな罪に塗れた男に、もはや彼女に会う資格もないのか]
────…、すまない …。
[もう一度繰り返して、立ち上がる娘を見守った。
決意を口にする健気さ
願い篭めるようにして、その小さな背を見送った。
暫くの間、ずっと、ずっとそうして*いた*]
─ ??? ─
[おとなになる。ということが、
どれだけ変わったことかと───今は、思う。
死後に、こんなことを考えていても仕方ないのかも知れないが。
まったく、大人になってどれだけ成長したかと思う。
未だ若い者たちからは、男は大人に見えただろうか。
───とんでもない。
まったく、残念なほどに成長していない。
それどころか、身動き硬くなった分だけより悪い。
友と呼んだ男を八年苦しめ続けたことなど、その最たるものだ]
[妻を喪い、その死を嘆き。
救えなかった──救ってくれなかった彼を恨んだのは本当だ。
悲しみに沈みながら恨んだ…怒った。
そうしていないと、悲しみに押し潰されそうだった。
そうしていることで、自分を支えた時期が確かにあった。
ひどい話だろう。
医師はなにも、神じゃない。
救えない患者がいたって当然だ。
分かっている──…分かっていた、けれど。
彼なら、スティーヴならと思ってしまったのだ。
妻を助けて欲しいと、無茶な願いで縋ってしまった。
彼女が助かるならば、自分は何だってしただろう。
禁忌を犯すことすら出来たろう。
けれどその前に彼女は死に、その機会は永遠に失われた。
─── 見殺しにされたと、あの時思った]
メアリー…
[愛しい娘の嘆き声が微かに聞こえる。
ああ、彼女は今どうしているだろう。
生前最後に聞いたのは、悲しい絶叫
可哀相なことをしてしまった。
彼女の為に生きなくてはと、確かに思っていたはずなのに]
[妻の居なくなった世界は、色を失ったようだった。
あの時、多分、男のどこか大切な部分も一緒に死んだのだろう。
それでも時の流れは残酷で、痛みも次第に麻痺をする。
気付いたのはいつ頃からだったろう。
妻の墓に、折に触れてはそっと供えられる花のあることに。
甥ではない、娘でもない。
レオナルドに、それとなく聞いてみたこともある]
『いや。ルパート、多分それは──…』
[それは多分、”彼”の供えた花であろうと]
[…かつてキャサリンが笑って教えてくれたことがある。
スティーブンに教えて貰った、おまじない。
願いをするには蒲公英の綿毛を吹いて、一息で飛べば叶うだろう。
他愛もない、可愛らしいまじない
そんな無邪気なことを口にするところもある男だった。
あの時の彼女の願いは、叶ったか。
そういえば結局、聞きそびれてしまった。
優しい思い出の向こうに、冷たい雨音と嗚咽が重なる。
遠く記憶の向こうに蓋をしてきた声
────「すまない」と。繰り返し、響く]
[花の贈り主が分かっても、彼との関係が変わることはなかった。
変えられなかった…というのが、少し正しい。
もう、無邪気に声を掛けられる間柄ではとうになかった。
顔を合わせても、気まずい沈黙の続くばかり。
やがてすぐ耐え切れずに、どちらかが居なくなるという感じだ。
臆病だったのじゃないかと思う。
どちらも、相手に声を掛けることが出来ずにいた。
いや、声を掛けるなら自分からだったろう。
でも出来なかった。
もう何を言っていいのかすら、分からなくなっていた]
[それでも、表向きは互いにどうにかやっているようだった。
村医者は偏屈ながらも村人に頼られる医者としてやっていたし、
宿の主も細々ながらも一見穏やかに、店を続けていた。
年を取ればそれなりに出会いもあるもので、
どのみち幼い娘と多感な年頃の甥がいて家は賑やかだったし、
時折やって来る奇妙な傭兵の世話も焼いたし、
宿に長逗留した、気の毒な娘の世話も家族で焼いた。
彼らから、男は大人に見えただろうか。
穏やかに人当たりの良い、父や年長者に見えただろうか。
天秤は危うい均衡を保ち続ける。
平穏はそうして続いていくはずだった]
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