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![]() | 【人】 花売り メアリー[下から見るその人の眼が (65) 2015/05/20(Wed) 01時頃 |
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― 4日目 投票 ―
[粛清を決める投票に、全員が集まるはずの集会場。
わたしは足音、声を何度も確認して、ようやく。
居るはずのひとが居ないことに気付くんだ。]
…………せんせ…?
[さあ、と風が砂塵を巻き上げて 揺れぬ黒髪を通り過ぎ
吹き抜けた先は通い慣れた診療所。
そんなわたしの揺らめく心を嘲笑うかのように
箱は静かに今日の死者の名前を吐き出した。
――グレッグ・シーボル
彼への死の宣告と同時に決まった メアリーの孤独。
いっそ予告なしに奪われた方がましなのではと思う位に
決められた未来は、夜の帳と共に落ちていった。]
[ (もしかしたら、具合が悪いだとか)
(誰かが大怪我をして忙しいだとか)
(そうよ、だって大火事があったんだもの)
(きっと忙しくって来られないんだ) ]
そう、よね。 きっと そう。
[手首の絹がはらりと緩み、手を下げれば落ちてしまうほど。
さら、さらと揺れた束を撫でれば ひとつ正緒を吐き出して
風に揺られて何処かへ伸びる。
手繰っても 手繰っても 終わりのない細い生糸。]
グレッグ……。 (サイラス…。)
[父からも 兄からも 遺されるあの子の叫びが
耳の裏に響いて離れない。
――サイラスは”終わったら”あそこへ来るだろうから
わたしは彼が選んだ責務に目を細めて 背を送る。
( どうか、彼と彼が 安らかであるように ) ]
グレッグ、 また、ね。
[ ルパートさんに ”会えた” から
これから世界に別れを告げる彼へ、わたしだけは
再会を願うことばを餞に。
ざわり、木々が揺れ 闇が迫るは金の獣ふたりの背。
かたどる闇へは音もなく、サイラスへは
( いってらっしゃい )
還りを願うことばを礎に。
死が流れてくる毎日が、確実に生者を蝕んでゆくけれど
皆それぞれの「ただしいこと」は、意味を持って牙を剥く。
願わくは皆、それを守ったまま 逝けますようにと
集会場から散る足音達へ、願った。]
[変わらず揺れる 微かな朱い絹糸は
わたしの指間でするりと擦れて 風に乗る。
ひとつ、腕にまきつけて
ゆるりと足を運びながら
導かれたのは、宵の深まる月降りた墓地。
サイラスが ”終わったら”
きっと訪れるだろうと思っていた場所。
手繰る糸が途切れた先は、ほうやりひかる紫の色
あの日>>1:=7視た 紫苑――。]
こんな夜更けに、お墓参りですか? …せんせい。
[返事が返らぬのは当然のこと。そう諦めながら
わたしは土の上の物言わぬ花へ、話しかけていた **]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
![]() | 【人】 花売り メアリー
(98) 2015/05/20(Wed) 11時頃 |
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![]() | 【人】 花売り メアリー[重さを増した天秤が均衡を崩して、大きく吊り棒が傾く。] (108) 2015/05/20(Wed) 11時半頃 |
─ 4日目・宿屋裏手 ─
[暗い森をスティーブンと抜けて後、
男の姿は、淡く生前の姿を模した形で見慣れた宿の傍にある。
裂かれた喉から滴っていた血は、今は止まっている。
ただ、男の輪郭は淡々としたまま、
短い間昔日の姿を戻していた頭髪も再び白く薄くなっている。
どうやら、この場に在るにはそれが相応しいようだった。
心を映すということなのだろう]
メアリー、…グレッグ。
[村に入った男が真っ先に探したのは、この二人だ。
もっとも気がかりな名を求め、生前の我が家へ向かう。
そこには幾つかの人の気配があるようだった。
ゆらり、幽霊はそちらへと漂う]
グレッグ………!?
[そこで目にしたものは、
獣の姿でクラリッサに襲い掛かる甥の姿だ
それに、男は信じられないといった様子で目を見開いた。
愛娘の悲鳴が響く
咄嗟に、甥に向かって腕を伸ばした]
────…グレッグ!
[必死に伸ばした腕も指先も、彼を通り抜けて行く。
分かっている。
分かっていて尚、手を伸ばさずにはいられなかった。
すり抜けると同時、耳が彼の唸りを間近に聞いた。
甥の瞳を、そこだけは姿変わっても変わらぬものを間近に見る。
必死に、懸命な目をその場に見た]
( …ああ、)
[その瞬間、分かったと思った。
この”息子”の想いを、確かに聞いたと思った]
やめろ、グレッグ…!
[それでも尚、訴えてしまうのは、
彼もまた”大切なもの”であったから。
大切な家族、かわいい子どもであったから]
やめろ………!
[彼の耳に訴えが届くことはない。
獣の低い悲鳴、そして衝撃があって振り返った。
小さな狼が、グレッグの足に噛り付いている
娘だった。
必死に彼を引き止めようとする姿に、男の顔が歪んだ。
大切なもの。大切な子どもたち。
二人を、二人とも守ってやりたかったのに]
[顔を上げれば、立ち竦む娘の姿が見えている
先に言葉交わした彼女に今は声を掛けることなく、
ただ視線が交わる一瞬に、男の顔はくしゃりと歪む]
グレッグ…!
[サイラスの足が、甥の首目掛けて蹴り込まれた
庇っても、邪魔のしようはなかった。
男の蹴りは何の抵抗もなく、狼の首元に突き刺さる。
痛みを受ける顔で、鋭い獣の悲鳴
…──お前は、
[どうして。を、男は紡がない。
そんなことは痛いほどに分かっていた。
彼がこのようなことをする理由は一つしか浮かばない]
っ、ばかな……
[俯いて、それ以上の言葉は出なかった。
ベネットの、サイラスの声が聞こえる。
グレッグがサイラスの下に押さえつけられる。
やめてくれと叫びだしたかった。
実体があるならば、彼を殴り倒してでも甥を逃がしたかった。
彼らは決して見逃しはしないだろう。
”怪しきは罰せよ”と。
自らの例を引くまでもなく、投票を始めた時──いや、
族長が教会に皆を集めた時から、決まっていたのだから]
グレッグ、
[獣姿を解こうとしない甥の傍らに幽霊が座り込む。
サイラスを突き飛ばし駆け来た娘
メアリー、
[必死に敵意を剥き出す娘の姿に、辛い表情で眉が寄る]
二人とも………
( … すまない。 )
[守ってやれない子どもたちに頭を垂れ、
共に抱き寄せるように一瞬二人へと額を寄せて]
[そうして、無残に連れて行かれる甥を見送るのだ。
それを止める力は、命を落とした男にはない。
愚かしい話じゃないか。
結局、旧い友を苦しめその手を汚させ我侭に、
けれど少しは彼らの守りの為にと死を望んだ先がこの有様だ。
とはいえ仮に生きてこの場にいたとしても、
恐らくグレッグに加勢しただろうなという程度で、
たかが一人一匹の力で抗ったとて、何も変わらなかったかも知れないけれど]
[甥の命が奪われる場に、男は立ち会うことはしなかった。
その代わりに、彼が傍に居れない代わりに、
意識を失い地に崩れ落ちた娘の傍
大丈夫と言ってやる声も、撫でる手も持たないけど。
涙で濡れた頬を見つめて傍らに居た]
…────、
[命のまたひとつ消える気配
それを命なき者の鋭敏さで感じて、男は顔を持ち上げる。
遠く虚空に人狼の、音なき悲痛な声が*木霊する*]
メモを貼った。
[からかわれたので、じろりと睨んでやった。
父の晩年を思い出した。
輝かしい光を頭に頂いていた。
ああなる前に死んでよかったと少し思った。
月は煌々と照っている。
残酷なまでに生前と同じく美しい月が。]
───。
[語られる言葉に静かに耳を傾けている。
「あの子らの声を聞く余地は
なかっただろうか」……そう言われて、
空を見ながら考える。
「過ちは一族の手で正さねばならない」
そういう前に話を聞くべきだっただろうか。]
…わからない。
[見えぬSOSに手は差し伸べられなかった。
水平を保っていた両の天秤で
生ぬるさの中、気づけなかったことに
ルパートは気づいていたのだろうか。
向けられた視線に、ゆっくりとそちらを見る。
昔と変わらぬ柔らかい口調と、
年長者としての
少し固い口調が混ざり合っているようだ。
助けたかったという言葉は本当なのだろう。
同族を殺したいと思ったことがないというのも
彼の口ぶりから、実行犯ではなく理解者だったのだろうかというのも]
(──……君は、
わかってて、あんな、)
[誤解させるような言葉の意図を理解して
苦いものを飲み込んだ。
馬鹿、という言葉は内心に留めておく。]
……そうかい。
僕は──。
[言葉を止める。首を振る。
死んだ人間の娘を思って絞り出された嗚咽に
何より突き動かされていた。
あれは悪手だったのか。
手負いの獣を更に追い詰めることだったのか。
そもそも───……。
今となっては、考えても詮無きことだ。]
[どうすると問いかけた。
行くよ、と彼は答えた。
ルパートが足を踏み出すのを見て、
男もこくりと頷く。
──ざあ、という風を頬に受けながら
村の方へ歩き出した。
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