16 漂流旅行
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…ヘ、クター君?
[はたはたと揺れる手に、声に感情が戻る。]
――なんで、こちらにいるんです、か?
………生きて、いてくれれ、ば。
あたしは…、それでよかったのに…。
[感情が戻ると共に、どこか鈍く理解していたことを受け止める。
目をそらしているものも、中にはあるが。]
あなたは、正しい選択を、したから。
ちゃんと、生きようと、してくれたから。
――いいんです。
[優しく優しくヘクターの髪を撫でた。]
きっと、ヘクターから事を聞けば、赤い狂気を思い出し体を強張らせる。
…………。
ごめんな。
いや、……ありがとう。
[何故ここに、とセシエルに問われるが、自らの見たイアンの狂気を語る気にはなれず。]
……俺も、殺されちまったみてえだ。先生と違って、相手は人間だったけど。
[誰に、とは濁し事態を告げると。教師の手が髪を撫でるがままに任せた。]
……ありがとう。
[見捨てて逃げた自分の命を祈ってくれた事に、礼を述べ。自らの話がセシエルを怯えさせていまいか、と、その目に向き合った。]
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襲われたらさ、俺が止めるから。 その間にそれで刺してくれたらバッチリだよ、きっと。
[メアリーにナイフを渡すと、ゆるく笑んだ]
……俺、かっこよくないよ。
[歩きながら呟く]
お腹すいたのに夢中で、周り見えてなかったし。
(34) 2010/08/12(Thu) 00時頃
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――……?
[こてん、と首を傾げた後、ふる、と頭を左右に振った。]
お礼を、言われることは、してない、です。
[普通のまま、ありのままでありたいと、思っていたから。]
………そう、ですか。
その方は…何があっても、いきたい、んでしょう、か。
手が、血に塗れても。
[赤い狂気を、知っている。
でも、目をつむり見ないふり知らないふりをする。
自分を護るために。]
………?
どう、いたしまし、て?
[なんとなく、そういった方がいい気がして。
自分より背の高いヘクターを揺らぐことなく見上げる。]
……ん、なんだろ。
逃げちまったからってのもあるけど、結構呆気なく死んじまったからかな。
生きろって思ってくれてたって聞いたら、何か言いたくなった。
[自分を見上げる教師に、苦笑を返し。]
……わかんね。
ただ、何だろ。……絶望、しちまったのかな、その人。生きてるって事に。
[何があっても生きたいと言うより、生きる方法が無いから皆を殺そうとする狂気。理解しえないその感情を形にするにも、そんな言葉しか思いつかず。小さく頭を振った。]
風に揺れる薄赤いハート型の葉に、手を伸ばしてみた。
自分の手が葉を突き抜け空を切るのを見て、項垂れた。
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うぐっ。
[イアンが来なければ、チョコパイを独り占めしていたかもしれない。 それは口に出さずに、友人の一言を胸に刻み付ける]
……メアリ。
[足を微妙に引きずりつつ歩いていたが、突然足を止めた]
なんか、音しない? ガサガサガサって、足音みたいな。
(37) 2010/08/12(Thu) 00時半頃
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[言った直後、女の子の声が聞こえた]
今の、アイリス? ……いこ、あっちだ。
[声がした方向を見ると、それらしき人影。 メアリーを促すとゆっくりと人影の方に近寄る]
(38) 2010/08/12(Thu) 00時半頃
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アイリス、無事だったんだ。 イアンせんせとヘクター先輩がすっげ心配してた。
[アイリスと合流し、無事を喜ぶ]
洞穴さ、怪物がきちゃって。 安全な場所探してくるって伝言残してきたんだけど……
先輩とせんせー、無事かなぁ。
[少し顔を暗くした]
(42) 2010/08/12(Thu) 01時頃
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そう、ですか。
[良くも悪くも、誰かに害意を持つのが苦手と言うのもあるが、なんとなく、ほんわかと笑った。]
生きてる、事に絶望…ですか。
それだけの何かが、あったん、でしょう、ね。
[誰の事かもわからないけど]
悲しい、ですね。
[何も出来ないことが。]
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大丈夫だって、アイリス無事だったんだから怒らないよ。
[ヘクターが既にこの世にいない事を知らぬまま答える]
俺達あっちからきて見かけなかったから…… じゃあ、あっちかな?
[指した方向はちょうどイアンがいる方向]
わっ、なにそれ。 植物ならナイフで切れたりしないかなぁ?
[アイリスの手首を覗き込む]
(47) 2010/08/12(Thu) 01時頃
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[……ふわり、と笑う教師にどこかで安堵しつつ。]
……だよ、な。
死んだら、二度も死ぬ事は無いにしても。
……生きてなきゃできねぇ事も、山ほどあんだろ……。
[その狂気を《悲しい》と評した手の気配を、受け入れていた。]
イアンらしき叫び声がどこからか聴こえた事に気づいた。
|
[はらはらとメアリーがナイフを扱う様子を見守る。 少し、いやだいぶ、心配になった]
うん、俺も聞こえた。 ……俺、行ってみるよ。
[先ほどの方角へ数歩歩いて言いかける]
二人とも、危ないからここにいた方が……
(50) 2010/08/12(Thu) 01時半頃
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今の、叫び声……。
[死した身に聞こえたのは、空気の振動でなく、魂が奏でる音。
それをイアンの声と感じとると、そちらを見やり。]
…………。
[狂気に囚われ自分を殺した相手ではあるが、今となっては彼の生を祈る気持ちの方が、強く。]
……俺、行ってくる。
[何も出来なくとも、せめて見届ける為。彼はセシエルの言葉を待たず、声が聴こえた方へ向かった。]
― ???? ―
……
[何度も、何度も。
名を呼ぶ声が、した。]
……なんでだろう、ね
[声は一つでは無かった。]
私って此処まで見る目、無かったんだね……
[生ある間には気づけなかった、音。
今になって魂を縛る、強い後悔。]
もう、
[首を左右に振る。
面には悲しみと、悔しさが浮かぶ。]
……私の事は、いいのに
あんなに酷い事を云った、のに
…………どうして?
[問い掛けは、届いて欲しい場所に届かない。
きつく眸を閉じて]
……イアン先生。
[名を呼んでも、祈りは誰が聞き入れてくれるのだろうか]
一歩ずつ。時間を掛けながら自身を呼ぶ声の方角へ歩く。
……
[魂は未だ最後の畏怖を拭い切れては居ない。
歩み進むのが普段より遅いのは、その為だった。]
先生。
[其れでも逃げずに進むのは
伝えたい言葉が、ゆっくりと背を押してくれるから。]
|
ですよねー……
[予想通りの返答が返ってきた]
危ない事あったら逃げてよね。
[言いながらずんずん進む内、何かが争ったような跡を見つけた]
これ、せんせーの槍?
[屈みこみ、不自然に尖った短い木の棒を拾い上げる]
(53) 2010/08/12(Thu) 02時頃
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|
……足跡、これかなぁ。 動物のじゃなくて、靴っぽい。 こっちむいてるよ。
[足跡を追い、警戒しながら進む。 人の足跡が一種類である事には気づかぬまま]
あれ、せんせー?
[じきに、随分と弱った人のような影が見える]
(56) 2010/08/12(Thu) 02時頃
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― ??? ―
……っ!? おい、イアン先生!?
[辿り着いた場に広がっていたのは。壮絶な戦いの跡と、緑の大猿の死骸と……今にも命の灯火が尽きそうな教師の姿。]
アンタ、何無茶な事してんだよ……!
[しかし、やがて聴こえたのは。後輩達の声。]
…………!!!
[その声に身を起こすイアンと、駆け寄る後輩達の姿。無事アイリスが見付かっていた事にも気付く余裕が無いまま……彼は、息を飲んだ。]
オスカーは、メアリーに一歩遅れてイアンの傍へ。
2010/08/12(Thu) 02時半頃
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そんな、もたないだなんて。
[言いつつ、傷の様子が目に入ると内心イアンの死を覚悟する]
せんせ、肩貸すよ。 俺だけじゃ心もとないから、反対側メアリーお願い。 アイリスは何か襲ってきたら、こいつでぶん殴って。
[アイリスに棒を差し出すと、屈んでイアンの腕を肩に乗せた]
(61) 2010/08/12(Thu) 02時半頃
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[……イアンが指差したのは、彼の肉体が眠るあの岩場の方角で。
後輩達が肩を貸し、そちらへ向かう姿を、ただ追うしかできなかった。]
…………。
[……例え、イアンの告げた自分の死因が、偽りであれども。そして、イアンが尚も皆を殺そうとしている事に、気付こうとも。]
……
[辿り着いた時、教師が指差したのは此方だった。
背の先には、身体が眠っているであろう場所。]
……もう。
[俯いて、眸を閉じ、首を左右に振る。
傍にヘクターの魂が在っても、
今は、声を掛ける事も無い。]
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