191 The wonderful world -7 days of MORI-
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[ とまでは、思わなかったけれど、
(なぜおれにそんなことを言うのか) みたいな顔をしていたおれに、 たぶん、ケーサツの人びとは、頭を抱えていた。
なるほど、”ふつう”に考えて、 どうやらそれは、おれの役割だったのだ。] .
(224) nabe 2016/06/21(Tue) 01時頃
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……なんか、すみません。
[ なにも分からず口にした謝罪は、 ぽつん、と、宙ぶらりんに浮かび、 ケーサツのひとは、話を聞かせて、 みたいなことを言うから、おれは頷いた。
……頷きながら、おれは、 きみが無事でよかった、と、ただ安堵する。
── きみは、向坂音流は、生き返った。 今は、ただ、それだけでいいって、おれは思う。 やっぱり、思ってしまうんだよ、ネル。]
(225) nabe 2016/06/21(Tue) 01時頃
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[ ── 今日も、すばらしきこの世界は、歪な幸福に満ち満ちている。*]
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(226) nabe 2016/06/21(Tue) 01時頃
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── 3rd day @ RG ──
[ ── もしも、何も起こらなかったら。
両親(とおれ)の役割なんて、大したものじゃなくて、 逃げよう、なんて、おれの杞憂に終わって、 でも、おれが帰る気になれない、みたいな。
そういう展開があったとしたら、 父さんと母さんは、 ふつーに生きるのに困るかもしれない。
なんて、数日前のおれはいらぬ心配をしたもので、 最後の親孝行のつもりで置いてったいくらかのお金は、 案の定、手も付けられず、残されていた。
うちを調べてる警察のひとにことわって、 皺のよったお札をポケットに突っ込んで、 また、ふらふら家を出た先に、きみの顔を見た。>>291]
(309) nabe 2016/06/21(Tue) 23時半頃
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[ ここしばらく、毎日顔を合わせてて、 懐かしい、ってはずもないんだけど、 なんだか、とてもほっとする。
だから、ゆらり、とおれは近づいてって、]
……おはよう。 桐原に、お金返しに行こうと思って。
[ って、言ったんだけれども、 きみは、浮かない顔をしているから。
おれは、少し悩んで、口を開く。]
(311) nabe 2016/06/21(Tue) 23時半頃
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……驚かせてごめん。
[ そういうことじゃない?
そうかもしれない。 きみは、おれの予想しない方向に、 泣いたり、怒ったりするのかもしれない。
だけど、おれにとっては、そういうことだったのだ。
きみが、無事で、良かった。 すごく長い道のりだったけれど、 おれの願いは、遠回りを経て、 きちんと、成し遂げられたんだよ。]
(312) nabe 2016/06/21(Tue) 23時半頃
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── ネル、後悔してる?
[ おれを信じたこと。生き返ったこと。 そういう、全部について。
おれはしていないのだ。困ったことに。
それがダメなんだって、 うっすら、分かってはいても、 気もちはついてこないよ。 きみが生きていてくれて、うれしいよ。
だから、きみが、そんな顔をしていても、]
……ごめんね。
[ ── って、薄っぺらい謝罪を吐くほかないのだ。*]
(314) nabe 2016/06/21(Tue) 23時半頃
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── とある記録 ──
[ "従順な息子"の言うには、以下の通りである。
「あの夜になにかある、とは聞いてた、けど」
「ほんとは、たぶん、おれも、行くはずで」
── それが嫌だったのかな?
「……いいえ」
── 誰かに知らせようとは思わなかった?
「……別に」]
(380) nabe 2016/06/22(Wed) 18時半頃
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[ ── こんなに大事になるとは思ってなかった?
「……?」
── 人が死ぬとか、けが人が出るとかさ。
「そう、思ってたら、」
「誰かに知らせたほうがよかったんですね」
── …………*]
(381) nabe 2016/06/22(Wed) 18時半頃
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[ あれが本当に17歳か、と誰かが言った。
この状況に怯えるでも、取り乱すでもなく、 紀陸 類は、静かな目で質問に応じたものの、
時折、落ち着かなさげに視線を揺らし、 言葉少なな返答は、大人を落胆させた。
── 興味がないって目ですね。 ── 何にだよ。 ── 何もかも。
たぶん何も知ってやいませんよ、と、 若い男の期待も何もない声さえ知らず、
紀陸 類は、また別の者に見送られ、 モリ警察署を後にしようとしていた。
少し猫背気味なのは癖だろう。 ゆらゆらと、軽い足取りは、ひどく、日常じみている。]
(382) nabe 2016/06/22(Wed) 18時半頃
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── After day:モリ警察署 ──
[ 取り調べではない、はずだけど、 厳つい顔した警察官に話を聞かれる、 そんな時間から、やっと解放されたところだった。
おれは、桐原にお金を返さなきゃなあとか、 山田さんにもらったケータイの番号を、 ケーサツに教えたとなると、面倒そうだ、 とか、"これから"について、考えていた。
大した悪事も働いていないくせに、 山田さんは、警察って人種がとにかく嫌いなのだ。
ひとまず、一度家に帰ろう。 そう考えて、警察署を、出て行こうとした時だ。]
(383) nabe 2016/06/22(Wed) 18時半頃
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[ ── あ。
って、おれは、気づいた。
死神と警察官の二足草鞋は大変だと、 先日もこぼしていらっしゃいましたね。
その節は、ご親切に、ありがとうございました。 パートナーを信頼しろと、 あなたが言ったんですよね。>>4:248
死ぬのは罪、でしたっけ。 おかげさまで。 おれは無事、生き返り、 今、ここにいるわけですけど、 徳でもつんだことになるんでしょうか。
── 親愛なる、ゲームマスター様。]
(384) nabe 2016/06/22(Wed) 19時頃
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[ 入れ違い、みたいに、
署内へとやってくる、 いつか見た面影に、 おれは、すれ違いざま、 ……なんというか、"おもわず"、
きっと、目的の達成を知って、 浮かれていた、のかもしれない。
(ある意味、恩人だよね、彼女は) (というよりも、あの、死神のゲームとか、) (あの、奇妙な七日間の、すべて)
── 目を細め、口角を上げ、ゆらり。
手を、振った。*]
(385) nabe 2016/06/22(Wed) 19時頃
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── 3rd day @ RG ──
[ あとで、いくらでも怒っていいよ。
って、思っていたとはいえ、 おれが想像していたのは、
たとえば、 誰かを犠牲にして生きることになる、 きみの気もちについて>>7:+30であるとか、
(これまでに学んだ、とも言える) そういう事柄について、だったので。]
── おれは、
[ 思いがけない言葉に、戸惑って、 まっすぐの眼差し>>389に、射抜かれて、 声になろうとした言葉が、蹴躓く。 それでも、おれは言った。]
(393) nabe 2016/06/22(Wed) 20時半頃
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……いいよ。
大変でも、なんでも、 ネルが、一緒に帰ろうって言ってくれたから、 それで、いい。
[ ほんとに、正直なところ、 そうとしか、言い様がないのだ。
両親に会えないからどうとか、考えもしなかったし。 多分、おれは、もう、ずっと、 ”幸せそうなひとたちだなあ”って、 そのくらいの気もちしか、あの家に、なかった。
あの夜、捨ててしまえと思えるくらいには、 きみのほうが、大切だったのだ。]
(394) nabe 2016/06/22(Wed) 20時半頃
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[ それに、真面目な話、 おれはするべきことをしなくて、 止めれたかもしれない何かを、放って、 それを、大人たちにも咎められているようなので、
おれが大変なのって、当たり前なんじゃない?
色々、よくわからない、足りない頭のおれだけど、 ”ふつう”そうなんだったら、そのくらい、背負うよ。
そうじゃなくたって、親が”ヘン”だから困るのも、 多分、当たり前にふつうのことで、仕方なくて、 そこは、もう、よく知っているのだ。
……十年も、ずっとそうだったじゃん。]
(395) nabe 2016/06/22(Wed) 20時半頃
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……”大変”ってだけじゃ、 そうそう死なないし、死ねないし。
どうしたいか、とか、ないけど。 ネルとの約束、守りたいから、 なんとか、するよ。できるよ。
[ これまでだって、なんとかしてきたんだから、 贅沢しなきゃ、多くを望まなきゃ、 どうとでも、生きていけると思う。
こういうのがダメなの? って顔で、 おれは、きみの表情を伺う。]
……必要なら、なにか、考えるし。
[ って、ダメ押しみたいに付け足したのは、 たぶん、おれが口にしたのが正解じゃないって、 薄々、頭ではわかっていたから、かもしれない。*]
(396) nabe 2016/06/22(Wed) 20時半頃
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[ 明らかにきみの機嫌を損ねたぞ。 という空気に、おれは割と本気で簡単に、 この場から消えていなくなってしまいたくなるわけで。
更なる追撃>>447>>448に、 おれはただ、なんにも言えなくなる。
誰かが、というかきみが、 そうして欲しい、って言ってくれなかったら、 生きる気もなかったよ、なんて。
今更、言えるわけないじゃないか。
きみを巻き込んでなきゃ、 あんなゲーム、真っ先に降りてた。 なんて。]
(485) nabe 2016/06/22(Wed) 23時半頃
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[ なので、死にそうな声を吐く。]
……そういうことじゃないなら、 よく、わかんないし……、
[ きみの言葉になにも言えなくて、 じょじょに萎んでいく声とか、
呆れたような顔をして、 おれの前に堂々と立つきみ、とか、
なにも答えが出てこなくて、 ひどく、息苦しいはずなのに、 なんとなく、懐かしいような、気がして、]
(486) nabe 2016/06/22(Wed) 23時半頃
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[ ── 本当のきみは、こんなじゃない。
って、思ったはずなのに、忘れていたのだなあ。
生来、ひどく引っ込み思案で、 だからこそ、きみの後ろにこそこそ隠れて、 他の子どもから逃げ回っていたおれと違って、
きみは、気は優しくとも、にこにこしていても、 なんだか、頼もしい背中をしていた。
……っていうのも、いつも、 きみの後ろをついて回っていたから、知ってるのだ。
いつの間にか、遠のいて、手も届かなくなって、 ── って思うようになって、忘れかけていたけれど。]
(487) nabe 2016/06/22(Wed) 23時半頃
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[ きみのはじめての作品は、蝶の王子と蛾の姫の物語だった。]
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(488) nabe 2016/06/22(Wed) 23時半頃
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[ おれは、なにがなんだか、って顔をしていただろう。]
── すごく、迷惑だと思うんだけど。
[ って言うと、きみはまた拳を握ったかもしれない。
けど、事実そうじゃない? って、 おれは、困った顔をして、差し出された手>>453を見て、 また、しばらく、考えこんで、
おれは、おずおずと口を開く。]
(489) nabe 2016/06/22(Wed) 23時半頃
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本当に迷惑ばっかりになりそうなら諦めるから、 ── 一度だけ、挑戦してみてもいい?
[ 結局のところ、 ”ネルと一緒に”って言葉に、おれはとことん弱くて、 少しでもきみの役に立ちたい、ってところは、 今のところ、揺らぐ気配はないんだけれど、
暫定、”おれのやりたいこと”がソレってところで、 どうか、手を打っていただきたい。
── 元通り、まっすぐに立つきみとなら、 探しものは、たぶん、そのうち、続く道のどこかで。*]
(490) nabe 2016/06/22(Wed) 23時半頃
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[ あの、惨めな最期の夜から、数ヶ月が経って、そして。]
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(537) nabe 2016/06/23(Thu) 02時頃
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── After:再度、はじまり ──
……はい。はい。いってきます。
[ 恐ろしく硬い声と態度で、おれは頷いた。
今日は、しとしとと小雨の降る薄暗い日で、 湿っぽい空気が漂っているはずだけれど、 きみの家の温度や湿度は快適に保たれており、 おれはそのことに、いちいち感動する。
未だいろんなものに慣れないおれは、 ものを目的地まで運ぶ、ということにさえ、 ひどく緊張していたりもするし、 そのせいで、きみの朗らかな笑顔とは裏腹に、 おれの顔は引き攣っていたことだろう。]
(538) nabe 2016/06/23(Thu) 02時頃
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[ きみがおれに与えてくれた機会は、 なんというか、想像の数倍くらいは大それたもので、
生憎、高校にも通わずしていたことが、 迷子のペット捜索や、ゴミ屋敷の掃除や、 廃品回収や、浮気調査みたいな、 たぶん、きみの想像とは少し違うものであったおれは、
その事実を告げるタイミングを見失ったまま、 雑用とか、おつかいとか、そういうところから、 とにかく、駆けずり回る日々を送っている。]
(539) nabe 2016/06/23(Thu) 02時頃
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[ 今回も、きみの新しいお話は、 やわらかくて、あたたかくて、きらきらしてて、 おれはそれを読みながら、
まだ、あのユウガオ>>-1620が咲いていたらいいな。
って、なんとなく、思い出して、 少しだけ、目的地に向かう足取りは軽くなった。
少し前にそれを見たとき、 きみはなんだか、不思議な表情をしていて、 おれはそのことを、よくよく覚えていた。
……さすがに、摘んで帰ったら叱られるだろう、
ということは、察しがつく。 つくようになった。のかもしれない。]
(540) nabe 2016/06/23(Thu) 02時頃
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[ 雨の日は、荷物が濡れないか不安だけど、 傘が顔やいろんなものを隠してくれるので、 わりかし、嫌いじゃなかったりする。
きみは、気にするなと言ったかもしれないし、 実際、気にしすぎかもしれないけれど、 やっぱり、たぶん、これから一生、 おれの立場は、”ふつう”ではないし。 それは、おれが背負うものなんじゃない?
とかさ、 きみは、そんなことないって言うかもしれないけど、 やっぱりそうなんじゃないかなあ、とか、 思ったりもするわけだ。最近。]
(541) nabe 2016/06/23(Thu) 02時頃
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[ とにかく、そんな日常にも、 父さんや母さんが帰ってくるのか、とか、 まだまだ、おれの周りに宙ぶらりんなことはあって、
そんな中、こうして、 なんとも平穏に過ごしている自分が、 少し、怖い瞬間も、ある。けれど、
今のところ、取り戻したはずの”諦め”さえ、 振りかざす必要のない日々を、生きている。*]
(542) nabe 2016/06/23(Thu) 02時頃
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── あ、ねこ。
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(552) nabe 2016/06/23(Thu) 03時頃
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