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![]() | 【人】 本屋 ベネット[グレッグの話>>53を聞きながら、先日の相談の件を思い出し (66) 2015/05/17(Sun) 20時頃 |
[ 何本も束になった、ほそいほそい薄紅の絹。
あの夜、お墓の前でせんせいが教えてくれた「繋ぐ石」と
同じ場所に絡んだ、ただの糸。]
…そんなに締まったら、痛い…よ……。
[ 喚くな、と彼に右手を取られたようで
そんな痛みすら いまは尊く。
わたしは払うように糸に涙を吸わせて、ぽてりぽてりと
彼の足音と「わたしだったもの」の後を追う。
みんないて、わたしだけがいない世界
そう、おもっていた。]
…………?
[ 声に
きっと呼ばれているのはわたしじゃなくて、せんせいだ。
そう思いながらも聞き覚えのある声は、深く静かに響く。
その傍らには……ひとつもなかった、足音。]
…………っ…、
[ 真っ暗闇に、ぼんやりと浮かぶ幸せな食卓。
わたしのお皿に嫌いなものをこっそり移すメアリーがいて
それをこれ見よがしに声に出して注意するグレッグと
それを優しそうな笑い声で包む、おとうさん。]
…いじわる…………。
[ もう戻らない、触れられない日々。
わたしは俯き、テーブルの上のスープに塩味を足して
「触れられない幸せ」をかき消すように、スープごと薙ぎ払った。]
パシン。
[ 乾いた音、指先に触れた何か。
あたたかいスープはまだ 覆らず目の前にある。
薄く開いたくちびるが小刻みに震えるのは、
きっとまた、そこに「わたし」は居ないのだろうという恐れ。
けれどその音に吸い寄せられるように、手を…伸ばした。*]
メモを貼った。
![]() | 【人】 本屋 ベネット―― 早朝 ―― (78) 2015/05/17(Sun) 22時頃 |
![]() | 【人】 本屋 ベネット―― 教会 ―― (96) 2015/05/17(Sun) 23時頃 |
― 回想:3日目 ―
[体温を無くした自分より小さな体を
静かに見下ろす琥珀色の目は、
レンズの向こうで見せる感情を曖昧にしながら
戻ってくるサイラスの姿を捉える。
「……すまねぇ、先生」
( マーゴットを頼むと、言ったじゃあないか、 )
[理不尽な叱責を向けようと口を開きかけて
その瞼が赤く腫れていることに気づく。
力なき蒼い目。
きっと、彼が一番悔しかったに違いないのだ。]
…………。
[何か声をかける前に足早に歩き去っていく
サイラスの姿を見送る。
マーゴットの体の重みを感じ、眉根に皺を寄せた]
…………辛かったな、君も。
(だけど、 酷でも
この娘が、
土に埋められこの世を去る瞬間までは
……君に、見届けてほしかった )
[それは父親面した男のエゴに他ならず
村医者は息をすいこみ、吐き、空を仰いだ。
……吹き荒ぶ風が、泣き声のように聞こえた。*]
― →自宅 ―
[コツ、コツ、コツ。]
[音が響く。]
[コツ、コツ、コツン]
[喧騒の中を、縫うようにして村外れの方へと。
教会の方で騒ぎが起きているせいか、
村医者の住居のあたりは、閑散としていた。
がら、と――いつものように
戸を開くまねをしたが、実際は開いていない。
見えていないかのように
そのまま自宅へ足を踏み入れた。]
[――昨日は何をやっていたんだっけ。
そうだ、クラリッサに頼んでいた草を
そろそろ取りに行かないとと考えていた。
このまえ化膿止めもあげてしまったから
ストックがない。作らねば、と考えていた。
次第に昇りだす朝日に、照らされる室内。
机に転がる仕事道具。
本に挟まれた栞の場所。
壁の染み。
猫が飛び出していったであろうベッド。
そういったものが静かに朝陽に照らし出される。
何一つ、変わりはしない。]
[朝食を作っていない。
どうせ、いつ帰ってくるかもわからないが
まあ、ひもじいのは嫌だろうからな――と
鈍く光る包丁を取ろうとして]
[ ――どんどん、と扉が叩かれ開かれる。]
「スティーブン先生!」
なんだい
「教会の火事で――」
ああ、あそこで死んでるの僕なんだぜ。
笑えるだろ
「……くそっ、いないのか!こんな時に!」
……怪我人は……?
「薬屋に――」
( …………、 )
なるほど。こりゃあ、悪趣味だ。
[ 包丁に触れる。
銀の刃は、影を傷つけることすらなく。
確かに「ここにいない」という
現実を、影につきつけていた。]
![]() | 【人】 本屋 ベネット[まだまだ子供だと思っていた末弟だが (116) 2015/05/18(Mon) 00時頃 |
[ゆらと振り向いた娘の目に、この身は映ったろうか。
ひょっとしたら見えていないのかも知れない。
そんなこともあるだろうと、男はひどく納得していた。
何故未だここにいるのか。
願いは叶えられて、全ては終わったのではないか。
分からない。分からないまま、娘の視線の先を追う]
( …───、ああ。)
[やはり見えていない。
いや、ひょっとしたら娘の方が、己の幻想なのかも知れない。
他者の夢を覗くように、或いは古い過去の夢を見るように、
遠い昔の食卓がぼんやり向こうに姿を見せるのだから
[向こうに見える、あれは幼い日のメアリー。
グレッグはもう随分と馴染んでいて、
メアリーと並べば、丁度年の離れた兄妹のよう。
今よりおさない印象の黒髪の娘が、遠慮がちに笑っている。
暖かな、───遠い日の風景。
男は目を細めて少しの間、じっと幼い従兄妹を見つめていた。
そして俯きながら…涙を堪えるようにしながら、
塩に手を伸ばす黒髪の娘へと目を向ける]
… マーゴットや、
[音は音になっただろうか。
かふりと、喉の穴から抜けて消えてはいないだろうか。
男は知らない。
淡い夢に手を伸ばした時、
男もまたかつての幻想の姿を纏っていることに]
[懐かしい夢、あたたかで優しいスープ。
それへ手を伸ばして、俯きがちな娘へと差し伸べる。
…ああ、この子はまた、寂しいのかも知れない。
甥も、ここに来たばかりの時はそうだった。
無理もない、両親を亡くして一人ぼっちでここに来たのだ]
………、そら、
[ぬくもりを手渡すように、手を差し伸べた。
──── パシン。小さく、夢の弾けるような音がした*]
[くる、とローブの影を翻し、自宅を出た。
再び歩いていく。
村の中央にある教会から燻る煙。
空に溶け込めず、穢い色をしているように見えた。
道中、金色の髪が見えた。
その隣に立ってみる。]
………。
[眼鏡のような影を直す仕草。
それから、笑うように肩を揺らし、
拳を一度握って震わせた。
「生きてたら一発ぶん殴ってる」とでも言いたげに。]
そんなんでどうする。
大丈夫、
大丈夫。
……君は強いよ。サイラス。
[その拳を解いて、サイラスの背をとん、と叩いた。
どうにも、彼が一連の犯人だと思えない。
――否、そもそもこの影は、生きていた頃から
あまり強く人を疑えぬ性質では、あったのだが。
何はともあれ。
今は一人たつ彼の背を、応援するように再度叩いて
またどこかへと歩いていく*]
メモを貼った。
メモを貼った。
![]() | 【人】 本屋 ベネット[そのまま自宅に戻り家族に見聞きした事を伝えた。 (134) 2015/05/18(Mon) 00時半頃 |
………おとう、 さん?
[ 幻のつづき。 メアリーの、だとか いろんなものが
目の前からパァンと散って、出たことば。
しあわせな”かぞく”のイメージを纏ったままの 彼が
私の目の前にかたちをなして。
払った腕は ふるえながら
触れた なにか を探して彷徨う。]
ねぇ ……わたしを呼んだ?
[ 聞こえた”わたしのなまえ”
それにすがるように 触れるように 五指は掴む。]
[ 夢の中でも構わない。
深い皺の刻まれたゆびを握って引き寄せて
あの日の優しい「おとうさん」を見上げる。
ああ、おねがいだから ]
ねぇ ……わたしは、居ますか……?
[ ゆらいだまんまのわたしの形を、ください
いばしょを ください
あのう、暫くお世話になっても良いでしょうか?
――宿屋で彼に求めたわたしの居場所は
まだここにあるだろうか。 ]
![]() | 【人】 本屋 ベネット[とりとめない話題。 (137) 2015/05/18(Mon) 00時半頃 |
メモを貼った。
メモを貼った。
[ああ、やっぱり。この子は泣いていたんだ。…心の中で。
心細げな顔をしていた。
メアリーやグレッグらと親しくなって、次第に笑顔が増え。
そんな様子を暖かく──見守っていた日もあったのだ。
大切なものを喪う痛み。
この家では、誰しもがその痛みを抱えていた。
けれど──…、いや、だからこそ。
この”家族”は黒髪の娘を、家族のように迎えられたのだろう]
……、ああ、
[おとうさん。その呼びかけが、すとんと落ちた。
大切なもの、喪いたくはなかったもの。
緩やかな狂気を引き止め続けていたものに、それは良く似ていたから]
[探すように伸ばされた白い指に、皺じみた指を絡める。
握れば、こんな時なのに暖かさを感じた]
…────、
[つきり、痛みを覚える。
男の狂気は、この娘を見殺しにした。
彼女がここにこうしている責任の一翼を、男は担っている。
分かっている。だから本当は資格などないのだ、分かっている。
こんなことで許しを得たいわけでもない。……ただ、]
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