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[ ――― 青い空は、
透き通ったぼくらに眩しい。
ああ、また 皮肉気にわらってる。
陽光が 煌々、耀くのに目を細める、
その奥で網膜に焼き付いた柘榴石が。
焔のように ひかった。 ]
[ 同時。 さざめく風が、
―― 意識が闇に落ちるまえ、
聞こえたよな 聞こえなかったよな、
風に戦いでゆく。]
『……ねえ、アル。
‟なにを”、‟だれのことを”考えてるの?』
[ ―― ‟にせもの”じゃあない、
‟ほんもの”の少女は。
透きとおるようで、
凛。と。
死んでなお、虚ろな洞なんかじゃあない。
その形を こころを、
確固としてもった、
ひとであり、いぬだった。]
…… ―― さあ、誰だろうなあ
[ そんなねえさんを見つめながら、
くすり と 、姿相応にわらう。 ]
[自宅に戻る道すがらのこと。
途中喚くような声が聞こえたが、
生者のことなんてもう、どうでも良かった。
ただ一人の死は今でも願って居たのだけど。]
逆恨み?いいや違うね。
アイツは今でも俺の平穏を壊した害悪のままだ。
一回ぐらい殺しても良かったかな。
[こんなことグレッグに聞かれたら殴られるかもしれないが
その考えは改める気は無いままだ。
からっぽの胸に詰めるものももう無いので、
何にも感じない。]
[がさりと茂みが揺れて、一匹の兎を咥えた獣が戻る。]
なに兄さん、それだけ?
二人分なのに足りるの?
『煩いな、次はお前が行けよ』
やだよ。
[それでも狩りが出来るだけ、開放されてきた証なのだろう。]
『 当ててみようか? 』
…… やだよ。
――― だって、当てるでしょ。
[くすくす] [くすくす]
[顔を見合わせて、ふたりはわらう。
――― 天使のような蒼は、
まったく同じ色をして、
それなのに 太陽と月のように、
それぞれを追いかける二匹の狼のように、
ちがう 『いろ』を浮かべ。
それでも ぼくらは。(わたしたちは。)
『ふたつでひとつ』‟だったから”。
お互いのことが ようく、わかる。 ]
『 ―― なら、行ってきたら? 』
[ ひとしきり、
お互いの頬に触れ、
額をあわせるように、じゃれる。
子犬同士、あそぶようで、
…… どこか、再びの別れみたいに。
また 『いつか引き裂かれる』
‟片割れ”の身に、触れて、]
[ ぱ と、 手が (糸が)
はなれてゆく。 ]
…… ――― ねえさんは、
… ひとりじゃ、いやだ。
また、会えたんだからさ。
[ 差し出した手を、
―― 少女は、取らない。
…… 寂しそうに。
そこだけは、‟にせもの”とおなじように、
空気のように 散りゆくだけの花のよに、
後ろで手を組んで、
立ち尽くした、まま。 ]
『 …… アル、
あたし 、 (…もう、繋げないよ。)
… あとをつけていくから、
先に行ってくれる?
っふふ、たまには手をつなぐより
列になっていくのも、面白いじゃない。』
(『 … そうやって、あたしに頼るのは。
縋るのは、 死んだって、
―― アルのために、なんないから。 』)
[(昔から、姉の後ばっかり追って、
死んだ後すら 幻影を見て。
そんな姿を、『よく知ってる』から。
突き放すんじゃない。ただ、うしろをあるくだけ。)
―― そんな姉のこころはしらないで、
無垢な瞳は、ぱちり。
…… 瞬いて、なにも考えることなく
こくり。 『わかったよ』 と、
クリアカラーの、鴉羽が 頷いた。 ]
[ くるり。 ]
[ そのまま、黒衣を纏う少年は
生きてるように ひらり、
あの重々しい外套よりも
閃く マントを纏い。 ]
[ 微笑む、
白いワンピースの少女をうしろに。
――― … 、
硬い足音もなく、
とてり と 小道を歩き出す。 *]
メモを貼った。
【人】 花売り メアリー …?グレッグお兄ちゃんを殺した…? (60) 2015/05/22(Fri) 00時頃 |
【人】 花売り メアリー[クラリッサがふたりの亡骸に近寄ったことでサイラスがベネットが (61) 2015/05/22(Fri) 00時頃 |
─ 回想
[男がその騒ぎに気付いたのは、
宿の裏手から妻の驚いたような声が聞こえたからだ。
食堂で仕込みをしていた男は手を止めて、裏手へと顔を覗かせた。
甥が、この家にやって来て、もう5年になる。
やって来たばかりの頃、心細げにしていた少年は、
すっかり兄貴分やら友達も出来、ここの暮らしにも馴染んで見える。
とはいえ、まだ多感な年頃の少年だ。
甥が寂しがらないようにと、妻は気に掛けているようだった]
キャシー、どうしたんだい?
[近づくと、幼い娘のきゃっきゃと楽しげな笑い声が聞こえた。
娘のメアリーは3つになる。
この年になって漸く授かった、キャサリンとの宝物だ。
その無邪気な声に自然と笑みを浮かべながら裏に向かうと、
井戸端では、甥と娘が水遊びをしていたようだった。
娘が嬉しげに笑って、桶の水をそこらじゅうに撒いている。
妻は、その娘のお遊びを止めるのに大わらわだ。
男の足元にも、小さな手からびしゃんと水が跳ねてきた。
再び上がる高い笑い声]
こぁら、メアリー、いたずら娘。
そら、捕まえたぞー?
[傍に来た娘を捉えてやれば、
またきゃっきゃと楽しげな笑い声が上がる。
その顔を覗き込んだとき、ふと娘の目が少し赤いことに気付いた。
見れば、腕や足に小さな擦り傷がある。
転んで泣きでもしたのだろうか。
幼い娘を妻に預けて、男はすぐ傍らの甥へと視線を転じた。
どうも元気がないようだ。
水遊びを叱られたにしても元気がないなと目を向けた。
グレッグの目が赤い。
ごめんなさいと呟く小さな声に、瞬いた。
さては水遊びより前、外で何かあったのだろうか。
ともあれこのままでは二人とも風邪を引いてしまうと、
一旦、中に入って二人の子どもたちを乾かすことにした]
…ほら、グレッグ。
[二人を乾いた柔らかな布で拭いて乾かして。
キャサリンがメアリーを着替えさせに行く間、
ルパートはミルクを温めて、グレッグへと差し出した。
暖かなミルクは蜂蜜入り、ふわりと甘い優しい味だ]
落ち着いたかい?
[少年がミルクに手を伸ばし、落ち着くまで。
見守ってから、男は微笑んで頷いた]
昔はなあ……
僕も兄さんと…お前の父さんと、良く川に遊びに行ってね。
そりゃあ、濡れるわ汚れるわで怒られたりもしたもんさ。
[懐かしげに口にするのは、彼の父との昔の思い出]
一時、釣りに夢中になったこともあってね。
確か物置に、まだ釣竿が残っていたはずだが…
どれだけ釣れるか、どれだけ大きな魚が釣れたか。
日が暮れるまで夢中になったっけ。
[小さく笑って昔日から視線を引き戻し、
くしゃりと甥に笑みかける]
───…なあ、グレッグ。今度二人で釣りに行こうか。
[それから幾日か後のこと、
約束通りに甥と連れ立って川に釣りに出かけた。
メアリーはキャサリンに任せての、男二人水入らずだ。
きらきら光る水面を眺め、少し真剣な顔で釣り糸を水に垂らし。
妻のお手製弁当を食べては、二人揃って空を眺めた。
釣り糸を垂らしながら、色々な話もした。
他愛もない話だ。でも楽しかった。
結局大した魚は釣れなかったけど、
そうして日が傾くまで二人で過ごした美しい水辺の光を、男は今も覚えてる]
(ああ…、だからだ。)
[あの時
もう彼もすっかり成人しているのだと分かっていたのに。
あの時の少年は、甘いミルクにほっとした顔を見せてくれたから。
もう一度それが見たくて、酒ではなくミルクを勧めてしまった。
蜂蜜入りのミルクは、あたたかくて甘い思い出の匂い。
今はもう遠い、───遠い、記憶の中の*話だ*]
[獣からもう動かない兎を受け取って自宅へと戻る。
いつものナイフで血を抜き、内臓を出して、皮を剥ぎ、
肉の塊に切り分けてゆく。
足以外の部位は鍋に放り込んで野菜と共に煮こむ。
足は二本とも塩と胡椒でこんがりと焼く。
美味そうな匂いが漂いだした頃、
焼けた肉を二本皿に取って床に下ろす。
そのまま床に座って、獣と肉を共に食む。うまい。
獣は器用に前脚を使って骨と肉を分けて食い]
内臓も食べる?
『いいや、こっちのがいい』
[見上げるのはくつくつと音を立てる鍋の方。
獣のくせに生意気だと思う。]
せっかく死んだし、族長でも探してみようか。
[気まぐれに思い出してそう声をかけると
獣はあからさまに耳をぴんと立てて尾を揺らす。]
どんだけ好きなんだ。
『いや、その……』
[鍋はまだ完成していないから、散歩でも。
そんな気楽さで黒の代わりに赤い布へ手を伸ばして
いつものように羽織ると獣を伴って家を出た。]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
匂いとかしないの?
『今は兎の匂いしか』
兄さんの役立たず。
『…………面目ない』
[獣のくせに使えない。
仕方なしに現れそうな場所を探してみる。
墓地、集会所、自宅?思いついた順に歩くとして。]
墓、増えてるかな。
[知っているのはスティーブンの場所までで、
それ以降増えた山に誰が居るのか、なんて知らないまま。]
結局さ、裏切り者はどうして行動に出たのか。
そういう話が無いからイライラするんだよ。
『というと?』
言葉があるのに獣みたいに実力行使しかしないから、
裏切り者だって言われるんだってこと。
『犯行声明文を残せと?』
はあ?どういうこと?
[会話は噛み合わないまま、何度目になるのか
薄暗い墓地へとたどり着いた。]
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