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(『 … そうやって、あたしに頼るのは。
縋るのは、 死んだって、
―― アルのために、なんないから。 』)
[(昔から、姉の後ばっかり追って、
死んだ後すら 幻影を見て。
そんな姿を、『よく知ってる』から。
突き放すんじゃない。ただ、うしろをあるくだけ。)
―― そんな姉のこころはしらないで、
無垢な瞳は、ぱちり。
…… 瞬いて、なにも考えることなく
こくり。 『わかったよ』 と、
クリアカラーの、鴉羽が 頷いた。 ]
[ くるり。 ]
[ そのまま、黒衣を纏う少年は
生きてるように ひらり、
あの重々しい外套よりも
閃く マントを纏い。 ]
[ 微笑む、
白いワンピースの少女をうしろに。
――― … 、
硬い足音もなく、
とてり と 小道を歩き出す。 *]
メモを貼った。
─ 回想
[男がその騒ぎに気付いたのは、
宿の裏手から妻の驚いたような声が聞こえたからだ。
食堂で仕込みをしていた男は手を止めて、裏手へと顔を覗かせた。
甥が、この家にやって来て、もう5年になる。
やって来たばかりの頃、心細げにしていた少年は、
すっかり兄貴分やら友達も出来、ここの暮らしにも馴染んで見える。
とはいえ、まだ多感な年頃の少年だ。
甥が寂しがらないようにと、妻は気に掛けているようだった]
キャシー、どうしたんだい?
[近づくと、幼い娘のきゃっきゃと楽しげな笑い声が聞こえた。
娘のメアリーは3つになる。
この年になって漸く授かった、キャサリンとの宝物だ。
その無邪気な声に自然と笑みを浮かべながら裏に向かうと、
井戸端では、甥と娘が水遊びをしていたようだった。
娘が嬉しげに笑って、桶の水をそこらじゅうに撒いている。
妻は、その娘のお遊びを止めるのに大わらわだ。
男の足元にも、小さな手からびしゃんと水が跳ねてきた。
再び上がる高い笑い声]
こぁら、メアリー、いたずら娘。
そら、捕まえたぞー?
[傍に来た娘を捉えてやれば、
またきゃっきゃと楽しげな笑い声が上がる。
その顔を覗き込んだとき、ふと娘の目が少し赤いことに気付いた。
見れば、腕や足に小さな擦り傷がある。
転んで泣きでもしたのだろうか。
幼い娘を妻に預けて、男はすぐ傍らの甥へと視線を転じた。
どうも元気がないようだ。
水遊びを叱られたにしても元気がないなと目を向けた。
グレッグの目が赤い。
ごめんなさいと呟く小さな声に、瞬いた。
さては水遊びより前、外で何かあったのだろうか。
ともあれこのままでは二人とも風邪を引いてしまうと、
一旦、中に入って二人の子どもたちを乾かすことにした]
…ほら、グレッグ。
[二人を乾いた柔らかな布で拭いて乾かして。
キャサリンがメアリーを着替えさせに行く間、
ルパートはミルクを温めて、グレッグへと差し出した。
暖かなミルクは蜂蜜入り、ふわりと甘い優しい味だ]
落ち着いたかい?
[少年がミルクに手を伸ばし、落ち着くまで。
見守ってから、男は微笑んで頷いた]
昔はなあ……
僕も兄さんと…お前の父さんと、良く川に遊びに行ってね。
そりゃあ、濡れるわ汚れるわで怒られたりもしたもんさ。
[懐かしげに口にするのは、彼の父との昔の思い出]
一時、釣りに夢中になったこともあってね。
確か物置に、まだ釣竿が残っていたはずだが…
どれだけ釣れるか、どれだけ大きな魚が釣れたか。
日が暮れるまで夢中になったっけ。
[小さく笑って昔日から視線を引き戻し、
くしゃりと甥に笑みかける]
───…なあ、グレッグ。今度二人で釣りに行こうか。
[それから幾日か後のこと、
約束通りに甥と連れ立って川に釣りに出かけた。
メアリーはキャサリンに任せての、男二人水入らずだ。
きらきら光る水面を眺め、少し真剣な顔で釣り糸を水に垂らし。
妻のお手製弁当を食べては、二人揃って空を眺めた。
釣り糸を垂らしながら、色々な話もした。
他愛もない話だ。でも楽しかった。
結局大した魚は釣れなかったけど、
そうして日が傾くまで二人で過ごした美しい水辺の光を、男は今も覚えてる]
(ああ…、だからだ。)
[あの時
もう彼もすっかり成人しているのだと分かっていたのに。
あの時の少年は、甘いミルクにほっとした顔を見せてくれたから。
もう一度それが見たくて、酒ではなくミルクを勧めてしまった。
蜂蜜入りのミルクは、あたたかくて甘い思い出の匂い。
今はもう遠い、───遠い、記憶の中の*話だ*]
[獣からもう動かない兎を受け取って自宅へと戻る。
いつものナイフで血を抜き、内臓を出して、皮を剥ぎ、
肉の塊に切り分けてゆく。
足以外の部位は鍋に放り込んで野菜と共に煮こむ。
足は二本とも塩と胡椒でこんがりと焼く。
美味そうな匂いが漂いだした頃、
焼けた肉を二本皿に取って床に下ろす。
そのまま床に座って、獣と肉を共に食む。うまい。
獣は器用に前脚を使って骨と肉を分けて食い]
内臓も食べる?
『いいや、こっちのがいい』
[見上げるのはくつくつと音を立てる鍋の方。
獣のくせに生意気だと思う。]
せっかく死んだし、族長でも探してみようか。
[気まぐれに思い出してそう声をかけると
獣はあからさまに耳をぴんと立てて尾を揺らす。]
どんだけ好きなんだ。
『いや、その……』
[鍋はまだ完成していないから、散歩でも。
そんな気楽さで黒の代わりに赤い布へ手を伸ばして
いつものように羽織ると獣を伴って家を出た。]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
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![]() | 【人】 小悪党 ドナルド 俺が誰のおかげで生きてるって? (72) 2015/05/22(Fri) 00時半頃 |
匂いとかしないの?
『今は兎の匂いしか』
兄さんの役立たず。
『…………面目ない』
[獣のくせに使えない。
仕方なしに現れそうな場所を探してみる。
墓地、集会所、自宅?思いついた順に歩くとして。]
墓、増えてるかな。
[知っているのはスティーブンの場所までで、
それ以降増えた山に誰が居るのか、なんて知らないまま。]
結局さ、裏切り者はどうして行動に出たのか。
そういう話が無いからイライラするんだよ。
『というと?』
言葉があるのに獣みたいに実力行使しかしないから、
裏切り者だって言われるんだってこと。
『犯行声明文を残せと?』
はあ?どういうこと?
[会話は噛み合わないまま、何度目になるのか
薄暗い墓地へとたどり着いた。]
![]() | 【人】 小悪党 ドナルド[クラリッサとベネットの方へ向かうメアリー (74) 2015/05/22(Fri) 00時半頃 |
─墓地─
小生は死肉色と謳われた紐を首に揺らす。
緩やかに風に乗る足音は、死した者にも聞こえるであろう。
そこに居たのは、よく小生を女の元まで運んだ男
足元に座ると、女と似た色の毛をした尻尾を地面に叩いた。
気付こうか、気付くまいか知れたことではないが。
兄と呼ばれた獣の横に、小生が座る。
メモを貼った。
― アネモネの小路 ―
[毒が真っ赤に咲き乱れる花の小路へ、草の影から足を降ろす。]
風はあの日となにも変わらないのに。
[……まだ村に来て間もない頃。
綺麗に飾られたアネモネしか知らなかったわたしは何も知らずに手を伸ばし、メアリーと2人して指先を腫らしてしまった。
大慌てで寄った花屋で、この花は手折ると危ないことをクラリッサに教えて貰いながら、くるりくるり。後でサイラスに看て貰いなさいと、包帯を巻いて貰った白い指先をこすり合わせた日。
とおいとおい昔のはなしなのに、花は今でも変わりなく
傷付かぬわたしの指を撫でるように揺れて、薫り立つ。]
……懐かしい。あの時はびっくりして泣いたね。
[ ざあ、 と風が鳴いて ]
[ かさり、 葉が擦れて ]
メアリー…… おんなしだね。
[ルパートもグレッグも あの子の側にはもう居ない。
両親をいっぺんに喪ったばかりの頃の自分が、重なる。
( ……ひとりなら いっそのこと。 )
ふわり、 朱い花唇が足元を擽って
――風と踊る、朱いWindflower。
( ああまるで。 まるであの子のようじゃないの。)
街を風のように翔ける足音。花のように咲く無邪気な声。
手折ると吐く酸のような毒でさえ、 ――愛ゆえの。
わたしは空に向かって花開く一株を根本から手折り ]
……いっしょにお花を摘みましょうよ。
[ わたしは手の中の花と、風にそう語りかけ、
くちびるで弧を描く。
わたしに折られたはずの花は、かわりなく
風の水槽の中でゆうらりと揺蕩ったままだ。
とおく、とおく 村のほうで
アォォ と響いた遠吠えひとつ
わたしは微かに黒い瞳を開いて眉を下げる。
きっとまた、だれか死ぬ。(それならいっそのこと)
きっとまた、だれかが殺す(そんなことする位なら)
わたしはふるる、と首を振り
アネモネの花びらへと 口づけた。**]
―墓地―
[自分の身体も埋まっているのだろうところ、
感慨深くもないまま歩いていると、
またお前か。
『主人はどうした』
[触れるのだろうか。
獣が見下ろすように猫を見て、ふすふすと鼻先を寄せる。]
濡れた鼻先が息をかけてくる。
不快な、と獣の方は尻尾で柔らかな平手打ちをするとして。
男の足元へと進めば、その手が伸びてくることがあっただろうか。
不思議なことに、小生は死した者にも生きるものにも触れられる。
男は謂う。
主人はどうした、と。
あの女を主にした記憶など小生にはない。
あれはただ、面白そうであったから観ていただけの
一つの御伽噺にしか過ぎぬ。
「にあー」
そう一声鳴いたところで、伝わることもないだろう。
あの女が命を奪われ、何処へと消えたのか。
小生の知る善しもないことだ。
どこぞに隠れているのだろう。
かくれんぼだといったのは、女ではなく幼き少女であったが。
あの女もまた、かくれんぼが上手い。
上手すぎたのだ。
誰も見つけてやれなかった。
今も何処かに、隠れているのだろう。
くだらない女だ。
メモを貼った。
[
見えているようだし触れられるようだ、
只の猫だと思っていたがそうではないのかもしれない。]
死んだのか?
[何の返事だろうか、初めて聞くかもしれない鳴き声に
そう返しつつ猫を抱き上げた。
全くいつも通りの感覚だったから、
こいつも何かのモンスターだと確信した。]
で、あいつを探せって?
それとも、兎食べに来るか。
[ラディスラヴァから、探すなとは言われていない。
ただあの女は相変わらず拒絶をするだろうし、
どうせ誰にも本音を言わないんだ。
獣はともかく猫に味付きのスープを出していいものか
飼い主でないので詳しくは無いが。]
メモを貼った。
[――とん、と地面に暗い影一つ。
今この黒い状態で獣に見つかったなら
間違って噛まれそうではある。
それほどに男の姿はヒトとは思えぬ様子だった。
閑話休題。
白く照った道を一歩、二歩、と歩むに従い
血の香りは離れていくはずなのに
狼の鼻は。そしてぬるい風は、
決して鉄錆の匂いを忘れさせはしなかった。
苦々しい感情を抱きながら男はどこへともなく歩いていく。
最早、村を出てしまいたいのに出る事も叶わないのだ。]
[死者に足音はないが、
こつ、こつ、こつりと音を刻んでいる錯覚がする。
森の中、いつしか紫苑が咲き乱れる小道に来ていた。
ひらり、視界の端に揺れた黒衣
……?
[まさか。
いや、あれはそこまで背が低くはなかった筈だ。
背反する思い、疑念を抱え、男は見えた人影の方へ。
少年とでもいうべきものがいる場所へと、歩いていった。]
ア……
”ヨハネス”?
[よびごえは、届いたのかどうか。**]
メモを貼った。
メモを貼った。
尻尾は雄弁に語る。
獣の頬を撫でるようにはたいてから、小生は男に抱き上げられた。
この男は、小生が死んだとでも思っているのか。
それとも物怪のなにかだと思っているのか。
くるり、喉の奥を鳴らして哂ってやった。
探す価値もない女を捜しに行くと謂うのなら
小生は止めこそしないだろう。
しかし聞こえた兎の言葉に
「にぁん」
猫なで声一つ上げて見せれば
今宵の食事にはありつけそうだ。
あれから、唄も聞こえない。
風に乗る禍々しい気さえ、ない。
何処に隠れているのやら。
ゆうらり、ふわり。
小生の髭が揺れる**
[
不満そうな獣の背も撫でつつ、
胸の隙間に猫を落とさないように抱いていると
機嫌良さそうに喉を鳴らす。]
ああ、食うのな。
[その向こう、墓場の奥まで覗いても
一見しては誰の姿も見えないから居ないと判断した。
そろそろ鍋も良い頃合いだろう。]
兄さんは兎もう一匹ぐらい仕留めるように。
『何だと?』
食い扶持が増えた。
[不満気な獣を追いやって、
猫を抱いたまま墓場を後にした。**]
メモを貼った。
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