160 東京村
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[あるいは、遠くの街に行けば――…… そう思わないこともない。しかし、この国でのトップはこの街だ。東京だ。 新宿であり、六本木であり、渋谷なのだ。 田舎の高級店よりも、都会の大衆酒場のほうがまだマシに思える。]
『オーダー!』
あ、わり!
[底辺の酒場でも、威勢がよくて気持ちがいいことだってある。 オーダーは――……ジントニック、カルアミルク、カシスオレンジ。
次の休憩時間が待ち遠しかった。]
(23) 2015/06/03(Wed) 18時頃
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フランクは、追加のうっす〜いハイボールを適当に作っている**
2015/06/03(Wed) 18時頃
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い、いやそんな、あい、アイリスにこんな いいお姉さんがいたなんてと私思ってて……
[丁寧にお礼を言われて、どう答えていいかもごもごと口を動かす。]
あ、はい、はい お店の場所は、教えておきますね
[道順を教えるか地図を描くか悩んで、どちらにせよ慣れない町のことだからうろ覚えだと気づく。 ノートに地図を描こうとしたがやっぱり曖昧で……すみません、ネットで調べた方が早そうです……と謝った。 そういえばアイリスのツイッターアカウントはその店とつながっているということは伝えておく。
それから、なぎささんの笑顔になんだか違和感を感じた。(>>22)]
(24) 2015/06/03(Wed) 18時頃
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[こんな……笑顔って、なんだろ。やさしい笑顔だけど……。 家族が、いなくなった時に……?
あれ?あれ? 違和感は積み重なっていく。なぎささんの言っていた小さな言葉と雰囲気は。
……なぎささんは、アイリスのことを……心配してない?]
(25) 2015/06/03(Wed) 18時半頃
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――どうかしましたか?
(26) 2015/06/03(Wed) 18時半頃
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メルヤは、ひなこに問いかける。やはり柔和な笑みを浮かべたまま。
2015/06/03(Wed) 18時半頃
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[その笑顔で 問われて]
……い……え、な、なん、なんでも、ないです
[私に抗う強さはなくて。]
(27) 2015/06/03(Wed) 18時半頃
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そうですか。
[なんでもない。なら、なんでもないのだろう。]
……坂下さんと会えたおかげで、貴重な情報を頂けました。 私の方から教えて差し上げられる事が少なかったのが、申し訳ないですが……
あ…あいりの事についてまた何かわかりましたら、先程かけた電話番号に連絡頂けますか? 「アイリス」のtwitterアカウントでも良いけれど…あいりの部屋のパソコンでしか見られないので。
[追加情報があった場合の連絡を依頼する。]
ああ、でも本当に良かった。 私一人であの子の事を知るのは大変そうだったから…… 頼もしいです、仲間が居てくれて! 頑張りましょうね!
[なぎさの中ではもう、ひなこは自分と目的を同じくする同士という扱いになっていた。]
(28) 2015/06/03(Wed) 19時半頃
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[アイリスなら、気に入らないときっと残りのコーヒーでもお姉さんに投げつけて、叫ぶように文句を言うんだろうか。 ]
いえ……と、とんでもないです……
[私には俯いて視線を逸らすことしかできなくて。 はい、はいわかりましたと、連絡することを了解した。]
あ……はい……
[がんばりましょうとポジティブな響きで言われても、それに納得はできなかったが頷いた。 彼女の顔の痣がその笑顔をより不自然に浮き上がらせる。
それでもアイリスのことを知りたいのは同じみたいだからと内心言い訳して。]
(29) 2015/06/03(Wed) 19時半頃
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[休んだバイトの分、それから自分のシフト分まで働けば すっかり空は暗くなっていた。
相談相手が今すぐ欲しくて、話目的で手近な場所へ顔を出したのがこんな事になるとは。青年は遠い目をして、暗い空へ深く深く息をついた。
疲労感が一気に駆け上がる気がしたので ここに顔を出した時間は考えないようにする。
仕事から上がるときに同じシフトの仲間から 順々に肩に手を置かれたのは 疲れもあいまって一周回って面白かったが。
店長には自分の規定が調整を入れないとやばい、と もう一度念を押した後に青年は店を後にした。
店から東口へ。それから南口に向かってふらふらと歩く。 駅に向かって歩く程に人の数は増えていった]
(30) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[来る途中にたまたま見た、ツイッターの画像。>>#1>>#2 舞台となった交差点はいつもの通り人が行き交っている。
死体や鏡の影はどこにもない。 そこを舞台にした、作りものにしてはやたらと鮮明な画像。
いつもなら はあ。と抜けた声ひとつ あげるだけで済むことが今は出来ない。
それだけで片付ける事は出来ないほど、 今日は異常な事が起き過ぎていた。]
(31) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[ポケットの中には携帯が入っている。]
……………
[その重みと、ツイッターに上がった画像。 それしか、今は考えられなかった]
(32) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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― 新宿駅東南口 ―
[東南口の前に来た頃。 ふいに、ポケットの中の携帯が震えだした]
―――――――、
[びくりと青年の肩が震えた。 震えそうになる手で、携帯を取り出す。
通話画面が、また独りでに「通話中」に変わった]
(33) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 …っ あの 』
『 「見届け役」、ですか 』
(34) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 っ お、おおおれ …、』
『―――――― 新宿、駅の、サザンテラ ス… 高島屋行く、路線橋 で』
『 い、 いまから …っ 』
[震える声に応えるように]
(35) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 はい。わかりました。 』
[穏やかな声が、携帯の奥から届いた]
(36) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[サザンテラスの跨線橋は道路を挟んだ向こうにある。 走ればすぐという距離だった。 青年の足は、何かに急かされるようにそちらへ向かう]
[電話口では男の荒い息が続いている]
(37) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[信号を渡って渡り、跨線橋まで掛けた。 小さな人だかりが見える。
携帯の向こうと、人だかりの奥。 音量は違えどほぼ同時に、 「来るなぁあ」と喚く声が聞こえた]
[ざわついた人だかりの奥で、 男は跨線橋の手すりに跨るようにして、 荒い息を吐いている。 橋の下は遠く。そこには線路が通っていた。]
(38) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『大丈夫です』
[男の荒い息がだんだん早くなっていく]
(39) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『寂しくなんかありません』
[ひゅ、ひぅ、と悲鳴のような、 嗚咽のような音が息に混ざる]
(40) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 見届けますよ 』
[過呼吸にも等しい息が大きく息を呑んだ]
(41) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[――――男の眼前には 遠く下の地面に、 無機質に赤錆びた鉄の道だけが広がっている。]
(42) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 ―――――――――――…… いやだ… 』
(43) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 、ひ…っ うぅう゛、 ぐ、 ぅえ゛っ っ …ぁぁああぁ゛
あぁああああああああああああああ゛…ッ!! 』
[男は、泣きじゃくるようにして手すりの上で蹲る。 駆け付けた警官や周囲の人に橋の内側へ引き摺り降ろされた。
目前に迫っていた死の恐怖に混乱したのだろうか。 引きずりおろされる際に男は暴れ、 彼の手から携帯が橋の下へ落ちていく。]
(44) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 ……… そうですか。 』
[その携帯の奥の 最後の穏やかな声を]
(45) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『 お気をつけてお帰り下さい 』
[青年だけが、聞いていた]
(46) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[がん、と橋の下に広がる線路にぶつかった衝撃音が 携帯の奥から聞こえる。 そのあとに、ぷつ、と音がして 通話が切れた単調な音だけが響いた]
(47) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[騒然とした周囲に、取り押さえられた男が 唾を飛び散らせながら、暗い空へ 何度も何度も咆えていた]
(48) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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『いやだ いやだ いやだ いやだ』
[もう後にも前にも進めないと、 泣きじゃくり蹲る様にして。
狂ったように。
何度も 何度も。]
(49) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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[ひなこの内心など察する事も無く、ただ収穫が得られた事を喜んでいたが、ふと気付く。]
あっ、時間……もう夜、ですよね。
[気付けばもう夜。 制服を着ている以上、ひなこが未成年なのは自明だった。]
……あいりと、同じくらいですよね、年齢。 ごめんなさい、高校生を呼び出すような時間じゃありませんでした…… 門限とか、大丈夫ですか?
(50) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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― 新宿駅南口近辺 ネットカフェ ―
[…………調べたところ、 それは自殺志願者の間に伝わる噂らしい。]
『見届け役』
その電話番号先に掛けると 場所と時間を確認される… そいつは自殺を止めもしないし、自殺の強制もしない。
ただその場に居て、 自殺を最期まで見届けてくれるという。
自殺を諦めると、その電話番号の人物とは 一切連絡が取れなくなる…
(51) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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………ただ立ち会うだけ……
[先程の動揺が隠し切れないまま、 青年はパソコン画面の文章をくぐもった小声で読み上げる。]
[その続きには、行き過ぎた心理カウンセラーが正体じゃないかという説やら、その幽霊だという説やらも書いてあって、事の真偽はバラバラだ。実に噂らしい正体の多様性だった。
恐ろしい犯罪者、というよりは 便利な自殺プランナーの一種のように 取り上げられていた。]
[似ている。…というか、嘘のように一致している。]
(52) 2015/06/03(Wed) 20時頃
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