255 【ヤンストP村】private eye+Violine
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[此方の返事が遅かったせいか、 (仕事のメールは商会にも回る) 既に了承の意が商会から発注主に返っている。>>96
次いで届いているもう一通を見れば、 親方から、明日、その仕事を頼むと連絡があった。
頼まれた仕事に否はない。 退職金は先に貰ったが未だ所属している体だし、 それに世話になった恩を返さないほど非情でもなく。
返信に了解、と短く返して、顔を上げて。 今度こそ帰るべく、ゆるい足取りで孤児院へ急ぐ*]
(296) 2018/12/03(Mon) 23時半頃
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―孤児院―
[結局、空腹を訴える己に負けたのは半刻前。 孤児院へ帰りかけた道で大きな腹の音に眉を寄せ、 部屋に戻れば朝の残りのパンがあるからと、 心を鬼にすること数歩、すぐ負けた。
なんせ大通りから差ほど離れてない距離。 煌とした灯はまだ誘惑のように視界を焼いて、 ――帰ってもパンは一切れという現実もあり―― 空腹が要素とあれば抗える男子などいまい。
イルマと別れてすぐに、 彼女が寄るかもしれないパン工房に行くのも、 遭遇してしまうことを考えれば収まりが悪く。 安食堂を頭に浮かべて、 大盛定食を満足するまで食べてのご帰宅だった]
(340) 2018/12/04(Tue) 01時頃
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[孤児院の灯は燈っているとはいえ僅かで、 街灯もない近辺は流石に物騒の一言に尽きる。
尤も、孤児や院を狙う輩など居なかった。 ―――これまでは。 運営がぎりぎりなことも周知の事実だし、 見るからにボロい建物となれば狙う者もない。
もし警戒心が目に見えるものであっても、 その影が写るのは恐らく門の施錠くらいなものだ。 そんな門を潜って欠伸をしながら部屋へ行く。
仕事に備えて今日は早めに寝てしまおう。 ああ、クッキーもあるんだったっけ、 赤いリボンはチビ達が欲しがるだろうか――…]
(341) 2018/12/04(Tue) 01時頃
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[それは、ごくごく平穏な日常の思考。 眠気に包まれた、取り留めのない朧な感覚。
風呂に入らなければと思えど身体が重いのは、 満腹まで食べてしまったからだろう。 ああでも、この季節とはいえ臭いが気になるな、 なら湯が抜かれる前に入ってついでに浴槽を洗って……]
(342) 2018/12/04(Tue) 01時頃
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ん……?
(343) 2018/12/04(Tue) 01時頃
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[部屋の扉を引いた刹那の違和感に視線を落とす。
子供たちから手紙が届くことが偶にあった。
言葉にできないものなら絵を、 ひっそりと伝えたい事ならば訴えを文字にして。
だから、部屋に手紙があることは慣れてはいる。 とくに招集を伝えたばかりの今日は、 相談も文句も言いたい子供がそれなりに居るだろう。
手紙自体に違和感はない、けれど。
滅多に鍵などかけない部屋だったが、 それでも部屋の鍵を持つ子供らはベッド等に置く筈だ。
つまりは床に置かれているのは違和感でしかなく、 送り主の想像もつかない手紙に首を傾げ、拾い上げて]
(344) 2018/12/04(Tue) 01時頃
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………………
[視界に飛び込んだ赤黒い染みに、双眸が揺れた。 唇を結んだままでいられたのを褒めてやりたい。 その赤黒さに見覚えなどはない。 だが、不幸にも連想できるものがあった。
偶然、怪我した彼女を見たばかりだ。>>86 傷は見えず白いテープだけだったが、 怪我の痕跡からその赤に結び付くのは容易で]
(345) 2018/12/04(Tue) 01時半頃
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な、ンだこれ……、血だよ……な……?
[絞り出すような声音は掠れて、 唾液を飲み込んだ心算だったが喉仏が動いただけ。 口の中は再び乾いて痛々しく、思考も儘ならない。 悪戯と片付けるにしては度が過ぎているそれに、 書かれた文字を追うことを、鈍い頭が漸く思いす]
(346) 2018/12/04(Tue) 01時半頃
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[悪戯であれば叱れば済む。 院には悪戯好きの子供が数人いて、 普段から何か計画を練っているようなのもいた。 けれどそれらは悪戯の範疇から出ないもので。
文字を追う。 ひと文字、ひとつの単語、一節ごと、 読み違えないように、ゆっくりと紐解くように。
子供の文字では無かった。 安堵できる材料はそれだけしかなく、 最後まで読み進めて、手紙を掴む指に力が籠る。
修行へ行くことが決まったマーゴの想い。 不安そうに、けれどこれで皆の役に立てると嬉しそうに。 一方で、ココアが店を手離す理由まで察していたのか、 どこか複雑そうにもしていた聡さがマーゴにはあった]
(347) 2018/12/04(Tue) 01時半頃
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[それが綴られている。 彼女がこの手紙を綴ったのではなく、 第三者を思わせる文体が背に虜を走らせる。
それに加えて彼女の一日を、 つぶさに観察したかのような羅列。
彼女に執着しているモノがいる……? なんだ。 何が目的なのか。
誰がマーゴを見ているのか。誰が。 どうして
どうして、マーゴを……?]
(348) 2018/12/04(Tue) 01時半頃
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[手紙を何度も、何度も、何度も読み返す。
頭が良いとは決して言えないが 一枚の手紙に潜む悪意から意図を掬おうと何度も。
部屋に入って扉を閉めて鍵をかけ、 建付けのわるい窓を苦労して締めこれも施錠して。
ベッドの上に座って繰り返し読んで、 出来得る限り、要点を纏めて、それから]
(349) 2018/12/04(Tue) 02時頃
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俺、居なくなるんだよな……
[白羽の矢は既に突き刺さり、 抜く手段はなく、街を出る未来は不変でしかない。
なら、この手紙をどう処理すればいいか。
心臓が痛い程脈打ち、息が苦しかった。 頼れる、頼ってもよさそうな所をいくつか浮かべて、 結局、自警団に相談くらいしか思い浮かばない。
眠る彼女を起こすべきかは悩むところで、 起こして連れていくとしても、 夜に自警団の詰所に人がいるかは怪しいか]
(350) 2018/12/04(Tue) 02時頃
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─子供部屋─
う、ーん……
[ならば明日、朝一番に向かうとして。 今宵、やれるべきことはなんだと思案して。
ベッドから立ち上がり部屋を出て、 鍵がかかったのを確認し、子供部屋へ。
既に眠っている子供、布団をかぶってヒソヒソ話す子供。 部屋を訪れたらその子供たちが顔を上げたが、 夜は大部屋は静かに、と、普段から言い含めている。
起きている子供らには目配せし、 指いっぽんを立て唇にあて動作だけで静めて。
部屋の中央に進んでマーゴの寝顔を確認し、 マーゴが見える位置、窓際に座って携帯灯を置く]
(351) 2018/12/04(Tue) 02時頃
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[明日の朝を迎えるまでの徹夜くらい、 家族たちを守るためならなんでもないはずだ**]
(352) 2018/12/04(Tue) 02時頃
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