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[“食べちゃいたいくらい可愛い”
言葉自体は存在すれど、現実でその二つの共存は、
どうやら相当に困難らしい。*]
―朝―
[焼きたてのパンとオムレツ、スープとサラダ。
朝ごはんらしいメニューを、二人分、作り上げて。
そうして、寝ぼけ眼の少女に目線を合わせるようにして、しゃがみ込む。]
……朝ごはん、食べて。
嫌いなメニューはないはずだから。
[さて、どう言えば、彼女は警戒を解いてくれるのだろう。
嘆息ののち、ややあって、再び口を開く。]
俺だって、君を殺したいわけじゃない。
ただ、俺の料理を食べてほしいだけなんだよ。
[生き物をなだめるなんて、いつ以来だろう。
何せ、今までは“美味しそう”という気持ちに、
抗わなかったものですから、分からない。
出来るのは、ただひとつ。彼女の動きを待つばかり。**]
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メモを貼った。
[顔を左右に振ってみても、逃げることは叶わず。
何度も口内を攻められる。
その度に、少しだけ苦い、煙草の味が伝わる。
こんなこと嫌なはずなのに、
唇を重ねるごとに身体がそれを求めて疼く。
甘い、甘い、その香りが、身体を刺激するように。
身体に熱を走らせていく。]
写真屋さん、もう…やめ、て…
[頬を涙で濡らしながらの懇願。
聞き入れられないとわかっていても、
どこかで嘘であって欲しいと思う自分。
それ故に、やめてと言葉を繰り返す。
甘い香りを吸い込む度に、
まるで何かに酔ったようにクラクラとする。
呼吸を荒くし、身を捩り、身体を駆け巡る熱のせいか、
瞳を潤ませて、相手から目を逸らす。
それが相手を煽る行為になるかもしれないなんて、
考えられる余裕もない。*]
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[ ぼんやりとした視界に、碧眼。
乾いた唇を引き結んで、
かかっていた掛け布団で身を守った。
ひゅう、と
掠れた息と共に、声を絞り出す。
まともな会話、は
多分、これが初めて。 ]
それだって、何か 入ってるんじゃ無いですか。
なんで わたしの好みなんて、知ってるんですか。
…食べて欲しいだけって、そんな
なにが、目的 なんですか。
[ 知らない人から食べ物を貰うな、って。
こどもへの言いつけのようなものを、
ただ、頭の中 自分に言い聞かせる。
わからない、みたいな
そんな顔されたって。
卯月だって、この人のことが分からない。 ]
[ 首筋が痛む。
八つ当たりじみた問いかけの後、
小さく、小さく 腹の音が鳴った。
きっと彼にも聞こえたはずで。
恥ずかしさよりも、
悔しさが勝って、赤色は伏せられる。 ]
………、
……あんな 食べる勢いで噛んだくせに、
どうやって、…
その言葉を信じろって言うんですか
[ 腹の音よりも小さな声は、
死にかけの草食動物の鳴き声の様** ]
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[やかんに水を入れて、あと昨日食べなかったみかんも持っていこう。そういえば今日箱で届くとか言ってた気がする。私が応対に出るのは……変だよね、やっぱり。
みかんが届く前に元気になってもらわないと困るなあ。
そんなことを考えながら新井さんの枕元に戻る。
空っぽのグラスに水を注いだ]
お水、ここに置くね。あと、みかんも。
あ、みかん食べるなら手を拭くタオルとかあった方がいいかな。
[濡れタオルを用意していたら、洗濯が終わる音がした。外に干したい、けど、私がベランダで洗濯物干すっていうのもどうなんだろう。
なんというか、色々と悩ましかった**]
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好きな人……。
[俺の好きな人? 誰なんだろう。以前片想いしてた人は居た気がするが……。
今は?]
とりあえず、ヤカンで良いッス。
すいません、何から何まで。
[考えるのをやめて、水を入れてきてもらうことにする。
ちょっとして戻ってきた折原さんは、ヤカンとミカンを持っていた。]
ミカン、嬉しいッス。あざます。
濡れタオルは――
[大丈夫、と言おうとしたら、行ってしまった。
一人取り残されて、また水を飲む。大分マシになった気がする。
洗濯機の止まる音が聞こえたから、ちょっと立ち上がって様子を見に行こう。
多少ふらつくけど、まぁ水を沢山飲んだから問題なし。]
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[濡れタオルを持っていこうとしたら、新井さんは立ち上がっていた。けど、ちょっとふらついてる]
無理しちゃ駄目だよ。
大丈夫?
[洗濯機だとは思わなかった。トイレか何かかなと思って、とりあえず支えようかなって。
だけど、私と新井さんには何しろ30cm近い身長差がある。新井さんがよろけたら支えられるとは思えなかった。多分、一緒に倒れる。
でも、いないよりはまし……なのかな?]
えっと、どこ行くの? お手洗い?
[支えながら尋ねる。
洗濯機だと言われたら、止めるつもり。だって、乾燥機だってあるんだし。
そんなふらふらしながら無理して干すことないよ]
メモを貼った。
水飲んで楽になったんで大丈夫ッスよ。
[嘘は言ってない。朝に比べたら大分マシだし。
折原さんが俺の事を支えようとしてくれている。そんなにふらついているように見えたのか。
まぁ、そんな千鳥足じゃないから倒れることなんてないけど――]
〜〜〜!!!
[洗面所のドアに小指を思いっきりぶつけたマン参上。
倒れる事は無かったけど、しゃがみ込んで痛みに耐える。
やっちまった。久しぶりにやっちまった……!
痛みが少し治まれば、立ち上がり。]
せ、洗濯機……今日天気良いし、外干しすんなら俺がやろうかと思って……。
[なんて言ったら、思いっきり止められた。誠に遺憾である。]
たまには服も外に干してやんないと……あ、もしかして下着入ってました?
それだったら乾燥機の方がいいスけど……。
うーん、それじゃあ、干してもらうのお願いしていいスかね。
[何から何までスミマセン、とペコペコしながら、すごすごと二日酔いマンは退散しよう。
昼過ぎたら、ドレス作りに着手しようじゃないか。]
メモを貼った。
[洗濯物を持ってベランダに出た。なんとなくここがどこなのかわかった。思った通り、商店街の近くだ]
何やってるんだろう……。
[洗濯物を干しながら、思わずそんな言葉が漏れる。
洗濯物に私の下着はなかった。だって、今身につけてるものしかないもの。だから外干し。
新井さんはまだふらついてる。さっきだって、足の小指をぶつけて悶えてた。だから私が引き受けた。
当然の流れのようで、全然当然じゃないのは、私が拉致された被害者だからだ。
何してるんだろう。のんびり洗濯物干してるとか、意味がわからないよ。
ちょっと身を乗り出して、下を覗いてみる]
さすがに飛び降りるのはどうかと思うけど。
[だけど、例えばここで助けてって叫べば?
家の中は防音が効いてるみたいだけど、ここならご近所に響き渡る。
私は、どうしてそうしないんだろうね。一週間って約束を律儀に守って。
わからないや。
しばらくそうしていたけれど、私の顔を知ってる誰かに目撃されるかもしれない。
そんな可能性に気づいて、はっと私は顔を引っ込めた。
むしろ隠れようとするなんて。私は、どう考えてもおかしい]
[布団に横になりながら、世の中の同棲カップルや夫婦はこうやって女の人に洗濯物を任せているのか……なんて考えた。
つか、折原さんに何任せちゃってるんだろう。]
まぁ……やってくれるって言うんだから、いいか……。
[ウトウト……としてきた所で、インターホンが鳴った。荷物かな。
仕方なく起きて玄関まで出れば、やっぱり、ミカンだった。
受け取って台所に置いといて。]
なんか寝れなさそうだし、もう作っちゃうか……。
[クローゼットからミシンを引っ張り出して、ドレス製作に取りかかることにした。
元々、これの為に連れてきたんだ。すごいまったりさせちゃってるし自由にしちゃってるけど……。]
よし! 出来たぞ!!
[思ったより時間が掛かってしまった。腹減った。時計を見れば、もう夕方……夕方!?
しまった。飯の材料買ってない。晩飯、どうしたものか。
ていうか、昼飯……折原さん食ったかな。
なんだか申し訳ないことをしてしまった。]
あー、晩飯、出前取りますけど何がいいスか?
寿司、カレー、ピザ、チキン、あと中華ッスかね。
[確かその辺にチラシがあったはず。
晩飯を頼んだら、ドレスを着て貰おうじゃないか。]
![]() | 【人】 本屋 ベネット
(16) 2017/01/24(Tue) 19時頃 |
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(17) 2017/01/24(Tue) 19時頃 |
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(18) 2017/01/24(Tue) 19時頃 |
[洗濯物を干し終わったら、部屋からミシンの音がしていた。
集中してるみたいだから、そっとしておこう。
昨日私が着た服は洗濯機使用不可だった。あれも洗ってしまおう。
セーターとスカートを手洗いして、ミシンの音で気にならないよねと思って掃除機もかけた。
お昼はどうするのかなと思ったけど、それどころじゃなさそうだった。
お茶を入れて、みかんを食べる。
コタツでみかんってまったりしてしまう。
そんなつもりはなかったんだけど、ついミシンの音をBGMにうとうとしてしまったみたい]
晩ご飯!?
[新井さんに声をかけられて、飛び起きた。もうそんな時間!?]
ピザなんかいいんじゃないかな!
[そんなことを言いながらベランダへ。洗濯物取り込まないと!]
ピザ。了解ッス。んじゃあ、マルゲリータ頼んどきます。
[スマホで注文。今はネットで何でも注文出来るんだよなぁ。
ピザとウーロン茶2本を注文。後は届くのを待つのみ。
さて、折原さんは洗濯物を取り込み終わっただろうか。
手招きをして、ドレスを見せる。]
折原さん、ドレス出来ましたよ。早速着てみてください。
あ、洗濯物ありがとうございます。
[ささ、どうぞどうぞとドレスを渡して、また洗面所に押し込もうじゃないか。
果たして、折原さんは着てくれるだろうか?]
メモを貼った。
[慌てて洗濯物を取り込んだ。少しひんやりしちゃってたけど、仕方ない。
畳もうかと思ったのだけど、手招きされた]
あ、もうできたんだ?
早いね。
[新井さんが抱えているのは赤いシルクのかたまり。わかってはいたことだけど、ちょっと腰が引けた。
広げて見せられる。おとなしめとリクエストしたそれは、確かにシンプルなデザインだったけど、ドレスというだけあってドレスだった。当たり前だ]
え、今着るの?
[心の準備ができてないんですけど!
そんな主張をする間もなく、抱えていた洗濯物を取り上げられて、私の手にはドレスが残る]
ご飯の後の方がいいんじゃないかな……!
[なんて主張もむなしく、背中を押されて洗面所へ。
ばたん、と扉が閉められた]
[赤いドレスに目を落とす。赤。そしてドレス。
わかってたことだけど、モノトーンのパンツスタイルといういつもとは対極の衣装は、とてもとてもハードルが高い。
昨日のセーターとスカートもハードルは高かった。けれどあれは、まあ女の子にとっては日常の装いだ。
そしてドレスは、普通の女の子にとっても非日常だ。そして私は普通の女の子ですらない]
だけど、これは……私のための衣装、なんだよね……。
[既製品じゃない。私のために作られた、私のためのドレス。それを着ないというのは……やっぱり、駄目だろう。
深呼吸して服を脱ぎ捨てる。
赤いドレスを手に取った]
メモを貼った。
[ふぅ、と漏れた溜息は、安堵でも憂いでもない。
はてさて、どう説明したものか。
正直、自分にだって、うまく説明できる自信がないのだ。]
……少なくとも、食事には何も入ってないよ。
[ほら、といいつつ、スープを一口掬って飲む。
少し冷めた、彼女の母親に倣った味が胃へと落ちていく。
スプーンを置けば、かちゃ、と陶器の鳴る音が、沈黙の中に響いた。]
俺さ、血を飲まないと生きてけない体質なんだよ。
で、卯月ちゃんが食べちゃいたいくらい可愛いから。
だから、お近づきになりたいって思った。
お母さん、いい人だよね。
料理教室が流行るのもわかるよ。
[一息おいて、視線を落とす。
スープからほんのりと立ち上っていた湯気は、もうない。]
[覚悟を決めて、ドレスを着た。似合ってる、とは正直思えない。洗面所の鏡に映る私は、なんだか悲壮な顔をしている。
髪を梳かして精一杯身だしなみは整えてみたけど、焼け石に水もいいとこだろう。
着た。けど、扉を開ける勇気は出ない]
着た、よ……?
[扉の向こうから、そうっと新井さんに声をかけた]
けど、今は、昨日みたいなことをしたいなんて、思ってない。
卯月ちゃんに、俺の料理を食べてほしい、って、
それだけ。今は。
ダメかな、やっぱり。
[白い首元の包帯も、うつむいた赤いまなざしも、すべてが痛い。
ねぇ、どうしたらいい?
おずおずと、毛布にくるまるウサギに、視線を向ける。まるで、縋るように。**]
[止めて、という言葉に己の手はピタリと止めた。
彼女の願いを叶えるかのように。
俺は止めたっていいんだけども、
止めて辛いのは君なんじゃないかな?
[己より長く吸い続けてる甘い香り。
身体が疼いて仕方がない筈。
此方を煽る仕草を重ねる彼女を見詰め、
一歩ずつ彼女から離れ、扉に背を凭れかけた。
拘束を解くつもりはない。
ただ「やめて」という言葉を叶えてあげているだけ。]
[全裸にされ、手錠で拘束され、逃げる事さえも出来ない。
身体はお香が回りじれったい筈。
自然とシーツに染みを作り、シーツと秘所の間は銀糸が引く。
だが彼女が求めない限り、手を出すのをやめようか。*]
[ご飯の後という意見は封殺した。食べたら寝ちゃうかもしれないだろう!?
折原さんが着替えている間、俺は自分の洗濯物を畳む。
まぁ一人暮らしの男だし、そんなに多いものではない。すぐ終わる。
服もしまって、さてテレビでも見るか、とコタツに潜りこもうとすれば、扉の向こうから折原さんの声が聞こえた。]
着替え終わりましたか? んじゃ、失礼しまーす。
[ガチャリと洗面所の扉を開ければ、俺の作った赤いドレスを着た、折原さんの姿があった。
綺麗だ。まるで、お姫様みたいだ。人形みたい、じゃなくて。
なんて褒めればいいのか分からなくて。]
……折原さん、結婚しましょう。
[俺は一体何を言っているんだ。なんで求婚したんだ!?
つい口にしてしまった言葉は取り消せなくて、どうすればいいのかと手で自分の口を覆う。]
あ、え、ええと。凄く綺麗で、美人で。
てか、何言っても褒め足りないくらいなんスけど。
[顔が熱い。しかもめっちゃ気まずい。どうした俺。]
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