219 The wonderful world -7days of SAIGAWARA
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…大丈夫、任せといてね
[ニッと微笑み。
体術の1対1であれば、彼女がまず負ける事はないだろう。
となれば、ぼくのやる事は彼女が戦いやすい場を用意する事。
具体的には他の死神の動きを止める事だ。
チャンスは油断しているであろう今。
後ろに控えている死神に狙いを定め、歩くには少々辛い位になってもらう。]
[やがて、一方的におされる仲間の様子に別の死神が慌てて加勢しようとすれば]
…女の人1人に男2人がかりなんて、さすがに卑怯じゃない?
[そのエネルギーは即座に赤い花の養分へ変換される。
死なない程度には加減をしたが今日いっぱいはまともに動く事もできないだろう。
…もしかしたらその結果
後に彼らは黒いカエルの餌食となっていたかもしれないけれど、少年はその事を知らなければもとより知った事でもなかった]
[死神たちが片付けば、何かを思いついたようにその翼から羽を1つずつ拝借してポケットへ。
…手段に対する選択肢は多いに越した事はないのだから。]
そうだね、どこか見晴らしがいい所がいいかな?
街の様子も気になるし
[そして、すっかり調子を取り戻した様子の彼女に
それじゃ、行こうかと満面の笑みで手を差し伸べただろう**]
― →十王マルチシアター西付近―
[この辺りで見晴らしの良い所となると展望スペースがあるコキュートスJか観覧車のあるドゥームプラザになる。
どのみち一度北方面へ向かおうという話になったのだが]
「マジ最高!」
「神ってたわー」
[途中、十王マルチシアター付近を通りかかった時
派手なパンクファッションに身を包んだ若者達が興奮冷めやらぬという様子で建物から出てくる場面と遭遇する。
どうやらコンサートが終わったタイミングのようだ。
それ自体は若者の街、サイガワラにとって日常的な光景。
よくある事だったのだが]
「ブルースカルもキマッてたよね」
「やっぱ時代はブルースカルバッジっしょ!」
[聞きなれた単語に少年の眉はぴくりと反応する。
さらに聞き耳を立ててみれば
今日コンサートを行ったバンドがブルースカルバッジを付けていた事。
今、ブルースカルバッジがブームになっているという事を聞き取れただろうか。
それだけならまだ、偶然同名のブランドがあったとか
元々RGに存在していた製品を今回のゲームに使用していた等という事で説明がついただろう]
[しかしさらに中央エリアを進む道中も、すれ違う人々はブルースカルバッジの事を話題にしていたのだ。
イマドキの若者から幼い子供、よい年をした中年層。
果ては老人までそれはそれは幅広く…]
ねぇ、パティさん…
[何かがおかしい。
そう続け、訝しげに隣を歩く彼女の顔を見ればどんな反応を返してくれただろうか*]
[ 伸ばした手の甲と、手首と、腕と。
うっすら見えていた痣が、
最初から無いかの様に、消えていくのが見えた。
…脚も、ちゃんと繋がっていたし、
変な方向に折れていないし、
本当に、あんなに殴られたのが嘘みたいだ。
── どうして意識があるんだろう。
ぼんやり ぼんやり。
消えていく痕を見ながら思っていれば
目が 合った。 ]
── …
[ ぱた、手が落ちる。
どうして?って顔を、向けていたけれど
不思議そうな顔をしていたのは相手も同じで。
ここでようやく 私は立ち上がった。
よた っと。
血に塗れたお姫様のドレスで。 ]
………、
死神に殺されると、死神になるの?
[ そう聞いてはみたけれど、
生憎羽は生えていないから、
きっと違うだろうな という、予測はあった。
おはようの相手を 暫く じ、と見てから
ふと ゆるり、辺りを見て
シーシャの姿が見えれば 息を吐く。
よく分からない、けど
私たちは運が良かったか
あるいは相当にしぶといらしい。
…どちらにしても、暫く眠らせてあげよう。
頭、割られてた から。 ]
[ 視線を戻した先。
三ヶ峯サンの手元のカメラには、
よぅく見覚えがあった。
投げ出されている学生鞄。
口が開いていたから…取ったのだろう。
あ、とか そんな声は小さく上げたけれど、
── "中"を見たんだろうな と 思えば、
そして、あまり変わっていなさそうな表情を見れば、
眉を下げて もう一度息を吐いた。
息を吹き返した蛇で鞄を引き寄せ、漁る。 ]
手、出して。
── 返す。
私、……どうしてこうなったか分からないけど、
あの鉄パイプ野郎に殺されたし、
きっと、だめ でしょ。
[ 乾いた血が目立つ、私の指先には
何時か前借りとして貰った、
青色のバッジがあった* ]
[ 何も見えないのに、
自分の手は、身体は、はっきりと見えて、
倒れ伏したまま、動けない。
目だけ何とか動かして、
そして闇の中に、白を見た。
あれは、なに?
あれは …… 人?
ああ、あれは ―― リョウだわ。
白いドレスを纏った少女が、倒れている。
ねえ、アナタどうして倒れてるの?
ねえ、リョウ、返事をしてよ。
ねえ、―――― …… !? ]
[ それに気付いて、目を瞠って、
影の中に、“ 影 ”を見た。
黒い翼を持つヒトガタをした影。
その手には、赤染みた鉄パイプ。
それが、白い少女にゆっくりと近づいていく ]
[ …… ねえ、待ってよ、止めて。
リョウ、お願い起きて、逃げて。
お願い、お願い、止めて、助けて助けて。
誰か、誰か誰か誰かだれかだれかだれか ]
[ ずりずり、鉄パイプが地面を擦る ]
[ 止めて、近づかないで、その子を殺さないで。
止めて止めて止めてやめてやめて。
動けない動いてうごいて、お願い ]
[ 動けない。息がつまる。
―――― 鉄パイプが持ち上がる。]
[ アタシは、アタシは、
アタシは、その子を ―――――― ]
…… っ、は ッ!?
[ 目が、覚める。
息苦しい。
酸素を求めるように
荒く息を吸って吐いて、繰り返す。
まるで水の中にいたかのように。
うつ伏せで、コンクリートに伏していた。
嫌な汗が額から滲む ]
( 今のは …… )
[ 朧気だったのは一瞬。
すぐに思い出して、目を見開く。
―――― 死神に、襲われた。
リョウを庇って、それから …… それから?
勢いよく上体を起こして、
それは直ぐに目に入った ]
リョウ …… !
[ 随分と汚れていたドレス姿だったけど、
彼女の姿は確かにそこに在った。
ああ、良かったと思って、涙腺が緩む ]
良かった、アタシ、
アナタが死んじゃったかと思って ……
あれ、アタシ、頭治ってる?
[ 鉄パイプで確かに割られたはずなのに、
傷どころか痛みすらない。
おかしい、と思いながら立ち上がって、ようやく気付く ]
あら、おはよう。
…… サブミッション?
[ 三ヶ峯の姿が目に留まる。
随分と間の抜けた顔をしているような。
彼が此処に居るという事は、
またバッジをかけたミッションがあるのだろうかと、
首を捻って、その姿を見つめた ]*
[ たとえば。
お前なんて本当は要らなかったんだと、
"不幸"にもうまれおちてしまったんだと。
そう 十七年たっぷり言われ続けてきて。
私の代わりのオトコノコは最近うまれて、
いよいよ私は"なかったこと"にされてしまって。
そこでようやく十七年目で"幸運"にも死んで、
なのに勝手に変なゲームに巻き込まれて。
── 色んな人と会って、
本当ならあったかもしれないIFを重ねて、
きっとそれって、
殺された今でも、幸福だったんだと思う。 ]
[ ちょっとナンセンスなナンパはあったけれど、
少しばかり殴られちゃったけれど、
正直、殴り返したいけれど、
でも、── どれだけ殺されても、
たとえ、十七年のうちのたった数日でも、
私は、 ]
……いや …
私にしては 生き抜けたから、かな…
後悔、とか あってもさ、
何日間か、私は幸せだったから
…だからだと、思う。
[ 突っ返された青いバッジを、赤い指先で弾く。
シーシャが目覚めたらしいことを確認すれば、
薄く笑んだ* ]
え?え?起き抜けに何?
[ 状況が読めないが、
真剣そうな声色で三ヶ峯が尋ねるものだから、
それ以上質問を返すことはせず、息を吐く ]
リョウを助けなきゃって思ったら、
勝手に身体が動いてたのよ。
自分を犠牲に、なんて思ってないわ。
[ もう誰も失いたくなくて、
この少女が息絶えるところを、見たくなくて。
ただ、助けたい一心だった ]
あと、パートナーだから、じゃないわ。
パートナーじゃなくても、助けるわよ。
[ それだけ正して、
それから、リョウを見て、目を瞬いた ]
なーに言ってるのよ。
まだ高校生のくせして。充分じゃないわよ!
[ リョウが笑ってるところを、初めて見た。
でも、だけど。
たった数日間でも、幸せだと言った彼女に、
困ったような笑みしか浮かべる事ができない ]
[ 本当は、もっともっと、長く長く
続いていって良かったはずなのに。
天災が起きたみたいに
呆気なく、終わってしまったから。
溜息を吐きたいのを、堪えて、
リョウの指先で弾かれる、青いバッジを見ていた ]*
|
(─── ”ひとは見た目で判断するな。”) (>>@44然れを知っている子らどもでも。)
[綺麗な華には棘があるもの。 迂闊に触れれば、手出しをすれば怪我をするのだと、 ………臆、教えてくれる大人は居なかったのやら。]
(嗚呼、薔薇だとか王子様だとか、 そんな大層なもんではねえけれども─── >>@24”僕”の生きた過去には居なかった 見知らぬ子役が演者であるように、舞手も亦。)
[……演じ手だって事は忘れちゃあ、ならない。]
(96) 2017/06/19(Mon) 23時半頃
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