212 冷たい校舎村(突)
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## あと10年、20年、 どんなに長生きしてくれたって、 どんなに、ばあちゃんが神さまに愛されていたって、 あの、最後のお願いが叶うことなんて、なかった。
身体いっぱいに満ち満ちて、 今にも溢れ出しそうな罪悪感は、 これからもずっと、俺を蝕む。ずっと。 ##
(156) 2017/03/12(Sun) 20時頃
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周囲が当たり前にしている期待をすべて この先ずっと踏み躙って生きていくのか
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(157) 2017/03/12(Sun) 20時頃
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……そのことに気がついた。 途端に、この先ずっと 人生が続くこと そのものに、どうしようもなく、嫌気がさして、 先のことなど、何も、考えたくなくなって、
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(158) 2017/03/12(Sun) 20時頃
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『 20人にひとり 』という数字の持つ意味
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(159) 2017/03/12(Sun) 20時頃
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## 皆の記憶になんて、5分と残らなかったかもしれない。
2年の秋頃。保健かなにかの授業の一環で、 壇上に立っているのは、外部から招かれた講師だった。
小ぎれいな格好をした中年女性が、言う。
『 20人にひとり 』 『 現代社会では、そのくらいの割合で、』 『 同性愛者が存在すると言われていて──、』 『 そう、クラスにひとりか、ふたりくらい 』
……その瞬間も、隣の誰かは、 まるで他人事って顔をして、時計ばかり 見ている。 ##
(160) 2017/03/12(Sun) 20時頃
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保田那由多にとっての日常とは、 誰もが持つ 当たり前 の感覚への、* 裏切り *
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(161) 2017/03/12(Sun) 20時頃
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── 現在:3階渡り廊下 ──
[ 立ち尽くす。
古辺の衣服についた赤色の意味を、 ほかにも同じようになクラスメートを見て、理解する。
かけられたブレザー は、 誰かのきもちや優しさのあらわれのようで、 せめて安らかであれば と願う。
……これじゃ、マジで死体じゃないか。]
(165) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ きっと今、一番向き合うべきなのは、 目の前にある、この人形と惨状についてで、
けれど、何も、答えが出てこないから、 俺はぐるりと見回した先、 ブレザーの持ち主>>105を知って、
距離感 は、はかりかねるまま、 やたらに厚着してきた自分のブレザーを手に。]
(166) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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……さむそう だし、大和さん 俺、カーデとか、中、着込んできたから、 よかったら、教室戻るまででも、羽織っとけば
[ 現実から、目を逸らすみたいに、手を差し出す。
……だって、なんか、 女子にだけ寒い格好させてるの、 フツウに考えて、悪い気がして。 十分厚着してきたの、本当だし。]
(167) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ それから、足元に広がる血溜まりを、 まじまじと見つめる。どろりとした、赤色。
鼻につくのは、金属めいたにおいで、 そのことが、どうしようもなく、 本物 だなと、思うから。
このマネキンが、水野じゃないとして、 ……でも、この血 は ?
ゆらり 揺れた視線は、 マネキンの腹に刺さった、刃物に向く。
向いて、俺は、 まっすぐ、それを見たまま、 誰ともなしに、尋ねる。]
(173) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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── これ、抜いてみて いい?
(175) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ 言うなり、俺は、
赤色でぬかるんだ廊下を踏んで、 きらきら きれいな 光の瞬きの下、 倒れている人形に、歩み寄る。
マネキンの、胸に突き刺さった刃物。 それに向かって、手を伸ばして。*]
(178) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ 非難の視線>>191が、刺さる。
入間って、そんな顔するんだ って、 とても場違いな感想が、こみ上げて、
……ああ、いや、入間だけじゃなくて、 古辺も、昴も、あんなふうに取り乱すんだ。
この世界が、させてる んだな。
考えながら、上履きの裏の、 ”滑りやすい”感覚、確かめながら、
だけどさ、と、立ち去る入間の背に言った。]
(202) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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── マネキンなら、血なんて流さねえじゃん
[ まっすぐ、階段のほうへと歩いていく背中に、 投げつける ような、言葉だった。
これは水野じゃないよ。マネキンだよ。 今も水野は、どこかで怯えてうずくまっている。 逃げ惑っている。何かから。今も。
── ほんとう に?]
(205) 2017/03/12(Sun) 21時半頃
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── この血は、本物じゃんか
人形が、血なんて流すわけねえし 少なくとも、誰かの血なんだろ
つーか、こんな、廊下の真ん中で、 いなくなるわけ ねーじゃん! そんな、
[ ちゅうぶらりん。 途中で止めた手はそのままに言葉を紡いで、 その間にも、足元に赤は流れる。
どく どく。上履きに染み込む、微かな温度。
……抜かなくたって、 試してみなくたって、分かる。 この人形が、血を流している。]
(206) 2017/03/12(Sun) 21時半頃
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── これが、水野なんじゃないの
[ ずるいと分かっていたけれど、 今は、困ったような表情 しか、つくれない。
ごめん。*]
(207) 2017/03/12(Sun) 21時半頃
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── 回想:2年 秋 ──
[ なあ って、名前を呼ばれて>>177、
俺は、心の中で数字を数えるのを中断して、 声のしたほうに、視線をうつす。
まさか、声をかけられる など思っていなくて、 集中していた作業を中断されたみたいに、 目を 瞠って、鬱陶しそうな前髪の奥を見た。
時計、何秒見つめてたっけ? ……まあ、いいや。]
……んだよ
[ って、小声で、答える。 まるで、講演に飽きた態度の悪いガキみたい。]
(264) 2017/03/12(Sun) 22時半頃
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[ 古辺は、笑っていた。
俺は、笑えないまんま、 担任に見つかったらウザいな とか、 そういうのを装うように、不機嫌そうな顔。
嫌だな と、思う。 ふたり の会話じゃ、曖昧に、 「あー」とか「うん」じゃ、ごまかせない。
興味本位 みたいな言葉は、 往々にして、刺さる というより、 緩やかに首を締める真綿のようだな。
まるで他人事 の話題のくせに、 俺は、冗談めかして、あしらえない。あしらいたく ない。
それに、]
(265) 2017/03/12(Sun) 22時半頃
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[ 前髪の下、薄っすらと覗く眸は、笑っていなかった から。]
(267) 2017/03/12(Sun) 22時半頃
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[ 俺は、数秒。視線を彷徨わせたあと、
マイクを通した講師の声にかきこされそうな、 小さな声で、押し殺したような 声で、問う。]
……それ聞いて、おまえ、どーすんの?
[ そういう会話って、愉快ですか。そうは見えませんが。
影になって、よく見えないその眸は、 一体、何の感情を浮かべているというのだろう。
質問に質問で返すやつって、ウザいよな。 と、思いながら、淡々と言う。]
(268) 2017/03/12(Sun) 22時半頃
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知ったところで、当事者以外には、 無価値な、ただの数字でしか、ないんじゃねーかな *
(269) 2017/03/12(Sun) 22時半頃
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── 現在:3階 渡り廊下 ──
[ 茶化す みたいな、 きっと、場の空気をよくしようとか、 そういう意味もあったはずのセリフ>>222に、]
── 那由多 も って、なにそれ
[ そう、半笑いで返したのが、 せめて、意図したとおり、どうか、 からかいの言葉に照れてる とか、 そういう風にうつってればいいんだけど。
フツウ じゃないか。そうか。 それとも、フツウ のこと、したのが、 俺だから、って話だろうか。ウケる。嘘。
笑えねー。]
(301) 2017/03/12(Sun) 23時半頃
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── 回想:お勉強会 ──
[ 大和さんが混ざってくれるの、嬉しかったよ。
お手製のプリントを二種類。 平均ギリギリ取れるなら、コツとか、 そういう方向でいくべきなのか とか、 そういうこと考えながら、つくるのだって、 バカ用に合わせるより、断然面白いしさ。
お菓子とか、食べながら、 友達と勉強会 って、いかにも高校生って感じで、 点数の変化に、一緒になってはしゃげんのが、 楽しい 嬉しい。
それに、変な話 だけど、失礼を承知でいえば、 ”女子”がいてくれるほうが、楽だった。]
(302) 2017/03/12(Sun) 23時半頃
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怖いのは、ただ、 いつか、俺の正体を見透かされ、 ”消費された”と思われること。
きちんと、友達 で、いたかった。
なあ、男女の友情って、成立すると思う? って、議論は、どうして成立すると思う?
##
(303) 2017/03/12(Sun) 23時半頃
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[ シェアが苦手 というより、 おまえらだって、そんな、当たり前に、 女子とジュース回し飲みしたり しないじゃん。 クリームものとかさ、特に、無理って感じ するだろ。
別に平気だろって思ったやつは、黙ってろ。 そういう特権階級の意見は聞いてねえ。
だから、スナック菓子を皆でつまむ なら、歓迎。 一本のジュースを口つけて回し飲み とかでもない限り、 平気な顔して、差し入れの飲み物>>1:111、飲みながら、 英文をなぞって、単語を拾い上げて、笑って。
単純に、英語 というか、語学、好きだ。って、 多分、苦手意識を持つやつの気が知れなくて、 ふたりの前で、言ったこと、あったと思う。]
(304) 2017/03/12(Sun) 23時半頃
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[ 最初は、なんかさ、英語でいい点とると、 家族で海外旅行できるーとか、 父さんがはしゃいでて、面白かっただけだった。
さすがに、高校のクラスメートに、 そんな話するのは、恥ずかしくて、言わなかったっけ。
……それに、今は、]
いつか、どっか、遠くに行きたくなっても、 英語、できたら、どこにでも行ける気がする
[ だから、勉強しておくにこしたことはないんだ って、 そんなこと言いながら、また、和訳を書き連ねて。
フツウに、仲良くできてた 気がする。してた。]
(305) 2017/03/12(Sun) 23時半頃
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男女間の友情は成立するのか。 という議論は、なぜ成立するのか。って?
そこに性欲が伴う可能性があるから。
って、俺ならば、答えるんだけど、 ついでに、上の質問にも答えるなら、多分、YES。
……って、気がしてた けど、さあ。 そうじゃなきゃ、俺はどこに立ってりゃいい? って、思っても、いたけど。
俺じゃ、わかんねーや。
##
(306) 2017/03/12(Sun) 23時半頃
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── 現在:3階 渡り廊下 ──
[ 諭す。
ように、元賀が丁寧に言葉を紡いだ。>>213 多分、それは優しさで、俺は口を噤む。 良い方に、って、なんなんだ。よいほう。 まだマシなほう。
だけど、わかってる。それが正しい。
現に、やめて と大和さんが言って、 入間もやっぱり、否定の言葉を返した。 怒っているようだった。俺の選択は、間違いだった。
だけど、俺は知ってるんだって。 少なくとも、これは血糊なんかじゃないし、 まだマシって、ベストではないベターを選んでも、 結局、どーしようもないんだって。]
(314) 2017/03/13(Mon) 00時頃
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[ あ、うん。それは俺の話だった。]
(315) 2017/03/13(Mon) 00時頃
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[ 明らかに、俺が間違っていて、 なあ と、呼ぶ声>>238が、トドメ。 1 対 皆で、あまりにも俺は明らかに間違っていた。]
………… ごめん
[ 水野みたいなカッコのマネキン。 そいつを見下ろしたまま、 声だけは、皆に向けたつもりでは、あった。 ごめん って思ったのは本気で、 これは、水野じゃない。ってことに、した。俺も。
皆が、立ち去っていく。 ばらばらと、散ってく。消えてく。
俺は、ぼーっと、突っ立ったまま、 もうしばらく、水野みたいな 水野ならざるもの を 見てた。*]
(316) 2017/03/13(Mon) 00時頃
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