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【人】 双生児 ホリー[その日はいつもと違いました。 (37) 2010/07/23(Fri) 13時頃 |
[亡霊は うん、見えるよ と頷いて、
泣かないで と囁きながら、その涙を慰める。
何かの言葉に、はじめてヨナ以外の者
―――フィルへと目を向けかけたけれど、
それは銃声に妨げられた。
ヨナが足を向ける先、影は常に彼女と共に**]
[紅の中から翡翠色が拾い上げられるのを、見る]
……持って行ってくれるの、かな?
[小さく呟く。
お揃いの翡翠色は、今となっては彼女と彼女が存在していた唯一の名残り。
紅の羽は、いずれ、とけて消えうせるはずだから]
『ボク』のいた証が残るなら……ソフィを生かしてあげられた事になるから。
……それで、いいんだけど……。
[元々、願いはひとつだけ。
ただ、『うしなわれぬこと』。
生きたい、と願っていた『妹』が]
─追憶─
[その異形がいつからいたのかは覚えていなかった。
気がついた時、少女の背には翼があって。
それでも、両親も幼友達も妹も、少女を生かそうとしてくれた。
小さな隠れ里。
そこでは、平穏に時間が流れていた。
けれど、その平穏さは、仮初。
異形は、周囲に大きく害を為す事はなかったけれど。
数年に一度、少女の大切なものを『糧』として喰らっていた。
最初は父。次は母。それから、幼友達。
最後に残ったのは、妹。
けれど、妹は、異形が害するより先に、病に倒れた]
[最後に残った大切なもの。
心の拠り所の喪失は、狂気を招く。
狂った少女は、異形の囁くまま、妹を喰らった。
食べてひとつになればいいよ、という、コエのままに。
血肉、記憶も。
そこにあったもの、全てを。
そして、残滓のような思念を。
「いきたい」という願いを。
知って。
ひとつになっても、否、ひとつになったことで。
その存在に触れられなくなった事が、狂気を加速して]
[その中から、選び取ったのは、喪失の否定。
本来の自分は、行方知れずとして。
自分が、妹として生きる、という選択肢。
消えたのは『姉』で、『妹』は生きている。
そうして、異形が次の『糧』を求めるまで──即ち、寿命が訪れるまで。
見つかるはずもない、『姉』という『探し物』をしながら、世界を彷徨い続けて、そして──]
……でも、最後の最後で、私に戻っちゃった。
けれど、ここにいたのが『ソフィア』だった、て。
そう、覚えていてもらえるなら、ソフィの事はどこかに残るよね。
[訪れた最後の瞬間、その直前に、本来の自分を取り戻してしまった、と。
ほんの少し、苦笑した、時]
……っ!?
[ふわふわとした意識は、響いた銃声によって、現の世界へと向けられる**]
[手帳の中に残された、そのページを読む者は居るだろうか?]
「僕の命はもうすぐ尽きるから、許されるなら支えの必要な人のために生きたいんです。
傍にいてくれた大切な人は、僕が居なくても大丈夫な、強い人だと思うから…─」
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【人】 双生児 ホリー[施設の大人たちは大喜び。 (50) 2010/07/23(Fri) 16時頃 |
【人】 双生児 ホリー[それが、少女の住んでいた町の話。 (53) 2010/07/23(Fri) 16時頃 |
[砕け散った身体は、塵となって溶けて、
心臓はヨナの手首の腕時計に。
記憶は、書き連ねた手帳の中に。
そして思いは、
誰かが求めることがあるならば、
彼らの思い描く小さく優しく、そして儚い姿をとって、
そっと寄り添うことでしょう。]
【人】 双生児 ホリー[とめられなかった。 (56) 2010/07/23(Fri) 16時頃 |
【人】 双生児 ホリー[耳が痛い静寂の中、 (58) 2010/07/23(Fri) 16時頃 |
【人】 双生児 ホリー[ああ、彼は寝床に戻るのだと、 (61) 2010/07/23(Fri) 16時半頃 |
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ヨナの髪の毛に紛れてチィチィいってる。**
―生命の泉―
[ 銃声 ]
[ 悲鳴 ]
[ 不協和音 ]
――……ヨナ、
ヨナ だめだ フィル、止めて
[水面を通して見つめた世界、
異形に駆け寄り縋る少女、止められない。
介入出来るはずもなく進行していく全て]
[ 大樹の枝葉はさわさわと震えたけれど ]
[ 生ある者には音は届かない ]
[チャールズの、懺悔の言葉]
[ ――殺すときには、
いつだって殺される覚悟を持っている。
穏やかな表情の意味は、そんな気もして ]
[神様のことはよく知らない。
けれどその姿は、
人の子の全ての罪を背負った人によく似てた。]
[ 人は何かの命を奪わずには、生きていけなくて ]
[ 赦すのは、かみさま だと言っていた。
かみさまは、それを赦してくれなかったのだろうか ]
[マーゴの元へと歩いている間に、
響く銃声。
蘇る記憶。
異形を"支配"しようとした、
とある学者の成れの果て。]
[ 竜の少女に苦痛の色が見える、
シィラの狂ったような あの悲鳴のせいか ]
ホリー……
[名を呟く、その名は人としてのものなのか
あるいは異形としてもものなのか、知らない。
けれど、自分が言葉を交わした少女は、
その自我は、確かにホリーという名だったから]
[ そして ]
―見張り塔―
[ 亡霊は既にそこにいる ]
[ 連れ去られる彼女を亡霊は追って、
けれど それは 肉を持たないまやかし ]
[ 倒れ伏すヨナを
なす術もなく 見下ろして 暗がりに佇むだけ]
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[両親が死んで、きょうだい二人ぼっち。
優しい言葉で自分たちを拾ってくれたのは、
変わった風体の男だった]
『どこぞの町の研究所では、異形を戦の道具にしようとしているそうだよ。
果たしてそう上手くいくものかねえ』
[それはまだ、人々が本気で世界の終焉に怯えていなかった頃。
異形はいつか消え、また元の生活ができると、まだ、多くの人が思っていた頃]
『私はね、異形と共に生きるための研究をしているんだ。
こいつは――生き物に寄生するタイプの異形だ。
そして、主食は、同じ異形だ』
『今、あちこちで輸送路が止まって食糧危機だのなんだの騒がれているだろう?
――こいつを身体に住まわせてしまえば、食うものには困らないさ。はっはっは』
[難しいことを言う男だった。
しかしまだ幼かった自分たちは、男に促されるがままに、その異形を体内に入れてしまって]
[地獄を見た]
[思い出しても、思い出したくない]
[だから、妹の手を引いて、その男の元から逃げた]
[途中ではぐれ、自分は連れ戻された。
妹の行方は、そのまま知れず。
更なる実験と研究のせいで、妹の記憶すら失ってしまった]
[ああ、もう。こんな身体では生きられない]
[だから、一緒に死のう]
[最後に花畑をもう一度見てから。
その中で眠るように死のう]
――マルガリータ…。
リタ……。
…怒ってます、ね?
[異形なのか、妹なのか、もうわからないものが胃を、腸を、膵臓を、肝臓を、肺を、肉を、血を、身体の全てを内側から喰らう]
………… かはっ…
[一滴の血も逃さない、そんな執念と共に]
[血を吐くことすら許されず]
[それでも、……それでもマーゴの声のほうに向かうのは]
[何故なのだろう]
[手は、取れたかもしれない。
取れなかったかもしれない。
わからない。それは、マーゴも死んだ今となっては、誰にもわからぬこと。
しかし、いずれにせよ。
異形は己の宿主を完全に喰らい尽くすと、
そのまま自らの足を食べ手を食べ頭を食べて、
セシルという人間の痕跡ごと、*消えてなくなる*]
遺品くらいはどこかに転がっているかもしれないが、それだけ*。
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―見張り塔―
――……いるよ、
ヨナ、ここにいる。
[ 亡霊は歩み寄り、傍らに膝をつく
湛えたそれは、彼女の望む表情に見えただろう。
指先に手を伸ばす]
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